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-freya- 2023/06/05 14:54

完全拘束して欲しいとお願いしたら、完全拘束じゃなくて永久拘束されちゃう家出少女のお話し

大変長らくお待たせしました!

去年から描こうとしていた永久拘束モノが出来上がりましたので、投稿させていただきます。

以下、登場キャラクターについて

・古川夏希(ふるかわ なつき) 15才の女の子 地元の高校に入学してから間もなく家出をする。地元から離れた都会で所持金を失い、帰ることもできずに困っているところを雪代飛鳥に拾われ、とあることを条件に居候になる。

・雪代飛鳥(ゆきしろ あすか) 15才の女の子 とある大手企業の令嬢で、お嬢様学校に通っている。幼いころから投資を学び、そのころから蓄えた資金で自ら生活費を稼いでいる。可愛いものが好きで、特に「女の子の自由を奪って所有したい」という欲求があり、その衝動を叶えるための方法を模索しているところで、夏希と出会う。

――――――――――――――――――――

「私も鉄の枷で完全拘束されてみたいなぁ」

 タワーマンションの最上階にあるリビング。
 そのソファーの上で私――古川夏希――は、なんとなく呟いた。
 セミロングの黒髪に薄手の白ワンピースを着飾った私の胸の上下には、たわわに実った二つの乳袋が浮き彫りになるように紅い麻縄が施されている。背中では、両手が交差するように組み合わさり、少しでも細腕に力を加えれば、厳しい後ろ手縛りがギシッと鳴いて、身じろぎ一つ許してくれなかった。

「こんな金属のフレームで拘束されたら怖くない?」

 私をこのような状況に陥れ、このタワーマンションに二ヶ月ものあいだ監禁し続けている張本人である雪代飛鳥が何食わぬ顔で問い掛けてくる。
 隣に座る彼女は、ストレートロングの黒髪に、私とお揃いの薄手の白ワンピースを着こんでいるから、傍目から私たちを見るとペアルックを着込んだ百合カップルのようにも見える。
 けれど、彼女の片手には私の喉元に嵌り込む重厚な紅い首輪と繋がっているリードの先端が握られている。
 その様子からもわかる通り、私と飛鳥の間には、確かな主従関係が存在していた。
 
「それがいいんだよ。何一つ抵抗できないように身体を金属で固定されちゃってさ、ゆるしてぇ~って必死に懇願してもおまんことか乳首を気持ちよくされちゃって、観賞用のオブジェみたいに部屋に一生飾られたまま人生終わっちゃうの。絶対最高だよ」

 なのに私は、これまで一度も飛鳥に話してこなかったような要望をあけっぴろげに解き放つ。
 目の前の大型テレビに映るAV女優さんが拘束台に散りばめられている鉄枷によって、オブジェクトのように完全拘束されていく様がそれだけ魅力的に見えたのだ。
 飛鳥と出会ってから二か月ほど経過するが、AVを見ていてこんなにも胸の奥がワクワクドキドキしたのは初めてだった。

「人生終わっちゃう、って……さすがにそれはちょっとヤバくない? 定期的に拘束から解放して、メンテナンスしてあげないとすぐに壊れちゃうと思うよ? 夏希だって縄で縛られてると疲れてくるのは知ってるでしょ?」

 などと言っているが、十五歳という年齢にも関わらず、女の子一人を監禁しても何一つ問題ない財力を持っている飛鳥なら、私を完全拘束する道具など簡単にそろえることができるだろう。
 現にこれまでの生活で、飛鳥は様々な拘束具や大人の玩具を使って私を楽しませてくれた。
 その中で一番思い入れが強いのは、高さ100センチメートルに対し奥行きと横幅が60センチメートルしかない小さな鋼鉄の檻だ。

 あの時は、何も説明がないまま精神科の入院患者が着せられるような拘束衣を着せられて、狭い檻の中で体育座りをするように膝を折り曲げたまま、丸一日閉じ込められたのだ。
 拘束衣を身に着けているだけでも、何もできないのに、狭い檻の中は窮屈で、まともに背筋を伸ばすこともできず、ただただ無意味に退屈な時間を過ごすことしかできなかった。
 鉄格子の隙間から、定期的に水分と食べ物を与えれたりはしたけれど、排泄物はあらかじめ装着されていたオムツにするしかなかったし、生暖かい排泄物がじわじわと冷たくなっていく感触は、自分が人ではない無機物に変えられていくような気がしてマジでヤバかった。
  
「でもでも、短期的に完全拘束するくらいなら問題ないよね? というか、それくらい飛鳥なら簡単に用意できるでしょ?」

「そりゃあ、完全拘束するくらいなら道具があればいくらでもできるから、夏希がやられたいなら用意できるけど……夏希のいうような完全拘束を実現するのはちょっと難しいと思うよ?」
 
 そのときに私が体調を崩してからだろうか。
 飛鳥は、いつも私のことを第一に考えてくれている。
 私の要望に否定的なのは、その所為かもしれない。
   
「それなら、飛鳥が用意できるやり方でいいから、完全拘束されてみたい!」

 だからこそ、私は我を通した。
 あのときに感じた被虐的な倒錯感がどうしても忘れられず、あのまま狭い檻の中に閉じ込められ続けていたら自分がどうなっていたのか、と何度も妄想してしまうのだ。
 きっと、この二ヶ月の監禁生活で、私の性癖は大きく歪んでしまったのだろう。
 
「……夏希がそこまでいうならいいよ。完全拘束するための準備してあげる」

 飛鳥はしばらく頭を悩ませていたけれど、気持ちの整理がついたのか、ニコっと微笑んで承諾してくれた。

「やったー! 嬉しい! 飛鳥のこと大好き!」

 好意と感謝の想いを伝えるべく、飛鳥へ抱き着こうとするが、後ろ手に緊縛されているせいで抱き着けない。
 緊縛された身体をソファーの上でモニョモニョ動かしていると「ほら、おいで」と両手を広げた飛鳥が代わりに私を抱きしめてくれるから、ぷにぷにの飛鳥の乳袋に顔をうずめて甘えまくってやる。

「完全拘束されたい、だなんて……夏希はすっかりドMになっちゃったね? わたしに監禁されすぎて頭がバカになっちゃったんじゃない?」

 私の頭をぽんぽん撫でながら、飛鳥がからかってくる。
 飛鳥は冗談で言ったのだろうけれど、たぶん、マジで私はバカなことを言っているのだろう。
 図星過ぎて何と返すべきか迷ってしまう。
 でも、完全拘束されてみたいというのは本当だし、ここは正直に受け入れることにした。

「どうせ、行く場所なんてないし、飛鳥の傍に居られるなら、私はドMでもバカでもなんでもいいよ?」

「夏希のそういうところ、ホント可愛いから大好き」

 胸にうずめていた顔を上げて、飛鳥の黒い瞳を見つめると、頬っぺたをなでなでされる。
 
「私も、飛鳥のこと大好きだよ」

 それが嬉しくて、飛鳥に思いを伝える。

「夏希……ッ」

 喜ぶ飛鳥の顔が近づいてきて、柔らかい唇が重なる。
 それだけで、飛鳥が私のことを大切に想ってくれてくれていることが伝わってきた。

「夏希のこと、今日もいっぱい可愛がってあげるね」

「うん……っ!」

 その言葉を発端に、再び柔らかい唇が重なり、次は私の口腔へ飛鳥の舌がぬるりと入り込んでくる。
 やり返すように、私も飛鳥の口の中へ舌を潜り込ませて、一生懸命絡ませる。
 お互いに、お互いの温もりを確かめ合いながら、その日は想いを伝えあった。
 
――――――――――――――――――――

 私こと古川夏希が雪代飛鳥に監禁されているのは、自ら監禁されることを望んだからである。

 女子高生にもかかわらず、地元の北海道から都会へ家出をした私は、路銀を使い果たし、行くところも、帰る場所もなく、路頭に迷っていた。
 このままでは餓死してしまうのも時間の問題だろう。と公園のベンチで黄昏ている私に声を掛けてきたのが、雪代飛鳥だった。

 離れたところから家出してきた私の事情を聴いてくれた飛鳥は、同じ女子高生のよしみだから、と何一つ見返りを求めずにマンションへ泊めてくれた。
 最初は数日だけお世話になって出て行くつもりだったのだけれど、飛鳥は私を見捨てるつもりはないらしく、いつまでも居ていいよ。と何度も言ってくれて。
 飛鳥にそうやって諭されてるうちに、私は別れるタイミングを見失ってしまっていた。
 そんな生活の最中で「女の子を監禁したい」という社会に反した飛鳥の性的嗜好を知ってしまったのは、偶然か、必然だったのか、私にはわからない。
 ただ、私は彼女に「恩を返しをしたい」という想いから、自ら監禁されることを願った。
 正直言ってバカなことをしているのは自分でもわかっている。けれども、その頃にはもう、私と飛鳥は普通の女の子同士という枠組みから外れた関係にまで発展していたのだ。

 それから、私は監禁されることを条件に飛鳥のお世話になっている。

 どれくらい本気で監禁されているのかというと、マンションの玄関に電子ロックが掛けられ、私が勝手に外へ出て行かないように毎日暗証番号を変えられているくらいマジで監禁されている。
 もちろん外への連絡手段はすべて飛鳥が管理しているから、私が外部とのコンタクトを取ることは許されていない。
 一度、監禁する。と決めた以上。飛鳥は最後まで責任をもって私の面倒を見るつもりらしい。
 安心できると言えば安心できるし、逆を言えば逃げだす手段がないということになるのだけれど、それはそれだ。
 そもそも、逃げ出す意思が私にはないのだから、逃げられないというリスクよりも、安定した生活と飛鳥のそばにいられるというメリットのほうが大きいかった。
 
 そんな歪んだ日常生活に加え、私は毎日のように何かしらの拘束を施されている。
 
 飛鳥が学校に出かけているときは、手足に装着された革枷などの拘束具を鎖で繋いで、身体の可動域を制限した状態のまま日常生活を過ごしたり、逆に飛鳥がマンションにいるときは、鎖ではなく、南京錠で直接革枷を繋がれたり、さらにはアームバインダーという後ろ手に真っすぐ腕を拘束する逆二等辺三角形の革袋を装着させられたり。
 日によっては、縄で手も足も何もかも緊縛されてベッドに縛りつけられたりすることもある。
 簡潔にまとめると留守の時は軽い拘束。傍にいるときは厳しい拘束。という状況に合わせた拘束をされてしまうのだ。
 それらは私が逃げ出さないため。というよりも、飛鳥の趣味嗜好である支配欲を満たすためだけの拘束であるのは私も理解している。でなければ、こんな監禁生活を続けていないだろう。

 まぁ、その代わりに身の回りのことなどは、飛鳥がなんでもやってくれるから、拘束されていても困ることはない。
 ごはんを食べさせてもらったり、お風呂で身体を洗ってもらったり、拘束され続けて疲れたときは身体をマッサージしてくれたり。
 等身大のお人形さんをお世話するように、飛鳥は私に何でも与えてくれる。
 だから私は、飛鳥の気持ちに応えるように、与えられるものすべてを受け入れていればいい。
 自分のものを何一つ所有していない私にとって、なんでも与えてくれる飛鳥との関係は最高の巡りあわせなのだから。
 
「夏希、そろそろ心の準備はできた?」

「うん、いつでも大丈夫」

 そして、私が完全拘束を望んでから一カ月。
 ついに、その日がやってきた。

 朝風呂からの朝食タイムが終わった私に施されている拘束は、後ろ手の手錠のみ。
 飛鳥がそばにいるから、いつもなら厳重に拘束されているはずなのに、今日は扱い方が違う。
 
 理由は知っている。

 飛鳥の学校が夏休みに突入するのに合わせて、昨日の夕方にリビングの中心部へとあるものが運び込まれたからだ。
 それは、博物館に飾られていてもおかしくない黒くて大きな機械的な台座。
 その台座の上には、人体の形をくり貫いた額縁を作りだすように鋼鉄の柱が二本そびえ立っている。
 簡単に言えば、拘束台というものになるのだろう。
 拘束台には、腕、足、腰、首、などの各部位ごとを固定するためのダンベルの重りのように厚みがある鉄枷が前後左右にいくつも設置されており、幾多にも散りばめられたそれらの鉄枷に彩られた拘束台は、これからそこに嵌り込むであろう生け贄をジっと待ち構えている無機質な処刑台のように見えた。
 
「じゃ、手錠外したら服を脱いで、下着姿になってもらおうかな」

「うん、オッケー」

 後ろ手に嵌められていた手錠を飛鳥に外してもらってから、水色のレース一枚を上下に残して、薄手の白ワンピースを脱ぐ。
 本日の朝一番のお風呂で、飛鳥にされるがままに、肌のケアは済ましてあるから産毛ひとつない白い肌はすべてツルツルだ。
 あとはこのまま、台座の上に乗って、鉄枷に身体を預けるだけで、私はリビングの中心に完全拘束されてしまうのだろう。
 想像するだけで胸が高鳴ってくる。

「まずは足から拘束するね。台座の上に乗ったら、鉄枷に合わせて膝をついてくれる?」
 
「えっと、こんな感じでいいかな?」

 胸のワクワクを抑えつつ、飛鳥に言われた通りに足を肩幅に開き、昔のロボットのアームみたいに口を開いた重厚な鉄枷に足首と膝下を宛がうように乗せる。

「そのままジッとしてて」

 左右に口を広げた鉄枷の口を飛鳥が一つずつ手作業で閉じていく。
 左、右、左。
 右、左、右。
 三分割に分かれた鉄枷の接合部が、左右対象になりながら、スルッ、スルルッ、カチッとリズム良く合わさり、小さな穴をひとつだけ残して、最初から一つの鉄の環であったかのように繋ぎ目一つ見当たらなくなる。

「うわ、すごっ」

 いったいどんな技術を使用されているのかわからないくらい精巧な作りに、感嘆の声を漏らしてしまう。
 これ、外せるよね?

「次は両手をバンザイするように手首を首と同じ高さにある鉄枷に合わせてくれる? あ、もちろん首も一緒に合わせてね」

「う、うん」

 飛鳥の言うとおりに両手を左右に開き、肘を直角にして首の高さと並んだ位置にある鉄枷に両手首と喉元を宛てがう。

「じゃ、閉じるよ」

「ンッ……」

 スルッ、スルルッ、カチッっとリズム良く鋼鉄の接合部が合わさっていくと、手首と喉元にも繋ぎ目一つない重厚な鉄枷がガッチリと嵌り込んでしまう。
 すでに私の身体は、両手を左右にバンザイしたまま、肩幅に股を開く無様な姿で身動きが取れなくなっていた。
 これ、マジで動けない。

「どう? 首とかきつくない?」

「全然大丈夫だけど……ちょっとぴったり過ぎて怖いかも……?」

 極度に締めつけられて痛みがあるとか、肌が擦れて変な感じがするとか、そういうのは一切ない。
 ただ、首から下にある胸からお尻に掛けて身体をクネクネと動かす行為以外は、身動きが取れなかった。
 拘束台に幾多にも存在するうちの、膝下と首の部分の鉄枷を嵌められただけで、処刑される囚人のように、さらし首にされてしまった現実にゾッとする。
   
「前に身体の色んな所を採寸したの覚えてる? 手の指の長さとか、顔の輪郭とか、股下の広さとか。あのとき夏希を採寸したデータをもとに一つ一つ精密に設計させて作らせたから、夏希の身体にピッタリなんだよ」

「へ、へぇ~……そうなんだ?」

 飛鳥は得意げに拘束台の製作事情を教えてくれる。たぶんそれは、知らない人が聞いたら腰を抜かしてしまうほど、ヤバい発言だ。
 だって、飛鳥のその話が本当なら、この拘束台は私を完全拘束するためだけに作られたってことになるのだから。

「でも、こんなのまだまだ序の口だよ? 前に夏希が求めてたみたいにもっともっと夏希から身体の自由を奪い取って、最後には部屋に飾られるだけの生オブジェにしてあげるから覚悟しててね」

「う、うん……楽しみにしてる……っ!」

 そうだった。
 この舞台は私のお願いごとをもとに、飛鳥が私のためだけに用意してくれたものなのだ。 
 そのことを理解すればするほど、鉄枷に冷やされた身体が、胸の高鳴りと一緒に火照っていく。
 
「ねぇ、飛鳥。私は次どうしたらいいの?」

 だから、少しでも早く完全拘束されたくて、私も協力しようとするのだけれど。

「夏希はそのままジッとしてるだけでいいよ。あとはわたしが全部装着してあげる」

 飛鳥は私に優しく微笑みかけながら、「心配ないよ」とセミロングの黒髪をなでなでと撫でてくる。どうやら、私にできることは何もないらしい。

「あ、でもその前に、下着はこのあと邪魔になるから脱がしちゃっていい? ブラはそのまま外すけど、ショーツは脱がせないから切っちゃうね」

「うん、いいよ」
 
 私が頷いてすぐにブラジャーが外され、支えを失った二つのおっぱいが、プルプル揺れる。
 そのあいだにショーツも剥ぎ取られ、お風呂場でツルツルになるように手入れを施された割れ目がリビングに晒された。
 
「じゃ、残りの鉄枷も装着しちゃうね」

 興奮気味の私に応えるように、太ももや、ウエスト。胸の上下に、上腕部などなど、私の身体の輪郭に合わせて設計された各所に残っている鉄枷を飛鳥が一つ残らず閉じていく。

 スルッ、スルルッ、カチッ。

 鉄枷が一つずつ嵌められていくことで、腰や背骨の僅かな可動域さえも、何一つ動かす余地が残らないように、拘束台に完全に固定されていくのがわかる。
 まるで、鋼鉄のコルセットによって、身体の形状を強○されていくような感じだ。

「……ッ」

 そんな異様な状況に私の胸は高鳴って、体温がじくじくと上昇していく。
 鉄枷による完全拘束を施されて、身体の自由が失われていっているというのに興奮してるなんて、やっぱり、私は生粋の被虐体質らしい。
 
「とりあえずこんな感じかな?」

 拘束台にあるすべての鉄枷を装着し終えた飛鳥が、完成させた芸術作品の出来栄えを鑑賞するように、あられもない私の姿を視線で舐めまわす。

「これで終わり……?」

 思っていたよりも早く終わってしまったから、首を傾げるように飛鳥に伺いを立てる。
 傾げると言っても、喉元には重厚な鉄枷が嵌り込んでいるから、頭は何一つ傾いてはいない。

「まだ仕上げが残ってるよ。コレ見えるかな? この細い鉄のピンなんだけど」
 
 飛鳥は私の目の前に細長い鉄の杭のようなピンを見せてきた。

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-freya- 2023/06/05 14:53

タイトル未定(過去作)

 私はあの日見てしまった。夜中にトイレに行きたくなって暗闇の中電気もつけずに歩いていた廊下から変な声が聞こえた日。その声は姉の部屋から聞こえてきていて、耳を疑った私は姉の部屋をそっと覗き込んでしまった。

「……ッ、んぁ……っ、はぁん……んぅっ、んぁ」

 薄暗いナツメ球が照らす部屋の中で体のいたるところに黒い拘束具を身につけた姉がヴヴヴと低いモーター音を鳴らしながら小さく声を押し殺して喘いでいた。さすがに私も高校生になっていたし、性癖については人それぞれの世界があることは知っていた。けれど、彼氏がいない大学生の姉がまさか自分を拘束して快楽に浸っているとは夢にも思わない。

 だからといってそのときの私にできる選択肢は見なかったことにしてトイレに行くしかないわけで……。邪魔しちゃ悪いと思って静かに立ち去ったのが二週間ほど前のことだ。あの日以降姉と顔を合わせるたびに拘束具を身につける姉を思い出してしまって、普通に話してるはずなのにどこかぎこちなく感じてしまう。たぶん、私だけが感じていることなのだと思う。姉はいつもと変わらない様子でドラマの話しを振ってきたり、SNSで得た面白い情報を教えてきたりと分け隔てなく笑っていた。

 そして今――私は姉の部屋にいる。魔が差したといえば聞こえはいいかもしれない。事実今日は偶然が重なった。両親は実家へ祖父母の様子を見に行くということで外泊。姉は友だちの家に泊まりに行くということで外泊。つまり、二人姉妹の家系で留守番に残されたのは妹の私一人だけということになる。こんな珍しい日に気になっていた物を拝みに行くというのも悪くない。そんな気持ちを抑えられなかった。

「この辺……かな?」

 膝丈の白いTシャツワンピース姿で姉の部屋のクローゼットを開ける。すぐに目に飛び込んでくるのは不自然に置かれているタオルに隠されたダンボールだった。引っ張り出して中を開けてみると黒色を鮮やかに反射する名前もわからない拘束具たちが箱の中でひしめいていた。

「こんなにいっぱい……お姉ちゃん全部買ったのかな?」

 純粋に浮かぶ疑問と未知なる存在の出現に好奇心が鼓動を早くしているのがわかる。箱の中にどんなものがあるのか気になってきて姉のベッドの上に一つ、二つと並べていく。

 黒い拘束具は基本的に革製品でよく見てみると本革だった。分厚い革はしっかりとなめしが行き届き、なんども使用されているからかほんのりと姉の匂いが染みついていて、手触りはとても柔らかく感じた。

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-freya- 2023/06/05 14:53

えすえむごっこ(過去作)

 中学生になって一年の時が経ち、中学2年生になってからの夏休み。

 私は、両親に頼まれ従姉妹の家へと遊びに行っていた。

 なんでも、従姉妹の両親と私の両親とで実家のことについて大事な話があるそうで、従姉妹の面倒を私に見てほしいんだとか……正直、面倒を見るのは構わないけどもここ最近会ってなかったこともあり、すこし緊張していた。

 確か私より年下で、5歳くらい歳が離れてるはずだ。今は小学3年生だろうか。
 
 従姉妹の名前はルイ。

 ちなみに私の名前はマイ。

 一文字違いだったりするから、お互いに結構親しみをもって名前を呼んでいたし、仲が良かったのも覚えている。

「おねぇちゃん。次足縛っていい?」

「…………う、うん」

 けど、こんなことして遊んだことは一度もなかったような気がする。

「そしたら縛っちゃうね」

 目の前に居る従姉妹のルイが私のために用意したという麻縄で、膝を折り曲げた状態に片足ずつ縛られていく。

 ルイの家に来てすぐに ルイの両親は私の両親と一緒に私たちを置いて出て行ってしまった。
 その後適当にテレビでも見ながらルイと学校のお話をしようと思っていた矢先に「やってみたいことがある」とか言われてなんとなく軽い気持ちで「いいよー」なんて言ってみたら「じゃぁ道具もってくる」と大きめのビニール袋を持ってきてこんな訳わかんないことになっている。

 ちなみに既に両手は後ろ手にVの字に手首を縛られているし、今足を縛られてしまえば、ほとんどなんにもできない状態になってしまう、試しに手首の縄を解こうと少し試してみたけど、縄がきしむだけで意外にも解けなかった。

「できた。どんな感じ? 抜けれそう?」

「今すぐにはちょっとムリだって、最初緩いと思ったら、間に縄巻かれて、締まって抜けないもん」

「おねぇちゃんいいところに気がつくね!」

 思ったことをそのまんま口に出していっただけなのに、結構嬉しそうに食いついてくるルイが少し怖かった。

「あのね、実はね。おねぇちゃんに何回か色んな縛り方して、縄抜けできるのか試してほしいの。それで、一番抜けられないと思った縛り方で今度友達のこと縛るんだ」

「なんで、友達のこと縛るの?」

 私はルイの言葉の内容がいまいち理解できなくて質問した

「えーっとね、あたしの学校友達のみかんちゃんがね、脱出マジックが得意って自慢してたから、本当に得意なのか気になってね今度縛るから脱出してみてよって煽ったら、乗ってきたの。だから今度縛るの。その練習」

「へ、へぇー。がんばるねー」(棒)

 どうでもいい内容でかなり適当に返事をしてしまう。そんなことのために私は小学3年生の従姉妹に縛られてるのか。

「インターネットとかで縛り方を探してみたんだけど、見たくらいじゃ分かんないから実際に縛りたいって思ったの」

「お母さんとお父さんには言ったの?」

「うん、そしたらおねぇちゃんに手伝ってもらったらって言われたよ? それにおねぇちゃん小さいから丁度いいんだ」

「小さいって……そりゃ、そうだけど……」

 確かに私は学年の女子の中でも一番小さくて、新入生には同じ学年の子と間違われてしまうほど先輩に見えない小ささだ。ルイとも大した差はなくて、目線もほとんど一緒。でも、力はルイよりあるほうだと思う。

 まぁ、でも仕方が無いか……。一応おねぇちゃんなんだし、かわいい従姉妹のお願いだから手伝ってあげようではないか。とか、誤魔化して悔しいから見栄を張ってみる。

「わかった。そしたら私もちゃんと手伝うよ」

「ほんと?」

「うん、縄抜けしてみる」

 その言葉と同時に今の縛られた状態で縄抜けしようとがんばってみた。

「あ、ほどけた」

 するとさっきは解けなかったのに案外結び目が弱いのかあっさりと縄がほどけてしまった。

「やっぱりこれくらいじゃダメなんだ……じゃ、次の縛り方していい?」

「う、うん。いいよ」

 結構あっさり解けたことに気持ちに余裕もあり軽い気持ちで頷く。

「そしたら……立ってもらっていい?」

 足の縄も解いて立ち上がるとルイは長い麻縄を袋から取り出し、綺麗に解くと、半分のところで折り、私の首に掛け胸の前に垂らす。
 
 そのまま縄を鎖骨あたりで一度結び目を作り、更に、胸のすこし下あたりにも結び目、へその上と下のところにも結び目を作る。

 そのままスカートを巻き込みながら、股を通して……って股っ!?

「ちょ、ちょっとまった!」

「なに?」

 当たり前のように股から縄を通そうとしているルイに焦りを隠せずに物言う。

「なに? じゃない、急に股に縄を通すとかルイはアホの子なの?」

「だって縛り方に書いてるんだもん、ここ通さないと縛れないもん!」

 馬鹿にされて怒ったみたいで、縛り方をプリントアウトされた用紙を私に無理やり見せ付けてくる。
 そこには確かに股の下を通すと書いてあった。

「でも、股通すってことは……その、えーっと……」

 今おもえば、ルイは小学3年生である。保健体育なんて習っていなかった。性の知識がなかった。
 顔を膨らませて少し怒り気味のルイをみて仕方なくOKをだすことにした。
 小学3年生に教えても意味なさそうに思えた。

「大丈夫だよ、この縛り方だけが股に縄通すの、他のはないよ」

 ルイはそういうと再び手を動かし始めた。

 一度スカートの位置を整えてスカートを巻き込み、また、縄を結び、結び目の瘤を作ってからルイは器用に股に縄を通す。

 「うっ……」

 その時に股に当たる瘤と太ももの辺りをスルスルと擦り付けながら通る縄の感触がなんとも言えない感じで声が出ないように我慢した。
 
「そして、通した縄をすこし――引っ張る!っと」

「――んひゃっ!?」

 ルイに突然股の縄を引っ張られ、その反動で身体が仰け反り、反射的に変な声がでた。

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-freya- 2023/06/05 14:53

アームバインダーとモデル体験

「……どんな感じ?」

 スズの上半身は自由がなかった。
 白のブラウスと黒のワンピースのコントラストを纏う華奢な容姿を紅い麻縄が無常に縛りつけているからだ。
 背中で組んだ両腕。重なり合う細い手首には紅い縄が絡みつき、複雑に作られた菱形の縄目に吊り上げられてしまっている。

「えーっ……と……」

 それだけではない。
 胸の上下を圧迫する紅い縄が両腕を胴体と繋ぎ止め、スズの羞恥心を煽るようにおっぱいを強調していた。

 ――後手縛り。

 隣でカメラを携えるサオリがスズに施した緊縛術。江戸時代辺りから日本人の手によって考察、考案され続けてきた捕縛用の技術だが、現代社会で用いられる緊縛術は芸術やSMなどの特殊な嗜好の影響を強く受け、色欲というテーマに関与する娯楽の形へと変貌していた。
 海外でもジャパニーズボンデージと呼ばれ、世界的に注目されている拘束手段といえる。

「……なんか、すごい、です」

 縄から伝わってくる情報量が多すぎて、スズの語彙力が、喪失する。
 縛られている最中も、縛り終わった後も、縄が肌に擦れる感触というのは不思議なくらい焦ったく、気持ちの良い刺激に苛まれるのだ。
 適度な締めつけが与えてくる抱擁が謎の高揚感をもたらしてくる。微熱がかったようにスズの身体は火照り、僅かな縄の軋みにも敏感になってしまっていた。硬くなった乳首が服に擦れてしまうたびに恥ずかしさが増していく。

「キツかったり、痛いところとかない?」

「……大丈夫、です」

 サオリの流れるような縄捌き。縄士のような手際の良さをぼーっとしながら眺めているだけで、スズを緊縛する後手縛りは完成していた。

 ギシ。ギシ。

 縛られていく自分の身体があまりにも扇情的で悲哀な様相を晒しだしていたから、恥ずかしさにかまけて意識的に見ないように目を閉じたりしたもしていたから尚のこと縄の感触を深く感じてしまった。

 ギシ。ギギッ。

 縛られる経験は初めてだったし、内心どこか不安だった。だが、実際に緊縛されてわかったことがある。縄に縛られる感触は、不安を忘れてしまうほどの底知れない安心感がある。
 自由を奪われていく過程に芽生える相反した感情なのだが、不思議とスズは縄の感触を受け入れられた。

「痺れてきたり、痛みがあったらすぐに教えてね?」

「わかりました」

 それはきっと、緊縛を施したサオリがスズの体調を考慮してくれているからかもしれない。
 もし、サオリに乱暴に縄で縛られ、無理やり身体の自由を奪われていたなら、スズは不安と恐怖に苛まれて一生のトラウマを抱えていただろう。
 だが、様子を見ながら丁寧に接してくれるサオリの献身さはスズの好奇心を壊すことなく、裏の世界へと導いてくれたのだ。

「あ、もしかして……縄に縛られて感じちゃってる?」

「ち、ちがいますよ!」

「そう? 白い頬っぺた紅くしながら口角が上がってるから、スズちゃん悦んでるように見えちゃった」

「……ば、バカ言わないでくださいッ!」

 サオリの冗談に過剰に反応していることにスズは気づいた。自分が図星であることをサオリに理解させられてしまったのだ。罠に嵌った。急に首筋から熱が発しられて、蒸気したみたいに顔に熱がこもっていく。めちゃくちゃ恥ずかしい。

「じゃあ、撮影始めるから自由にしててね」

 サオリは手慣れているのか、切り替えが早い。
 自由に。と言いっていたが、後手縛りに緊縛されたスズの上半身に自由はない。サオリがスズに伝えたかったのは「リラックスしてて」という意味だろう。完全にスズの気持ちを見透かされている。

「————」

 カシャッ。カシャッ。
 カメラのシャッター音とフラッシュライトがスズに向けられる。
 緊縛モデルというものがどんなものかいまいち理解してなくて、あっちを見たり、こっちを見たりする。
 カメラのフラッシュライトが眩しくて、ソワソワしながら縛められた上半身を揺すったり、肩を回したり、背中で組んだままの両手に力を込めてみたり、スズは気の赴くままに白いベッドの上で後手縛りを堪能する。

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-freya- 2023/06/05 14:53

【自縛趣味の女の子と拘束されちゃうあたし】

 夜のバイトの帰り道。自動販売機で缶ジュースを購入したコヨミは、公園のベンチに腰掛ける。

 ——疲れた。

 お小遣い目的とはいえ、学校に通いながら居酒屋でバイトを始めたのは、さすがに応えたらしい。
 学生の本分は学業に専念することだ。と親によく言われるけれども、たしかにその通りかもしれない。学校が終わったあとにバイトなんてしていたら、勉強をするほどの体力が残らない。
 バイトはバイトで、学校とは違う疲労感に襲われる。気疲れ、とでもいうのだろうか。それが酷く身体に応える。
 でも、お小遣いは欲しい。
 高校生はなにかとお金が入りようなのだ。

「……はぁ」

 深いため息が出た。
 どうやら、疲れ以外にもコヨミに不安を生み出している理由があるらしい。
 店長も、バイトの先輩も、すごく丁寧に仕事を教えてくれるし、仕事については困っていない。
 学校の勉強だって、特に何かを不便だと思うほど苦労はしていないし、問題はない。
 他に考えられるのは一つだけ。
 バイト先のとある男性客だけはどうもニガテだった。二十代そこらのチンピラみたいな奴で。いつもグループで来店してくる金髪の男はコヨミを見るや否や話しかけてくる。
 どうしてコヨミだけが絡まれるのか理由は定かではないが、バイトの身としては愛想を振舞うしかなくて、気苦労しかしない。

「あたし、絡まれるほど愛嬌振りまいてないはずなんだけどなぁ……ねちっこく質問攻めにされちゃうし、あたしはあなたに興味ない、っての!」

 プシュっ、と缶ジュースの口を切り、愚痴をこぼしながら一口飲み込む。さわやかな果実の香りが何層にも重なり、複雑な甘味が口の中に広がる。缶ジュース一本だけで嫌なことを全部忘れられる。幸せだ。

「んはぁ〜〜〜っ!!」

 全身に溜まったストレスをベンチに置いていくようにつま先から頭の先まで、力を抜いてリラックスする。最近のバイト帰りは、いつもこのベンチに腰かけて、缶ジュースを飲んでいる気がする。
 春の空気を嗜みながらまったりくつろぐのは、とても気分が晴れる。別に嫌いじゃない。
 しかし、バイト終わりのお決まりになってしまっているのは否めない。
 お小遣い欲しさに働いて、そのストレス解消にお金を使っていたら、元も子もない。悪い習慣は早めにやめなくちゃだ。

「よし、さっさと帰って寝よう」

 昨日より早めに缶ジュースを飲み干して、ベンチから歩き出す。
 このときに足もとを見ていなかったのが悪かった。

 ――ガッ。

「――あ」

 大地がひっくり返る。油断していたし、バイトの疲れもあったせいだろう。バランスを崩して、ド派手に転んでしまう。

「痛たたたッ……っ、て……っえ?」

 何につまづいたのだろう。
 足元を確認しようと振り向いたとき、ベンチの後ろで、動く影が見えた。
 街灯の明かりだけでは、薄暗くてぱっと見じゃわからなかったけれども、その影は人のような形をしていて、コヨミが足を引っ掛けたスクールカバンと何かしらの関係がありそうだった。

「あなた……何、してるの?」

 受け身を取った手のひらが痺れるように痛むけれども、コヨミはすぐに立ち上がり、影に近づいた。

「……ひゃ”っ!?」

 ベンチの後ろに膝を抱えるように隠れていたのは女の子だ。
 ボブカットの黒髪の下で、黒い瞳を見開いて、背中越しに、コヨミを凝視している。
 白いブラウスと、ベージュのバルーンスカートを着込む彼女の背中には、異様な存在を放つ道具が装着されていた。
 首、二の腕、両手首。計五箇所の革枷を、一つに繋ぎとめる金具が蜘蛛の巣を張り巡らすように彼女の上半身を拘束している。
 ガチャガチャ、と音を鳴らすそれらを”とある分野”で説明するならば、”SMプレイの道具”としか想い当たらなかった。
 
「――むぅ”っ!」

「ちょ、ちょっとっ!? どこ行くの!?」

「んむぅ”っ!」

 コヨミから逃げ出すために、拘束された姿のまま彼女は突然走り出した。走り出したといっても、左右の足首には鎖で繋がれた革枷が装着されている。
 一定の間隔しか伸ばせず、足取りは生まれたばかりの小鹿のようにおぼつかない。
 コヨミが軽く走りこんでしまえば、彼女を捕まえるのは容易だった。

「――ングッ!?」

「あ、ごめん」

 そのとき掴んだのが彼女の首輪から伸びているリードだったのは偶然だ。
 意図して掴んだわけじゃない。すごい苦しそうな声が聞こえてきたけれども、大丈夫だろうか。もしかすると、結構強く首が締まったかもしれない。
 でも、突然逃げ出した彼女が悪い。逃げ出されると、捕まえたくなってしまうのが人間の性だ。

「んむ”ぅうう!!?」

 コヨミが彼女を捕まえたことで、彼女は言葉にならない声を出しながら、リードに抵抗していた。
 拘束された上半身に力を込めているらしく、連結された金具がガチャガチャ、と騒がしい音を鳴らし、必死な声を漏らしながら、身をひるがえして拘束から抜け出そうと躍起になっている。
 だが、彼女を拘束する枷は緩む気配がない。

「ちょ、ちょっと……っ、落ち着いて……っ!」

「ひゃえ”っ!! ふぁえへっ!!」

 彼女は口にボールを咥えていた。いや、正しくは口にボールが咥えこまされている。
 頬を横に割くベルトが口に咥えたボールを吐き出せないように固定しているのだ。
 こんなものを口に咥えさせられていたら、そりゃ、喋れるはずがない。
 両手も背中で拘束されているし、ここまで厳重に拘束されていて、見ず知らずの人間に捕まるというのは、末恐ろしいことではないだろうか。
 今頃になって、自分がどれほど酷な仕打ちを彼女に与えているのかコヨミは理解してしまう。

「ま、待って、何もしないっ! あたしは何もしないから、安心して! ね?」

「ふぇ……っ、ひはぅほ?」

 何か言ってるみたいだけれど、口が塞がれてて意味がわからない。ここで外してあげようと思ったけれど、遠くからこっちに人が向かっているのが見えた。さすがに、他の人にも見つかるのはマズイ。

「と、とりあえず……ここじゃなんだから、あっちに行こう……って、そっか。リードあたし持ってるからついてくるしかないか」

「んむ」

「じゃあ、こっち、ここだと人がきちゃうから急いで」

「ンンっ!?」

 リードを引くたびに変な声を漏らす彼女を連れて、ベンチに置いていた自分のスクールカバンと、彼女のものであろうスクールカバンを回収し、木々に囲まれた木陰に隠れた。

「……っ、ぅぅ……んっ、……ぅ……んぅ、ん……」

 隠れている間も彼女は身をよじりながら、艶めかしい声を漏らしていた。

 ——ガチャッ。

 ——ガチャッ、チャッ。

「…………」

 金具が擦れる音が気になる。
 厳重に拘束されてるから苦しいのはわかるけれども、少しくらい抑えてほしい。
 もし、第三者に見つかってしまったら、彼女をこのように辱めているのがコヨミということになってしまう。
 それだけは絶対避けたい。

「ふぅ、行ったね……」

「んぅ」

 人が通り過ぎたのを確認して、気を緩める。
 彼女の表情は、暗くてよく見えないが、コヨミと同じ想いらしい。
 事情はわからないけれども、拘束は外してあげたほうがいいだろう。
 そのためにも街灯の恩恵が受けられる場所へ彼女を連れて戻る。特に抵抗することなく、彼女はついてきてくれた。

「えっと……まずはその、口のやつ外していくね?」

 彼女の上半身の拘束に手を掛けるより先に、まずは、彼女の口を塞いでいる黒いボールを外すことにした。口がふさがれていると会話ができなくて不便に感じたのだ。

「んっ、んあ……っ」

「ちょ、変な声出さないでよ……」

 頭の後ろで留められているベルトのバックルを緩める。あとは口からボールを吐き出してもらえれば、簡単に外せそうだ。

「んぁ……ぷは……っ、はぁ、ん……ぅ、あッ」

 街灯の光に照らされて銀色の糸が滴る。
 口から外れた黒いボールには彼女の唾液がべっとりと付着していた。
 彼女の白いブラウスを見てみると正面のところどころが唾液で汚れていた。もしかしたら、ずっと涎を垂らしていたのかもしれない。
 この黒いボールは言葉を奪う以外にもそういう用途があるみたいだ。
 コヨミもこの黒いボールを口に咥えてしまったら彼女と同じように口から涎を垂らしてしまうような、だらしない状態になってしまうのだろうか。
 だとしたら――。

「あ、あの……なんで、助けてくれたんですか?」

「――え?」

 ずっしりとした重みを感じる黒いボールに集中していて彼女のことをすっかり忘れていた。

「わたし、こんな拘束されてて、すごく変な恰好してるのに……どうして助けてくれたんですか?」

「別に、理由なんてないよ。たまたま見かけたから、なんとかしてあげようって思っただけ。それよりも、あなたはどうして拘束されてるの? 警察とか呼んだほうがいい?」

「け、警察はダメですっ! 実は……その、”自縛”をするのが好き、なんです!」

「……じ、じばく?」

「自分で自分を拘束しちゃうんです……えっと、セルフボンデージっていえばわかりますか?」

「ごめん……ぜんぜん、わからない」

「で、ですよね……」

「上半身のそれ、外してあげたほうがいい?」

「あ、お願いします……! 今日はもう、満足したので」

 そう言って、彼女はコヨミに背中を向けてくる。そこには先ほど見た蜘蛛の巣のようにつなぎ合わされた金具による拘束が施されていた。
 首、二の腕、手首。計五箇所、それぞれに嵌められた革製の枷と繋がる金具が鉄の輪を中心に彼女の上半身の自由を奪っている。
 この拘束を、彼女は自分で施したらしい。ありえない。こんなの、どうやって外すつもりだったんだろう。

「……外していくね」

 しかし、外すのは意外と簡単だった。
 ナスカンだ。
 キーホルダーに使用されるかぎ爪のようなホックが両側に付属された金具と、革枷に付属したD型のリングを、背中の丸いリングに繋いでいるだけだ。
 これなら引っ掛けるだけだし、自分で拘束することも、自分で外すことも、容易だ。でも、彼女はコヨミから逃げるとき、そうしなかった。
 どうしてだろう。

「コヨミさん、ありがとうございます」
 
「いいよ。これくらいならなんでもないし」

 すべてのナスカンを外し終えれば、彼女の首、二の腕、手首、に嵌る革枷は拘束力を失い。ただのアクセサリーに様変わりだ。
 足首の革枷に繋がっている鎖は彼女――シホリ――の手で簡単に外せてしまった。
 ちなみにナスカンを外している最中にシホリと自己紹介をした。どうやら、コヨミとシホリは同じ学年らしい。少しだけ、親近感が湧いてくる。

「カバン頂いてもいいですか?」

「あぁ、うん。こっちがシホリのだよ」

 カバンを受け取り、お礼を述べるとシホリは手足に嵌めてある枷を外し始めた。片手で外すのはすごくやりにくそうだ。

 なにはともあれ。事件性のあるものじゃなくてよかった。誘拐とか、監禁とか、そういう類の話しになってくるとコヨミもどうしていいかわからなかったけれども、シホリが望んで自分を拘束したのなら、話は別だ。
 誰かが困るわけでもないし、シホリの拘束は外し終えたし、何もかも解決――。

「――――」

 いや、待て。何も解決してない。

 そもそもシホリは、なぜ自分のことを自分で拘束していたのだろう。
 もしも、ここに居るのがコヨミではない悪い大人だったとしたら、シホリはどうなっていただろうか。
 抵抗する術を持たないシホリを誘拐することは簡単だ。誰かもわからない赤の他人に主導権を全部握られて、何も抵抗できずに、無理やり連れ回されるなんて、コヨミなら絶対に嫌だ。
 そんなリスクと表裏一体の行為を人目がある公園で行うなんてどうかしてる。

「こんな危ないこと。もうやめなよ?」

 シホリの事情も知らずに、コヨミは軽い気持ちで伝えた。自分に見えている範囲で事故や事件が起きるのが好ましくないと考えた結果に出た言葉だった。

「やめないですよ? 今回はコヨミさんのおかげでスリルがあってすごく興奮しましたし、また日を改めてやってみようと思います」

「いや、スリルとか、そういうんじゃなくて……」

「コヨミさんもやってみたらわかりますよ、すごく気持ちいいですから」

「”こんなこと”して”気持ちよくなるなんて、絶対おかしい”から……っ、もうやめなっていってるの、危ないし、本当に事件に巻き込まれたりしたら苦しい想いするのはシホリだよ?」

 心の底からシホリを心配して、シホリを諭すために言ったつもりだった。でも、思っていたよりも強い言葉が出てしまった。他意はなかったけれども、言い方は悪かったかもしれない。

「コヨミさんは……気持ちよくならないんですか?」

「な、なるわけないでしょ? 拘束されて気持ちよくなるなんて絶対おかしいって」

 しかし、シホリから返ってきた言葉は別のところに注意が向けられていた。コヨミからしてみれば、伝えたいのはそこではないのだが、シホリの中では自縛というプレイについての話しに切り替わってしまっている。
 とりあえず、話しの方向性を別に向けないと説得の意味がない。

「じゃあ、証明してください」

「え、いや……なんで、そうなるの? あたしは、ただ……っ」

「コヨミさんが拘束されて気持ちよくならないこと、証明してくれたら、”こんなこと”やめます」

 やられた。
 場の空気とか、雰囲気とか、読むのは苦手なほうだったけれども、そういうの全部シホリに持っていかれた。
 コヨミがここで「証明するのは嫌だ」といえば、「シホリが言っていること全てが正しい」と納得したのと同じになってしまう。
 そうなってしまったら、コヨミも、シホリと同じ「拘束されると気持ちいい」という価値観を共有したことになってしまう。
 いくら何でも、それは受け入れられない。

「……あたしが証明したら……っ、本当にやめるの?」

「はい、証明してくれたらやめます。今後一切、“こんなこと”はしません」

 シホリの眼差しは真剣だった。どう見ても本気だ。対してコヨミの心臓はドクドクと脈打ち、緊張しているじゃないか。
 これではまるで、コヨミのほうが変なことを言っているみたいだ。
 でも、コヨミは”拘束されて気持ちよくなる変態”じゃない。たとえ、コヨミが拘束されたとしても、シホリが考えているようにはならない。

「……わかった。なら、あたしが“証明”してあげる……っ!」

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