かきこき太郎 2024/05/18 18:58

メンズメイクをしたかった少年は母親から可愛い女装メイクをさせられる。

「あれ、拓真。何してるの?」

朝のパートの仕事から帰ってくると中学3年生の息子、鈴村拓真が洗面台で鏡を見ながら睨めっこをしていた。
何をしているのだろう、夕方の時間帯に髪の毛を弄る理由も特に思い浮かばない。高校生であれば、これからアルバイトなので軽く身なりを整えるという意味で洗面台で睨めっこをしている理由もわかるのだが、彼はまだ中学生であり彼が高校に進学するまで残り1ヶ月ほどの猶予は残っている。

「あっ、おかえり〜……んー、なんか上手くいかないな」

「えっ、一体何を……あら、それってお化粧?」

洗面台の横に置かれたボックス状の黒のポーチ。それはどう見ても女性用の物であり、男が使用するには些か可愛らしく感じる。それにそのポーチは2つ上の高校生である娘、拓真の姉に当たる少女の私物であった。
そして拓真が今、何をしているのかというと洗面台の前でお化粧をしていたのである

「んー、これぐらいかな?いや、でも……なんか不恰好だし」

「拓真……その、もしかしてそういう趣味というか癖があるの?あれだったら、ご飯前か寝る前に話を聞くけど……」

「………ち、違うわっ!あーもう、母さんは知らないの?美容男子ってやつだよ!」

少し慌てながら母親の言葉を否定し、ポーチの中からメイク落としのウェットティッシュを取り出して顔についた化粧を綺麗に落としていく。それが終われば、何か説明をしたいような表情を浮かべたので、拓真の後についていきリビングへと向かったのだ。

椅子に座り息子の拓真からの話が始まる。
何やらcmや動画サイトとかで肌が綺麗な男子、そして美容系を意識している男性はモテると目にした彼は自分なりに美容系男子高校生になるべく、姉から事情を説明してメイク道具を借りて化粧をしていたのだ。

「なるほどね〜でも、今の姿でもだいぶ可愛いと思うけど」

「いや、細かいところとかさ。その、鼻先のデキモノとか頬のシミみたいなやつとか……」

思春期となれば肌が荒れる事は多々ある。彼なりに不安な事も多いようで、それが原因でモテないのは少し可哀想だと母親として心が動いた。

「わかったわ、明日のお昼頃、お母さんがお化粧をしてあげる。やっぱり女性がやった方がキレイになるしアドバイスも出来ると思うから」

「そ、そう?まぁ、今春休みだし別にいいけれど……」

そうしてガサゴソとポーチの中にコスメをしまい部屋へ戻っていく。
自分が学生の頃では考えられなかった事、なんて思いながら拓真の母親は夕食の準備へと取り掛かった。しかし、拓真自身も予知していなかっただろう……まさか自分がお古のセーラー服を着させられてお化粧をされる事になろうとは……

「さてと、昨日の続きって感じかしら?お化粧を始めようね〜」

「ちょっ!?な、なんで姉さんのお古のセーラー服を着せられてんだよっ!?俺、そういう意味で化粧する気じゃ……」

拓真と母親しかいないリビングにて彼の嘆きに似た声が響く。
それもそのはず、彼の格好というのは紺色を基調としたシンプルなセーラー服を着させられていたのだ。袖口に小さなほつれも見える、クリーリングしてシワ一つない状態であるが、甘い香りがするのはソレを所有している人物というのが、女子高生である姉であり彼女の洋服と一緒に保管されているからだろう。

「お姉ちゃん、身体大きかったしちょっと小柄な拓真にはぴったりのサイズよね〜ほんと」

「ふふっ、ごめんね〜拓真。お化粧するのは良いんだけど、あまり男性にやったことなんて、お母さん、経験ないしさ。だからイメージを掴むために女の子の洋服を着てもらったのよ」

「そ、それはわかったけれど…でも、これじゃあ……」

これではただの女装と何ら変わらない。自分が求めていたのは、韓流系の透き通った中性的なファッションメイクなはずなのに。
セーラー服を着て男子にしては少し長めのショートカットの髪型では、見た感じ女子生徒にしか見えない。
これなら化粧なんてやめるべきだろうか、いや……母親なら自分の気持ちを汲んでくれるはず!

「はぁっ……じゃあ、お願いするよ。絶対に女の子みたいなメイクにはしないでね!!」

「うん、大丈夫だよ〜お母さんに任せない♪」

不安しか感じられない中で母親はメイクを開始していく。少し伸びた髪の毛は髪留めで斜めに固定した後、コットンに染み込ませた化粧水で顔表面についた汚れをきれいに拭き取っていった

「肌が綺麗で羨ましいな〜女子みたいにもちもちのお肌だし、お母さんも拓真みたいな肌が欲しいかも」

コットンで汚れを取っていく彼女は独り言のように呟いていく。肌の状態を母親に褒められていき、なぜだが恥ずかしさを感じてしまうが、彼女は気にせずに次の工程へと進めていく。

「下地を塗っていくからね〜クリームとファンデーションかな?あと、コンシーラーも」

ひんやりとした指のヒラについた液体が鼻先と頬、そしておでこなどについた後、広げるように塗られていく。綺麗に範囲を広く塗られていき、動きが止まれば次はクッションのような感触が当たった。ファンデーションだ。

(こんな感覚なんだ……なんだか、化粧が肌に染み込むように押し込んでいく感じで……)

下地クリームの塗られた箇所にクッションが当てられていき、細かい箇所や塗り潰せなかった部分をコンシーラーで消していく。
ここまでは良かった、自分もやりたかった化粧であるためにきめ細やかな化粧というのは初心者ではそう簡単に出来ないものであるのだから。

だが、ここで拓真の母親はそれ以上の工程へと動き始める。

「さてと、、、それじゃあ目の方もいじっていこっか?」

「……えっ!?今日はメンズメイクって話じゃ!?」

「だって拓真の顔があまりにも可愛くて〜お願い!今日1回だけ、お母さんにメイクさせて!」

いやだと拒否をしよう……っと思っていたけど、喉奥にまで言葉で出てきてすぐにソレを引っ込めてしまう。あれだけ女装をしたくない、そう思っていたのに彼は少しその後の姿に興味を持ってしまったのだ。

(俺の女装姿ってどうなるんだろう……)

母親は拓真へのメイク中、しきりに可愛いという言葉を連呼していたのである。言葉というものは特別な力があるとどこかの誰かが言っていた。言霊というものも存在している中で、彼は母親の提案を呑んだのだった。

「……わかった、今日だけだからね?」

「ありがと〜!お姉ちゃんにも負けない可愛い姿にしてあげるからね!」

そこまで求めていないのだが……そう、言いたかったけれどノリノリな母親の水を差すと思って何も言わずにメイクされていく。

「さてと、眉毛もちょっと細くしたいからシェーバーで剃って……付けまつ毛とかつけてみる?」

「もう、好きにして……」

振動するモーター音が近づいていき、眉毛に触れてそのままジョリジョリと毛を剃っていく。
それが終われば、今度はアイメイクを始めるようで、「どんな色合いがいいか」とか「マスカラは何がいいか」なんて言葉を拓真に投げかけていった。

(わかるわけ無いだろ!メイクした姿がどうなるかなんて!)

ロングなりボリュームなり、カールタイプなり色々なタイプのマスカラを掲示されるが、今日初めて知るようなものばかりで希望を言えるわけもない。

「それじゃあ、ロングタイプで塗っていこっか。ビューラーを使ってまつ毛を上げていって……」

器具でまつ毛を引っ張りそのまま上へと向けたあと、そのままマスカラを塗っていく。

「アイラインを引いていくよ?動かないでね、ずれちゃうと目に入っちゃうかもしれないからさ」

優しい筆先のような感触が目頭の辺りからスーッと目尻へと引かれていき、何度か修正を加えて納得のいく線が引けたようだ。
キャップを閉じる音が聞こえた後、次は別のものを開ける音が聞こえる。それはどうやらアイシャドウで目の周りを専用のブラシで拓真を彩っていった。

「ふふっ、春だから可愛いピンク色を塗っているよ〜可愛い可愛い♡」

ノリに乗った母親の口から発せられる言葉は何処か楽しそうな声色をしている。

(可愛いか……ちょっと、嬉しいかも……)

自然と口元が緩んでしまうのに気がつき、きゅっと口角を元に戻していく。だが、その様子は母親に見られていたようで彼女が小さく笑った声が聞こえた。

「さてとチークと唇に色をつけて化粧は終わりかな?はーい、唇をきゅっと前へ突き出してね〜そうそう、キスをする感じに…」

(うぅっ///なんだかこれが一番恥ずかしいかもっ///き、キスをする感じってこうかな?)

目を閉じているために今の自分の姿が分からない。とりあえず、言われた通りに唇を塗りやすいようにしていき、ゆっくりと少年の唇をピンク色のグロスがなぞられていった。

「はい、完成だよ。ほら、洗面所に行こっか」

「う、うん…」

目を閉じたままの拓真の腕を掴み、ゆっくりと鏡のある洗面台へ連れていき、彼女の合図とともに目を開けていった。

「……嘘、これが……えっ?」

薄めであるが春らしいピンク色のメイクが施された可愛らしい顔のセーラー服の美少女が1人。

「何だかお姉ちゃんにそっくりの見た目ね、とっても可愛いわ。姉妹みたい」

「ねぇ、拓真?これから夕飯の買い物に行こうと思っているんだけどそのままの格好で行かない?」

そんなの恥ずかしいに決まっている…それなのに拓真は首を縦に振って同意を示した。靴箱から姉がしようしている替えのローファーを履いて玄関を開けていく。

本来の目的とは違ったお化粧。メンズメイクとは程遠い可愛い今時の女子メイクであるが、彼がそのあと化粧にはまり女装にもハマっていくキッカケとなっていくのであった。

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