芽生え6
下校中でのおもらし。
生温かく濡れていく黒タイツ。
(あれ、ちょっとピンチ、かも……?)
イリアが下腹部に冷たい感触を覚えたのは、校門を出て五分ほど過ぎたところだった。
この感触は間違いない。
尿意だ。
(最近急に冷え込んできたからお腹冷えちゃった? 帰るときに学校でしてこなかったから……ううっ)
一度尿意を意識してしまうと、なぜか分からないけど急に苦しくなってきてしまう。
今から学校に引き返すというのも、誰かに見られたら恥ずかしい。
かといって、家から学校までは歩いて二十分くらいの距離がある。つまり、あと十五分は歩かなくてはいけない。尿意を我慢して歩けば、もっと時間がかかることだろう。
(あんまり好きじゃないけど……、公園にある、あのおトイレ使うしかない、よね)
気が進まないことだが、ここから歩いて五分くらいのところに小さな公園があって、その隅っこに古い公衆トイレがあるのだ。
小さくて、古くて暗いし、そしてお世辞にも綺麗とは言えない。むしろ汚いと言える。
そんな怖いトイレ。
だけどイリアはたまにピンチなときは、この公衆トイレに駆け込むことにしていた。
(嫌だなぁ……あのトイレ)
嫌々ながらも歩いてやってきた公園。
その隅っこには古くて電気さえもない公衆トイレがある。
もちろん、トイレットペーパーなんてものもあるはずがなくて、もしも漏らしてしまったりなんかしたら一環のお終いだ。
ポケットティッシュを持っていなければ、小用を足すことさえもできない。
大丈夫、今日はしっかりとティッシュを持ってきてある。
だが、そのプレッシャーが重荷になってしまったとでもいうのだろうか?
じゅわわっ。
「あっ、だめっ」
公園に踏み込んだときに、あまりにも貧弱過ぎるイリアの尿道が決壊しそうになる。
ジンワリとおまたが温かくなって、
「出てきちゃ、だめぇ……っ」
イリアは慌てて前抑えする。
それは女の子にとって、あまりにも屈辱的なポーズだった。
どんなに尿道を締めても漏れ出してきてしまうから、こうして指で尿道を塞ぐしか最後には残されていないのだ。
だが、それは指を離したら決壊するということでもある。
ただでさえ冷たい秋風が脚を冷やしていく。
それに何度もおもらし遊びをしてきたイリアの尿道は、他の女の子よりもユルユルになっている。
「あっ、あああ……っ。まだ、ダメ……っ」
前抑えしながら、よろよろとトイレへと歩いて行く。
もしも公園に誰かいたら、イリアが決壊間近なのは一目瞭然だっただろう。
それ以前に、イリアは恥ずかしくて前抑えなんてできずに、公園の入り口で失禁していたに違いなかった。
「あ、後もう少し……うううっ」
よろめきながらも、イリアはなんとか公衆トイレに辿り着く。
一歩踏み込むと、なんとも言えぬ悪臭と、薄暗い空間がお出迎えしてくれる。
正直なところ、あまり入りたくはなかったけど、背に腹は代えられない。
「なんとか間に合った……」
個室のドアを閉め、目の前にはぽっかりと暗い口を開けた、汲み取り式の和式便器。
底の見えない縦穴からは、換気扇が回る低い音が聞こえてきている。
あとはショーツを降ろして尿意を開放すれば――。
「えっ……、どうしよう……」
和式の便器を前にして、イリアはフリーズしてしまう。
どうやって、このタイツとショーツを脱げばいいのだろう?
ギュッとおまたに食い込ませている右手を離せば、その瞬間におしっこが噴き出してきてゲームオーバーだ。
だけど左だけでショーツを脱ぐことなどできるはずがなかった。
それに黒タイツにはイリアの冷や汗が染みこんでいて、脱げにくくなっている。
ジットリと湿ったタイツは、脱げにくいのだ。左手だけでは脱げないだろう。
「やだ……。わたし、ここで漏らしちゃう……の?」
どう考えても絶望だった。
右手を離せば漏らしてしまうし、手を離さなくてはタイツを脱げない。
こうなってしまった以上、イリアに残された道は一つしかなかった。
――無様な、決壊……。
(ぜっっったいダメ! お外でおもらしなんて、恥ずかしすぎるのに!)
ジワリ。
「あっ! あっ! あっ! だ、だめぇ……ッ。おしっこ、出てこないで……うう!」
ジュワ……ジュワワ……。
指のあいだから黄金水が漏れ出してきて、内股をイタズラっぽくくすぐっていく。
右手の掌に、生温かいおしっこがポシャポシャと弾けた。
なんとか堪えていたイリアだが、トイレを前にして、無様にも決壊してしまったのだ。
こうなってしまうと、もはや出し尽くすまで止めることなどできるはずもなかった。
イリアにできること。
それは……。
(もう、我慢しても……ううっ、こうなったら仕方ない……んだから……っ。被害を少しでも抑えるために、座るしか……っ)
イリアに残された道。
それはスカートを捲り上げて和式のトイレに跨がって、はしたない放尿をすることだけだった。
立ったままだったら、ローファーまでも汚してしまうことになる。
右手を離し、しゃがみ込んだ瞬間――、
ぷっっしゅああああああ!!
その勢いたるや、クロッチと黒タイツという障壁を突き抜けていくほどだった。
金隠しにイリアの黄金水が弾け、花火のように散っていく。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
どんなにおしっこを止めようとしても、ヒクヒクとおまたが痙攣するばかりだった。
外なのに。
ショーツばかりか、タイツを穿いたままだと言うのに。
イリアは、自らの恥水によって股間を愛撫されていく。
「やだ……よぉっ。外なのにっ、ああっ、あったかいのがお尻に広がってきてる……っ。拭けないのにぃ……っ」
こんな3Kトイレにトイレットペーパーなんてあるはずがない。
ポケットティッシュを持ってきてはいるが、おもらしをしてしまえば焼け石に水だ。
取り返しのつかない温もりが、お尻へと広がっていった。
それは、イリアがいつもやっているおもらし遊びそのものの感触だった。
それもわざとではなく、我慢の限界を迎えた本当の失禁。
いやでも鼓動が早くなってきてしまう。
「あっ! あっふう! おしっこ、勝手に出てきちゃって……ううっ、んんっ、ふうううう!」
ヒククンッ!
おまたが痙攣するたびに、
プシュアアア!
プッシャアアアアア!
おしっこが噴き出してきた。
「ああっ! ああんっ! おまたがムズムズして……! んっ、はぁん! なんか、なんか変になっちゃう……っ」
シュイイイイイイイイイイ……。
おもらしをしながら、イリアは未知の感覚に身体を丸める。
それでもおしっこは溢れ出してきて、イリアの小さなお尻を撫で回していくのだった。
そしてついにイリアは呟いてしまう。
「ああぁ……おしっこ、気持ちいい……よおぉ!」
お尻が冷えていたぶんだけ、おしっこがあたたかく、心地よく感じられる。
ショーツとタイツがペッタリとおまたとお尻に張りついてきてくれて、生温かい手で愛撫してくれる。
それはオナニーという行為も、言葉さえも知らぬ無垢な少女にとっては極上の感触だった。
「あったかい……。おしっこ、あったかぁぁい……。気持ち、いいよぉ……はっ、はふう~……」
しゅいいいいいいいいい……。
黒タイツに覆われているおしっこの勢いは少しずつ弱くなっていき、やがてじわじわと滲み出してくるほどになると、お尻を最後の仕上げといわんばかりに撫で回していってくれる。
「は、はふう……うっ、んんん!」
ブルルッ!
プシュウ――!
イリアは身体を大きく震わせて残尿を噴き出すと、初めての制服を着て、外での失禁は終わりを告げた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁぁぁぁ~~~」
個室にはイリアの低い吐息と、ムッとした尿臭に満ちている。
「はぁ、はぁ、はぁ……耳鳴り、凄いの……」
興奮の坩堝にあるイリアには、確かに聞こえていた。
鼓膜が細かく振動し、それはまるで夏虫の大合唱のようにリーンリーンと耳鳴りが。
たくさんのスズムシの声が、幾重にも重なっていた。
「おしっこ、全部出ちゃったんだ……。こんなにぐしょぐしょになっちゃってるよ……あはっ」
恐る恐る、しゃがんだままでお尻を撫でてみると、そこはおしっこでジットリと濡れそぼっていた。
お尻でさえもこんなに濡れているのだ。
(おまたはどれくらい濡れてるの?)
思いながらも、黒タイツに浮き上がっている縦筋に指を這わせていくと――、
チリリッ、
「んう!?」
下半身を駆け抜けていく電流に、イリアはお尻を震わせてしまう。
数秒遅れて、ジュワッとおまたが熱くなった。
「まただ……。このおまたが痺れる感触。なんなんだろう」
とは思うけど、怖くてこれ以上おまたに指を食い込ませることなんてできるはずがなかった。
それに温かいということは、冷えてくるのも早いということだ。
「ぱんつ、冷たくなってきちゃってるよ……」
秋の風に、早くもショーツは冷たくなってきている。
ペッタリとお尻に張り付いてきて、失禁してしまったイリアを責め立ててきているようでもあった。
「ぱんつ、気持ち悪い……。でも、拭けないし……」
こんな古くて汚いトイレに紙なんて置いてあるはずがなかった。
一応ポケットティッシュは持ってきてるけど、こんなにグショグショに濡れてしまったのだ。
ポケットティッシュで拭いたくらいでは、もはや拭いたくらいでは綺麗にはなってくれないだろう。
「スカートで隠せば、気づかれない……よね」
おもらしショーツを穿いたまま立ちあがると、スカートの裾を整える。
内股を何滴かの小水がくすぐっていくけど……、うん、大丈夫そうだ。
「よし、これで私がおもらししたなんて、誰も思わない……」
イリアはツンとした済ました表情を浮かべて、暗いトイレを後にする。
よほど長くトイレにいたのか、日が傾いて黄金色になりつつあった。
これならちょっとくらい赤面しても誤魔化すことができそうだ。
(やだ、ドキドキしてきちゃうよ……っ)
誰かに会ったらどうしよう?
もしも、おもらししていると気づかれたらどうしよう?
そう思っただけで、鼓動が早くなって身体が熱くなってきてしまう。
(なんで……? なんか、おまたが熱くなってきてる……? それになんかヌルってしてる気が……。な、なんで……?)
一歩進むたびに、ヌルヌルになったクロッチがおまたに擦れてきてイリアのことを責め立てる。
そんなイリアは気づいてはいなかった。
イリア自身、首筋から発情したミルク臭を漂わせ、黒タイツに覆われた内股には、蜘蛛の巣のような銀糸が張っていることに――。
この小説は電子書籍としてフルカラーのイラストとともに配信している作品です。
気になった人は購入してもらえると創作活動の励みになります。