縮小ミックスファイトに挑んだ少年がお淑やかな少女に嬲り愛される話サンプル

2021年12月20日に販売した作品のサンプルです。
続きはこちらから読めます。

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 男女混合格闘技、俗に言うミックスファイトはどうしても男女間の体格や筋肉量によるハンデが生じる。そこで生み出されたのが『縮小リング』である。対象者の首にはめられたそれは様々な条件付けを経て体の大きさをコントロールすることができる。

 非合法に近い賭けが行われる闇闘技場で用いられるそれは、開発者の目論み通りに効果を発揮した。つまり『男性を縮小して女性の玩具にする』という狙いを、見事に達成したのである。

 *          *          *

 若き挑戦者である少年は、観客が一人もいない広々とした闘技場の異様な雰囲気に呑まれまいと、両手で頬を叩いて己を奮起させる。
 この試合に勝てば、学生の身では到底手に入らない大金が得られるのだ。しかも対戦相手は小柄な少女と聞いていた。格闘技の経験などほとんどなくても勝つ望みはある。そう思ってしまうのも無理はない。

 実際、大輝より遅れてリングに上がってきた相手は、身長百七十センチの大輝よりも更に頭一つ分背が低い少女であった。簡素なビキニを着ている華奢で肉付きも良いと言えない体からは、体当たりしただけでも吹っ飛んでしまいそうな印象を受けた。

 容姿からしても、とても格闘技をしているとは思えない。切り揃えられた黒髪に穏やかそうな目元、白い肌はインドア派の印象をより強く感じさせる。外で運動をしているよりは、図書室で静かに読書をしていそうなおとなしそうな少女だ。年齢もきっと、大輝と同じくらいだろう。

(かわいそうだけど、なるべく怪我をしないようにすれば……)

 対戦相手と言えど、傷付けるのは気後れしてしまう。格闘技どころか喧嘩慣れもしていない大輝にはかなりやりにくい相手だった。けれども、逆に言えば簡単にギブアップを取れそうにも思えてくる。すぐに泣き出してしまいそうだ。

「あなたが今日の対戦相手さまですね? 私、今宵お相手を務めます静穂と申します。どうぞよろしくお願い致します」

「え、あ、よろしく……大輝と言います」

 印象と違わず、しかし場違いな礼儀正しい一礼と挨拶に大輝は反応が遅れ、慌ててお辞儀で返す。その様子に、静穂はくすりと微笑んだ。本当にこれから殴り合いをするのかと疑問が浮かんでしまう態度に、大輝は戸惑いを隠せず戸惑った。

「それでは、今回私たちに課せられているルールについて、ご確認させていただきます。よろしいでしょうか?」

「あ、ああお願いします」

「ではまず、私たちの首に取り付けられたリングの機能は把握してらっしゃいますでしょうか」

 言われ、大輝は自分の首に取り付けられているリングに触れた。ピンク色の輪っかが少女と戦う際のハンデとなる。それは聞かされていたが、詳しい機能までは知っていない。

「大人のプロの方々が使う場合は、タップするか気絶をしたらその人の体を少しずつ小さくするとなっています。ですが私たちはまだまだ不慣れな身、そこまでして相手にハンデを負わせる試合をするのは、少々危険です」

「小さくって、体が縮むってこと?」

「はい、その通りです。それによって男女の体格差を埋めて平等に戦えるようにするのです」

「そんな機能があったのか……」

 自分の首元を撫でて大輝は呟く。それならば確かに、男が一方的に勝つ展開にはなり難いだろう。大輝はそれくらいにしか考えていない。

「でも今回は違うってことか?」

「ええ、不慣れな技で相手の命に関わる怪我をさせてはいけませんから」

「まぁ、そうだな……俺は格闘技習ってないし」

 もっともらしいと頷く。

「ですので、今回は時間経過によって効果を発揮するようになっています。具体的には、三十秒ごとに五センチずつ、私は大きく、あなたさまが小さくなるようになっています」

「五センチか……」

 人差し指と親指を開いて、なんとなくイメージを測る。それから相対する静穂の身長を見て、

(まぁ、それくらいならまだ余裕だろ)

 そんな楽観的な予想をした。自分が縮むと同時に相手も大きくなることには気が向いていない。これは大輝が平均的な身長の男子である故、圧倒的な体格さ差を持つ相手と対峙したことがない故の、想像力不足だった。

「服とかは大丈夫なんだっけ?」

「ええ、対応した特殊素材ですから」

 なるほど、と頷く大輝はあまりにも呑気であった。

「試合の勝利条件は相手にギブアップをさせること、もしくは場外へ押し出すこと。そして目潰しや金的などの危険な急所攻撃と凶器の使用は厳禁、あとは規定なし……ここまでよろしいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だ」

「それでは、審判に合図をしますね」

 大輝の返答に頷き返した静穂が片手を挙げる。これで外部からモニターしている審判が試合開始のブザーを鳴らすのだ。
 もうすぐ試合が始まる。大輝はそれっぽく身構えた。これから戦いが始まることへの緊張感でどうしても全身が強張り浮つき、ここに来て不安な考えが頭をよぎり、集中力が削がれる。

(落ち着け、じゃないとこの子に怪我をさせちまう……)

 相手は明らかに自分と同じ素人の少女、うっかり顔に怪我をさせて泣かせでもしたらまずい。呑気にもそんな心配をしていた。だから、咄嗟の反応が遅れた。

「──しっ!」

 合図のブザーが鳴るのとほぼ同時、短距離走のスタートもかくやという反射速度で、黒髪を舞わせた静穂が突撃を仕掛けてきたのだ。姿勢を低くした体当たりは体格の差などものともしない衝撃で大輝を転倒させる。

「うっ?!」

 背中からリングに落下して呻いたのも束の間、次の瞬間には鳩尾に華奢な肘が突き刺さっていた。「ぐえっ」と内臓が押し潰されて口から息が絞り出る。腹を抱えて横へ転がる大輝を、静穂はあえて追わなかった。

「げほっ、ごほっ……」

 膝をついてどうにか立ち上がろうとする大輝を見る静穂の口元は、先ほどまでとまったく変わらない。哀れな挑戦者を柔らかい微笑みで見守っていた。

「く、そ……!」

 ようやく立ち上がった大輝がよろけながらも少女に殴り掛かる。こうなれば遠慮など不要、むしろ攻撃を受けた怒りがそれを上回って本気のパンチを放っていた。だが、本気と言っても所詮は素人のもので、

「この、このっ!」

 ぶんぶんと振られる拳は虚しく宙を切る。静穂は涼しい笑みを浮かべたまま、ひらりひらりと細い体を揺らして攻撃を避け続ける。当たりそうで当たらない間合いを保ち、巧みに大輝の攻撃を誘って冷静さを奪う。

「大輝さま、もう一分経ちますよ?」

「……え?」

 言われ、思わず攻撃を止めた大輝の視界に異常が生じた。じわっとスライドするように視界が下へさがり、相対的に目の前にいる少女の背が高くなったように見えた。

「お気づきになられていないようでしたが、これで二回目です。私は元々百四十センチで、あなたさまは百七十センチでしたから」

「えっと……」

「計算しながらでないと、残り時間がいくつかわからなくなってしまいますよ?」

 咄嗟の問いに思考が止まる。相手が呑気に待っていることもあって、思わず計算に意識を取られてしまった。

「お互いの差は十センチ──」

 言っている間に、また縮小が始まった。大輝がこれは時間稼ぎのための策略だと察した頃には、もう目の前まで詰められている。

「初心なお方ですね♡」

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