WsdHarumaki 2023/05/18 23:41

魔女の過去:望まない婚約【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(44/50)

第九章 魔女の過去
第四話 望まない婚約

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む、最後の白の洞窟で出会った封印は女性だった、彼女はミナリアの母親のセレーナ。レオノーアに操られたミナリアが封印の宝石を破壊した。百年前のレオノーアは、宝石への執着を捨てきれずに、母親から別館への旅を言いつけられた。母親から来た手紙は婚約者と面会の要求だった。

 面会の日に、私は王の庭園のあずまやで婚約者と親好を深める事になる。私はどんな人物でも驚かないと覚悟する。知り合いの貴族のイメージを予想していた。

「お前がレオノーアか? 」
 体は大きいが背は低い、横に体を伸ばしたように見える。まるで蟹だ、大貴族の彼は三十半ばには見えない。不摂生と怠惰な生活で体は崩れていた。

「若い体がたまらんな!、まだ若すぎるが数年で食べ頃だ」
 下卑た笑いで私の体をなめるように見る。私は彼から離れて体を硬直させていた。執事の息子のエドアルドの隣に逃げる。貴族でも品性が無い。私は最悪の婚約者に嫁ぐ事になる。

「申し訳ありません、婚約に関しては母と相談します」
「わが家柄を侮辱する気か! 」
 私は冷静に伝えたつもりでも、彼の逆鱗に触れたのかもしれない。私の腕を取ろうと手を伸ばす、エドがその手を叩く。

 婚約者の大貴族は一瞬だけ呆けた顔をしたが、サーベルを抜くとエドに突きつけた、私は無意識でエドを守ろうとしていた、カットした宝石はとてつもない力を持つ。魔法が暴発した。

 気がつくと、床に黒い染みが残るだけで婚約者は跡形も無かった。魔力の凄まじさを体感すると私は成功した喜びと、貴族を殺した罪に恐怖する。

「エド、逃げましょう」
 私は彼の手を取ると、すぐにその場から離れた。私は王宮の指輪を手に入れることにした。指輪があればお金にもなる、指輪の秘密を利用する事で知恵も得られる。追っ手が来るまでは時間がかかる、死体さえ無い、まずは行方不明として扱う筈だ。

 私は、宝物の指輪の場所は把握をしていた。鍵がある以外は普通の部屋だ。誰も居ない廊下を静かに歩く。

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