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WsdHarumaki 2023/05/19 22:03

魔女の過去:呪われた姫【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(45/50)

第九章 魔女の過去
第五話 呪われた姫

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊した。百年前のレオノーアは、宝石への執着を捨てきれずに、母親から別館への旅を言いつけられた。母親から来た手紙を婚約者と面会の要求だった。しかし婚約者を殺してしまう。

「この扉の向こうね! 」
 私はエドに手伝ってもらいながら、宝物がある部屋に入る。今の私は、鍵を焼き切るのは造作もない。断片的な知識から、宝石を無限に生み出せる指輪なのは判る。無限に魔法が使えるなら私は無敵だ。

 宝物がある部屋は雑然と箱が並べてある、中央にテーブルがあり小さな箱が置いてある。周囲には結界なのか進入不可魔法が使われていた。私はそれも焼き切ると、小さな箱を手に取る。

「これよきっと、さぁ逃げましょうエド! 」
 ふりむくとエドは美しいクリスタルに変化していた、クリスタルで人間を掘ったような美しい立像。何が起きているのか判らない……

「―――ごめんなさい、それは呪いの指輪なの」
 私は後ろから声がするので振り向く、そこに居るのは『漆黒に輝く髪を持つ少女』だった。

「私はセレーナ、黒の魔女。呪いが発動することで私とあなたは入れ替わるの、ごめんなさい……」

 私は目眩に似たゆらぐような気持ちの悪さを感じると床に座り込む。何が起きたのか私には判らない、顔を上げると金髪の少女が立っていた。

「―――誰?」
 その娘は私だ、私は自分の髪を見る、闇色の髪は私の本来の色ではない。呪いと言ったの? 私は呪われた?

「入れ替えは終わり、私は封印の旅に出ます、呪いは広げてはダメ……」
 私の体のセレーナの体が薄れると同時に私は巨大なクリスタルの部屋に飛ばされた。黒の魔女はここで暮らしていたのか、様々な書物がある。私は呪われた洞窟に閉じ込められていた。初めは王宮から助けが来ると信じていたが誰も探しに来ない。ここがどこかも判らない。

 私は長い時間を使い、宝石の威力を上げる指輪を作る。封印を解いて黒の魔女を倒せば、呪いが消えて戻れるかもしれない。たまに洞窟を攻略する冒険者は、私の話を聞く前に呪われて宝石に変化した、増える宝石を使いながら私は待つ。

 ミナリアが来た時は期待していなかった、予想外だったのは素直な彼女は封印を次々に解いた事、最後に残った白い洞窟も封印が薄まり見つける事ができた。

「これで、私は戻れる? 」
 だが魔女を倒しても何も変化が無い。私は自分の失敗を悟る。ミナリアが持っている指輪が砕けた事で、ミナリアの状態を調べられない。そして気がつく、呪いの力が強まっていた、洞窟の外側のモンスター達も宝石に変化させていた、森も獣も全てが結晶になる。

「―――これが呪い……」
 拡大する呪いはいつか世界を全てクリスタルにする。私は絶望と希望を持つ。ミナリアがなんとかしてくれるかもしれない、なんとかして欲しい……

 そして思い出す。エドは、まだあの呪いの指輪があった王宮の宝物の部屋で、クリスタルのままなのかしら……?

WsdHarumaki 2023/05/18 23:41

魔女の過去:望まない婚約【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(44/50)

第九章 魔女の過去
第四話 望まない婚約

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊した。百年前のレオノーアは、宝石への執着を捨てきれずに、母親から別館への旅を言いつけられた。母親から来た手紙は婚約者と面会の要求だった。

 面会の日に、私は王の庭園のあずまやで婚約者と親好を深める事になる。私はどんな人物でも驚かないと覚悟する。知り合いの貴族のイメージを予想していた。

「お前がレオノーアか? 」
 体は大きいが背は低い、横に体を伸ばしたように見える。まるで蟹だ、大貴族の彼は三十半ばには見えない。不摂生と怠惰な生活で体は崩れていた。

「若い体がたまらんな!、まだ若すぎるが数年で食べ頃だ」
 下卑た笑いで私の体をなめるように見る。私は彼から離れて体を硬直させていた。執事の息子のエドアルドの隣に逃げる。貴族でも品性が無い。私は最悪の婚約者に嫁ぐ事になる。

「申し訳ありません、婚約に関しては母と相談します」
「わが家柄を侮辱する気か! 」
 私は冷静に伝えたつもりでも、彼の逆鱗に触れたのかもしれない。私の腕を取ろうと手を伸ばす、エドがその手を叩く。

 婚約者の大貴族は一瞬だけ呆けた顔をしたが、サーベルを抜くとエドに突きつけた、私は無意識でエドを守ろうとしていた、カットした宝石はとてつもない力を持つ。魔法が暴発した。

 気がつくと、床に黒い染みが残るだけで婚約者は跡形も無かった。魔力の凄まじさを体感すると私は成功した喜びと、貴族を殺した罪に恐怖する。

「エド、逃げましょう」
 私は彼の手を取ると、すぐにその場から離れた。私は王宮の指輪を手に入れることにした。指輪があればお金にもなる、指輪の秘密を利用する事で知恵も得られる。追っ手が来るまでは時間がかかる、死体さえ無い、まずは行方不明として扱う筈だ。

 私は、宝物の指輪の場所は把握をしていた。鍵がある以外は普通の部屋だ。誰も居ない廊下を静かに歩く。

WsdHarumaki 2023/05/17 22:29

魔女の過去:初恋【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(43/50)

第九章 魔女の過去
第三話 初恋

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊した。百年前のレオノーアは、宝石への執着を捨てきれずに、母親から別館への旅を言いつけられた。母親から来た手紙を執事のエドアルドに読んで貰う。

「大丈夫ですか? 」
「―――なんでもないわ」
 エドアルドは心配そうに私を見た、顔色が悪いのかもしれない。手紙には城へ戻ってくるようにと書かれていた、婚約が決まった。私は見知らぬ大貴族と結ばれる。覚悟はしていた、姫として誰かの家に嫁ぐのは当然の義務だ。

 椅子から立ち上がろうとして、体が傾く。エドが私を支える。好き放題に出来ると誤解していた、エドの手を握りながらその温かさに安らぐ。今まで異性として男性を見ていなかった、使用人は使用人でしかない。それは男ではない。

「お茶を用意させます、椅子でお休み下さい」
 長椅子(シェーズロング)に座らせてもらうと私は横になる。何故か吐き気がする。自分では平気だと思っていた事が神経に|障《さわ》る。私はその日から数日は寝込む。

xxx

「馬車が来ました、私も同行するように父から言われています」
 エドアルドが、私を介抱しながら馬車に乗せる、|憂鬱《ゆうつ》に馬車の窓から外を眺めながら私はエドの顔を横目で見る。端正な顔立ちの彼は落ち込んでいるように見えた。

「何か心配事でもあるの? 」
 質問する気は無かったのに声に出していた。私は彼を心配している自分に気がつく。

「姫様の事が心配なだけです、お体が悪いのに馬車で移動ですから……」
「私の事が嫌いじゃなかったの? 」

 私はいつのまにか彼と親しげに話す、次から次に質問するとエドは、私が彼を嫌っていると勘違いをしていた、私が避けていると感じていた。同い年くらいの年齢だ、使用人と仲良くするわけにはいかない。そう考えると彼も私を遠ざけていただけだった。

 そうと判ると二人でクスクスと笑う。この馬車の旅が最後の楽しかった思い出かもしれない。

xxx

「お母様、戻りました」
「体調が悪いと聞きました、ごめんなさいね」
 婚約者からの希望で私は明日にも、夫になる貴族と面会する事になる。私はエドの部屋を用意させて、明日に備える事にした。

「―――エド、明日も一緒に来て」
「……はい」
 
 私はベッドで眠りながら、自分の研究の事を考える。画期的な魔力アップの仕組みを作れるかもしれない。私は婚約する前に、一つの野望を持っていた。
「王宮にある秘密の部屋を見たい、貴重な宝物がある筈……」

WsdHarumaki 2023/05/16 21:18

魔女の過去:出会い【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(42/50)

第九章 魔女の過去
第二話 出会い

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊する。百年前のレオノーアは、宝石への執着を捨てきれずに、母親から別館への旅を言いつけられた。

「レオノーア様、到着です」
 眠っていたのか私は馬車の扉が開くまで気がつかない。御者に起こされる。王宮からの旅は半日も必要が無かった、平城は周囲に高い城壁すらない。危険なモンスターも居ないのか平和な感じだ。

「私が管理をまかされています、執事のブラークです」
 出迎えた男は頭の毛が薄い、五十代だろうか? 見た目は出来る男に感じた。テキパキと荷物を部屋に入れるとメイドが私にお茶を出してくれた。ゆったりとお茶を飲みながら考える。事前に周辺の地形を調べさせていた。古い鉱山があるが今は廃坑で、住民も少ない。廃坑にはモンスターが入り込んでいるため住民は入る事はない。

「あとで散歩に行くわ、従者を用意して」
 馬で廃坑まで探検する予定。執事のブラークが私に近寄ると一枚の手紙を机の上に置く。お母様からの手紙だ。

 内容は、教師からレッスンを受けることなどが箇条書きに書かれていた。私は内容を確認すると、了解したと執事のブラークに告げる。少し驚いたような顔をすると彼は頭を下げて部屋を出る。

 別に私は逆らうつもりはない、逆らえばもっと厳しい監視体制になる。それくらいなら適当に時間を潰して、午後に研究すれば良い。演奏や詩を作るのが下手な貴族は一杯いる、姫が出来なくても実害はない。上達しない事を見せれば、教師も納得する。

 そんな毎日を過ごしながら午前はレッスン、午後は散歩と偽って宝石集めをした。私は潤沢な資金を利用しながら、冒険者を雇うと洞窟を探検する。夜になると私は宝石をカットして威力を増す実験を繰り返す。小さな宝石でもカットすると何十倍の威力になる。

「——お手紙です」
「ありがとう……」
 執事のブラークの息子がお盆に蝋で封印された手紙を持ってくる、名前はエドアルド、ぶっきらぼうな彼は無関心そうに手紙を渡す。いきなり王の姫が来て戸惑っているようだ。黒い巻き毛の彼は、私のような子供には興味が無いように見えた。そんな彼に私は用事を言いつける。

「ねぇエド、手紙を読んで頂戴」
 面倒くさいから、読んで貰う事もよくある。エドは封印の蝋を剥がすと手紙をすらすらと読む。長い前振りは読み飛ばしてもらう。

「あなたの婚約が決まりました……」
 私は体が少しだけ震えた。

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