WsdHarumaki 2023/04/03 21:41

洞窟:女シーフ【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(26/50)

第六章 黒の洞窟
第一話 女シーフ

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼まれていた。それとは別に、ギルドの案内人のマリアからシーフの娘の様子を見てくれと頼まれる。

 ラミラは母親が嫌いだ。魔女として適正も高いマリアは娘のために仕事を辞めた。周囲の大人から何度も聞かされた。彼女は逸材だ、子供が生まれなければ出世できた。
 
「私のせいでママがお仕事できないの? 」
「そんな事はないわ、速く寝なさい」

 いつもいつもママはかわいそうと聞かされる、いい加減にうんざりしていた。私は魔法を使えないのが判ると、余計に風当たりが強くなる、才能の無い娘を産んだ。ママにまで批判が集まるようになる。
 
「ごめんなさい、ママ、私が魔法を使えなくて……」
「気にしないで、私はあなたが居るだけで幸せよ」

私には判る、ママはもっともっと才能を伸ばせた、私が冒険者になりたいと言うと反対する。危険だ、外の世界には想像も出来ないモンスターが居る、あなたは幸せな結婚をしなさい。才能が無い娘が高望みをしている、私にはそんな風に聞こえる。

「独り立ちできる、もうかまわないで! 」

 母のマリアの悲しい顔を見ると罪悪感と解放感で逃げるように家を出た。普通の人達のギルドに入ると私はシーフとして訓練を受ける。シーフは洞窟内のお宝を見つけるために、罠の解除や道案内するので仕事には困らない、ただし死亡率も高い。洞窟内で迷えばパーティは全滅する危険すらある。新米は深い洞窟には入らない。浅い洞窟を見つけて練習する。

 その洞窟は昔からある不思議な洞窟だ、【黒の洞窟】は漆黒の洞窟で光を通さない。洞窟なので暗闇は当然だが、松明を使っても照らせない。自分の周囲だけ少し見える、ランタンや遠くを照らせるレンズを使う器具もあるが、光が吸い込まれた。
 
「黒の洞窟は無理だな、見えないし探索できない」
 先輩のシーフに聞いても入った事が無いので判らない、モンスターの気配は無いが探索できない。お宝があるとは思えない。そんな否定的な意見ばかりで、もっと確実に稼げる洞窟の地理を習熟した方が良いと判断していた。
 
「まぁ当然かな、お宝があるか無いか判らない洞窟を調べても……違う、私が探索しないと」
 実績も無いシーフだ、すぐには他の仲間から雇って貰えない。ここで実力を見せれば証明にもなる。私は練習のために【黒の洞窟】に挑戦してみる。
 
「松明を壁に固定して進めばいいわ」
 洞窟内の壁に松明を固定できる器具を取り付ける、松明を用意して火をつける。この調子でしばらく進んでまた松明を固定した、後ろを振り向くと灯りが見えない。
 
「消えた? 」
 戻ってみると明るく見える、後ろを振り向くとさっきの松明の火が見えない。私は混乱しながら試行錯誤する、黒の洞窟では光をいくら増やしても光量が増加しない、全て何かに吸収されていた。

「負けないわ」
 そうやって数週間は経過したが、資金が枯渇していた。

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