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この後の展開が気になる方の記事 (31)

おかず味噌 2020/11/29 16:00

ちょっと悪いこと… 最終話「失便と未来」

(第三十一話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/395268

 ついに――。私は「やってしまった」。
「彼」の前で、ではなく「弟」の目の前で「お漏らし」を――。
 しかも「おしっこ」ではなく、それよりずっと恥ずかしい「うんち」を――。
 その上「健康便」ではなく、それよりずっと柔らかい「下痢便」を――。
「スカート越し」に「ショーツの中」に、思いきり「ぶちまけて」しまったのである。

「失便」「着衣脱糞」「うんちお漏らし」――。
「排泄感」「不快感」「絶望感」。
 私の「姿」を見た純君は、というと――。
「驚嘆」「憐憫」「同情」。
 その姿を「視られた」私は、というと――。
「羞恥」「背徳」「後悔」。
 それらが「綯交ぜ」となった「感情」の中で――。
「うんち漏らし」の「快感」によって――。
 思いがけず、私は「達した」のである。

 純君は私の「後始末」を「手伝う」といっておきながら――。
 私の「スカート」を捲り上げ、私の「ショーツ」をずり下ろし。
 私の「粗相の跡」を「確認」し――。
 こともあろうに、私の「うんち」を「堪能」し――。
 それから、「姉弟」としてあるまじき「行為」。
 私の「アナル」に「ペニス」を「突き立て」――。
 それによって、またしても私は――、
「果てた」のであった。

 これまで「数度」の「小・お漏らし」。
 私にとっては、すっかり慣れた「感触」とその「感覚」。
 だがそれを遥かに凌ぐ、まさかの「大・お漏らし」によって――。
 私は――、私自身は――、私の「日常」は――。
 果たして、どう「変化」していくのだろう。

 何はともあれ、私の「物語」はこれにて「閉幕」。
 それでも私の「人生」は相変わらず「続いて」いくのだろうが。
 ひとまず、一旦は「お仕舞い」。
「終わり」か「始まり」か、それすらも分からないけれど――。
 とりあえず、ここで「完結」を迎えることとなるだろう。

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おかず味噌 2020/11/24 16:00

ちょっと悪いこと… 第三十一話「弟の視点 ~肛門と芳香~」

(第三十話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/369724

ついに――。僕の「眼前」で「やってしまった」お姉ちゃん。
「大人」としてあるまじき「失敗」、「女性」としてあり得ない「失態」を晒し――。
「後悔」と「羞恥」をその身に受けつつも、為す術もなく、ただただ「立ち尽くす」姿。
「臭い」も「汚れ」もそのままに、明らかな「不快さ」を思わせる「下痢便お漏らし」。

 けれど僕は、自らの「内」から湧き上がる「衝動」に打ち震えていたのだった――。

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おかず味噌 2020/11/20 16:00

ちょっと悪いこと… 第三十話「弟の視点 ~御恩と咆哮~」

(第二十九話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/382975


――純君、お姉ちゃんもう出ちゃいそうなの…。

「両手」で必死に「お股」を押さえて、「涙目」になりながらお姉ちゃんは言う。

――お願いだから、「おトイレ」に行かせて…!!

 お姉ちゃんは僕に「懇願」する。昔から「お願い」するのは、大抵「僕の方」だった。いつだって、僕の欲しい「玩具」を持っているのは「お姉ちゃんの方」だったし(お姉ちゃんが持っているから欲しくなるのであって、いざ手に入るとすぐに飽きてしまうのだが)、「遊んでほしい」「構ってほしい」とゴネるのはもはや僕の「専売特許」だった。だけど「今だけ」は――。

 お姉ちゃんの「望むもの」は――、「行きたい場所」は――、僕の「方」にあった。
「廊下」の真ん中、「トイレ」の真ん前で、僕たちは向かい合っていた。僕の「後ろ」、お姉ちゃんから見ると僕を隔てた「向こう側」に「それ」はある。今、最もお姉ちゃんが求めるべき「救いの場所」が――。

「優秀な姉」を持つというのは「弟」からすると「タイヘン」なものなのだ。あからさまに「比較」されることは少なくとも、度々「お姉ちゃん」を「引き合い」に出され――、「お姉ちゃんはこうだった」とか「お姉ちゃんはこうじゃなかった」と「大人たち」は皆、ただ「姉弟」というだけで「同じだけ」の「願望」を僕に求めてくる。

「中学」に上がって「最初」の「クラス」の「担任」は、かつてお姉ちゃんを受け持ったことのある「先生」らしい。最初の「ホームルーム」の後、僕はその「先生」に――、

「松永さんの『弟』なんだね」

 と言われた。大して「珍しく」もない「名字」だが、「名簿」を見てなぜだか「ピン」と来たらしく――。数多くいる「教え子」の内、それから数年が経つにも関わらず。ただ「名字が同じ」というだけで「もしや」と思い出されるほど、それくらいにお姉ちゃんの「威光」は「健在」であるというわけだ。そして――、

「『期待』してるよ!」

 と、なぜか「謎」の「信頼」を寄せられたのだった。それを言われた僕はというと、「嬉しい」とか「良かった」という気持ちは全くなく。むしろ、盛大な「プレッシャー」に「押しつぶされそう」になっただけだった。

「親戚」やはたまた「両親」に対しても、その「恩恵」は「有効」で。それはまさしく「水戸黄門」の「印籠」のように。「偉大な姉」の残した「功績」は、あくまで僕のほんの少し先にある「足跡」として――僕が望む望まないに関わらず――僕の進む「道」を、「歩きやすい」ように「明るく照らす」のだった。(それが、実は僕を「歩きづらく」させているのは別として…)

 いつだって「家族」の話題の中心は「お姉ちゃん」にあり、そこにおいて僕はただただ「従者」の如く、まるで「助さん、格さん」のように「脇役」に甘んじるしかなかった。
 そうしていざ――最近「漫画」なんかで流行っている「スピンオフ作品」のように――僕に「スポットライト」が浴びせられると。ただ「弟である」というだけで、「過度」な「期待」は容赦なく僕に「降り注ぐ」のだった。そしてそれは僕が「大きくなる」につれて、より「分かりやすい」ものになっていった――。
 思えば、僕がある「時期」から「無意識」にお姉ちゃんを「避ける」ようになったのも、そうした「姉の七光」に「嫌気が差した」からかもしれない。

 だけど、あくまで今この「瞬間」だけにおいては――、
「立場逆転」。今や「エラい」のは「年長者」である「姉」ではなく、僕より「勉強」が出来る「大学生」のお姉ちゃんではなく、「不出来」な「弟」である僕の方だった。

 僕はお姉ちゃんを「トイレ」に行かせないよう、「通せんぼ」をしていた。

 別にお姉ちゃんを「嫌っている」わけでも、「ムカついている」わけでもない。むしろ「あんな事」があってさえ僕に対する「態度」を変えることなく、変わらず「優しい」お姉ちゃんのことが僕は「大好き」だった。でも、それとこれとは話が別なのだ。
 あくまで「いじわる」のつもりだった。似ているけれど「いやがらせ」とは違うし、ましてや「いじめ」なんかではないつもりだった。

――このままだとお姉ちゃん、「お漏らし」しちゃう…。

 ついにお姉ちゃんの口からその「言葉」が飛び出す。「お漏らし」という「四文字」。「大人」がほとんど言うことなく、ましてや決してすることのない「恥ずかしい失敗」。
 その「一線」を今、お姉ちゃんは「越えよう」としていた。
「アソコ」が「ムズムズ」してくる。「全身」から「そこ」に「血液」が集まってくるような感覚と同時に、僕の中の「意地悪な気持ち」がさらに加速し、高められてゆく――。

――ダメだよ。

 僕は短く言った。すると、お姉ちゃんの顔に「絶望」が浮かんだ。

――いいじゃん。どうせ、いつも「お漏らし」するんだから。

「皮肉」を込めて僕は言った。自分の口からも出たその「ワード」に、僕はまた少し興奮を覚えた。

――イヤだ!!恥ずかしいから…。

 お姉ちゃんは下を向く。その体は「小刻み」に震え、何度も足を組み替えたりしている。かなり「限界」が近いのだろう。
 お姉ちゃんが押さえた「スカート」のその「内側」――、その「中」の「景色」を、僕はすでに知っている。そこから「溢れてくるもの」についても、もう僕は一度視ている。
 だからこそより「リアル」に、お姉ちゃんの「我慢」がひしひしと伝わってきた。

――本当にムリ!!「おしっこ」出ちゃう!!でりゅ~!!!

 そして。ついにお姉ちゃんは「決壊」を迎えた。スカートの中から「一筋」の「水流」がもたらせられるはずだった。そこで僕は――、


「目を覚ました」のだった。


 一瞬、何が起こったのか分からなかった。ついさっきまで、確かに「廊下」にいたはずなのに、次の瞬間には「ベッドの上」にいた。あるいはこれが「瞬間移動」「空間転移」というものなのだろうか。それとも、あまりに「衝撃的」な光景を目にしたことで、僕は「気絶」してしまったのだろうか。
 だが。「記憶」を紐解くように、一つずつ順番に「思い出して」みようとすると――。所々に「空白」があり、そもそもそこに至った「過程」というものがごっそりと抜け落ちていた。それに。よくよく考えてみれば、あまりに「チグハグ」であり得ない「状況」だった。「夢」を見ていたのだと、そこで僕は初めて気付いた。

「夢」というものはどうしていつも「唐突」に、それも一番「肝心な良い所」で終わってしまうのだろう。あともう少し、ほんの一息で「クライマックス」が見れたというのに。「ラストシーン」はいつだって、手の届かない場所にあるのだ。

 僕はもう一度、「眠ろう」かと考えた。あるいは「続き」が見られるかもしれない、と淡い期待を抱いたからだ。だけど経験上、「見たい夢の続き」は決して見れないものなのだ。であるならば、まだ「夢想」が「リアル」な内に、せめて自分の「想像」で「先」を補おうと。僕は目を閉じて、瞼の裏にその「情景」を思い浮かべた。
 すでに「固く」なった「おちんちん」に手を伸ばす。それを「想像の世界」を旅する「乗り物」の「ハンドル」に見立てて、強く握りしめる。

――本当にムリ!!「おしっこ」出ちゃう!!でりゅ~!!!

 そこまで「巻き戻し」、「再生」する。聞き馴染んだお姉ちゃんの「声」で、夢の中の「発言」を「再現」する。そして、今度こそ――。

――ジョボボボ…!!!

 お姉ちゃんは「お漏らし」をした。お姉ちゃんの「スカートの中」から生み出された「おしっこ」が強かにフローリングに打ち付けられる「音」を、確かに僕は聴いたのだ。
 お姉ちゃんの「パンツ」がみるみる内に濡れ「湿った色」になってゆくのを僕は視た。(本当は「見えない」のだろうけど、想像は「夢の中」以上に「思い通り」なのだ)
 何度だって、その「瞬間」を繰り返す。最初の「一滴」が零れ落ち、やがてそれが「滝」になってゆく様子を観察する。そして、何度目かの「繰り返し」の時。お姉ちゃんの「決壊」と同時に、それに合わせるように、僕は「射精」した。

――ドクン、ドクン…!!

 全身を包み込む「気怠い」感覚と、おちんちんに残った感触。その「余韻」にしばらく浸っていた。そしてそれらが引いていくと同時に、失っていた「罪悪感」が襲ってくる。「イケないことをしている」という実感が確かにあった。

――これでもう「何回目」だろう…。

 お姉ちゃんのことを「想って」、お姉ちゃんを「おかず」にしてしまうのは――。
 その「行為」を「覚えて」からというもの、それをする時はいつだってお姉ちゃんのことを考えてしまう。「状況」は違えど、時には「テレビ」や他で見た「創作物」を頼りにしながらも、けれど「相手」はいつも「お姉ちゃん」だった。そして、「妄想」の中の「彼女」は何度だって「お漏らし」をしてしまうのだった。

 僕はきっと「オカシイ」のだろう。「家族」であるお姉ちゃんに対して「そういう目」を向けてしまい「あらぬ想像」を抱いてしまう。もはや「異常者」以外の何者でもない。僕はすっかり「変態」になってしまったのだ。
 でもそれは、何も「僕だけのせい」ではない。「お姉ちゃんのせい」だってあるのだ。「あの夜」お姉ちゃんは少し「ヘン」だった。僕の部屋に入ってきた時から、お姉ちゃんの「様子」はどこかいつもと「違って」いた。
 いや、「ヘン」だったのは僕だって同じだろう。いくら「秘密」がバレたからといってあんな「告白」を、さらにはあんな「お願い」をお姉ちゃんにしてしまうなんて――。

 あの夜の「出来事」こそ、まさに「夢の中」みたいだった。何度「正確に」思い出そうとしてみても、上手くはいかなかった。あれほど「リアル」に、僕のすぐ「目の前」にはお姉ちゃんがいて。お姉ちゃんの「お尻」に「お股」に「触れる」ことだって出来ていたのに。その「感触」を「匂い」を思い返そうとすればするほど、それらは「モヤ」が掛かったみたいに、薄い「ベール」を隔てた「向こう側」にあって、決して「触れられない」場所に存在するみたいだった。
 一つ一つの「行為」は「体験」はそれこそ「断片的」に思い浮かべられ、まさしくそれは「夢」のその「特徴」にとてもよく似ていた――。

 僕は「ベッド」から起き上がる。今日は「休み」でまだもう少し「ごろごろ」していたかったけれど、いつまでも寝ているとまた「ママ」に叱られてしまう。
 それにもう少し寝るにしたって、その前に僕には「やらなければならない事」がある。
 僕は「パジャマ」も「トランクス」も脱がずに「射精」してしまっていた。その方が「いざ」という時――急にママが僕の部屋に入ってきた時など――に「緊急回避」することが出来るし、何より僕としてはその「方法」のほうが、何かに「包まれている」ような気分がしてより「安心」するのだった。
(本当ならば「お姉ちゃんのパンツ」に出したいところだが、僕の「悪事」が「バレて」しまって以来、それは控えるようにしている)

 だけど。分かりきっていたことだが、自分の下着の中に「出してしまう」というのは、その後が「気持ち悪い」のだった。これは最近「発見」したことだが――、「精液」というのは、出た「直後」はドロドロと「ゼリー」のような感じをしているが、時間が経つと「液体」のようになってしまう。それが「トランクス」に付き、濡れてしまう。まるで「お漏らし」をしてしまったような「冷たい」感触。あるいはお姉ちゃんも「同じ感触」を味わったのだろうか。

「ベッド」を出て「洗面所」に向かう。パジャマの上からだとさすがに「濡れている」のは分からないだろうが、「臭い」はするかもしれない。それに下着を「洗っている」のを見られないようにしなければ。やはりそれも「あの夜」のお姉ちゃんと「同じ」だった。
 ゆっくりと、なるべく音を立てないように「ドアノブ」をそっと回そうとした。そこで僕は思い出す。今日は家に誰も「居ない」ことを――。

 そういえば昨日の夜、ママに聞かされていた。
「明日はパパの会社の人の結婚式に行く」のだと。
「パパ」だけでなく「ママ」も結婚式にわざわざ「お祝い」に行くということは、ママの「知り合い」でもあるのかと思い僕がそう訊くと、どうやらそうではないらしい。
「付き合いよ」とママは苦笑しながら答え、パパはなんだか申し訳なさそうに小さくなっていた。「そういうものなのか」と僕にだって少しくらいは「大人の事情」というものが理解できたが、「大人はタイヘンだな~」とやはり子供じみた感想を抱いただけだった。

 お姉ちゃんは今日も「バイト」らしく、夕方まで帰らないらしい。ということはつまり、今この「家」に居るのは「僕だけ」ということになる。
 こんな事なら、もう少し寝ていても良かったと「後悔」した。「口煩い」ママの居ないこんな日だからこそ、ここぞとばかりに「自堕落」を発揮するべきだった。
 それでも。せっかくの「休日」なのだから、もう少し「有意義」に過ごそうという気持ちがしないでもなかった。
 だがどちらにせよ、まずはその前に、僕には「やるべき事」があった。
 僕はもはや「堂々」と、誰に「遠慮」することもなくドアを開け「廊下」に出た。そこで、確かに「その音」を聞いたのだった。

――ピチャピチャ…。

 あるいは「お漏らし」にも似た「水の音」。それは「洗面所」の方から聞こえてきた。

――「誰か」いるのかな…?

 僕の「疑問」はけれど「不安」に変わることはなかった。少なくとも「家族の誰か」であるに違いないと思ったからだ。
 となると、あくまで確率は「三分の一」。それはやがてある一つの「可能性」へと絞られてゆく――。

――もしかして…?

 僕の脳内に「あの夜」覗き見た「光景」が蘇ってくる。決して「夢の中」の「出来事」じゃない。紛れもなくそれは「現実」のものだった。
 お姉ちゃんはまた「やってしまった」のだろうか。あれほど僕の前で「反省」したにも関わらず。だけど思えば、お姉ちゃんは「謝り」はしたものの「もうしない」とは言っていなかった。

「音」を立てないように「静か」にドアを閉める。「あの夜」と同じように、「抜き足」「差し足」「忍び足」で。僕は「白昼夢」を見ているかのように「その場所」を目指したのだった――。

「近づく」につれて、どうやらその「音」が「洗面所」から聞こえてくるものではないことに気づく。もう少し「奥」、それは「浴室」から届いてくるものだった。
 誰かが「シャワー」を浴びているらしい。どうして「こんな時間」に?誰もいないはずの「家の中」。あるいは「家族」ではない「誰か」を想像し、少しばかり僕は「不気味」さを感じた。
「恐怖心」を抱きつつも、けれどわずかに「好奇心」が勝った。恐る恐る、「入口」から「顔だけ」出して覗き込む――。

 曇った「摺りガラス」越しに「シルエット」が浮かび上がっている。だがそれだけの「情報」では「人物」を「特定」するには至らなかった。
 やがて「溜息」が聞こえてくる。聞き慣れた「声」。それは紛れもなく「お姉ちゃん」のものだった。だがそこで再び、僕の中に幾つかの「疑問」が浮かぶ――。

――お姉ちゃんは「バイト」じゃなかったのか。
――どうしてこんな時間に「シャワー」を浴びているのだろう。

 それについて考えている内に、やがて「シャワー」が止められ「水音」が止んだ。

――ヤバい!!

 ここに居るのが知れたら、またしても僕は「あらぬ疑い」を掛けられてしまう。
(いや、かつて僕に掛けられた「嫌疑」はあくまで「冤罪」などではなかったのだが…)

――早く、ここから「逃げ」なければ!!

「逃亡」を図る間もなく「二つ折りの扉」が開かれる。そしてそこから「伸びてきた腕」を目にした時、僕の「視線」は引き剥がせなくなり、僕はそこから動けなくなった。

 お姉ちゃんは「服を着ていた」。

「裸を見れるかも」と少なからず抱いていた「淡い期待」は、けれど「裏切られる」ことになる。「がっかりする」と同時に、またしても次の「疑問」が生まれる。

――どうして?お姉ちゃんはシャワーを浴びていたんじゃなかったのか?

 あるいは「お風呂掃除」でもしているのだろうか。お姉ちゃんのことだから――、それもあり得る。ロクに「お手伝い」もしない僕とは違い、お姉ちゃんは「家事」だって難なくこなすのだ。だけど、どうやらそれも違うらしい。

「フタ」を閉めた「洗濯機」の上には、お姉ちゃんの「パンツ」が置いてあった。

 それがそこにあるということはつまり――、お姉ちゃんは今、「下」を「穿いてない」ということだ。
「お風呂掃除」で「服が濡れる」ことを「防ぐ」ためだろうか。いや、それだってわざわざ「下着」まで脱ぐ必要はないだろう。
 幾つかの「事実」により「消去法」によって残された一つの「可能性」。それはつまり「習慣」としての「入浴」ではなく、あくまで「突発的」な「理由」によって、「必要」に迫られての「沐浴」。僕が「最初」に考えた通り、やっぱりお姉ちゃんは――。

 再び、その「想像」に思い当たったことで。さらに僕はそこから動けなくなる。またしても、お姉ちゃんは「お漏らし」をしてしまったのだろうか?これで一体「何度目」なのだろう。とはいえ、あくまでそれはお姉ちゃんの口からもたらせられた「伝聞」のみであり、実際に僕がそれを「目撃」したわけではないのだが、それでも――。
 お姉ちゃんの「自白」を裏付ける、厳然たる「証拠」として。あるいは「洗濯機の中」には今、お姉ちゃんの「下着」が、「おしっこ」によって濡れた「お漏らしパンツ」が、入っているのだろうか。

「距離」にしてほんの「数歩」。あと少し手を伸ばせば、僕はそれを「ゲット」することが出来るかもしれない。紛れもないお姉ちゃんの「粗相の証」を、「行為」の「成果物」を、この手に収めることが叶うかもしれない。
「壁の影」に隠れたまま、僕はそこから少しずつ「身を乗り出す」。すでにお姉ちゃんは「体を拭く」行程に至っているにも関わらず、「罠」にハマる「小動物」の如く、僕は「無警戒」にも「洗面所」に「足を踏み入れた」のだった。

 そこで。「浴室」から出てきたお姉ちゃんと「目が合って」しまう――。

 より「正確」にいうなら、僕とお姉ちゃんの「目線」は決して「交わる」ことはなかった。なぜなら僕の「視線」は、お姉ちゃんの「下半身」に注がれていたのだから――。

 僕の目はまさしく、お姉ちゃんの「パンツ」に「釘付け」になっていた。
「下着姿」のお姉ちゃん。淡い「水色」。僕の「物色」の「記憶」の中にはない、それは「初めて」見るものだった。
 そして――。「下着」そのものなら、それ「単体」ならば何度も「見ている」ものの。それをお姉ちゃんが「穿いている」のを見るのは、やはり「初めて」のことだった。

 僕はさっき「予め」、「射精」しておいて良かったと思った。これも最近「発見」したことなのだが――、「射精後」というのは「回復」までにそれなりの時間が掛かるのだ。
 いかに「刺激」を与えても「反応」せず、「アソコ」は「元気」にならないのだ。
 だからこそ。すでに一度「射精」を終えていたのは、まさしく「僥倖」といえた。
(もちろん「その後」にこんな「展開」が待ち受けていることなど、思わぬ「おかず」がもたらせられることなど、僕には知る由もなかったのだが…)
 あるいは「射精前」であったなら――、僕は「勃って」しまっていたかもしれない。
 お姉ちゃんの「パンツ」を目にしたことによる僕の「反応」を、「条件反射」とでもいうべき「欲情」を。パジャマのズボンの「前面」に表れた「隆起」によって、知られてしまったかもしれない。僕の「勃起姿」を見られていたかもしれなかった。

 僕の「安堵」とは別に、むしろそれについては「そっちのけ」で。僕の「視界」は相変わらず、お姉ちゃんの「そこ」で満たされていた。
「勃って」いようといまいとも「男子」であれば確実に「あるはずのモノ」が。だけど、お姉ちゃんには「存在しなかった」のである。
「考える」までもなく、それは「当たり前」だった。「保健の授業」で習わずとも、僕はそれを「知っている」。「男子」における「性器」、その「棒状のモノ」の「代わり」として、「女子」には「性器」としての「穴」が「付いている」のである。

 お姉ちゃんの「下半身」、「パンツ」のその「前面」には「何も無かった」。そこに「起伏」はなく「隆起」するものもなく。ただ「なだらか」な「見た目」をしていた。
「パンツ」の上部、その左右には「腰骨」が張り、浮き出ている。細くなった「側部」の「布」は「上半身」と「下半身」とを分かち、その真下からお姉ちゃんのか細い「太腿」が伸びている。
「腰の部分」をよく「観察」すると、「白い部分」と「やや褐色の部分」とが「境界線」を表わしていた。それは恐らく、お姉ちゃんの「穿いていた跡」なのだろう。
 その「下着」は、普段お姉ちゃんが「穿いている」ものより、いくらか「小さめ」の「サイズ」らしい。特に「派手」というわけではなかったものの、果たしてお姉ちゃんはその「小さめの下着」を穿いて、これから「どこに行く」というのだろう。確か、今日も「バイト」だと言っていたはずだ。だけど、それは「本当」なのだろうか――。

「パンツ」の上限、その「ど真ん中」には、可愛らしい「リボン」のようなものがあしらわれていた。
――「プレゼント・フォー・ユー」。
 まるで「贈り物」のような「装飾」は、あるいは誰かに「捧げる」ことを意図したものなのかもしれない。
 さらに「注視」したところで、僕は気づく。「布」と「下腹部」との「境目」、そこには何やら「モジャモジャ」としたものが「はみ出て」いることを。
 それはお姉ちゃんの「陰毛」だった。あくまで「俗称」ではあるのだが、「男子」と「女子」とでその「呼び名」は変わってくる。お姉ちゃんは「女子」だから当然、それは「マン毛」ということになる。
「パンツ」の中に「収まり」きらなかった、お姉ちゃんの「マン毛」が「数本」ばかり「はみ出して」いたのだった。

 些細な「綻び」さえ決して見逃さない、僕の鋭い「観察眼」でもって改めて「パンツ」の「中央部」を確認してみると。その「前面」が実は「なだらか」ではないことを知る。
 そこには「ぷっくり」と、「穏やか」ながらも確かな「丘」があった。「凹凸」などはもちろんない。だけど、お姉ちゃんの「ぺったんこ」の「お腹」とは違う、わずかながらも「膨らみ」があった。
 それこそまさに――、その「内奥」に「洞穴」の如く、お姉ちゃんの「性器」が存在していることの「証明」であった。

「時間」にして、たった「数秒」。その間に僕は「それだけのこと」を思ったのだった。そして間もなく僕の「思考」は、まさしく「お姉ちゃん自身」によって「遮られる」ことになるのだった――。

「純君、起きたの?」

 お姉ちゃんは僕にそう訊ねる。僕が「そこに居た」ことに少なからず「驚き」はしたものの、「どうして?」とは訊かれなかったということはつまり――。お姉ちゃんは僕が「家に居る」ことについては、あくまで知っていたらしい。

「うん、さっき起きたところ…」

 別に「嘘」はついていない。目覚めたばかり、というのは「本当」だった。あくまで「ナニをした」ことを除けば――。

「てか、お姉ちゃんどうしたの?」

 今度は僕が「質問する番」だった。

――「どうして」家に居るの?
――バイトは「どうした」の?
――「どうして」シャワーを浴びていたの?

 そこには様々な「疑問」が「一つの問い」として含まれていた。

 僕に「訊かれた」お姉ちゃんは、分かりやすく「動揺」する。その「反応」がもはや「答え」を表わしているようなものだった。
「優秀」であるはずのお姉ちゃんの「弱点」、昔から「嘘が下手」なのだ。

「いや、なんか『汗』かいちゃって。昨日の夜、ちょっと『暑く』なかった?」

 ほら、やっぱり――。
「ジュースをこぼした」とでも言えば良かっただろうに。むしろここ数日「冷え込んで」きたというのに。お姉ちゃんの「嘘」には、あまりに「無理」があった。
 何か「別の真実」を「隠そう」としているのは「明らか」だった。そして「隠したい」ということはつまり――、

――もしかして、お姉ちゃんまた「お漏らし」しちゃったの?

 僕の口が、そんな風に動こうとした時。けれど「動き出す」のはお姉ちゃんの方がわずかに早かった。
 今さらになって、お姉ちゃんはようやく「それ」に気づいたらしく。ふいに「慌てた」ように、手で「パンツ」を隠そうとする。もはや「手遅れ」であるにも関わらず。
 あるいはその「格好」はまるで――、「我慢している」みたいだった。

「あっ、ごめん…!!」
「ごめんなさい…!!」

 僕たちは「同時」に謝った。やはり似た者「同士」なのだろうか。
 それにしても。「見た側」の僕は分かるとして、「見られた側」のお姉ちゃんまでもがどうして「謝る」のだろう。
 お姉ちゃんがどう思うかは別として。僕としてはむしろ「嬉しいハプニング」であるはずなのに。(いや、それをそう感じることが「姉弟」としては「間違い」なのだろう)

 みるみる内に「羞恥」の顔を「染めた」まま――、すかさずお姉ちゃんは僕の「横」をすり抜け、そのまま「歩き去って」しまう。「洗面所」に「一人」取り残された僕は、元々の「目的」を果たすことが出来ぬまま、ただ茫然と「立ち尽くす」しかなかった。

「今日は『パパ』と『ママ』、居ないみたいだね」

 再び、戻ってきたお姉ちゃんに声を掛けられた時、僕は顔を洗う「フリ」をしていた。「洗面所」に来たのだから、何かしら「目的」が無ければ「不自然」だろう。あるいは、僕が「覗こう」としていたことが「バレて」しまうかもしれない。

「うん。『結婚式』って言ってたよね」

 水を止めて、僕は答える。
――どうして、そんな「分かりきったこと」を訊くのだろう?
 昨日の夕食の時、お姉ちゃんだってその場に居て「聞いていた」はずだ。だが質問の「意図」はともかくとして――、顔を洗い終えた僕はそれ以上することもなく、仕方なく振り返ったのだった。

 お姉ちゃんは「寝巻用」の「ショートパンツ」を穿いていた。そのために一旦部屋に「戻った」らしい。(僕としては少し「残念」だったが、まあしょうがない)

「純君、今日は何するの?」

 お姉ちゃんに訊かれる。何の「変哲」もないその「質問」に――、けれど僕は無駄に「勘繰り」を覚えてしまう。

「べ、別に…!!『ゲーム』でもしようかなって…」

 僕としてはなるべく「平静」を装ったつもりだった。だがそれこそが「余計」だった。休日の「予定」など特に決めてはいなかった。だからそこは、いつもみたいに「別に…」と答えるだけで良かったのだ。にも関わらず、僕はお姉ちゃんのその「問い」に何かしらの「疑心」を感じ取ったのだった。(ある意味でそれは「正解」だったのだが…)

「そっか…。ちゃんと『勉強』もしなくちゃダメだよ?」

 お姉ちゃんは「ママ」みたいなことを言う。だけどその「口調」はあくまで優しく、「諭す」ような「物言い」だった。というよりもむしろ「心ここにあらず」という様子で、お姉ちゃんは「別の何か」を「言いたげ」だった。

「お姉ちゃんは、今日も『アルバイト』?」

 やはり「分かりきったこと」を僕は訊ねる。

「うん…、そうだよ」

 そう答えたお姉ちゃんは、やっぱり何かを「隠している」みたいで。あるいはそれを僕に「打ち明けよう」としているみたいにも思えた。
 だけど結局、その「真実(?)」がお姉ちゃんの口から告げられることはなく、お姉ちゃんの口元がそう「形を取る」ことはなく。あくまで「真相」は分からないまま、やがて「憑き物」が落ちたみたいに。やがてお姉ちゃんの顔からは、その「気配」がすっかり「消え失せて」いた――。

「早起きは三文の得」というのは、どうやら本当らしい。(別に「早起き」でもなかったし、そもそも「得」ではなく「徳」なのだと知ったのはかなり後になってからだった)
 お姉ちゃんは僕に「お小遣い」をくれた。「夕食代」とのことらしい。「帰り」が遅くなった時のために、すでにママからも「500円」を貰っていたから「断ろう」と思ったが、今時「小銭」だけではやや「頼りなく」。お姉ちゃんが何度も「いいから!」と言うので、貰っておくことにした。
 それに。お姉ちゃんから「お小遣いを貰う」のは、何だかとても「懐かしい」ような気がして――、僕はしばらくその「千円札」を大事に「取っておこう」と思った。

「ありがとう…」

 僕が「お礼」を言うと、お姉ちゃんは「満足」したらしく。

「じゃあ、お姉ちゃんは『準備』があるから――」

 と、自分の部屋に帰って行った。

 僕も一旦、自分の部屋に戻ることにした。未だ「ズボン」と「下着」は「濡れたまま」で、すっかり「冷えた感触」は落ち着かなく、とても気持ち悪かったが。それを「処理」するためには、お姉ちゃんが「家を出て行く」まで待たなければならなかった。
「射精」からまだあまり時間が経っていないにも関わらず、下着の中で「おちんちん」が「膨らんで」きているのが分かった。ついさっき見た「光景」によって、再び「燃料」を与えられ、「そこ」が確かに「熱」を帯びていくのが分かった。

「おちんちん」を「ズボン越し」に「弄ぶ」こと「数十分」。ようやくお姉ちゃんが家を出て行った。「玄関」から「物音」が聞こえ、僕は部屋のドアを「こっそり」と開けて、お姉ちゃんの「後ろ姿」を眺めていた。(何だか、お姉ちゃんがとても「遠い場所」に行ってしまうような気がした――)

 僕はすぐさま部屋を出て「洗面所」に向かう。「濡れた下着を洗う」前に、けれどまず「洗濯機の中」を漁り始める。「イケない」と思いつつも、僕はどうしてもその「誘惑」に打ち克つことが出来なかった。
 すっかり「慣れた手順」で、一番上にある「タオル」をめくり、その下にある「それ」を容易く探り当てる。

――本日のそれは「黒」だった。

 まだ少し「温かい」、紛れもないお姉ちゃんの「体温」の残った「それ」を「広げ」、「内側」を「確認」する。

――お姉ちゃん、ごめんなさい…。

「懺悔」しつつも、あくまで「これで最期」と誓う。
お姉ちゃんの「パンツの中身」、その「お尻」の部分には――、

「ばっちり」と「ウンスジ」が付いていた。

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おかず味噌 2020/08/30 20:42

クソクエ 女僧侶編「着衣脱糞 ~救済へと至る道~」

(前話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/358447
(女戦士編はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/311247


「今日はここまでにしましょう!!」

「勇者」の声で「歩み」を止める。「日暮れ」にはまだ少し早いが、すでに空は「茜色」に染まり始めている。
 今日の「冒険」は「ここまで」のようだ。「頃合い」だろう。「野宿」をするのにだって、それなりの「準備」がいる。完全に「昏く」なってしまってからでは遅いのだ――。

「野営」においてもやはり、それぞれの「役割」というものは自ずと決まっている。
 ヒルダは辺りの「森」から「薪」を調達し、アルテナは「糧」となるべく「料理」に取り掛かる。「指示」を出されるわけでもなく、「話し合う」までもなく、まるでよく「訓練」された「兵士」のように、各自黙々と与えられた「仕事」をこなす。
 彼は――、周囲の「見回り」をしている。傍から見れば、あるいは単に「サボっている」だけのように思われるかもしれないが。実にそれは重要な「任務」である。
 ここは「安全」な町の中ではなく、いつ「敵」に襲われてもおかしくはない「フィールド」のど真ん中。いくら「警戒」しようとも、し過ぎるということは決してない。まさに「危険」と隣り合わせの「現場」なのだ。

 アルテナは「食材」の下拵えをしている。今宵の「献立」は「肉と野菜のスープ」。簡素な「メニュー」であるが「栄養」の面からすれば申し分ない。「味」については――、まさしく彼女の「腕の見せ所」である。
 昼間にヒルダが運よく狩った「野兎」と、道中アルテナが根気よく採集した「野草」が、その「材料」となる。「杖」を「短刀」に持ち替えて、早速料理に取り掛かった彼女であったが、そこですぐに「障壁」に行き当たることになる――。
「肉」と「野菜」は十分に揃っていたが、それだけでは「料理」にならない。そして、「肉」はその「血」を洗い落とすのに、「野菜」についても「土」を洗い流すのに、さらには「食後」に「皿」を洗うにしたって、どうしたって「それ」は必要となってくる。まさに「生命」の源であり、「生活」においても「必要不可欠」というべきそれは――、

「水」だった。

 まずはそれを「調達」してからでなければ。とても料理に取り掛かれそうにない。
――近くに「川」でもあれば良いのですが…。
 アルテナは考える。一旦「短刀」を置き「食材」をそのままにして、「水」を探すべくその場から離れようとする。
――何か「汲むもの」を…。
 アルテナは近くを見回す。「鍋」があればそれで十分だったが、やはり「必需品」であるはずの「調理器具」はなぜか見当たらない。
――あら?さっきまであったはずでしたのに…。
 アルテナが怪訝に思っていると――、

――ドカッ!!

 目の前に「水の入った鍋」が置かれた。彼女の「祈り」が天に届いたのだろうか。突然現れたそれにやや困惑気味になりながら、置かれた鍋のその「向こう」をゆっくりと見上げる――。
 そこには。「か細い腕」と「華奢な体」、「あどけない表情」の愛しい人がいた。
「勇者様…?」
 アルテナは鼓動が早くなるのを感じながらも、なるべく冷静を装って彼の「名」を呼んだ。
「探索していたら『川』を見つけたんです!料理するのに必要ですよね?」
 彼は言った。まるで「子供」が気を利かせて「親」の手伝いをして、「褒められる」のを「期待」しているみたいに。その表情は「得意げ」だった。
「あ、ありがとうございます!とても助かりますわ」
 アルテナは謝意を述べた。これで無事料理に取り掛かることができる、とそれ以上に。自分の「思っていたこと」が彼に、口に出さずとも「伝わった」ことが嬉しかった。
 まるで「以心伝心」。「魔法」なんて使わずとも、二人の「距離」を繋ぐそれは「テレパシー」のようだった。(離れてたって「以心電信」)
 アルテナはふと。またしても、「将来」についての大いなる「展望」を「夢想」していた――。


 彼女は「家」で夕食の支度をいながら「夫」の帰りを待っている。やがてドアをノックする音が聴こえると、すかさず手を止めて。まさしく「犬」のように「しっぽ」を振って、小走りで玄関へと向かう。
「おかえりなさいませ、あなた」
「労う」ように言い、単なる「二人称」である、その「呼び名」に意味を込める。
「ただいま!」
 彼は応える。変わることない「無邪気」な表情で、そこにいくらかの「逞しさ」を携えて。自らの「帰るべき場所」に還ったのだと、「安堵」して見せる。
「相棒」である「剣」を、「パートナー」である自分が預かる。今日一日彼の命を守ってくれた「相棒」に感謝しつつも、けれど今や彼の「命に次に大切なモノ」は「自分」なのだと、その「感慨」と「優越」に浸る。そしてやや冗談まじりに訊ねる。
「すぐに『ご飯』にしますか?『お風呂』にしますか?それとも――」

――ワ・タ・シ?

 言うだけで赤面しそうになる、お決まりの「台詞」である。あまりに「ありがち」で、けれど現実には言わないであろうと「夢の言葉」に、けれどアルテナは「充足」と「幸福」を感じるのだった――。


「アルテナさん?どうしたんですか?」
 彼の言葉で我に返る。「妄想」はそこで打ち止めであった。にも関わらず、アルテナの眼前には、夢と同じ「現実」があった。
「え、えぇ…。大丈夫です。少しばかり疲れているだけで…」
 アルテナは未だ「夢と現」の間を彷徨いながらも、「動揺」を抑えてなんとか答える。旅の「消耗」はそれなりにあったが、彼女の「動悸」はそれが「動機」ではなかった。
「そうですか…。今日はなるべく早く休みましょう!」
 彼はあくまでアルテナを気遣い、そう言った。どこまでも「優しい」彼。
「あ、それと――」
 彼はそこで、アルテナにある「提案」をする。
「流れがそんなに「速く」なくて、「入れそうな」場所があったんです!」
 それがさも「大発見」であるかのように、彼は言う。彼の言わんとしていることがアルテナには分かった。
「『水浴び』でもしてきたらどうですか?」
 彼は言った。それはアルテナにとって「願ってもみない」ものでありながら、けれど彼女は「迷い」を感じた――。

 確かに今日一日の「冒険」といくつかの「戦闘」を経て、アルテナは相当程度の「汗」をかいていた。体中は「ベタついて」いるし、ローブの下はひどく「蒸れている」。
「身だしなみ」にはそれなりの気を配っているつもりだし、自分ではあまり感じていないけれどやはり、「臭い」だって少なからず発生しているだろう。
 特に「下穿き」については――。「汗」とは違うもので「濡れ」、「発酵」し掛けたより強い「刺激臭」を放っているに違いなかった。
 彼の「提案」を聞くまではさほど気にならなかったが。一度その「可能性」を示唆されたとなると――、今すぐにも汗にまみれた体を洗い流し、汚れた「下穿き」を履き替えたいという衝動を抑えられなかった。

 とはいえ。自分「だけ」が良いのだろうか?アルテナは思う。
――「集団生活」において、「個」を優先するべきではない。
「神の教え」を説くまでもなく、それは人として当たり前の「ルール」だ。
 今の自分には「パーティ」の「一員」として与えられた「仕事」がある。それを「放り出して」まで、自らの「娯楽」に走るなど――。
 アルテナは「鍋」を見た。まだ「火」の入っていない静かな「水面」を見つめがら、「葛藤」が「煮詰まる」様子を眺めた。そんな彼女を見て「勇者」は――。

「あとは僕がやっておくので。これでも『ソロ』の時はよく自分で作ってたんですよ」

 彼は「腕まくり」して見せる。「任せておいて!」と、自信満々に言ってのける。アルテナはしばし逡巡したが結局、せっかくの「厚意」に甘えることにした。
「では申し訳ありませんが…、よろしくお願いします」
 アルテナは「提案」に乗り、その場を彼に任せることにした。自らの「責務」を放り出すことに少しの抵抗を感じたが、それでもやはり乙女としての「矜持」を優先することにしたのだった。

 彼におおよその「方角」を聞いて、アルテナは「水浴び」に向かう。森の木々をかき分け少し進んだ先に、目的の場所はあった。
 見るからに清浄そうな「川」が流れていた。川幅が広く、けれど「折れ曲がる」ことでそこで一旦「流れ」が停滞しているため、「勢い」はそれほど強くはない。そして何より、周囲の木々が「目隠し」の役目を果たしてくれているため、容易に「人目」につかなそうであった。
 つくづく彼は、「女心」というものを理解してくれている。彼の深い「思いやり」に感激し、またしても「惚れ直しそう」にながらも、けれどアルテナはやや「不安」にもなった。もし、同じだけの「思いやり」が別の「女性」に向けられたなら――、きっとその「相手」も彼に自分と同じ「想い」を抱いてしまうかもしれない、という危惧だった。 
 だがそんなことを今考えても仕方がない。アルテナは今は「自分だけ」に向けられたものである「厚意」を素直に受け取ることにした。

 アルテナは早速、「木陰」で衣服を脱ぎ始めた。「杖」を置き、「前掛け」を外し、「法衣」を下ろす。くしくも「あの時」と同じ手順は、彼女の「体」に「錯覚」と「混乱」をもたらす。
――少々、「催して」きましたわ…。
「下腹部」と「股間」に感じる、じんわりとした「違和感」。そういえば今日、町を出てからはまだ「一度」もしていない。これまで気づかずにいたけれど、彼女の「膀胱」には確実に「おしっこ」が蓄積され、今やはっきりと「尿意」を自覚していた。
――先に済ませてから…。
 アルテナは「水浴び」をする前の「準備」について考えた。今一度、周囲を見回してみる。辺りは「静寂」に包まれていて「水音」以外せず、どこにも「人影」は見当たらなかった。そうした「状況」が、彼女に甘い「誘惑」をもたらす。
――「ついで」に、しちゃいましょうか…。
 確かな「決意」を新たにして、アルテナは残った「下穿き」を脱ぎ去り、そのまま「川の中」へと入っていく――。

 川の水は冷たく、一瞬心臓が止まりそうであったが、彼女の「火照った体」にはちょうど良かった。「足先」から順番に、「下半身」「上半身」と慣らしていき、馴染んできたところで一気に「頭」まで水に潜る。

――――――。

 周囲の「音」が消え、完全な「静寂」に飲み込まれる。しばし「外界」から閉ざされたことで、アルテナの「心」は「空っぽ」になる。
――バシャ!!
 呼吸の限界を感じて、アルテナは水中から顔を上げる。「周囲の光景は『一変』していた」なんてことはなく、そこには数秒前と同じ「静寂」があった。
「心地良さ」のまま少しばかり泳ぐ彼女の姿は、傍から見るとまるで水の「女神」かはたまた「精霊」のようであったが。けれど、その姿を「目撃」し「目に焼き付ける」者はいない。少なくとも彼女の「知る限り」では――。(一瞬、草影に何か「動くもの」があったが、アルテナがそれに「気づく」ことはなかった)

 しばらく泳いでいると、やはり「冷たさ」のせいもあって、いよいよ「予感」が「確信」めいたものになる。かろうじて足の立つ場所まで移動し、そこでアルテナは「直立」する。
 何をしようとしているのか、彼女だけがそれを知っている。水中にある彼女の「股間」に「指令」が出される。それが「届いた」瞬間、彼女はわずかに「身震い」した。そして――。

――シュイ~!!!

 アルテナの「股間」の周囲に、新たな「水流」が加えられる。わずかに違う「色」の「液体」はやや「温かく」、確かな「匂い」を持っている。けれどそれもすぐに周囲の「水」と同化し、立ち消え流され分からなくなる。

 アルテナは「水中」で「排尿」をしていた――。
 
 あるいは「人としての『禁忌』を犯している」という実感がある。不用意に「自然」を「汚す」というその行為に、アルテナは少しばかりの「罪悪感」を抱くのだった。だがそれもあくまで「建前」であり、決して人に知られてはならないがけれど決して人に知られることはないというその「安堵」と、何より行為自体のその「解放感」と「快感」の前では、いかなる「理性」すらも文字通り「押し流されて」しまうのだった。

――あぁワタクシ、このような静謐な場所で「お小水」を…。

 内心でアルテナは「自戒」する。「しゃがみ込んで」ではなく「立ったまま」でする行為に、「地面」や「便器」に打ち付けられることのない「放尿」に、まるで「お漏らし」のような感覚を抱く。だがアルテナのそれは、決して「下穿き」を濡らすこともなく、その場に留まることもない。「行為」と同時に、「汚れた」部分が「清浄」に洗い流されていく。むしろ「正規」の手順を踏んだ、「排尿行為」と呼べるのかもしれない。

 やがて「水流」が打ち止められる。アルテナは再び「身震い」をして、自らの「体温の一部」が川の中に溶けていったことを自覚した。「出したもの」はすでに遠くへと流れ去り、「出した部分」を拭う必要さえなかったが。それでもやはり「習慣」からか、あるいは「念のため」、今一度よく洗っておくことにした。
 アルテナの「指」が股間に触れる。残存する「臭い」を取り去るべく「割れ目」にあてがわれた指が「何か」に触れ「濡れる」。
「川の水」によるものではない。「おしっこ」とも違う。やや「粘り気」を帯びたその「液体」はまさしく、大いなる「生命の神秘」によるものだった。

 アルテナの「ヴァギナ」は「愛液」を溢れさせていた――。

 冷たい水中にありながらも、けれどその部分は確かな「熱」を持っていた。まるで「海底火山」のように、「温水」ならぬ「女水」を噴出していた。いや「粘度」でいえば、「マグマ」と呼んだ方が的確かもしれない。その「流体」は、それだけは――、「水中」においても「流される」ことはなく、「冷たさ」の中にあっても決して「冷やされる」ことはなかった。むしろアルテナの指がそこを「まさぐる」度、それは続々と溢れ出てきて、「ヌルヌル」とした感触をいつまでも保ち続けていた。
「愛液」が「潤滑油」となって。ますますアルテナの指は「加速」する。最初は付近に触れるだけで甘んじていたが、彼女の「探求心」はやがて「水中洞穴」の深部へと向かうことになる。
 そこは他者にとって「未知」の空間でありながらも、彼女にとっては「既知」の場所。どんな「構造」をしているのか、どこに「快楽」というべき「財宝」が眠っているのかを熟知している。「ダンジョン」と呼ぶにはあまりに「探索」の進んだ「マップ」に、けれど彼女は未だに「冒険者」としての「興味」を失うことはない。
 何度も「行き来」し、「出し入れ」し、「壁」を擦り、時に「強く」時に「優しく」、あくまで「ソロ」での「冒険」を続ける。
 それだけでは物足りずに、もう一歩の手は「洞穴」からやや離れた場所にある「双丘」へと伸びる。その「頂き」に建てられた「尖塔」を、まるで「巨人」が弄ぶが如く「コリコリ」とこねくり回す――。

 やがて「ダンジョン」に、ある「変化」が訪れた。全体が小刻みに「振動」する。アルテナは「予感」を悟った。
 本来ならば――、それが本当の意味での「探索」だとしたら。紛れもなく危険の「兆候」であり、まさしく「危険信号」に他ならない。いかなる深部にいようとも、目指すべきは「出口」であり。何をおいても真っ先に「脱出」を考えるべきである。
 だがアルテナはそうしなかった。彼女の「指」はあくまで「中」に留まったまま、来るべき「衝撃」に備えるべく――むしろここにきてより「激しく」、「探求」を続けるのだった。
「振動」はついに、アルテナの体「全体」に波及する。アルテナは「つま先」に力を込める。そうでもしないと、とても立っていられそうになかった。そうしていても尚、足を滑らせてしまいそうだった。
――ああ、ワタクシ「逝って」しまいます…!!
 まさに「昇天」すべく、アルテナの「心」と「体」は身構えた。思わず目を閉じたアルテナの「瞼の裏」にあったのは――、まさしく「天国」と呼べる光景だった。

――ビクン…!ビクン!!

 アルテナの体が大きく揺さぶられる。突き抜けた「快感」に耐えるべく、アルテナは今一度足に力を入れて、「足の裏」で川底の「石」を掴んだ。

 徐々に「波」が引いていく。少しばかりの「感傷」を残しながらも、まるで「海」のそのように。何事もなかったかの如く、穏やかに去ってゆく――。
 アルテナは静かに目を開いた。そこにはやはり、さっきまでと同じ景色が広がっていた。だが心なしか全ての「音」が、「色」が、「明瞭」に感じられた。
 穏やかな「川の流れ」が、彼女の「火照った体」を冷まし、その「汚れた魂」さえも洗い清めてゆく――。

 出来ることならいつまでもそうしていたかった。だけどそういうわけにはいかない。いい加減「上がらないと」、あまり体を冷やし過ぎてしまっては「風邪」をひいてしまうかもしれない。それに、いつまでも戻らないとなると、彼に余計な「心配」を掛けてしまうだろう。アルテナは名残惜しさを感じながらも、そろそろ「引き上げる」ことにした。

 川から上がって、持ってきていた「布」で体を拭く。吸水性はあまり良くはなく、体はやや「湿った」ままであったが、あとは「自然乾燥」に委ねることにした。
「全裸」を終えるべく、足元の「衣類」を探る。そこで彼女は「あること」に気づいた。

――あら?おかしいですね…?

 アルテナのそばには彼女が「脱いだ」衣服がある。もちろん「脱ぎ散らかす」こともなく、きちんと「折り畳まれて」いる。
「前掛け」に「法衣」に、それから――。「あるもの」が「消失」していた。
 一番「最後」に脱ぎ、一番「最初」に着るべきものが――。

 それは「下穿き」だった。

「衣服」の間に挟んでおいたはずのそれが無くなっている。
――確かに、ここに置いておいたはずなのですが…。
 怪訝に思いながら、一度全ての衣類を広げてみたがやはりない。彼女の「装備」のうち、最も人目に触れることなく、最も「隠したい」その布だけが消えていた。
 やや「困惑」を感じながらも、けれど彼女はさほど「途方に暮れる」ことはなかった。
 アルテナはもう一枚の「下穿き」を取り出した。体を拭いた布に挟んでいたものだ。無くなってしまった方と同じ「純白」のそれ。(アルテナは主に「白」の「下穿き」ばかりを好んでいた)
 まだ「穿いていない」方のそれ。「汚れ」も「染み」もなく、まさに「純白」である「下穿き」に穿き替える。元よりそうするつもりだった。いくら体を「きれい」にしたとはいえ――、きれいにしたからこそ、「同じ下穿き」を穿くことは躊躇われた。
 当然だろう。「汗」と「おしっこ」にまみれたものをわざわざ穿き直したくはなかった。出来ることならついでに「汚れた下穿き」を洗ってしまいたかったが、無くなってしまったものは仕方がない。
 おそらく「小動物」か何かの仕業だろう。アルテナは考える。ずいぶんと「いやらしい」獣がいたものだ。だがそれにしては、あまりに「手口」が「鮮やか」だった。他の衣服は荒らされることはなく、「下穿き」だけを見事に抜き取られている。まるで最初からそれだけが「目的」であったかのように――。
 けれどそれはむしろアルテナにとって、好都合だった。もし「それ以外」もやられていたとしたら――。彼女は「全裸」でパーティの元へと戻らなければならなかった。そういう意味では何とか「最悪の事態」だけは免れ、まさに「不幸中の幸い」であった。

 服を着終えたアルテナは、元来た道を引き返す。

――それにしても…。
 アルテナは盗まれた「下穿き」について考えを巡らせる。
 いくら「理解」を持たぬ「獣」の「所業」とはいえ、「汚れた下着」――「おしっこ」まみれの「下穿き」を見られてしまったことを思い浮かべると、少々気恥ずかしかった。
 

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おかず味噌 2020/06/17 20:59

クソクエ 女戦士編「野外排泄 ~彼女の長い一日~」

――ズバン!!!

 凄まじく、小気味の良い斬撃の音色が草原に響き渡り、正面の「獣人型モンスター」を「一刀」で切り伏せる。
「成人男性」と比較しても、かなり大柄な体躯をした怪物は、

――グォォオ!!!

 と。「断末魔」とさえ呼べない醜い声を上げて、「両断」された。
 まさに「圧巻の一撃」。だが、その余韻に浸っている暇はない。蛮族の血で汚れた剣を軽く振って、すぐさま「次の敵」に備える――。

「脱色」された癖のある「長い髪」。「意志の強さ」が込められたような、鋭く切れ長の「双眸」。まるで「彫刻」の如く、目鼻立ちのくっきりとした「相貌」。
「剣」を振るたびに「躍動」する、鍛え上げられた全身の「筋肉」。その「自前の鎧」に覆われながらも尚、「主張」する女性としての「特徴」。「たわわ」に実った「双丘」、「豊満」な「瓢箪島」。それらを誇示するように、自らを鼓舞するように。あるいは単に「機動性」に特化したが故の「出で立ち」。
「額」と「肩」――、「戦闘」において「弱点」となり得る箇所だけを最低限に守り、「胸部」と「下腹部」――、女性にとって時に「武器」となり得る箇所だけを、最小限に隠した「防具」。名称としては「ビキニアーマー」に分類される、「扇情的」でやたらと「露出度の高い」その装備は――、彼女の「攻撃的」な「戦闘スタイル」を表し、自らの「剣の腕」に対する「自負」を謳ったものであった。

「ヒルダさん、後ろ!!」

 その「名」で呼ばれた彼女は、とっさに振り返る。だが、やはり「撃破」のもたらした一瞬の「油断」のためか、あるいはその名を呼んだのが「彼」であったせいか、彼女の「反応」がほんのわずかだけ遅れる。その「ほんのわずか」が、戦闘においてはしばしば致命的な「空白」となる。
 ヒルダの「左肩」に、「重い一撃」が加えられる。剣と呼ぶにはあまりに無骨で醜悪な蛮族の武器は、「斬る」というより「叩く」といった用途の方が相応しいだろう。彼女の斬撃の「流麗さ」に比べるべくもなく。けれど力任せに振り下ろされたその「攻撃」は、あくまで「打撃」としては「一級品」だった。

「チッ…!マズったか」

 ヒルダは「舌打ち」した。常人であれば、あるいは「激痛」によって「意識」を遠のかせられたとしても、何ら不思議ではない。だが彼女にとっては、その「攻撃」自体よりも「攻撃を受けてしまった自分」の方が、精神的な「ダメージ」となった。たとえ「一撃」であろうとも「反撃」を許した未熟な自分を、彼女の「プライド」は許せなかった。

 すぐに「体勢」を立て直す。痛みに怯んでいる場合ではない。もうこれ以上、彼の前で「醜態」をさらしてなるものか、と。「挽回」と「返上」を込めて、踏み込みながら剣を横に薙いだ。
 完璧な「踏み込み」だった。だがしかし、一見して「知性」の欠片も感じさせない蛮族はここで、持ち前の「戦闘スキル」を発揮した。「生存本能」、「野性的勘」と呼ぶべきものかもしれない。蛮族は斬撃の刹那、一歩身を引いたのだった。
 もちろんそれだけで斬撃の全てを躱されるほど、彼女の剣は甘くも浅くもない。当然の如く、蛮族の硬い皮膚に「一閃」が走った。汚い血しぶきが上げられる。だが、あいにく「トドメ」には至らなかった。そのことがさらに彼女のプライドに傷を付け、その精神に火を点ける。
 ヒルダはさらに「一歩」。二歩、三歩、踏み込んだ。自らの失態、その「尻ぬぐい」をするように――。

 突然、蛮族の全身が「炎」に包まれる。
「火のない所に煙は立たぬ」ならぬ「煙のない所に『火の手』が上がる」。彼女の気迫が起こしたものではない。それは紛れもなく「魔法」によるものだった。
 ヒルダは振り返る。背後の敵ではなく「味方」のいるであろう方向を――。そこには、安堵したように笑う「勇者」の姿があった。


 そこからさらに、三体の同種族モンスターを倒し、今度こそ本当の「勝利」が訪れる。
 美しい草原の風景に散らばった醜いモンスターの死体から、「戦利品」ともいうべき「物資」と「魔石」を剥ぎ取る。これらを「加工」し、あるいは「換金」することで、彼らはそれを旅の「資金」へと替え、自らをさらに高めるための「装備」へと化す。

「――ったく、ロクなもん持ってねえな!」
「戦闘後」の「ルーチンワーク」をこなしながら、ヒルダは毒づく。今回の「戦利品」の内容は、あまり労力に見合ったものではなかったらしい。苛立ち混じりに、八つ当たりするように、モンスターの「亡骸」を足で蹴る。だが彼女が苛立っているのはその「徒労」にではなく、やはりこの程度の戦闘に徒労を感じてしまった自分自身に対してだった。

――この程度のモンスター、アタシ「一人」でだって…。

 彼女は思う。それは決して「傲慢さ」によるものなどではなく、かつての彼女であればいかに「謙虚」に見積ったとしても、確かな事実であった。

「ヒルダさん、大丈夫?」

 彼女の身を案じて、一人の「人物」が駆け寄ってくる。

「少年」のように小柄な体。男性であるにも関わらず、その「背丈」は女性である彼女に遠く及ばず、「頭」数個分も低い。正面から相対したとき、ちょうど彼の「顔」の位置が彼女の「腰」の高さに相当する。
 彼女と同じく「剣」を扱う「職業」でありながら、その手足はまるで「小枝」のように細く、あるいは「少女」を思わせる「華奢さ」を醸している。
 だが、その背に負った「しるし」はまさしく「選ばれし者」の「証」であり、彼の矮躯に不釣り合いな、およそ自身の「身の丈」とも等しいその「大剣」は、あるいは彼自らが「背負い込む」と誓った「使命」の大きさを比喩しているようだった。
 一見して「童子」のように思える、実際「年頃」としても「童」である彼こそが、この「パーティ」の「リーダー」であり、「魔王打倒」の「切り札」でもある、紛れもない「勇者」なのであった。

 彼は、本当ならば「戦闘後」すぐにでも彼女の元へ駆け寄りたかったのだが――。彼女のただならぬ「気配」と冷めやらぬ「殺気」を感じ取って、何となく近づき難さを抱いていた。それでもやはり「仲間」への「心配」を抑えることができず、今こうして遅ればせながら彼は駆け寄ってきたのだった。

「平気さ、これくらいのキズ!」

 彼女は答える。「何でもないさ」と気丈に振舞ってみせる。だが、それは「はったり」だった。いくら「重症」でないとはいえ、とても「軽傷」と呼べるものではない。気を張っていた「戦闘中」はそうでもなかったが、気の緩んだ「戦闘後」になって、徐々にその「傷」が痛みだしてきた。「ズキズキ」と鈍い痛みを、肩に感じ始めている。

「アルテナさ~ん、お願いします」

 彼は呼ぶ「忌むべき名」を。「もう一人」の「パーティ」である「仲間」の名を――。自分とは「正反対」の属性を持つ、「彼女」の名を――。

「はいはい、そんな大声で呼ばずともワタクシは『あなた様』のすぐ傍にいますよ」

 まさしく、彼のすぐ「傍ら」から姿を見せたのは――、「僧侶」のアルテナだった。

「染色」された、まっすぐな長い髪。温厚さを、あるいは「慈悲深さ」さえも思わせる、垂れ下がった「眉尻」。「気品」を感じさせる、穏やかな表情。
「武器」を振り回すには決して似合わない、細い腕。その手に握られているのは「殺し」の「道具」などではなく、「救い」の「祭具」。「剣」ではなく「杖」。
「身」も「心」も、まさしく「神」に捧げたものであるらしく、その「肌」を不必要に「人前」に晒したりはしない。その全身は「濃紺の布」で隠されている。
 それでも。なだらかな「法衣」の上からでも隠し切れない、女性的な「起伏」。全身を覆っている、だからこそ余計に「主張」される、その「布」の奥にあるもの。それこそが男性を「迷える子羊」にさせるとも知らずに、あくまで気づかないというフリをして。

 同じ「種族」。同じ「性別」。だが、どこか違う。彼女にあって、自分にはないもの。似通った「凹凸」を持ちながらも、その魅力はまさに「正反対だ。自分のそれが「強さ」だとすると、あるいは彼女のそれは「弱さ」。「庇護欲」を駆り立てる「か弱さ」。世の男性が異性に求める、身勝手な「印象」。「剣士」である自分が最も疎むべき、それこそが「女性らしさ」と呼べるものだった。
「自分」と「彼女」。そのどちらに多くの男性が「夢見る」かは知っている。「淑女」と「筋肉女」。果たしてそのどちらを自らの「傍ら」に侍らせ、生涯の「伴侶」として選ぶのか、その答えは分かりきっている。そして、あるいは「彼」としても――。

――はぁ~。

 彼に呼ばれたアルテナは、ヒルダの負ったその「傷」を見て、呆れ果てたというように長い「溜息」をついた。

「後先考えず獣のように突っ走るのは、いい加減お止めになってはいかがでしょうか?」

 優しげな声音。あくまで穏やかな口調。諭すように、まるで稚児に言い聞かせるように彼女は言った。

――チッ…!

 またしても、ヒルダは「舌打ち」をした。だが今度のそれは自分にではなく、まさしく相手に向けられたものであった。

「どっかの『足手まとい様』が、戦いもせずに『後ろ』でコソコソやっているからさ!」

 最大限の「皮肉」を込めて、ヒルダは言い返す。

「あら。ワタクシの『役割』は、あくまで『回復』と『サポート』ですよ?」

 悪びれる様子もなく、アルテナは答える。

「もちろんそれも、『神命』あってのものですが――」

 そう言ってアルテナは、ごく自然な仕草で「勇者」に擦り寄った。自らの腕を絡ませ、彼の腕に豊かな「膨らみ」を押し当てる。
 彼女にとっての「神」はどうやら、随分と「身近」にいるらしい。「従者」の心構えとしては、あるいは正しいのだろう。だが、彼女のあまりの「俗物ぶり」に嫌気が差した。

「アンタはせいぜいその有難い『神様』とやらの、言いなりにでもなっているがいいさ」

 吐き捨てるように、ヒルダは言う。それもまた「俗的」な発言に違いなかった。

「我らが『神』を冒涜なさるおつもりですか?」
「だとしたら、ワタクシとしても心穏やかではいられませんよ?」

 声を荒げるでもなく、あくまで平静な口調でアルテナは言う。

「『ボウトク』なんてしちゃいないさ!」
「ただ、アンタのその『シンジン』とやらが如何なもんかって言ってるだけさ!」

 別にヒルダとしても、「神」を貶めるつもりなどは毛頭なかった。熱心に「信心」こそしないものの、決して蔑ろにする気はなかった。ただ問うただけだ。売り言葉に買い言葉で、口をついてその文句が出てきただけだ。

「今度はワタクシの『信仰心』までも。一体アナタはどれだけ――」

 さすがのアルテナも、いよいよ「心穏やか」ではいられなくなってきたらしい。言葉に「感情」が込められる。ヒルダとしては望むところだった。彼女の「反論」を想定して、自らも「反撃」の「刃」を備える。だが――。

「もう~、二人とも!喧嘩はダメ!!」

 畏れ多く、何人も近寄りがたい「龍虎の戦い」に割って入ったのは、やはり「勇者」の名を冠する者だけだった。無謀にも、彼はその「争い」に身を投じるわけでもなく、ただ「諍い」の無為さを説く。「怒る」のではなく「叱る」ことで、その場を収めようとする。まるで「大人」であるかのように。自らが「子供」であるにも関わらず。
 少なからずの不満を抱えながらも、二人は留まるしかなかった。まさに「鶴の一声」。だがその声はどちらかといえば、「小鳥の囀り」にも似ていた。それでも両者は互いに、振りかざし掛けた「拳」と「言葉」を渋々ながらも静かに下ろすのだった。

「勇者」であるという彼の「身分」がそうさせたわけではない。「リーダー」の「命令」だから、というのとも違う。たとえそんな「地位」などなくとも、彼女たちはあくまで表向きは素直に従っただろう。それは彼女たちと彼との「関係性」が、彼女たちが彼に抱く「密かな想い」がそうさせるのだった。

 何となく「気まずさ」のようなものをヒルダは感じた。「子供」が叱られたときに抱く感情だった。そして「大人」であるからこそ余計に、その感情はより強く彼女の中で発露するのだった。彼女は立ち上がろうとする。

「どちらに行かれるのですか?」

 アルテナが声を掛ける。「不戦勝」の気配を感じ取ったような余裕の表情で。

「別に…。なんでもねえよ!」

 苛立ち混じりにヒルダは答える。だがそれは「答え」になっていなかった。
「敵前逃亡」。自らに課したその「禁忌」を、自ら破ることに躊躇いを覚える。だが、「戦い」を禁じられたとすれば致し方ない。あとは従う他ないが、彼女の「矜持」はそれを許さなかった。であれば、あとに残る道は「逃げ道」だけだった。
 だが、わずかに残されたその道さえも彼女は閉ざされる。やはり、他ならぬ彼によって――。

「ダメだよ。ちゃんと『回復』してもらわないと」

「勇者」はヒルダの腕を掴んだ。か細い腕。その気になればいくらでも振り払えそうな、非力な握力。だが、そこに彼の真剣な「眼差し」が加わることで、まさに「真剣」を向けられたかの如く、その場から身動きできなくなった。
 いや、それが真なる「剣」であれば、いかに強者や達人のものであったとしても、彼女は臆することなく「太刀向かう」ことができていただろう。けれど、たとえ虫を殺すことさえできない、殺気の籠らない「刃のない剣」であろうとも、相手が彼であるとしたら、もはや彼女に「太刀打ち」はできなかった。

 彼に「触れられた」腕が、「熱」を帯びる。頭の中が、胸の奥が「じん」と疼く。股間が、その部分にあてがわられた「下穿き」の中が「じゅん」と湿る。
「切ない」ような、どこか「懐かしさ」さえ覚える、その感触――。
 ヒルダが「戦士」として、初めて臨んだ「戦闘」。「敵」に対する「恐怖」から、意図せず「尿道を緩ませた」ことによる「失禁」。「下穿き」の中が「水流」に満たされ、やがて大地を穿つ。後に残された「羞恥」すべき「染み」。それとは違う。
 やがて「戦士」として、いくつもの「戦闘」を経たのち。「強敵」との邂逅によって、自らを昂らせたことによる「興奮」。それにも似ているが、やはりそれとも違う。
 もっと「熱く」、あるいは「優しい」感触に。彼女は思わず一瞬、戦士であるという、自らの存在理由すらも忘却していた。
 
「アンタがそこまで言うなら…」

 ヒルダは立つのを止めて、その場に留まった。「しょうがない」というように、彼の「指示」を聞き入れ、あくまで「お願い」として受け入れることにした。
 ヒルダは負傷した肩の「防具」を外し、「患部」を晒した。自らの「弱点」であるその部分を、「味方」である彼女に見せた。
 アルテナは、ようやく「自分の出番だ」というように――。やはり、彼女にとっての「存在理由」である「杖」を握り直し、その先端をヒルダに向けてかざした。

「汝、『救い』を求めなさい。たとえそれが『艱難辛苦』の茨の道であろうとも、その『歩み』を終えることなく、ただひたすらに『願い』続けなさい――」

 アルテナは「詠唱」を始める。やがて「杖」の先が「光」を帯び始める。「神秘的」で、ある種の「荘厳さ」を思わせる、紛れもない「魔法」の色。そして――。

――ヒーリング!!

 杖の先が、彼女の体が、淡く照らされる。周囲が、優しい色に包まれる。
 すると。まるで「奇跡」が「伝播」したように。まさしく「魔力」が「伝染」したかの如く。ヒルダの「傷」が少しずつ癒えてゆく。徐々に「傷口」が塞がり、やがて消えゆくことで、それと共に「痛み」さえも和らいでゆく。
「回復魔法」。選ばれた「職業」の者にしか扱えない、それはまさに「奇跡」とも呼べる代物だった。

 やがて。ヒルダの「肩」を覆った、「杖」からもたらせられたその「光」が、失われてゆく。それはアルテナが自らの「役目」を果たし、「使命」を終えたことを意味する。

「はい。終わりましたよ」

 アルテナはまるで「聖母」のように微笑んだ。決して認めたくはないが、今この瞬間に限っては、紛れもなく彼女は「ひれ伏すべき存在」であった。

「すまない…ね」

 ヒルダはあくまで「謝意」ではなく、「謝罪」をもって「礼」に代えた。それでも彼女なりの精一杯の「譲歩」だった。
 これにて「一件落着」。真の意味で、戦闘を終えたこととなる。
 だが。ヒルダにとってはもう一つ、済まさなければならない使命が残されていた――。

「魔法」とは、まるで「万能の能力」であるように思われるけれど。それが「人の手」によってもたらせられる以上、どうしたって「完全な奇跡」とはいかない。その「強大」な力を得るため、「鍛錬」と呼ぶべき「修行」が必要なことは言うまでもないが。それを「行使」する上で――、「術者」において「魔力の消費」はもちろんだが、それだけではなく。「行使された側」、つまり「奇跡を与えられた側」においてもやはりその「代償」は付きものであり、それを避けることはできないのだ。

 ヒルダは「下腹部」に、鈍い「違和感」を覚えていた。「回復」とは、魔法によって「のみ」与えられるものではなく、本来人体にも当たり前に備わっている「機能」だ。「魔法」を使わずとも、適切な処置(「消毒」や「固定」)をして、そのまま「安静」にしていれば、いつかは「回復」するものだ。
 つまり。「回復魔法」のもたらす「効果」というのは、いわばその本来人体に備わっている機能を「活性化」させ、「促進」し、それを「加速」させることに他ならない。
 換言するならば、「新陳代謝」の「活性化」。だからこそ、そこにはどうしたってある「副作用」が付きまとうことになる。
 とはいえ、やはりそこは「魔法」であり、全ての「代償」を「当人」が受けるわけではない。術者の「魔力」も当然「消費」する。いわば痛み分けに等しい。
 即座に「消化」が促されるわけではなく、「老い」を早めることにもならない。わずかに「髪」や「爪」が伸びるとも言われるらしいが、その「変化」は微々たるものだ。
 それでも。やはり「きっかけ」くらいにはなり得る。自らの「体」に現れる「兆候」に、気づくだけの「理由」にはなる――。

 ヒルダは再び、その場から立ち上がった。二人は怪訝そうな顔をする。だが、彼女が「役目」を果たしたように――、自分もまた暫定的な「義務」は終えたのだ。あとは好きにさせてもらうことにする。
 ヒルダはその場から立ち去ろうとした。颯爽と、彼女本来の「クールさ」を取り戻すようにして。自らの「目的」を告げることなく。「弱み」を見せることなく。だが――。

「どこ行くの?」

 無情にも声が掛けられる。彼女の背中に彼は呼び掛ける。ヒルダは立ちどまった。苛立ち混じりに、彼の察しない言動を咎めるように。彼女は振り返った。そして、意を決して口を開く。

「『便所』だよ!!」

 彼に報せたくなかった言葉を、知られたくなかった「生理現象」を告白する。それは、ある種の「開き直り」だった。

「『ついて来る』ってなら、別に構わないけどさ」

 そう言って、ヒルダは「挑発的」に口元を歪める。試すように彼の「羞恥」を煽ることで、自らの「羞恥」を覆い隠す。
 彼女のその「挑発」に、彼が応じることはなかった。「パクパク」と不器用にも口を「開閉」しただけだった。その「反応」は彼女にとって、少なからず「予想通り」のものだった。アルテナが露骨に、嫌そうな顔をする。

「まったく。何と、『下品』な…」

 嘆くように、軽蔑を込めて彼女は言う。だがその「蔑み」も、ヒルダにとってはむしろ心地良いものであった。これにて「意趣返し」は成った、とあくまで間接的にではあるが「卑怯な勝利」がもたらせられた。
 もはや、ヒルダを止める者はいなかった。彼女は悠々とその場から歩き去り、拓けた「草原」の隅の、拓けていない「草影」を探した。自らの「使命」を果たすために。「用」を足すために――。

「パーティ」から離れること、しばらく――。ようやく、丁度いい「場所」が見つかる。それなりに背の高い「茂み」。身を隠し「用」を済ませるには、うってつけだった。

――よしっ!ここなら…。

「仲間たち」の居る場所から充分に「距離」もある。故に「音」を聞かれる心配はなく、「臭い」だって届きはしないだろう。
「旅をする者」にとって「野外排泄」は付きものだ。それはどうしたって仕方のないことなのだ。だがそれでも、彼女にも「羞恥心」というものはある。さすがにその「行為」を「観察」されることはもちろん、たとえ「間接的」であってもその気配を「観測」されることは憚られた。
 だが、ここまで来ればその心配もない。存分に、「事」に臨むことができる――。

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