ビアード 2024/03/02 16:27

トイレットウォーズの世界観ができるまで

今回はまた、開発の裏話的なものでも、と。

開発に至った経緯はお話したので、今回は世界観とか物語のお話ができればなと思います。


最初は、尿意転送というシステムを取り入れたゲームを作ろう
というのが発端だというお話はしましたが、
じゃあ具体的にどういう世界観で、どんな物語にするかというのが次の課題です。

一応、世界観に関するコンセプト自体は初めの方からありました。
そのコンセプトとはズバリ、
「王様から最初に貰ったお金で、武器とか防具ではなく生理用品を買いに走るようなRPG」
でした。

普通、RPGと言ったら、武器や防具を装備し、敵を倒してレベルを上げ、
色々な試練を乗り越えていくものじゃないですか。

でも主人公が女の子であれば、そういった華々しい冒険譚の裏で、
トイレの問題や生理の悩みだったり、
そういった人には言えない恥ずかしいことも、ひっそりと乗り越えているはずですよね。
そういう、恥ずかしい部分にも焦点を当てたRPG、というのがコンセプトの意味合いです。

まあ、こういう系のRPGなら至って普通の話ですけどね?


次にどんな主人公で、どんな物語にするかという部分です。
最初に決まっていたのは、尿意転送というシステムがある、という点だけです。
そうなると必然的に、主人公は尿意転送という能力を持っている、という設定が必要になります。

そこで気になるのは、じゃあ主人公はどうしてそんな能力を手に入れたのか?という点です。
ハッキリ言って、自分の膀胱に溜まっているおしっこを相手の膀胱に転送する能力なわけですから、
まかり間違っても、神より授かりし天性の力とか、そんな神々しい理由じゃないでしょう。

となると、主人公が自ら作り上げた魔法、という設定がしっくりきます。
でも、こんな嫌がらせでしかない魔法を、なんでわざわざ作る必要があるのか?
それはもうズバリ、嫌がらせしたいから、しかないだろうな、と。

つまり主人公は、苛められていたり、虐げられたり、何かしら酷い仕打ちを受けていたはず。
だから、その仕返しとして尿意転送という魔法を作り上げた、ならしっくりくる。
となると、主人公は何かしら差別されるような境遇に居るということになるだろう。

ここまで来れば、ある程度主人公の像はできました。
後は、何故虐げられているのか?の理由さえできれば、ある程度物語の道筋もおぼろげにできてくるでしょう。


ここから出来上がった物語は、こうです。

この世界には、人間と獣人という二つの種族があり、それぞれは対立していた。
主人公は獣人の少女で、人間の街に迷い込んでしまったところ、
悪い貴族の人間に囚われ、酷い扱いを受け続けてきた。

基本的に獣人は人間よりも知能が劣るとされ、人間からバカにされ続けていた。
そのため主人公は、高度な知識を必要とする魔法を覚えることで、人間を見返そうと考えた。

夜な夜な書斎へ忍び込み、魔法の知識をつけていった。
そんな中、主人公は人間達へ嫌がらせをするために、尿意を転送する魔法を考えた。

そしてある日、主人公は遂に完成した尿意転送の魔法を使って、自分を捕らえた人間達を見返そうとした。
しかし、失禁させられた人間はそれに激怒し、厳重な地下牢に主人公を閉じ込め、
より酷い扱いを受けるようになった。

この世界に希望を見いだすことが出来なかった主人公は、その地下牢の中で自ら命を絶とうとした。
その瞬間、突如外が騒がしくなる。

外では、魔王と名乗る謎の少女が現れ、沢山の魔物を引き連れて人間の街を襲っていた。
やがて魔物は、主人公の囚われている地下牢へ現れ、その入り口を破壊し侵入してきた。
だが、魔物達は主人公の命を奪うことはせず、何故かそのまま姿を消した。

不思議に思うも、主人公はこれにより自由を得られた。

地下牢から出た主人公は、自分の本来の居場所である獣人の住処へ向かった。
しかし、実は主人公は獣人と人間の間に産まれた混血であることが分かり、
人間の血が混じる主人公は獣人達からも卑下され、ここにも主人公の居場所はなかった。

この世界の何処にも居場所がなく、途方に暮れた主人公。
そんな彼女へ唯一手を差し伸べた存在が居た。
それが、この世界を破壊しようと暴れ回っていた魔王だった。


やがて、魔王の正体が、別の時間軸で産まれた主人公の怨念であることが発覚。

別の時間軸にて、主人公は地下牢で自ら命を絶った。
だが、虐げられていた恨みが消えず、彼女の魂は怨念としてこの世に残ってしまった。

そのため過去の世界へ戻り、命を失う前の自分を解放し、
肉体を持つ過去の自分と共に、この世界を破壊することを目論んでいた。

主人公は魔王と共にこの世界を破壊し尽くすのか?
それとも、自分自身の怨念を振り払い、世界を救うために戦うのか?


……と、ざっとこんな感じになりました。

まあ、見ての通り今のトイレットウォーズとは全然話が違いますね。
つまり、この話はボツになったわけです。

何でかって? だってこれ、つまらなくないですか?
世界観よりストーリーが先行しちゃっているっていうか……
物語上で関わりのある部分しか、世界ができあがらなくて、それ以上に世界観が広がらなかったんですよね。

そもそもですよ。読んでて気付きません?
この物語、冒頭に尿意転送魔法が出てくる以外、おしっこもトイレも全然関係無いじゃないですか。
じゃあ、そもそも意味ないよね、っていう。

ってわけで、ここで一回頓挫したんですよね。
まあ、この話を考えた当時は、まだRPGを作れる環境に無かったので、
正直、夢物語として考えてた部分もあるので、そこまで本気じゃなかったっていうのもあるんですが。


余談ですが、この時考えてたプロットの主人公である獣人の少女は、
のちにクロリアの原型になったので、若干ですがこの頃の面影が今も残ってはいます。


話を戻して、その後RPGを作れる環境が整ってきたので、本腰入れようかってなったのですが、
ひとまず、前に作ったプロットは完全破棄して、新しい物を作ろうとなりました。
とはいえ、真っさらな状態に戻っちゃったので、どんな世界観、物語にしようか悩みあぐねました。

ちょっとネタバレになっちゃうので詳しくは書けないのですが、
その時、とある有名な作品を人生で初めて見たんですね。
その作品を見て、ものすごく感銘を受けると同時に、悪魔的な発想に至ったんです。

で、その悪魔的な発想からアイディアを繋げていくと、最終的に魔王にトイレを奪われるという発想に至りました。
こうして、今の世界観の原型が出来たんですよね。

そして、この魔王にトイレを奪われるという案が出たところから、
爆発的に世界観が広がっていきました。

何故、魔王はトイレを奪う必要があったのか?
という部分からこの世界の歴史が繋がり、
トイレを奪い返すためにどのような戦いが行なわれるだろうか?
という観点からトイレをダンジョンにするという、物語の主目的が産まれ、
気が付くと、この世界の全ては「トイレ」を中心に広がっていったわけです。

なので、このゲームのタイトルをどうするかと考えた時、
絶対に「トイレ」という名前は外せないと思いました。

なので、尿意転送という発想から始まった企画ですが、
おしっこやおもらしを想起させる名前じゃなくて、
トイレの方をタイトルに持ってきたのはこういう理由な訳です。

とはいえ「トイレ」だけでは、ネーミングとしては当然弱いですから、
何か、トイレともう一つ、この世界や物語を象徴する単語が欲しいと思った訳ですね。


その時考えたのは、普通RPGといえば、主人公達がすべきことは「冒険」じゃないですか。
でも自分はこの作品の中で、「冒険」を描くつもりは無かった。
冒険って言ってしまうと、主人公一行の物語に終始してしまうイメージがあるんですよね。

こんなこと言うと、お前めっちゃひねくれてんなって話ですけど……
この作品は、主人公達の活動を追うというよりも、この世界で起こっているどうしようも無い出来事に対し、
人間という無数で無力な存在が、ひたすらに足掻いていく過程を描きたいっていう思いがあってですね。
だから「冒険」じゃないんですよ。

じゃあ、冒険じゃなきゃ何?って話なんですが……
その時、ふと頭をよぎったのはファイアーエムブレム(FE)シリーズでした。

FEも一般的なRPGと同じようにファンタジーの世界観ですけど、
でもそこで繰り広げられているのは「冒険」ではなく「戦争」なんですよね。

だから、戦争がもたらす悲惨さとかっていうのも、結構描写されるんですよ。
そう言うところもしっかり描写するというのが、FEの世界観に引き込まれる大きな要因だと思っているんですね。
それで今回作るRPGも、「戦争」っていうのを大きなテーマの一つにしようと思いました。

それで、結果的に「トイレットウォーズ」という名前に落ち着きました。

因みに、一般的なRPGのようなレベルアップで魔法を習得する形式ではなく、
魔導書という形で使用できる魔法を切り替えるのも、FEの影響ですね。


で、ここまでが世界観の話だったんですが、ここから具体的な物語を組んでいくことになります。
それでさっき、FEの話をしたのですが、
丁度、物語のプロットを考えているとき、FEifが発売された頃だったんですよね。

それで何をとち狂ったか、2バージョンでゲームを作ろう!とか考え始めたんですね。

魔王軍の手に落ちた王国軍と、それに対抗するレジスタンス。
それぞれの視点の物語を作ろうって考えたんです。

トイレットウォーズの主要キャラって8人居るじゃないですか。
アリス、ティアラ、ソフィ、フローラのレジスタンス側と、
リリア、エレン、クロリア、セーラの王国軍側。

これ実は、最初それぞれ別バージョンの主人公にするつもりだったから、
それぞれで4人ずつの主要キャラを用意したんですよね。
(因みに、ジェニーはもっと後の方で考えたキャラだったので、当初は存在してませんでした)

でもやっぱり途中で、いきなり2バージョンもゲーム作るの無理だろって悟って(遅いよ・・・
それぞれのバージョン毎に用意していた物語を1本にまとめたんですよね。

なので、起承転結が揃っている2本の筋書きを、無理矢理一つの筋書きにまとめたので、
今のトイレットウォーズの物語って、2つの起承転結が入り交じった、かなり複雑な構造になってしまったんですよね。


後は、当初から主要キャラも入れ替わりがあって、
最初ティアラは存在しなくて、代わりにエレンの妹がレジスタンスのキャラだったんですよね。

エレンも権力欲に溺れていて、魔王に忠誠を誓って王国軍を動かしてるとかって設定で、
そんな姉に嫌気が差した妹が城を抜け出して、姉や魔王を止められる存在を探しに行った所、
アリスと出会って……って感じでした。

ソフィもアリスと同じ学園に通ういじめっ子で、
最初は嫌なキャラだったけど、途中で仲間になって良い奴になって……とかでした。

後、フローラは存在はしていたけど、当初は仲間になる想定じゃなくて、
とにかく悲惨な死を遂げる薄幸の少女って感じでした。
ただ、あまりにも可哀想過ぎたんで、いっそ仲間にしてあげたら?って思って、仲間になるようにしたんだったな。


因みに、エレンの妹が消滅した理由は、
エレンの妹もメイドなんですけど、主要キャラにメイド二人も要らなくない?
って思ったっていう、ただそれだけの理由です。

属性被せるぐらいなら、他の属性のキャラ入れようよ。
シスターとかシスターとかシスターとか……。
って感じで、ティアラが仲間になるようになりました。

余談ですが、作中では既に故人になっているので出てこないのですが、
エレンに妹が居たという設定自体は残っています。
そもそも妹の存在が、エレンの性格にも大きな影響を与えているので、そこそこ重要なキャラだったりします。
いずれ、エレンの過去に何があったのかは、作中で明らかになる……予定です。


それで、話を作る上でかなり大事なポイントって、やっぱり出だしじゃないですか。
だから、どういう場面から物語を開始させるかっていうのは、そこそこ悩んだかな。

自分、666先生のウェッターズ物語が好きで、
最初同じように、学園から物語を始める形で考えてたんです。
アリスがいじめられっ子で、ソフィっていういじめっ子が居て……
っていうのも、正直に白状するとウェッターズ物語を参考にさせてもらってたんですよね……。
(結局、ソフィはいじめっ子のポジションではなくなりましたが。。。)

でもどうせだったら、もうちょっと誰も真似しなさそうな始まり方にしないか?
って思って色々考えた結果、一番最初のプロットを思い出して、
主人公が囚われてる所から始めたらどうか?ってなったんです。

トイレットウォーズの4章って、最初にアリスの夢から始まりますけど、夢から覚めたら牢獄じゃないですか。
本当に最初は、この4章が1章の想定で作ってたんですよね。

でも、捕まってるってことは、捕まるに至った経緯があるはずじゃないですか。
最初は、後からその経緯を追うような感じで物語を考えてたんですけど、
考えれば考えるほど、いやそれを先に話せよ、って思うようになって……
それで、先にアリスの裁判の話をすることにして、今の形になりました。

だけどおかげさまで、ゲーム開始早々、RPGなのに弁護士を操作して、
メイン主人公を裁判で弁護するっていう、
まあまず誰も真似しないだろうなっていう出だしにはなったので、結果的には良かったかなと。


余談ですが、トイレットウォーズはあくまでも性癖ゲーなのに、
なんでそんなゴテゴテのストーリーを作ってるのかっていうと、
もちろん一番は、自分がそういうのを「書きたいから」なんですが、
もう二つほど、思うところがあってですね。
(まあ言うて、本当にそんな効果があるのかは検証のしようも無いので、あくまでも自分の考えでしかないですが……)

一つ目は、賢者タイムとの兼ね合いですね。
当然こういう系のゲームってオカズとして使うためにあるものじゃないですか。
でもやっぱり人って賢者タイムがあるから、そうずっと昂ぶってられる訳でもないですし、
いわゆるクールタイムは必要になりますよね。

そう言うときに、物語をじっくり読んでそっちの方に集中してもらって、
また気分がノってきたら、おしっこの方に集中してもらって、
みたいな感じで、適度に使い分けができれば、それなりに長く遊べるんじゃないかな、と。


二つ目も、それとちょっと近いんですけど、
おしっこをメインとした作品に出てくるおしっこシーンよりも、
全く関係の無い一般の作品で唐突に出てくるおしっこシーンの方が、
ドキッとするって経験ないですか?
(いや、そんなことないよって人はごめんなさい……)

自分は結構そういうのを感じることがあって、
でも、そのためだけにおしっことは関係の無い作品を一生懸命作るっていうのも、
やっぱり違うじゃないですか……。

そこでこの現象に対して仮説を考えたのですが、
恐らく、「おしっこシーンが来る」っていう心構えがあるかないか、
要は「不意打ち」だからこそ、まさかこの子のおしっこが見られるの!?
みたいな、興奮が生まれるのかな、と。

だから、おしっこメインの作品であっても、
不意打ちを喰らわせられれば、アレに近い現象が発生するんじゃないか、
という予想を立てたわけです。

そこで、ストーリーを作り込んで、
これが「おしっこゲー」だということを一時でも忘れられるぐらい、
物語や世界観に熱中してもらうことができれば、
あの不意打ちに近い感情が再現できないかな、と思った訳ですね。


とはいえ、さっきも書いたとおりこれらはあくまでも、
自分の仮説や考えに基づいての話なので、
実際、本当にそんな効果があるのかとかは、検証のしようが無いので、
あくまでも、ただの理想論として見てもらえればなと。


あぁ……とか言ってるうちに、またこんな長々と語ってしまった。
ウチの会社の部長、いっつも話長いって言われてるけど、自分も部長のこと言えないですねぇ、これは……。

これ以上語ると、まだまだ長くなる上に、ネタバレも抑えきれなくなりそうなので、
もうここまでにしましょう!


開発経緯、世界観・物語の話をしたから、後できることと言えば、キャラの話ぐらいか……。
キャラは、もうそんなに語ることも無い気がするけど……
機会があれば、キャラの話もしたいですね。

後は、既に何個か書いちゃったけど、影響を受けた作品の話とかも面白そうですねぇ。
(666先生が東方のお話されてるのを見て、自分も東方語りしたいなぁ、とか思ったり……。
 なんで主人公がアリスなのか、とかね)

というわけで、今回も長々とお付き合い頂いて、本当にありがとうございました!

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