芽生え9
学校で便意に襲われる恐怖。
トイレを前にして、もりもりと盛り上がっていく黒タイツ。
「あと、もうちょっとぉ……っ」
額に脂汗を浮かべているイリアが公園に辿り着くころには、すっかり顔は青ざめていて、整った顔も苦痛に歪んでいた。
それでもなんとかイリアがなんとか苦痛を我慢できていたのは、少女としての最後のプライドが勝ったからだった。
(誰にも見られてないからって……、こんなに恥ずかしいことできないんだから……っ)
その一心が、イリアの最後の関門だった。
幸いなことに公園には誰もいなかった。
小さい公園の隅にある公衆トイレまで、あともうちょっとだ。
トイレへと続く地面は、秋風に白く乾き、つまづくということもなさそうだ。
あとは、ゆっくりと慌てずにトイレへと向かえばこの苦痛から解放される。
楽に、なることができるのだ。
「あと、もうちょっと……っ」
その小さな建物へと、あと数十歩――。
だが。
ぎゅるるるるるる!
メリメリ、メキキッ!
トイレの建物を視界に入れて、身体のスイッチが入ってしまったとでもいうのだろうか?
腸が波打ち出すと、お尻を塞いでいるコルクが内圧に飛び出しそうになった。
「うっ、ううううう!」
獣のように低い声を漏らし、少女としてはあまりにも恥ずかしすぎるへっぴり腰になりながらも、イリアはなんとかお尻の穴を閉じる。
もう、すでにショーツの中にはミッチリと硬質便が詰まっているというのに――。
それでもイリアは、あまりにも小さな歩を重ねていく。
……が。
メリリ……メキリ、メキメキ……ッ。
「あっ、ああぁ……。固いのが、お尻のあいだから……ううっ」
ぷりっと膨らみ始めた少女のお尻では、固いものを抑えきることはできなかった。
プリンのような柔尻のあいだを、コルクのような硬質便が押し出されていく。
「んおっ、おおぉぉぉ……。だめ、だよぉ……。すぐそこにトイレがあるのに、出てきちゃ……んっ、おおお! あああ!」
短い悲鳴。
その悲鳴が終わる前に、
チュポンッ!
イリアのお尻から、コルクが噴き出していた。
そのコルクの奥に詰まっていたものは、どんな濃い酒よりも熱く、熟成された危険物だ。
だがイリアが酒を飲んだことがあるはずもなく、火傷しそうなほどに熱い流動体に、少女の括約筋はあっさりと屈していた。
「あああああ! だめっ、だめぇぇぇぇ!!」
にゅるるるるるる!
熱く取り返しのつかない感触がお尻に広がると、うっすらとお尻が大きくなっていく。
ニュルニュルと出てくる軟便はお尻のあいだに食い込んで、それでも直腸から溢れ出してくる。
「あっ! あっ! あっ! うんち、熱いの、んあっ、あああ!」
突き出されているお尻がもこもこと膨らんでいき、尻の割れ目が汚泥に満たされていく。
割れ目だけでは収まりきらなくなった汚泥は溢れ出してきて、尻房を蹂躙していった。
「うっ、ううううう! 熱い、よぉぉ……っ」
それは、イリアの小さなお尻が、スカートの上からでもうっすらと大きく膨らんでいくのが分かるほどの量だった。
だがその大量の未消化物を、女児ショーツという極小の布で押さえ込めるはずなど、なかった。
ニュルルルルル!
ブリュリュ! ブボボ!
「んああ!? ま、前のほうにまで、広がってきて、る!?」
イリアは今にもしゃがみ込んでしまいそうになった。
お尻が未消化物でパンパンに膨らむと、今度は脚のあいだを這ってきて、おまたの方にまで広がってきたのだ。
「あっっっ! あっっついのぉ……!! だめっ、前に、広がってこないで……っ」
ブボボボボ!
ニュルルルルルル!!
イリアの願いも虚しく、少女のふっくらとした美丘は、茶色いマグマで蹂躙され、焼き尽くされていく。
その破壊衝動に、少女の貧弱な秘筋が耐えられるはずがなかった。
プシュッ!
マグマに蹂躙された割れ目に、聖水が弾ける感触。
熱いマグマに覆われているというのに、おまたの部分がジンワリと、確かに生温かくなった。
「ああっ、うそ……っ、だめ、だよぉ……っ」
プシュ、
しゅいいいいいいいいい……。
ジンワリと生温かい感触は、おまたを広がっていき、タイツの外側にまで広がってくる。
未消化物に満ちあふれたショーツで濾過された聖水は、茶色く穢れていて濁っていた。
「ううっ、あったかいの……、滲み出してきてる……いやっ、止まって欲しいのにぃ……っ」
キュン!
どんなにおまたに力を籠めても、生温かいせせらぎは止まってはくれなかった。
こうしているあいだにも、イリアの黒タイツに覆われている内股は、黒よりもなお暗い黒へと染め上げられている。
(このままだと、靴も汚しちゃう……っ。ううっ、こうなったら……こうするしか……っ)
逡巡しているあいだにも、生温かいせせらぎは膝小僧をくすぐっている。
このままだと、ローファーまでもグショグショにしてしまうに違いなかった。
どんなに止めようとしても聖水は止まってはくれない。
少女の縦筋が未消化物に押し広げられているとき、尿道も一緒に広げられてしまうのだ。
「こ、こうするしか……はううっ!」
イリアはついにその場にしゃがみ込んでしまう。
その瞬間――。
プッシャアアアア!!
ニュルニュルニュルニュル!!
しゃがみ込んだイリアの前に、黒タイツと未消化物の層を突き破って、勢いよく聖水が噴き出される。
その飛距離たるや、1メートルはある。
秋の乾いた白砂に、恥辱の暗いラインが引かれ、そして色濃く広がっていく。
しゃがみ込んだ瞬間、膀胱が圧迫されたのだろう。
女の子の太くみじかい尿道からは為す術もなくおしっこが噴き出してきていた。
それに圧迫されているのは膀胱だけではない。
大腸も圧迫されて、その内圧が一気に高まっている。
ニュルルルルル!
ぼふっ、ぶぽぽ!
ショーツの中へと汚泥が噴出すると、柔らかくも甘美な感触にショーツがもっさりと重たくなった。
その甘い感触に、イリアの括約筋が耐えられるはずもなかった。
それに腸内の奥のほうにあるチョコレートは、まだ水分が残っているぶんだけ柔らかい。
それだけ易々と直腸をくぐり抜けてきてしまう。
「そこに、おトイレがあるのにぃ……っ」
すぐそこにトイレがあるというのに。
あと歩けることができれば数秒のところにトイレがあるというのに。
イリアは、トイレを目前にして大決壊してしまうこととなった。
ニュルルルル! ぼふっ!
ブボボボボ! ぼふふっ!
ぷっしゃあああああああああ!
マグマと空砲。
そこに生温かい聖水の愛撫が重ねられる。
ショーツの内側が自らの失敗で満たされていき、パンパンに膨らんでいく。
それを止める術は、漏らし始めてしまったイリアにはなかった。
ただ、身体の毒素を吐き出そうとする本能に従うしかないのだ。
「ス、スカートだけは……守らないと……っ」
お尻から垂れてくるおしっこは、イリアを中心として大きな湖になろうとしていた。
少女としての、最後の理性の一欠片がイリアにも残されていたのだろう。
イリアはスカートを捲り上げて、滲み出してくる聖水からスカートを死守する。
だが、それは自らの未消化物でモコモコに膨らんでいるお尻を晒すと言うことでもあった。
それは少女として……、いや、人として屈辱的な姿。
だが、ここでスカートを濡らしてしまえば、イリアの失敗を隠してくれるものは、なにもなくなってしまうのだ。
それはここから帰ることができなくなるということを意味している。
それだけはなんとしても避けなくてはならなかった。
「お腹痛い、お腹痛い、痛いよ……、早く、終わってぇ……ッ」
ゴポッ、ゴポポ……!
ニュルルルルルルル!
噴火口が開かれると、柔らかいものが溢れ出してきてショーツへと放たれる。
だが、それは今までの無様な失敗とはやや様子が違っていた。
イリアは、ついに自らの意思でお腹に力を入れ始めてしまっていたのだ。
「はううう~! 早く、終わって……んんう!」
この我慢が、そもそも無駄ではないのか?
そう思ってしまった瞬間、イリアの心はあっけなく折れていた。
それにもしもこんな痴態を誰かに見られてしまったら、それこそ恥ずかしすぎて外に出られなくなってしまうに違いなかった。
イリアが導き出した答え。
それは、自らお腹に力を入れて、早くすべてを放つ――。
「お願い、早く終わって……! ふっ、ふううう!」
ニュルルルルル!
ブリュ! ブリュリュ!
プッッッシャアアアアアア!!
乾いた白砂に、目を疑うほどに広大な湖が広がっていく。
イリアの小さな身体のどこにこんなにも大量のおしっこを溜め込んでいたのかと疑いたくなるほどだった。
それに大量なのは聖水だけではない。
ショーツをモリモリと膨らませている未消化物の量も、目を覆いたくなるような様相を呈していた。
ブリュリュ!
もりもりもり……ぶぽっ、ブポポ!
もしも黒タイツを穿いていなければ、女児ショーツの足口から大量のチョコレートフォンデュが溢れ出してきていたことだろう。
だがそれは失敗の重みのすべてを受け止めなくてはならないと言うことでもあった。
黒タイツに覆われたお尻は、もっさりと重たくなっていく。
「い、いやぁ……っ、ぱんつ、重たい、よおぉぉっ」
こうしてすべての重みを受け止めているからこそ分かる。
いつもはなにも考えずにトイレで出しているものが、こんなにも質量を持っていただなんて。
食べたご飯をミキサーにかけて、グチョグチョにしてショーツに詰め込めばこんな重さになるだろうか?
だが実際にはそこには更に腸の老廃物が混じり合って茶色く染まり、食べた量よりも多い排泄物がショーツの中へとぶちまけられることになる。
十日間の重みに、前のほうまでショーツがパンパンに膨らみきっていた。
「もう、パンパンだよ……ううっ」
小さな女児ショーツはパンパンに膨らみ、足口からは柔らかいフォンデュが溢れ出してきている。
だが黒タイツを穿いているから、地面に落ちず、その過ちはベッタリと内股に張りついてくることになった。
だけど、どんなに無様な失敗にも終わりはあるらしい。
ぶぽ、ぶぽぽ……もわ……っ。
プシュッ!
ブルルッ!
イリアは大きく身震いをする。
いくつかの空砲が放たれ、聖水の最後の一滴が噴き出し……、イリアの大決壊は終わりを告げた。
この大決壊は、イリアの心に一生ものの傷となって刻まれることだろう。
だが、その失敗こそが少女を大人へと成長させる。
……とはいえ、今のイリアにこの現実を受け止めきれるはずもなく……。
「ぐす……っ。もう、出ない……。全部、出ちゃったよぉ……っ。ううっ、ぐすっ」
このまま、座り込んで泣き続けられたら、どんなに楽だろうか?
そんなことさえも、今のイリアには許されていないのだ。
こんなにも醜悪な香りを漂わせ、羞恥の湖に沈んでいるところを誰かに見られるわけにはいかなかった。
(おトイレに行く……?)
目の前にあるトイレに入ろうかと思うが、ここまで漏らしてしまったらどうすることもできないに違いなかった。
あのトイレは汲み取り式だし、水道さえもない。
しかもトイレットペーパーもないから、漏らしてしまったうんちを拭くことさえもできなかった。
一応イリアはポケットティッシュを持ってきてはいるけど、パンパンに膨らんだショーツの中身を拭き取るにしては焼け石に水だろう。
(家に帰ったほうが、いいよね……)
こうなったら誰にも会わずに祈りながら、家に帰るしかなかった。
大丈夫。
昨日だって家に帰ることができたのだ。
きっと今日も上手くいってくれる……はずだ。
「どうか誰にも会いませんように……」
よろめきながら立ちあがると、パンパンに膨らんでいるショーツは思っていたよりも重たくなっていた。
この小説は電子書籍としてフルカラーのイラストとともに配信している作品です。
気になった人は購入してもらえると創作活動の励みになります。