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2023年 07月の記事 (6)

百花繚乱祭(完)

明るくて元気な女子高生たちが大好きなお祭りを心ゆくまで楽しんで、みんなで一緒にズタボロになる、爽やか青春リョナ物語。

 ――七草あざみと百合川紗奈の戦いにも決着が着き、百花繚乱祭は閉会式を迎えるが、その前に、過激なお祭りを楽しんだ彼女たちに対して、実行委からペナルティが贈られる。焼け爛れた足裏を晒す彼女たちに、実行委の少女たちが鞭を振り下ろす。

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小説記事を修正しました

 以下の小説記事の末尾がブツ切りになって終わっていたため、修正を行いました。気付くのが遅くなりまして、支援者の方には申し訳ありません。

百花繚乱祭(1)

百花繚乱祭(4)

足裏モデル募集します! お試しコースから上級コースまで。ハードなチャレンジには謝礼を弾みます

 原因としましては、Ci-enの裏仕様として文字数制限があるようで(どこにも書かれていませんが……)約22000字前後で記事がブツ切りにされてしまうようです。「文字数が多すぎます」などの警告が出ることもなく、勝手にブツ切りされて消されます。まさかそんな仕様とは思わず、気付くのが遅れました。(同様の状況の方が他にもいました)

 私はまだpixivから小説を移設してるだけなのでサルベージできて良かったのですが、もし、Ci-enで直接小説を書いていたなら数千文字がフッ飛んでいたわけで、本当にひどい仕様だと思います。今後、もしもなにか怪しい箇所がありましたら(小説が突然途中で終わってるなど)お気軽にコメントなど頂けますと幸いです。

(追記)

この件に関し、公式より返信が来ました。仕様とのことです。

Ci-enにて投稿が行える文字数の上限は、
プランに関係なく、記事全体として下記の通りとなっております。

英字 約 65,535 文字
日本語 約 21,845 文字

お手数ですが、記事内容が約 21,845 文字を超えないような
記事の構成をしていただけますと幸いです。

なお、この度頂戴いたしましたご意見につきましては、
担当部署に伝え、今後の検討事項の一つとさせていただきます。

 長めの記事を投稿する前に、2万字を超えていないか、文字数カウントツールでチェックする必要が生まれるので、すごく面倒くさいです……。

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百花繚乱祭(5)

明るくて元気な女子高生たちが大好きなお祭りを心ゆくまで楽しんで、みんなで一緒にズタボロになる、爽やか青春リョナ物語。

 ――藍花鈴の足の裏を使った凄惨な人体実験を終えた生徒会長の百合川紗奈は、いよいよ転校生七草あざみとの最終決戦に乗り出す。彼女はあざみを巧みに灼熱のプレハブ小屋へと誘いだした。素足の七草あざみは焼けた鉄板に足裏を焦がされながら、生徒会長との最後の戦いに臨む。


5、百合川紗奈


一、

 保健室に担ぎ込まれた翌日に、藍花鈴は退院した。主治医の結月は一週間ほどの入院を勧めていたのだが、百合川紗奈が鈴に退院するよう命じ、彼女は絶叫を上げながらも、何とか「退院……しま、す……」と声を振り絞り、その命令を全うした。

 結月は少し悲しそうな顔をしたが、それは滅茶苦茶に身をよじって足裏の痛みに苦しみ続ける鈴の姿を、彼女が特等席で眺められなくなるからだった。実際、保健室のベッドに拘束されて苦しむか、自室のベッドの上で苦しむかの違いでしかない。鈴にはいかなる鎮痛剤も与えられないし、最も苦しみの大きい治療法が選択されているのだから。

「鈴……、わたくしは学校に行かねばなりません。けれど、お昼休みには様子を見に帰ってきますし、放課後からはずうっと一緒にいますからね。だから、わたくしのいない間、寂しいでしょうけれど、良い子して、一人で耐えるのですよ……」
「……は、い。……――お、じょ……さ……」

 泣き喚き続け枯れ果てた声で鈴が何とか返事を返す。そんな痛ましい姿を見ていると、紗奈は鈴のことが愛おしくてたまらない。実行委から下されるであろう凄まじいペナルティを覚悟してでも、学校をズル休みして鈴と一緒に一日中いてあげたい……と思う気持ちも湧いてくるが、いま実行委のペナルティを受けたら、おそらく七草あざみとの戦いには勝てなくなってしまう。それは藍花鈴だって望んでいないだろうから、彼女はグッと我慢して登校した。

紗奈はその言葉通り、昼休みには彼女を見舞い、放課後になると直ちに鈴の部屋に戻って、鈴に付きっきりとなった。鈴は白いネグリジェを着せられている。お揃いのネグリジェに紗奈も着替えた。ベッドの上の鈴は足の裏の激痛のあまりに一日中身をよじって苦しんでいたのだろう。ベッドシーツはしわくちゃになっていたし、鈴の流した涙と汗でべちょべちょだった。もちろん彼女のネグリジェもべっとりと濡れている。それに鈴は小便はもちろん大便までも漏らしていた。当然、彼女にはオムツがあてがわれていたが。

「鈴、オムツを替えますから、少しだけ我慢なさい」

紗奈にそう言われ、鈴は歯を食いしばって硬直し、足の裏を襲う耐え難い疼痛にぶるぶると震える。紗奈は、そんな鈴の健気な姿にニコニコとしながらも黙々と汚物を処理する。それから、鈴のネグリジェを脱がし、体を拭いて、新しいネグリジェを着させてあげ、シーツも新しいものに替えた。それから、ようやっと、というように、鈴と同じベッドに潜った。

「――おじょ、さま……。……おじょ、う、さ、ま……! おじょう、さ……!」

 たちまちに鈴がぎゅうっと紗奈に抱きついた。

「おじょ、う、さま……もう、どこ……にも……いかないで……いか……ないで……」

 紗奈も優しく鈴を抱きしめる。

「朝までは、ずうっと一緒ですよ。鈴」

 鈴が嬉しそうに、コクンと可愛く頷いた。自分をこんな目に遭わせた大好きな紗奈の胸の中で痛みに耐えることが、彼女は嬉しくてたまらないのだった。紗奈が裸の足を、鈴の、包帯で覆われた痛々しい足へと絡める。鈴が「ひぎィッ!」と愛らしい呻き声を上げる。紗奈の体温を感じられること、紗奈の素肌に触れていられることが鈴はとっても嬉しかった……。

そして、翌日には藍花鈴は早くも登校を再開した。

「夕顔さんは四日後にはもう登校していたと言います。鈴……、先輩のあなたが負けるわけにはいきませんよね? 明日から登校なさい」
「…………は、い」

 鈴は健気にそう答えたが、これは、誰の目から見ても無謀だった。それでも紗奈がそう命じたのは、彼女は日中、鈴と一緒にいれないことが寂しかったからだ。鈴が素直にはいと答えたのも、彼女も少しでも紗奈の近くにいたかったためである。

 セーラー服を着せられた鈴だが、その苦しみようは昨日までと大差ない。そんな状況だから、松葉杖と紗奈の助けがあったとはいえ、ぐちゃぐちゃに焼け爛れた足の裏で校舎まで歩き、たどり着いただけで、もはや彼女は死に体といっていい程に衰弱していた。紗奈は鈴を教室の椅子に縛り付ける。

「鈴、授業中に喚いたりすると、わたくしもあなたも授業妨害ということで、実行委から酷いペナルティを受けることになります。授業中はじっと黙って、痛みに耐えるのですよ」
「おじょ……さ……ま……」

 死にそうな声で鈴が言う。

「なあに?」
「さる……ぐつ、わ……を……いただ……け……」
「あら、ごめんなさい。気付きませんでしたわ」

 紗奈はにこにこと笑いながら、自身の黒いニーソックスを脱いで素足を晒した。そして、その二つの黒いそれを、鈴の口へと無造作に詰め込んだ。

「当面こんなものしかないのですけど、よろしいかしら?」

 鈴も嬉しそうに頷いた。お昼休みには猿轡を吐き出させ、たっぷり悲鳴を上げさせてあげてから、唾液でぐちょぐちょとなったニーソックスを、もう一度鈴の口の中に押し込んであげた。

こうして、17歳の少女はクラスメイトの見守る中、椅子に座らされて激痛に打ち震え、喉元から出かかる悲鳴を歯を食いしばって必死に飲み込み、口の中では汚れたニーソックスの味をじっくりと確かめて、小便を漏らし、時には大便までも漏らしたのである。

 休憩時間には下級生たち、特に藍花鈴のファンの少女たちが、憧れの先輩の惨状を見るために教室を訪れ、彼女の凄惨極まる姿を目にして思わず目を伏せていく。百合川紗奈に命じられたからって、あんな姿になるのは自分ではとても耐えられない。誰もがそう思ったことだろう。しかも、噂に聞くところでは、百合川紗奈は藍花鈴をこれから四十回以上もあんな目に遭わせる気でいるという。とても正気とは思えないが、それを鈴の方も受けるつもりでいるらしい。少女たちは、藍花鈴の、百合川紗奈に対する絶大なる忠誠心をそこに感じて、鈴への憧れを強めるのであった。学園で最も健気で儚い女子生徒の姿がそこにあった。

「鈴、わたくし、楽しみで仕方ないのです……」

 夜。同じネグリジェに着替えた二人の少女が、強く抱きしめ合うベッドの中で、紗奈が言った。

「あなたの連日の苦しみようは、わたくしの想像を遥かに超えて酷いものでした。今の鈴の姿を見ていると、憐れで仕方ありません。……でも、わたくしは、鈴の火傷が治り次第、鈴を何度でもプレハブ小屋に放り込みたいと思っています。卒業までに、できるだけたくさん……最低でも四十回以上……。あなたはずうっとこの苦しみを味わい続け、連日、激痛にのたうち回るのです。それを思うと、わたくしは楽しみで仕方ないのです。鈴……わたくしのために、ぐちゃぐちゃにおなりなさい……」

 はい、お嬢様、鈴は喜んで――、藍花鈴はそう言いたげに大きく頷いた。少女は、紗奈の胸の中で、うっとりとした表情で痛みに震え続けている。

「鈴、このお祭りが終わったら一緒に実行委に入りましょうね。そこで、正式な契約書を交わしましょう。あなたを可能な限りたくさん、プレハブ小屋に放り込むという契約書です」

 その契約書にサインする自分の姿を思い浮かべると、鈴の心は絶大な恐怖と喜びに満たされる。いま自分を襲っている、死んだ方が遥かにマシというレベルの足裏の痛みを、この先一年半に渡って、大好きな百合川紗奈が何度も何度もプレゼントしてくれるのだ。そうして、自分はずっと紗奈の胸の中に抱かれて、痛みに打ち震えて泣き喚くことができる……。

「ですが……まずは、お祭りに優勝しなければなりません……」

 夕顔花菜と藍花鈴、二人の憐れな少女を巻き込んだ、七草あざみと百合川紗奈の最後のお祭りが、翌日から繰り広げられることとなる。

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百花繚乱祭(4)

<あらすじ>

明るくて元気な女子高生たちが大好きなお祭りを心ゆくまで楽しんで、みんなで一緒にズタボロになる、爽やか青春リョナ物語。

 ーー鉄板敷のプレハブ小屋に夕顔花菜を閉じ込め、下から火を熾して彼女の足裏を大火傷させお祭りに勝利した七草あざみ。その作戦を高く評価した生徒会長、百合川紗奈は副会長であり親友である藍花鈴にプレハブ小屋での人体実験を要請する。鈴はこれを喜んで受け入れ、裸足でプレハブ小屋に入ると答えたが、命じた紗奈には僅かな葛藤があり……。


4、藍花鈴


一、

 翌日、日曜の早朝、藍花鈴は百合川紗奈の部屋を辞した。まだ幾分、全身を襲う不快感は残っていたが、深い眠りのおかげか、ほとんど気にしないで済む程度にそれは軽減されていた。部屋を出る時に、紗奈が言った。

「鈴、今日の夜、わたくしから鈴のお部屋に行きますね。明日のお祭りの件、今日一日かけてゆっくりと考えて、夜にお返事を聞かせて下さい。どういうお返事でも構いませんから、しっかり考えてから答えを出すのですよ」
「はい、紗奈お嬢様」

 鈴は微笑んで答えた。鈴は紗奈に言われたとおり、今日一日、明日のことをしっかりと考えて過ごすつもりであったが、それでも答えはもう決まっていた。そして、今日の一日は鈴にとって、思いがけず楽しく幸せな一日となったのである。

 彼女は食堂で軽い朝食を摂った後、自室に帰って、ネグリジェ姿のままベッドに座り明日のお祭りに思いを馳せた。ベッドの上であぐらをかいて、自分の足の裏をまじまじと見つめてみる。小さくて可愛い、白い足の裏がそこにあった。傷一つ付いていない。過去にはぼろぼろになったこともあった。中学二年生の時、紗奈と一緒に空手の修行を受けに行った時、指導教官から入門の試練として、砂利道を裸足で10km走ることを命じられたのだ。二人の少女は足裏の皮をべろべろに剥がされ涙をぼろぼろ流しながらも、その試練をクリアーした。だが、その時のことはもう大昔の話で、今目の前にあるのは柔らかくて傷一つない鈴の足の裏だった。

「この足の裏とも……明日でお別れ……」

 鈴は一人で呟いた。明日、自分は紗奈の「お願い」を聞き入れて、焼けた鉄板の上で裸足で踊ることになるのだ。白い足裏は醜く焼け爛れ、火傷の痛みに一ヶ月は悶え苦しみ、ぐちゃぐちゃの傷痕を一生後に残すことになるだろう。紗奈の「お願い」は鈴にとって死刑だった。彼女はまさに翌日に死刑を迎える死刑囚の如き心情でいたし、鈴の心はそれゆえに激しく高鳴っていた。

 この日の鈴の心の中に沸き返っていた感情は、もちろん第一には恐怖である。明日、紗奈の「お願い」で自分の足の裏はムチャクチャにされてしまうのだ。当然、怖くて仕方なかった。恐怖のあまり今にも吐きそうだった。目の前に用意された地獄から逃げ出したかった。助かりたかった。紗奈に「やっぱりできません」と言いたかった。

 白い足の裏を見つめながら、鈴は明日の自分の姿を頭の中に描いてみる。お祭りが始まり、紗奈と向かい合って戦う自分。しばらくは足の痛みに耐えて健気に戦う自分。足裏が焼け爛れ、耐え切れなくなって、鉄板の上で醜く踊り狂う自分。そんな自分を解放しようとせず、延々と踊り続ける自分を観察し続ける紗奈。足裏がぐちゃぐちゃに爛れ、悲鳴を上げて滅茶苦茶に苦しんでも、決して解放されずに苦しみ続ける自分。保健室に運ばれ、ベッドに拘束された姿で、激痛のあまり絶叫を上げ続ける自分……。傷が治ってもこの白い足の裏は永久に失われてしまう……。

 鈴は、七草あざみとのお祭り直後の、夕顔花菜の病室を訪れた際のことを思い出していた。お祭りが大好きで、お祭りのためならどんな犠牲を払うことも厭わず、大小様々な怪我を負いながらも、いつも明るく楽しそうにお祭りをしていた花菜が、ベッドの上で死にそうな顔をして悪夢にうなされ悲鳴を漏らし続けていた。あの惨めで憐れで痛ましい姿を思い出して、明日は自分がああなるのだと思うと、鈴の鼓動はどんどんと速くなっていく。自分が受けることになるであろう激痛を想像し、実際はそれ以上の苦しみが自分を襲うのだと覚悟する。自分の足裏がぐちゃぐちゃに変貌して醜いケロイドに覆われる姿を想像してみる。すると、鈴はどうしても微笑んでしまう。やっぱり、彼女は嬉しくて仕方がなかったのだ。

 今回の紗奈の「お願い」は、鈴にとっては本当に素敵なものだった。まずもって、「人体実験」の意味が分からない。自分を倒した後は、紗奈の相手は七草あざみだけになるわけだが、あざみにしても、まさかプレハブ小屋で裸足で戦うわけがないだろう。だから、藍花鈴の体で人体実験をしても、それが紗奈の勝利に繋がる気がしない。藍花鈴が今から支払おうとしている犠牲は、まったくもって無駄な犠牲なのではないか?

 けれど、それが鈴には心地良かったのである。彼女の望みは自分の忠誠心を紗奈に伝えることだった。もしも、紗奈に七草あざみに対する必勝法があり、そのために誰かが足の裏をぐちゃぐちゃに焼け爛れさせなければならない、といった状況ならどうだろうか。いかんせん同級生や後輩からも慕われている紗奈のことである。自分が犠牲になりますと手を挙げる女子生徒が数人は現れるだろう。

 だが、今回、鈴は理由も必然性もよく分からない人体実験のために犠牲となるのだ。紗奈にそれをお願いされたから、彼女は喜んで引き受けたのだ。そんなことができるのは、この学園でも自分一人しかいないと鈴は思っている。もっと言えば、「暇だから」とかそんな理由で同じ犠牲を要求してくれればもっと嬉しかった。もしそんなことを言われれば、大好きな紗奈お嬢様の一時の暇潰しのために、地獄を味わい一生後に残る傷を負えることを鈴は随喜の涙を流して喜んだことだろう。

 宿題をしてみたり、窓辺で本を読んだりもしてみるが、明日のお祭りのことばかりが頭に溢れてまったく集中できない。明日の自分は激痛の中で泣き叫び、足の裏は醜く焼け爛れるのだと思うと、ドキドキしてたまらない気持ちになってしまう。沸き返る恐怖で胸がズキズキと痛むが、それも嬉しくて仕方ない。今の恐怖も明日の苦痛も取り返しのつかない大火傷も、全て大好きな紗奈から与えてもらえるのだ。紗奈もきっと自分の痛ましい姿を喜んでくれるに違いない。

 鈴は本を閉じ、ベッドに横たわり、再び明日の自分の姿を想像する。激痛に苦しむ自分の姿は既に何十回もシミュレートして、そのたびに鈴は幸せな気持ちになっていた。けれど、鈴はもう少しだけ想像を進めてみる。紗奈があくまで解放せず、死ぬまで鉄板の上で焼かれる自分の姿を。そんなことは万に一つもないだろうけど、鈴にとってはそれも幸せな想像だった。今まで自分が苦心惨憺して積み上げてきた学力、体力、技術などが、紗奈の一時の気まぐれによって全て奪われるのだと思うと、鈴は嬉しくてたまらない。

 これまでも常に鈴は死を覚悟していた。紗奈と一緒に屋上に上がる。紗奈が「飛んで」と言えば鈴は飛ぶつもりだった。紗奈と一緒に焼却炉にゴミを運ぶ。紗奈が「中に入って」と言えば、鈴は焼却炉で死ぬまで焼かれるつもりだった。紗奈の気まぐれ一つで、自分の命が蚊やハエのように簡単に失われることを思うと、鈴はいつも幸せだった。

 日曜の一日を鈴は楽しい気持ちでずっと過ごした。紗奈のために自分を犠牲にできることを思うと嬉しくて仕方なかった。「明日のお祭りのことをよく考えるように」と言われて紗奈から与えられた一日が、思いがけず、とっても楽しいものとなっていた。「紗奈お嬢様はここまで考えて、鈴に一日を与えてくれたのかな……」と、彼女は考えて、また幸せな気持ちになる。そうして、ベッドの中で彼女がうつらうつらとしていると、不意にドアがノックされた。

「お嬢様……!」

 慌てて鈴がベッドの上に半身を起こした。

「鈴、入ってもいいですか」
「は、はい! もちろんです、お嬢様」

 鈴が慌てて返事をして、ややあって、紗奈が扉を開けた。

「そのままでいいですわよ。鈴……」

 と、百合川紗奈はいつもの優しい微笑みを湛えながら、鈴のベッドへと近付き腰を下ろすと、緩やかに導いて、暖かい太ももで鈴を膝枕した。そのまま、鈴の頭をゆっくりと撫でながら、

「鈴、明日のお祭りの件ですけど……」

 と切り出す。

「もう一度確認しますわ。明日のお祭りは、人体実験です。鈴は、確実に惨いことになります。この人体実験はわたくしのお願い……ワガママですから、鈴が無理に受ける必要はまったくありません。嫌でしたら、正直に嫌と言って下さって全く構わないの……」
「はい、お嬢様」
「では、お尋ねします。明日のわたくしとのお祭り、受けて下さいますか?」
「喜んでお受けいたします。紗奈お嬢様」
「……もう一度確認しますわ。明日のお祭りで鈴の足裏は無茶苦茶に焼け爛れ、一生残る醜い傷を負います。もちろん鈴は悲惨なまでの苦痛に喘ぎ苦しむことになります。それでも、わたくしとのお祭り、受けて下さいますか?」
「もちろんお受けいたします。紗奈お嬢様」
「……鈴」
「はい」
「最後に、最後にもう一度だけ確認します。よく考えてから答えて下さいね。私の明日の目的は人体実験です。……けれど、実験をしているうちに、もしかすると、楽しくなってしまって、実験の枠を超えて、単に好奇心や興味から鈴をぐちゃぐちゃにしてしまうかもしれません。鈴がいま想像しているよりも、遥かに酷いことになるかもしれないのです。それでも、お祭りを受けて下さいますか?」
「喜んでお受けいたします、お嬢様。人体実験でなくとも、好奇心や興味でも、紗奈お嬢様が鈴で一時楽しんで頂けるなら……」

 そこで、鈴は紗奈の太ももの上でにっこりと微笑んでから、

「鈴は、とっても幸せです」

 そう言い切ったのだった。

「そう……」

 一方の紗奈は、諦めたような、嬉しいような、複雑な表情を見せていた。

「鈴、あなたの覚悟は受け取りました。もう後戻りはできませんわ……。あなたは明日、惨い地獄へと落ちます。もう逃げられません。わたくしは鈴にとんでもない無茶苦茶をするでしょう。けれど、あなたは全てを味わうしかないのです。たっぷりと苦しんで、思う存分、泣き喚いて下さいね」
「はい、お嬢様」

 紗奈の太ももの上で、鈴はなおも瞳をキラキラと輝かせている。そんな鈴の頭を優しく撫でながら、紗奈もこの子のことが愛おしくてたまらない。紗奈は鈴の儚さが大好きだった。自分がほんの一言口を滑らせたら、この愛しい親友が次の瞬間には死んでしまうことを彼女は理解していた。だから、冗談でも言ってはいけなかった。けれど、言ってみたかった。その儚さこそが藍花鈴のたまらない愛おしさなのだから。

 鈴が自分のお願いを決して断らないことを紗奈は理解していた。それゆえに、逆に彼女はこれまで本当に酷い「お願い」はできなかった。けれど、七草あざみと夕顔花菜のお祭りの結果を知った瞬間、紗奈はムクムクと起き上がる欲望をこらえきれなかった。儚く愛しい藍花鈴を、焼けた鉄板の上に裸足で立たせたい!という欲望を……。鈴はきっと自分のお願いを喜んで受け入れて、焼けた鉄板の上で儚く散ってくれるだろう。そんな彼女を見て、自分はますます鈴のことを愛おしく思うに違いない。愛おしさのあまり、彼女を無茶苦茶にしてしまうだろう。

 それが分かっていたから、紗奈は何度も鈴に意思確認をした。それが無駄な念押しだと分かっていながらも……。そして、意思確認はもちろん無駄に終わった。こうなってしまうと、もう、紗奈にも自分自身を止める自信はなかった。鈴は地獄行きの契約書にはっきりと自筆でサインを書き込んだのだ。これで彼女の体を気遣う必要性は一切なくなってしまった……。

「鈴……鈴……」

 百合川紗奈は太ももの上で微笑む少女を何度も何度も優しく撫でた。しばらくそうしているうちに、やがて鈴は静かな寝息を立て始めた。紗奈はゆっくりと鈴の頭を枕に下ろすと、タオルケットを彼女に掛けて、それから、形の良い、白くて小さな鈴の足の裏をしばらくじっと見つめていた。この可愛い足の裏が、自分のせいで明日醜く焼け爛れるのだと、紗奈は改めて思った。

「おやすみ、鈴……。明日のお祭り、楽しみましょうね」

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百花繚乱祭(3)

あらすじ

明るくて元気な女子高生たちが大好きなお祭りを心ゆくまで楽しんで、みんなで一緒にズタボロになる、爽やか青春リョナ物語。

 ーー転校生、七草あざみが快進撃を見せる一方、優勝最有力候補の生徒会長百合川紗奈もまた動き始めた。相手は一年生にしてサブミッションの使い手、留学生デイジー。百合川は一計を案じ、ミミズ風呂へとデイジーを誘い込む。

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