WsdHarumaki 2023/05/17 22:29

魔女の過去:初恋【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(43/50)

第九章 魔女の過去
第三話 初恋

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊した。百年前のレオノーアは、宝石への執着を捨てきれずに、母親から別館への旅を言いつけられた。母親から来た手紙を執事のエドアルドに読んで貰う。

「大丈夫ですか? 」
「―――なんでもないわ」
 エドアルドは心配そうに私を見た、顔色が悪いのかもしれない。手紙には城へ戻ってくるようにと書かれていた、婚約が決まった。私は見知らぬ大貴族と結ばれる。覚悟はしていた、姫として誰かの家に嫁ぐのは当然の義務だ。

 椅子から立ち上がろうとして、体が傾く。エドが私を支える。好き放題に出来ると誤解していた、エドの手を握りながらその温かさに安らぐ。今まで異性として男性を見ていなかった、使用人は使用人でしかない。それは男ではない。

「お茶を用意させます、椅子でお休み下さい」
 長椅子(シェーズロング)に座らせてもらうと私は横になる。何故か吐き気がする。自分では平気だと思っていた事が神経に|障《さわ》る。私はその日から数日は寝込む。

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「馬車が来ました、私も同行するように父から言われています」
 エドアルドが、私を介抱しながら馬車に乗せる、|憂鬱《ゆうつ》に馬車の窓から外を眺めながら私はエドの顔を横目で見る。端正な顔立ちの彼は落ち込んでいるように見えた。

「何か心配事でもあるの? 」
 質問する気は無かったのに声に出していた。私は彼を心配している自分に気がつく。

「姫様の事が心配なだけです、お体が悪いのに馬車で移動ですから……」
「私の事が嫌いじゃなかったの? 」

 私はいつのまにか彼と親しげに話す、次から次に質問するとエドは、私が彼を嫌っていると勘違いをしていた、私が避けていると感じていた。同い年くらいの年齢だ、使用人と仲良くするわけにはいかない。そう考えると彼も私を遠ざけていただけだった。

 そうと判ると二人でクスクスと笑う。この馬車の旅が最後の楽しかった思い出かもしれない。

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「お母様、戻りました」
「体調が悪いと聞きました、ごめんなさいね」
 婚約者からの希望で私は明日にも、夫になる貴族と面会する事になる。私はエドの部屋を用意させて、明日に備える事にした。

「―――エド、明日も一緒に来て」
「……はい」
 
 私はベッドで眠りながら、自分の研究の事を考える。画期的な魔力アップの仕組みを作れるかもしれない。私は婚約する前に、一つの野望を持っていた。
「王宮にある秘密の部屋を見たい、貴重な宝物がある筈……」

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