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アナルの記事 (5)

おかず味噌 2020/09/29 16:00

ちょっと悪いこと… 第二十一話「彼の視点 ~追憶と願望~(3)」

(第二十話はこちらから↓)
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 まるで「ブラックホール」のように――。結衣の「そこ」は強力な「重力」を持っていた。「理性」と「自制」をもってしても決して抗えない、まるで「磁性」を帯びているかのように。強烈な「引力」をもって、僕を「引き寄せ」「惹き付ける」のだった――。

 もういいだろう。さすがに「限界」だ。「焦らし」もここに極まれり、である。
 そして、僕は「挿入」した。結衣の「アナル」に。本来ではない「非正規の穴」に。

――ヌポッ!!!

 少しの「抵抗」を感じつつも、僕のペニスは「するり」と穴に飲み込まれた。といっても、まだ「三分の一」ほどである。
 さすがに結衣も気づいたらしい。というより、気づかないはずがないだろう。
 いつもと違う「感触」に、まだ見ぬ「感覚」に、彼女は「驚き」「戸惑って」いるらしかった。

 つまりは、女子の大好きな「サプライズ」である――。

 しばらくそのまま、その状態で「留まる」ことにする。すぐに「動かす」のは、さすがに無理があるだろう。というより、僕のペニスは彼女のアナルに「固定」されたまま、微動だにしなかった。彼女自身も、やはり「痛み」からか「困惑」からか、「硬直」したままだった。

 やがて、ゆっくりと「運動」を開始する――。

 まずは「引き抜く」。「挿入」と逆の動きである。
 結衣の「尻穴」から、少しずつ僕のペニスが現れる。それはまさに「排泄」のように。彼女の「うんち」ではなく僕のペニスが今や、その「代わり」をしていた。けれど彼女の「気張り」に違いはなかった。

「そっちじゃないです!」

 一度抜かれたことで、ようやく少しばかり「平静」を取り戻したのだろうか。あるいは今さら「冷静」になったとでも言うのだろうか。結衣は僕に「間違い」を指摘する。
 まるで「やり方」を知らない「童貞」に「レクチャー」するみたいに。「優しく」ではなく、むしろ「厳しめ」に。もはや少しの「余裕」もなく、「切羽詰まった」ように――。

 だが僕は再び、あくまで「違う穴」へと挿入する。一度拡がったそこは、より「奥深く」僕を迎え入れる――。そしてまたゆっくりと引き抜く。
「三度目」にして、ついに僕のペニス「全体」が結衣の「中」に「すっぽり」と飲み込まれた。それでも尚、彼女は――。

「こっちです!こっちに挿入れてください!」

 僕に「正解」を指し示す。自ら「何も入っていない穴」を弄り、指で拡げて見せる。
 けれど「今さら」だ。もはや僕は止まらない。あくまで僕にとっては「そちら」こそが「正解」である。たとえ「間違って」いたとしても――。

「そっちじゃないんです!オマンコ!オマンコに入れてください」

 ついに。結衣は「指示代名詞」ではなく「固有名詞」で、指示する。より「具体的」な、普段決して言わないであろう「卑猥な言葉」を用いて、自らの「具」を連呼する。
 だが、それでも。僕の「追撃」が止むことはない。あくまで「ピストン」を続ける。

 入れる時は「激しく」――。「突かれる」ことによって、「打ち付けられた」結衣の体が「揺さぶられる」のを、彼女の「腰」を掴んで支える。
 抜く時は「穏やか」に――。あくまで「ゆっくり」と。あるいは「疑似的排泄感」を与えるかの如く、「排便」と同じ「スピード」を意識する。

 入れる時、結衣は――、

「はうんっ!!!」

 と「謎の声」を上げる。きっと苦しいのだろう。それは彼女にとって、「未知の感覚」に違いない。そして「出す」時、彼女は――、

「んんっ…!!!」

 と、どこか「安堵」したような声を出す。むしろそちらの時にこそ、より「快感」が伴うのかもしれない。それは彼女にとって、「既知の感覚」なのだろう。まさしく、日々の「排泄」によく似た、「錯覚」を思わせるものなのだろう。

 僕はふと、結衣の顔を見てみたくなった。きっとその「表情」は「あの時」と同じ――、まさしく彼女が「うんちをしている時」の顔に違いなかった。
「苦難」の果てにある「達成」。「苦痛」に歪めつつも、どこか「スッキリ」とした――、結衣の「ひり出す」時の顔。あくまで「疑似的」であろうと、構わない。そこから出るモノが「茶色い塊」ではなく――「黒光り」するものではないにせよ――「肌色」の「肉棒」だったとしても。

 だが、生憎それは叶いそうになかった。「後ろから突く」体勢のままでは「正面から」の結衣を「観察」することは出来なかった。それに――。彼女は「枕」に顔を埋め、突っ伏していた。「苦しさ」と「気持ちよさ」、もはや「一緒くた」となった「衝動」を堪えるためか。それとも「顔を見られたくない」という、単なる「羞恥」のためだろうか。

 僕自身の「衝動」も、もはや「限界」だった。結衣の「肛門」の「締め付ける力」と、何より「行為」の「実感」によって。「臨界」まで高められた僕の「ペニス」は、もう「暴発寸前」だった。まるで「溶ける」ような――、「蕩ける」ような――、「メルトダウン」に至るまで「秒読み」だった。

「もう出そう!」

 僕は「宣言」した。いわば「降伏」の「白旗」であり、「幸福」の「告白」である。
 ここにきて――、「トドメ」とばかりに僕の腰は「加速」する。結衣の全身が「揺さぶられる」のも厭わずに、彼女の「尻」へと激しく「打ち付ける」。もはや少しの「遠慮」もなく、「リズム」の「キープ」すらも忘れ、ただ「本能」の赴くままに「出し入れ」を繰り返す――。

 僕の「宣告」を聞いたゆえだろうか、結衣はようやく枕から顔を上げる。そして――、「振動」させられながらも、「呼吸」をわずかに整え、やがて「声」を発する。

「そのまま『中』に出してください!大丈夫だから」

 ついに、結衣自身もその「行為」を――「アナル」による「セックス」を受け止めることにしたらしい。というより、そうする他なかったのだろう。
 決して「普通」とは呼べない「プレイ」。紛れもない「変態的行為」。「性器」ではなく「非正規の穴」によって行われる「性交」は、彼女にとって「未知」のものでありつつも、そこには慣れ親しんだ「既知」の感覚が伴う。あとはそれを「受け入れる」かどうかなのだ。
 そして。どうせ「逃れられない運命」にあるのなら――。間もなく「終えられる宿命」であるのならば――。いっそ、「望み」「求め」た方が良いに決まっている。

「私も!私もイっちゃいそうです!」

 結衣もまた「宣言」する。僕に「合わせる」ように。「快感」を「共有」するように。
 果たして「本当」なのだろうか。あるいは、そう言った方が僕が「喜ぶ」と思って、「演技」をしているのかもしれない。

「私、『お尻の穴』でイっちゃいます!」

 繰り返し、結衣は「宣言」する。やはり「本当」らしい。「排泄器官」で「イク」ことを――、「排泄感」による「快感」を――、「実況」する。

「初めてなのに。初めてのエッチを『アナル』でしちゃってます!」

 結衣は「よく分からない」ことを言う。「初めて?」、それは一体どういう「意味」だろうか。だが、一旦立ち止まって「考える」にはもう僕に「余裕」はなく、「猶予」は残されていなかった。

――結衣の「肛門」を突いている!!
――結衣の「アナル」を犯している!!
――結衣の「うんち穴」でヤッている!!

――結衣の付けた「ウンスジ」!!
――結衣の汚した「うんち穴」!!
――結衣のひり出す「うんち」!!

「見たい」と思った。「嗅ぎたい」と思った。「舐めたい」と思った。
「キレイ」だった。「クサ」かった。「ヌルヌル」とした。

 普段の彼女からは「想像」がつかない――、あるいは「想定」が及ばない――、結衣の「『うんち』する姿」。「小」ではなく「大」を。「おしっこ」ではなく「うんち」を「『ひり出す』姿」。出来ることなら、「便器」にではなく「パンティ」の中に「糞」を
「『漏らす』姿」。次なる「お漏らし」こそは――、それを「見てみたい」と思った。

 そして、僕は「射精」した。

――ドクン、ドクン…。

「ペニス」の「脈動」を、その「律動」を全身で体感する。
 僕は「精液」を、「スペルマ」を、熱い「欲望の塊」を。その「全て」を、結衣の「腸内」に「ぶちまけた」のである。

 射精の瞬間。結衣は「あ…」と声にならない「吐息」を上げた。果たして「感覚」はあるのだろうか。「ブツ」よりも遥かに少量の「粘液」に――。あるいは「浣腸液」にでも似た「感触」を味わっているのかもしれない。
 結衣の「腸内」に、僕の「出したモノ」が注ぎ込まれてゆくのが分かった。「初発」は「衝動」と「勢い」のままに。それから彼女の「肛門」が締め付けることにより――、「しっぽり」と「搾り取って」ゆく。「貪る」ように、「吸い取る」ように。あるいは、最後の「一滴」すらも決して「残すまい」とするように――。

「発射」を終えて、ペニスをゆっくりと引き抜く。

――ヌチュ…!!

 と。最初に「入れた」時とはまた異なる「趣」のある音を立てて、結衣の「アナル」に「別れ」を告げる――。

 後に残ったのは――、「ぽっかり」と開いた結衣の「尻穴」だった。「時間差」で僕の「精子」が溢れ出し、零れ落ちてくる。結衣は肛門を「締めよう」としているのだろう。「括約筋」に力を込めようとしているのが見て取れる。だが、そこは「痙攣」を繰り返すばかりで、少しも閉じようとはしなかった。

 結衣が再び「お漏らし」をしてしまっているのに気づいたのは、その時だった。すっかり「ベッド」の上には「水溜まり」が広がり、「悲惨」な「世界地図」が描かれていた。

 だがそれを見ても、僕は何も思わなかった。
 すでに「射精」を終えて、あるいは「人類愛」について考えていたせいもあるだろう。(「聖者」になったつもりは全くないのだが…)
 だが決して、「それだけ」が理由ではなかった。

 僕にとってそれは――結衣の「小・お漏らし」は、もはや「当たり前」のものに成り下がっていたのだ。そこに「感動」も「感慨」もありはしない。「執着」は失われ、すっかり「飽いて」いたのだ。
 それよりもっと。僕の「興味」は今や別のところにあった。相変わらずの「暗がり」の中、僕は引き抜いた自分の「ペニス」を確かめる。そこに「付着物」があるのを期待して――。

 だが、僕の「モノ」に結衣の「モノ」は付いていなかった。何も「お土産」にすることなく、「未練」を思わせることなく、ただ「元通り」になっているだけだった。
 あれほどまでに「肛門付近」に、あるいは「パンティ」にまで付着していた「モノ」は果たして――。

――「うんち」はどこへ消えた?

 それは誰にも――、僕にも、彼女にも、分からなかった。


「駅」に着くと、結衣はもうそこにいた。
「待ち合わせ時間」の「十五分前」。やはり彼女は「真面目」な性格らしい。唯一、これから「させられること」を除いては――。

 今日の結衣の「服装」は――、「白」の「ブラウス」に「ベージュ」のふんわりとした足首丈の「プリーツスカート」だった。彼女らしい「清楚」でやや「控えめ」な格好だ。
 遠目にそれを眺めて僕が抱いた「感想」はけれど――、「可愛い」とか「よく似合っている」などといった「ありきたり」なものではなかった。
 ただ純粋に――「良かった」と思っただけだ。

 今日も結衣は「お漏らし」をするのだろう。「おしっこ」によって「下着」を濡らしてしまうのだろう。
 昨晩の彼女との「やり取り」の中で、今日の「新たな目的」についてはすでに決まっていた。すなわち――、「タイトル」にするならば「外でのお漏らし」である。
 それはもはや「既定事項」なのだ。何たって、彼女の方から「提案」してきたことなのだから。僕の方からも「別の提案」をしてみたが、「そちら」については「却下」されてしまった。だが「それはそれ」。きっと「いつか」――、いやこれはまだ言うまい。

 結衣が「パンティ」の「替え」を持ってきているのかまでは分からないが。さすがに「着替え」までは持っていないだろう。つまり、「衣服」にまでその「被害」が及んでしまったなら――、彼女は「そのまま」で街を歩くことになる。
 あるいは「ノーパン」になるとしても構わないかもしれない。だが「ズボン」に至ってはそうはいかない。そして、「スカート」であれば少なくとも、ちょっと「気を付ければ」被害を免れることが出来るかもしれない。
 そうした「諸々の事情」を踏まえて、僕は結衣の「判断」を「正しい」と認めたのである。あるいは彼女自身もそれを「分かった」上で、その「選択」をしたのかもしれない。
(ちなみに今日、「黒タイツ」は穿いていなかった。「夏」が近づき、ここ最近「暑く」なってきたからだろう。僕としてはやや「残念」だったが、それもやはり「正しい選択」だといえるかもしれない)

「小走り」で結衣の元へと駆け寄る――。彼女は僕に気づき、「笑顔」を浮かべた。それは「愛しさ」ゆえのものだろうか、それとも単に「期待」を滲ませたものなのだろうか。

「ごめん、待った?」
「いえ、今来たところです」

「ありがち」な挨拶を交わして、僕たちは並んで歩き出す――。

 あくまで「差し障りのない」会話をする中で。けれど僕の脳内は「想像」でいっぱいだった。

――結衣は今日はどんな「下着」を付けているのだろうか?
――本日はどんなのを「お漏らしパンティ」に選んだのだろうか?

「暗雲」立ち込める――、結衣に「指名」され、「使命」を帯びた「下着」の「末路」に。その「宿命」に「同情」する。あるいはすでに「汚れて」しまっているのかもしれない。

――結衣は今日も「パンティ」に「ウンスジ」を付けているのだろうか?

「拭き残し」によって。予期せぬ「緩み」によって。「うんち」を刻み付けているのかもしれない。
 まるでそうした「穢れ」から――、あくまで「そちら」の「排泄」についてはあたかも「無縁」であるという、「素知らぬ顔」をしておきながら。実は「ちゃっかり」と「やることはやった」上で「すべきこと」を怠っている――。「処理」の「甘さ」を「露呈」しつつも、あくまで「当人」はそれに「気づかず」、あるいは「知った」上で「バレる」ことはないと高を括っているのかもしれない――。

 だが僕は「知っている」のだ。結衣の隠された「秘密」に「気づいて」しまったのだ。そして「昨夜」、ついに彼女自身もそれを「認めた」のだ。
 もはやその「事実」は、「二人」の間で「既知」のものとなりつつあった――。

 駅の「階段」で。僕はあえて「数歩」下がり、結衣を先に行かせる。僕の前には、「スカート越し」の彼女の「尻」がぶら下げられる。
 その「内側」に、僕は「想像」を膨らませる。「割れ目」に、さらにその奥の「穴」に思いを馳せる。すでに一度「見知り」「嗅ぎ知った」、「知覚」を取り戻す――。

――きっと、そこは「素敵な香り」がするに違いない。

 若干の「湿り気」を帯びた結衣の「肛門」。その周囲の「ウンカス」。紛れもない「うんち臭」――。

 出来ることなら今すぐにでも「衣服」もろとも「下着」を剥ぎ取り、「揉み」「嗅ぎ」「舐め」「拡げたい」という衝動に襲われる。

 さらに僕の「妄想」は広げられる――。

 ついには、結衣の尻のその「中身」にまで。もはや留まるところを知らないように。
 やがて「幻想」すらももたらせられる――。
 結衣の「着衣脱糞」。「トイレ」ではなく僕の「目の前」で。「穿いた」まま、彼女が「漏らす」姿を「夢想」する――。

 それこそ、僕が「提案」しながらも、あえなく彼女に「却下」されたものだった――。


――ブチィィ…!!!

 盛大な「破裂音」の後。みるみる内に、結衣の「パンティ」が盛り上がり、「尻」が膨らんでゆく。それを「持ち上げる」のは、結衣の「うんち」だ。
「おしっこ」のように、「重力任せ」ですぐに「流れ落ちる」のではなく。「茶色い塊」はしばらくそこに留まったままだ。
 そこで僕は結衣のスカートを「捲り上げる」。いや、「漏らす前」の段階でそうしていた方がいいのか。そうすれば「瞬間」を目に焼き付けることができる。
 パンティの色が「白」であったなら尚更いい、と思う。そうすれば、結衣の「うんちの色」まで知ることができる。あるいは「健康状態」に至るまで。
「健康便」か、もしくは「下痢便」だろうか。「コロコロうんち」か「極太うんち」だろうか。どちらにせよ、当然にそれは結衣の「尻」を、「下着」を「汚す」こととなる。

 無様に尻を膨らませ、やがて「激臭」を放つことになる。「拭き残し」など比にならないほどの、「直接的」な「芳香」である。
 垂れた「ウン汁」は結衣の細くて綺麗な「脚」にも描かれることになるだろう。「太い線」にやや「細い線」。それらは巧みに折り重なって、ある種の「芸術的」な「作品」を思わせるだろう。
 わずかに尻に「食い込む」ことで――それこそが「ウンスジ」の原因なのかもしれない――結衣の「形」を浮かび上がらせていた「パンティ」は。けれど今や「割れ目」の場所を教えることもなく、逆に「モッコリ」とすることで「脱糞の証」を示している。

 僕はそこに――そこ「目がけて」、自らの勃起した「ペニス」を押し当てる。

――ヌチャ…。

 と。得も言われぬ「弾力性」。結衣の「うんち」の「感触」が「パンティ越し」に伝わってくる。今度こそ、僕のペニスには「うんち」が付くことになるだろうが、それすらも厭わない。

 そして――。まるで「白濁のソース」をかけるみたいに、あえなく僕は「射精」する。
 もはやそれは「自慰行為」に他ならない。だがあるいは「性行為」と呼ぶことだって出来るかもしれない。

 すなわち、「うんち」との「セックス」だ――。
 結衣の「うんち」と僕の「ザーメン」との豪華な「コラボレーション」。彼女と僕との「愛の結晶」。「先鋭的」な「共同作業」による、「前衛的」な「合同作品」である。


「ホーム」で電車を待つ間――。今日の「デート」の「過程」について考えながら――。
もはや「予定調和」となった「お漏らし」ではなく。

 僕は密かに、もう一方の「お漏らし」に思いを馳せていた――。


続く――。

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おかず味噌 2020/03/04 23:14

ちょっとイケないこと… 第五話「放屁と羞恥」

(第四話はこちらから)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/217778


――どうしよう。『おなら』出ちゃいそう…。

 私の思いとは裏腹に、思いがけず高まる腹圧に、腹立たしささえ感じる。

 人生において何度か訪れる転機。根気よく待ち続け、ようやく待ち侘びたこの時。今夜、私は処女を喪失する。彼に抱かれて、大人の女性となるべく一歩を踏み出す。それなのに…。

「ちょっと、止めてください!恥ずかしいですよ…」

 言葉で周知すると同時に、私は手で彼の頭を押し退けようと試みる。あくまでも「お尻を舐められる」という行為自体に羞恥を覚えるというように。
 建前もあったが、恥ずかしいというのは本音だった。こういう状況になった以上、ある程度の事態は覚悟していたつもりだったのだが…。

『おしっこまみれ』の股間を嗅がれたり舐められたりすることは、私の人生において前例のない経験でありつつも、前戯としてはまだ少し理解できる部分がある。
 だけど、まさかお尻の穴を舐められるなんて。想定も想像も全くしていなかった。

――そもそも、お尻って舐めるものなの!?

 本来、最も汚い部分であるはずなのに。私はまだシャワーも浴びていないのに。
 彼はそんな私の一部を執拗に、必要以上の執着をもって丹念に舐め続けている。

 彼の舌が縦横無尽に私の中を這い回り、何度も出たり入ったりする。その度に私は得体の知れない快感と不快感の間を行ったり来たりするのだった。


「あっ…!」

 つい煩悶の声を漏らしてしまう。出す専門の肛門を詰問されることで、そこで私にある疑問が生まれるのだった。

――そんなに私のお尻の穴って、美味しいのかな?

 そんなはずはない。何たって『うんち』が出る穴なのだ。今日は一度もしていないとはいえ、それだって決してキレイだとは限らない。

 私は見た。自分の下着を洗っている時に、そこに刻み付けられた『ウンスジ』を。
 ショーツを汚していたということは、触れていた部分。元凶ともいえるその部分が汚れていたことはもはや間違いない。

 今日はなんとか下着を汚さず(『おしっこ』についてはともかく)に済んでいる。だけど内側までは分からない。もしかすると自分でも気づかない内に、すぐそこまで『ブツ』が迫ってきているかもしれない。

 このまま舐め続けられたら、彼の舌に『大便』を付けてしまう。
 もし仮にそんなことになれば、大変なことになってしまう。

 精神的な忌避を感じながらも、今の私はより具体的で切迫した危機に瀕していた。


――ヤバい!!本当に出そう…。

 いよいよ、お尻の穴が言うことを聞かなくなってきた。彼の唾液にふやかされて、拡がった私のそこは痺れたように感覚を失いつつある。括約筋に力を込めようにも、力の入れ方が分からない。腰をくねらせ、拳を握り締め、かろうじて放出に耐える。

 彼の目に、今の私の姿はどのように映っているのだろう。
 服を着たまま四つん這いになり、剥き出しのお尻を突き出し、割れ目を拡げられ、その奥さえ露わになっている。

 きっと私の肛門は、だらしなく口を開けたままになっているのだろう。
 菊門のみならず、その深淵さえも彼に覗かれてしまっているのだろう。

 思えば、行為に及ぶ前に「電気を消してください」と言うのを忘れていた。女の子として当然の恥じらいであり、最低限の権利の行使。明るい場所で裸体を晒すのは、女の子ならば誰だって恥ずかしいものだ。きっと私だけじゃなく、それなりに経験のある女子であっても。(ビッチならば、あるいは気にならないのかもしれないが…)

 だけど、今夜の私に限っては少々事情が違っていた。すでに最大の羞恥なる解放に身を焦がした後なのだ。そして、さらなる絶望に火を灯されつつある。


――もう、限界…。

 逼迫したガスの放出の予感を悟って、私は最期の抵抗を試みる。腕に力を込めて、彼の顔と舌を穴から引き剥がそうとする。だけどそこは男性の力であり、ただでさえ気の抜けた私の微力である。ちっとも、びくともしない。

「本当に嫌なんです!!」

 私は語気を強めた。「イヤ」という言葉を用いる。決して好ましい選択ではない。
 女の子はこういった状況において(『おなら』を我慢するという意味ではなく、「エッチ」という場面において)、あまり積極的になるべきではない。かといって、完全に拒絶をするというのもまた違う。

 もちろん本当に嫌ならはっきりと断るべきだが、そうではない場合。むしろ自らもそれを望んでいる場合においては。
 女の子には「え~」とか「ちょっと…」とか恥じらいを見せつつも、けれど徐々にそれを受け入れていってしまうという絶妙な演技が求められる。

 過剰に好戦的だと痴女と思われ、相手を引かせてしまうかもしれないし。
 逆に消極的過ぎると、それもまた行為を止めさせてしまうかもしれない。

 だからこそ、あくまで八百長じみた「出来レース」を演出しなければならない。
 その点、男性の方は楽だ。相手の反応を窺いつつも、一直線に突っ走ればいいだけなのだから。


 それでも私はつい拒絶とも受け取られかねない反応を見せてしまう。それによって今夜はもうその機会を失ってしまう可能性だってある。
 そうなればまた次回、いつ来るかも分からない一期一会を待たなければならない。

 でも違うのだ。私はただ「お尻を舐める」という行為をやめて欲しいのであって。その理由も決してそれ自体が嫌なのではなく、あくまで自らの身に迫る危機的状況を回避するため、緊急避難的にそれを求めているのだ。

 だが幸か不幸か。彼はそんな私の拒絶によって行為を中断することはなく、むしろこれまで以上に貪欲に肉欲を貪り続けるのだった。

 アソコがじんわりと、いや激しく濡れているのが分かる。腰を浮かせているため、もしかしたら股間から愛液が滴りシーツに垂れているかもしれない。けれど、それを確認する余裕さえ私には与えられなかった。本当なら、そっちを舐めて欲しいのに。そしたら私は、何の拒絶もせずにそれを受け入れることができるのに。

 それでも彼は、あくまで望まない穴を刺激し続けることで私に羞恥を与えてくる。己の身にも危険が迫っているとも知らずに…。

「何か、出ちゃいそうなんです…!!」

 警鐘を鳴らしつつ、括約筋に精一杯の力を込める。無駄だと分かっていながらも、なんとか開き切ったその部分を閉じようとする。そして…。

――ブボッ!!

 ついにやってしまう。『放屁』してしまう。豪快な音を立て彼の顔に『おなら』を噴き掛けてしまう。熱い空気の塊がたやすく、穴を突き抜けていくのが分かった。

――ゲホゲホッ…!!

 私の思わぬ反撃に彼は堪らずむせる。言わんこっちゃない。警告したはずなのに、まさに自業自得だ。

 それにしても。彼の嗚咽にも似た咳払いは暫く止まない。

――そんなに、私の『おなら』クサかったのかな…?

 私は途端に申し訳ない気持ちになる。同時に、今日食べたものを脳内で思い返す。
 いや、それほどキツい臭いの原因となるものは食べていないはずなのだが…。

 それでも『おなら』が臭いものであることに違いはない。しかも本来なら衣越しに空中に放たれるべきそれを、彼は直で嗅がされたのだから。
 今や彼の呼吸器は大気とは異なる、私の腸内で醸成された気体に満たされている。新たに息を吸い込もうとも、暫くは周囲に充満した毒ガスから逃れられない。


――終わった…。

 淡い期待と儚い希望が消失したことを知る。処女喪失の機会であったはずなのに。今夜こそはと思っていたのに。これで友人たち、もしくは顔も知らない同世代たちに追いつけると思ったのに。これでまた振り出しだ。

 いくら彼でも顔に『おなら』を噴き掛けるような女(スカンクじゃあるまいし)とこの先一夜を共にしようなどとは思わないだろう。
 そして。きっと彼は同性の友人たちの前で、今夜の失敗談を披露することだろう。

――バイトの後輩と良い感じになってヤろうとしたら、そいつどうしたと思う?

 己の過失など決して語ることなく、あくまで自分は被害者であるかのように装い、私という加害者を口汚く罵ることだろう。

「スカンク女」と。

「おもらし系女子」という字名を得てから間もなく「スカンク系女子」という悪名を襲名した私に、これからどんな顔をして表を歩けというのか。
 処女という重い足枷を嵌めたまま、次々と怒涛の勢いで汚名を獲得していく私に、どうやってその錠を外してくれる男性を見つけろというのか。

 こうなったらもういっそ、なんて思ったわけではない。
 むしろこれ以上の罪を抑止するべく再犯を防止するつもりでいた。だがそれでも、会心の一撃を放った私の肛門はそう簡単には改心してくれなかった。

――ブチッ!プゥ~~。

 意思とは裏腹に、二発目が放たれてしまう。緩んだ穴がまるで呼吸するみたいに。
 息をするように犯行を重ねる非道の重罪犯から、さらなる追撃がもたらせられる。

 初撃に比べてガスの残量が少なかったためか、威力はやや物足りないものだった。
 だけど勢いが弱まった代わりに。彼の唾液によって湿らされた私の肛門から出た『おなら』は水気を含んだ下品な音となり、いじらしくも長い余韻を残すのだった。

 豪快な一発目よりもある意味で恥ずかしい二発目に、穴があったら入りたい衝動に襲われる。だけど、そこに穴はなく。穴というならば、ぽっかりと口を開けたままの私のアナルがあるだけだった。

 思わず泣き出してしまいそうな羞恥に耐え、溢れ出しそうになる涙を必死で堪え、脱いだ下着とショーパン(そこにも私の前科が刻まれている)を手元に引き寄せて、それを履いて敗走しようと試みる。だが彼は、私の逃走を許してはくれなかった。

 ようやく嗚咽混じりの咳が止んだ彼は、私の腰をがっしりと掴んだ。

 突然の拘束に私は戸惑う。私にこれ以上、どんな屈辱を与えるというのだろうか。
「武士の情け」というものを彼は心得ていないらしい。あくまでどこまでも徹底的にトドメを刺すつもりなのだろう。


 私の腰を掴んで再び「四つん這い」にさせた後、彼の手はやがて臀部へと移動し、受刑者を痛めつけるみたいに激しく揉んだ。だけどその刑罰は義務的執行によるものではなく、そこには明確な意思があるのだった。

 彼は私のお尻をただ乱暴に揉むのではなく、尻肉がひっくり返るように押し広げ、割れ目を剥き出しにする。

 弛緩し切った穴を視姦されることで、未知の性感を刺激されつつ。
 そこで彼は、私の静観を突き崩すように…。

「結衣の『おなら』食べちゃった」

 悪戯を茶目っ気まじりに告白する子供みたく彼は言う。だが、その言動はまさしく常軌を逸していた。

――そんな言葉、私は知らない…!!

 今までの人生においても、この先の人生においても、恐らく聞くことのない言葉。(経験を重ねればそれほど不思議なことではないのか?いや、そんなはずはない)

 まさか「おならを食べる」なんて行為が、そんな比喩が一般的であるはずがない。
 私が世間知らずなのかもしれないが。それでもそんな常識が存在し得ないことは、これまで雑誌やテレビなんかで見聞きした情報からも明らかだ。

 だが彼は言った。「おならを食べちゃった」と。あくまで不可抗力でありつつも、さも自らも望んでそれを咀嚼したのだというように。


 予期せぬ発言により硬直状態の私に、彼は次なる一手を与えてくる。

――ヌポッ…!!

 憎むべき罪人である私の肛門に、彼はあろうことか指を差し入れてきたのだった。

「ひっ!!」

 思わず、ヘンな声が出てしまう。舌とは比べものにならない異物感。

「い、痛いです…!!」

 痛みを忌避しながらも、だが私の懸念はむしろ別のところにあるのだった。

 彼があれだけ舐め続けたということは、穴の周囲は汚れていなかったのだろう。
 今日『大便』をしていないことに私は安堵する。だけど穴の中までは分からない。

 一日出していないということは『宿便』が溜め込まれている可能性だってあり。
 彼にほじられることで『うんち』が掻き出されてしまうかもしれないのだ。


 腸内を指で掻き回される。そこに快感はなく、ただ不快感のみが私を支配する。

 私はどうしていいかも分からずに、ただ彼の意思と指に身を委ねるしかなかった。
 すっかり敏感になったお尻の穴。不快感の中にある微かな快感の糸を手繰り寄せ、それを享受することでしか私は私という存在を自覚することが出来なくなっていた。

 存分に「違う穴」を愛撫し、ほぐしたところで彼は言う。

「もう、挿入れていい?」

 私は戸惑いを隠せぬまま、未だ非現実の中を彷徨いながらもコクリと頷く。

「電気消してください」

 今更ながら消え入りそうな声で、私はかろうじて乙女としての矜持を保つ。
 それがすでに失われたものであったとしても、やっぱり建前は大事なのだ。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/25 00:12

ちょっとイケないこと… 第四話「前戯と共感」

(第三話はこちらから)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/214847


 足元の水溜まりを踏まないように気を付けつつ、下半身を不格好に固定したまま、彼に導かれるがままに部屋へと戻り、そのままベッドに押し倒される。

 ありがちな展開(なのかは分からないけれど、映画やドラマなんかではそう)だ。幾度となく想像し、妄想してきた想定の行程。

 ただ予定と少しだけ違うのは、私の手を引く彼の力が終始遠慮がちであったこと。勢いに身を任せることで、むしろ私自らの意思で仰向けになったこと。そして何より私の体が『おしっこまみれ』であることだった。

「ベッド、汚れちゃう…」

 申し訳なさから私は呟く。

「洗えば、大丈夫だよ」

 心配ない、と彼は言う。そんな未来の問題より、あくまで現在に期待するように。

 彼は服の上から私の体をまさぐり、それから強引に唇を重ねる。私は目を閉じて、彼のキスを受け入れる。

 呼吸を止めて一秒、ならぬ三秒間。(体感としてはもっと)彼はそっと唇を離す。こうして私の「ファーストキス」はあっさりと奪われたのだった。


 済んでしまえば実にあっけないものだった。どうして頑なに守り続けてきたのか、なぜ私にそうした機会が訪れなかったのか、不思議なくらいに…。

 キス自体は不快なものではなく、かといって快楽を感じられるものでもなかった。それでも頭の奥が痺れるような気がした。日常と地続きの非日常の扉を開くような、そんな気分だった。

「初めて」の余韻に浸っている中、彼は再び私の唇を奪ってくる。二度目の口づけ。(「セカンドキス」なんて言葉はあるのだろうか?)私はまたもそれを受け入れる。やや余裕が生まれたためか、今度は少しばかりの快感を得ることができた。

 さらに。唇を重ねたまま、彼はわずかに上体を浮かせて私の胸に触れる。
「おっぱい」と呼ぶには控えめな、それでも腰との対比でそれなりに大きく見える、私の自慢の部位の一つ。だけど、そこに秘められた事情があることを彼は知らない。

 このまま服を脱がされずにいたならば、あるいは明かされずに済むかもしれない。だがもはやそんな段階ではない。私は今夜また一つ、彼に秘密を晒してしまう。

 紛れもない私のコンプレックスの一つ。私を初体験から遠ざけていた一因。
 日常生活ではさほど気にならないその特徴も、いざ男女が裸を見せ合う場となれば異端として。行為の発端を妨げる要因になり得るのだった。

 彼はそんな私の先端を見て、何を思うのだろう。まさか笑ったりしないだろうが、内心でどう思われるかまでは分からない。私はそれが怖かった。


 続いて彼はベッドと体との隙間に手を差し込み、私のお尻に触れてくる。そちらに秘めたる事情こそないものの、今だけは少々状況が異なる。

 私は、ついさっき『おもらし』をしたばかりなのだ。ほんの数分前のことなのに、それは遥か昔の出来事のようにさえ思える。だけど粗相の証拠は確実に残っていて、股間から広がる染みはショーパンの後方まで浸食しているのだった。

 濡れた着衣の上から、お尻を揉まれる。彼は私の失態をどう思っているのだろう。大学生にもなって二度も『失禁』した私に対して、果たして何を思うのだろう。

 彼が私をベッドに誘ったということは、少なくとも嫌悪を抱いてはいないらしい。それもそのはずで、私が自らの体を穢すことになった原因はそもそも彼にあるのだ。
 彼がトイレに行くのを阻止しなければ。私は悲惨な目に遭うことも、陰惨な性癖に目覚めてしまうこともなかったのである。

 だがそれにしても。なぜ彼は二度も(二度目については私にも大いに責任がある)私の生理的欲求を邪魔しようと試みたのだろう。 
 その悪戯自体に何の意味もなく、彼の悪名を高めるものでもないのにも関わらず。ただ私を醜悪に貶め、ともすれば心に傷を負わせかねない悪行を働いたのだろう。

 鼓膜を揺らす残響に耳を傾ける。決壊の間際、彼は私の耳元で呟いた。
「いいよ」と。三文字のその承認は私がトイレに行くことを許可するものではなく、あくまで『穿いたまま』出すことを彼は了承したのだ。

 そこでふと、ある違和感に思い当たる。

――もしかして、○○さんも…?

 静観しつつも、共感の予感を抱くのだった。


 一頻り尻を揉みしだいた後、彼はついに私の服を脱がせにかかる。と見せかけて、着衣状態のまま私の膝を掴んで開脚させる。

――このまま、挿入するつもりなの…?

 疑問というか、怪訝が一瞬脳裏を掠めたものの。まさかそんなはずはないだろう。
 私が穿いているのはデニム生地のショーパンだったし、その下にはショーツだって身に着けている。下着は手で破れるだろうが、さすがに服まで破くのは不可能だ。

 脚を開かせたまま、彼は私の股間を注視する。私は身動ぎし、微かな抵抗を示す。

 正直言ってやめてほしい。そこは盛大に濡れて、色が濃く変わってしまっている。それに臭いだってするだろう。私の最も恥辱に塗れた部分。であるにも関わらず…。

 彼は私の局部に顔面を埋めてきた。ついさっき『おもらし』したばかりの恥部に、今や本能の溢れる陰部に、理性を司る頭部を押し付けてきたのだった。

「やめて、ください!!」

 はっきりと私は拒絶する。彼の行為に対してというよりも、主に私自身の問題からそれを拒もうとする。けれど…。

 今さら脚を閉じようしたところで、もう遅い。すでに彼の頭は私の股の間にあり、両脚で挟み込むことで、よりガッチリと固定する格好となる。

 まさに恰好の餌食ともいうべき、ショーツでいうところのクロッチに当たる部分を生贄の如く彼の眼前に捧げ、忸怩たる汚染を食餌のように彼のお膳に捧げることで。私は、彼に『おしっこの匂い』を直接嗅がれてしまう。

――フンス…。スンスン。

 彼が鼻を鳴らし呼吸するのが、息の音と温度で伝わってくる。

「結衣のココ、おしっこクサいね!」

 おどけた口調で彼は言う。

――やめて、言わないで…。

 既知の事実を改めて口に出されることで。顔から火が出そうな羞恥を覚えつつも、これまでとは比にならない情痴に私は身を焦がすのだった。


 そこからさらに、彼はとんでもない行動に出た。

 ただ嗅ぐだけでは飽き足らず。そこに溢れるものを知った上で、それを物ともせず。彼はショーパンに舌を這わせ、私の『おしっこ』を舐め取ったのだ。

「やっぱり苦いね」

 彼は苦笑する。その反応によって、ようやく私自身の疑心に確信を得る。

――やっぱり、○○さんも『おもらし』が好きなんだ。

 あくまで自分がするのではなく、「女の子が漏らす」という行為に興奮する性質を彼は持ち合わせているのだ。

「もしかして、○○さん『も』おもらしが好きなんですか?」

 勇気を出して彼に訊ねてみる。直後、後悔に襲われる。同調を表わすその助詞は、女子としてあるまじき私の所思を強調してしまったのにも等しかった。

「えっ?結衣も好きなの?」

 案の定、彼に指摘される。私的な性癖について、正直に告白するしかなかった。

「はい、まあ…。この前、○○さんの家でしちゃってから」

 消え入りそうな声で私は呟く。かつての自分に別れを告げ、追悼を捧げるように。

 それまでの私は正常だったのだ。孵化を待つ雛の如く未体験に浮かされながらも、決して異常な性癖など持ち合わせてはいなかったのだ。
 だが今となっては。奇禍に感化されることで、思わぬ変化が私に付加されていた。

「実は俺、あの時めちゃくちゃ興奮したんだ」

 彼もまた自白する。私から訊いてもいないのに勝手に自爆する。

「そうなんですね。でも、ヒドイですよ~」

 あくまで自分のことは棚に上げつつ、私は彼に抗議する。

「ごめんね。まさか本当に、おもらし『してくれる』なんて思わなかったからさ」

 徐々に彼の本音も漏れ始める。互いに少しずつ打ち解けるように…。

「あの後、大変だったんですよ?」

 家(ウチ)に帰ってからのことについて、彼に打ち明ける。

 いい歳して夜中に一人汚れた下着を洗うというその惨めさが彼に分かるだろうか。
 あるいはそれさえも、彼にとっては興奮の材料なのかもしれない。

「本当ごめんね。俺、結衣が帰ったあと我慢できなくて…」

 彼もまた、事後のことについて自供する。

「つい、一人でしちゃったもん!」

 秘めたるべき行為を「イケないこと」を包み隠さず供述する。

――私と同じだ!

 口にこそ出さないものの、私は内心で共鳴する。
 私も下着の事故処理を終えた後、部屋に戻ってから自己処理に耽ったのだった。

「変態ですね」

 私は彼を断罪する。だがその断定は自刃の如く、自身にも向けられた弾丸だった。


 彼はいよいよ、ショーパンに手を掛ける。ホックを外し、ファスナーを下ろして、私の下半身からズボンを抜き取る。私は腰を浮かして、それを手助けする。

 黒タイツに透けたショーツが露わとなる。『おしっこ』にまみれた、濡れた下着。彼はそれさえも、私の一部として愛してくれるのだろうか。

 残念ながら今日の私の下着は彼の興奮を大いに高めるものではないかもしれない。普段通りの、飾り気のない、ごく普通のショーツ。「もしかしたら」と思ったけれど、下着にまで拘る気にはなれなかった。(そもそも私は勝負下着なんて持っていない)

 私が穿いていたのは、奇しくもあの日と同じ、黒のショーツだった。濡れたことで若干色が濃くなっているものの、染みはそれほど目立たない。それを不幸中の幸いと捉えるべきか、あるいは「残念でした」と斜に構えるべきだろうか。

 彼はそこでさらに私の予想の斜め上をいく行動に出た。ショーツには目もくれず、私の脚を舐め始めたのだ。

 黒タイツ越しの太腿から膝にかけて舌を這わせ、それはやがて足首にまで達する。続いて彼は私の足を手に取り、足の甲から指、指の股、足の裏さえも舐めに掛かる。

 まるで別の生き物であるかのように徘徊する彼の舌にくすぐったさを感じながら、妙な征服感を満たされつつも。またしても未知なる羞恥を私は覚えるのだった。


 まだシャワーも浴びていないし。『おしっこ』の汚れについては言うまでもなく、ごく当然に汗だってかいている。新陳代謝による今日一日分の穢れ。その味と匂いを彼に覚えられてしまう。

 再び股間が湿る感覚を自覚する。そこはもはや彼を受け入れるための領域であり、彼のモノを迎え入れるための聖域なのだった。

「もう、入れて欲しいかもです…」

 私は懇願する。本来ならば女性側から口にするべき台詞ではないのかもしれない。それでも確かな勝算と、僅かな打算を込めて私は言う。
 男性にとってはその言葉こそが前戯の完了を告げる合図なのだと、準備万端だと、その相互確認に他ならないと分かっていたからだ。

「結衣、四つん這いになって」

 彼にそう指示される。その方が脱がしやすいから、と彼は言う。仰向けの体勢から私は一旦起き上がり、ベッドに膝をついて彼に言われた通りの姿勢を取る。

 高く突き上げられ、突き出さされた、黒タイツ越しのお尻。
 彼の手が私の腰に掛かる。そのままショーツ諸共脱がされるのであったが…。

 この期に及んで、私は怪訝と懸念を感じるのだった。


『ウンスジ』

 それは不慮の事故によるものではなく、完全なる自己責任により描かれたものだ。

『大』をした後ちゃんと拭いているにも関わらず、なぜかショーツを汚してしまう。あるいは力を入れた際に、思いがけず括約筋が緩んでしまったのかもしれない。
 拭きの甘さか、お尻の緩さか。どちらの理由にせよ、肛門付近の許されざる痕跡を余すところなく知り得てしまったのだった。

 ふいに私は思い返す。本日の「排泄状況」を…。

 今朝はトイレに行った。さすがデートの最中、事前に催した尿意を抱えておくには無理があったからだ。その後『おもらし』へと至るまで『おしっこ』はしていない。
 そして。『うんち』については今日はしていない。便意を感じなかったからだし、私のそれは不定期に訪れる。

 私は一安心する。少なくとも彼に『ウンスジショーツ』を晒す心配はない、と。
 そんな風に、私の気が緩みかけたところで…。

――バチン!!

 突如、お尻に衝撃が走る。不意打ちに私は「あんっ!」と声を上げてしまう。
 直後、彼が私のお尻の頬を平手打ちしたと知るのだった。

「何するんですか!?」

 私は抗議する。それに対して、

「『おもらし』したお仕置きだよ」

 彼は加虐的な笑みで答え、そこからさらに私のお尻を二、三度叩く。その度に私は「やんっ!」とか「ふんっ!」とか、いやらしい声を漏らしてしまう。

 ようやく「お仕置き」を終えた彼は、私の股間ではなくお尻に顔を埋める。
 まだまだ続けられる彼の「前戯」に、別の事情から私は眉をひそめる。

――もし何かのきっかけで、お尻を汚していたらどうしよう…。

 さすがの彼も『おしっこ』に関しては寛容であり許容範囲内なのかもしれないが、それが『うんち』となれば話は別である。
 彼の興味を萎えさせ、あるいは行為を中断させてしまうかもしれない。

――大丈夫、今日はまだ『大きい方』をしていない。

 それでも。あの日の不始末と同じように、不信は完全には拭い去れなかった。


 そんな私の不安をよそに彼は肛門を舐めにかかる。俗にいう「クンニ」とは違う、お尻の穴を舐められるという行為。その不快さと不可解さに胸騒ぎを覚えながらも、私はただ彼に身を委ねるしかなかった。

 彼のお尻舐めは予想以上に長く続いた。穴の周囲を丹念に舐め回したかと思うと、両手で割れ目を押し広げて、やがて彼の舌は穴の中へと差し向けられる。

 私は何度目かの抵抗をした。だけど私に出来るのはお尻を左右に揺することのみ。彼はそんな抵抗など意にも介さず、私の肛門の味を堪能する。

 長時間そうされていたことで、やがて私の中にある変化が訪れる。
 それはお腹の奥底から来る焦燥であり、乙女として催してはならない衝動だった。

――どうしよう。『おなら』出ちゃいそう…。

 あるいはその失態も『おもらし』のそれと比べればずっとマシなのかもしれない。だが私の粗相を受け入れてくれた彼の前では『放屁』の方が羞恥に他ならなかった。

 今や敏感になりつつあるアナルを刺激されながら、私は欲求を必死で堪えていた。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/14 01:22

ちょっとイケないこと… 第二話「後悔と洗濯」

(第一話はこちら)
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――あの日は、最悪な日だった。

 思い出したくもない。バイト帰り、興味本位で立ち寄った彼の家。そこで私は…。
 あえて口に出すのも憚られる。私は、彼の前で『粗相』をしてしまったのだった。

 果たしていつぶりだろう?およそ記憶になんて残っていない。幼少期、私がかつて『オムツ』をしていた頃以来だ。当時のことであれば別に恥ずかしくもない。私にはまだ自我が芽生えておらず、善悪の判断も羞恥の決断も出来なかったのだから。

 だけど私は、大学生にもなって『おもらし』をしてしまった。
 羞恥の判断も出来る年頃に。善悪とかそれ以前に。

――○○さんが悪いんだ!

 彼は私がトイレに行くのを阻止した。そう、私はきちんとトイレに行き、きちんとそこでしようとしたのだ。そしてそれは本来なら間に合うはずだった。それがまさか『穿いたまま』してしまうことになるなんて…。

 あの瞬間のことは忘れようにもない。ショーツの中がじんわりと温かくなる感触。止め処ない水流が決壊と同時に溢れ出し、最初は不快でどうしようもないのだけど、ある境界を越えるとなぜか心地よく思えてくる。イケないことをしているみたいな、これまで味わったことのない感覚。それはとても不思議な体験だった。


 あの日、帰宅した私がまず最初にしたことは濡れた下着を手洗いすることだった。
『おもらしショーツ』をそのまま洗濯機に放り込むわけにもいかず、バッグに入れて持ち帰ったそれを夜中に一人、洗面台で洗った。

 彼のおかげ(?)で制服が濡れなかったのは不幸中の幸いだった。ノーパンのままズボンを穿いて、かろうじて私は自宅に辿り着いたのだった。

 音を立てずにそっと玄関のドアを開けて中に入る。家中の灯りが消えていることを確認して、忍び足で廊下を歩き、一直線に洗面所に向かう。
 家族が皆寝静まっていたのは僥倖だった。いくら身内といえど、こんな無様な姿を晒すわけにはいかない。ましてや、まだ中学生である弟に見咎められるなんて…。

「お姉ちゃん『おもらし』しちゃったの?」なんて訊かれた日には、姉としての私の威厳が崩壊してしまう。

 だけど私はそれより恥ずかしい姿を、家族でもない他人に見られてしまったのだ。
 裸を見せるよりももっと恥ずかしい行為。いや、それとは少し違う羞恥。

 数十分前の出来事を思い出すと、私はまだ『おしっこ』を出し終えていないような奇妙な感覚に襲われた。膀胱はとっくにカラであるはずなのに。全てをショーツ内と彼の家の浴室のタイルにぶちまけてきたはずなのに。まだまだ出し足りないような、もっと出したいような、すっきりしないような感覚だった。


 バッグの中からビニール袋にくるまれたショーツを取り出す。それはびしょ濡れになっている。鼻を近づけて嗅いでみると、強烈なアンモニア臭が鼻腔を刺激した。

 私は改めて、自分が『おもらし』をしたのだと知った。
 どこかでそれは夢じゃないかと、目が覚めてトイレに行けば済む話と思っていた。
 だけどそれは、紛れもない現実だった。

――明日からどんな顔して、○○さんに会えばいいんだろう?

 少し先の未来のことを考えると、気が重くなった。それはもはや絶望とさえいっていいほどに…。

 一応彼には「誰にも言わないでください」と口止めはしたし、まさか後輩の失態を言いふらすような人ではないから大丈夫だと思うが、それでも万一ってことはある。
 それに(それこそまさにあり得ないことだが)彼が『おもらし』の口止めを口実に私の体を要求してきたとしたら。どちらにせよ私は彼に弱みを握られたことになる。

 考えれば考えるほどに、想像すればするほどに、問題は幾つも山積みではあるが。まずは目の前の問題から一つずつ片づけていかなくてはならない。
 とにかく今の私にできることは、家族が目を覚まさぬ内に汚れたショーツを洗い、少しばかり部屋で干した後、何食わぬ顔でそれを洗濯機に突っ込むことだった。


 早速水を出して洗おうとしたとき、ふと思い立って私は作業を中断する。

 思えば(当たり前のことだが)こうして自分の穿いていたショーツを眺める機会はそうそうない。いつもはお風呂に入るときに爪先から脱ぎ捨てて、そのまま洗濯機に投げ込んでいる。汗をかいたときだって、生理のときだってナプキンはしているし、それほど汚れるものでもないだろうからそれで良かった。

 だけど今こうして自分の下着を。本来最も汚れる場所に触れる衣類を観察すると、実に様々な発見があった。

 黒いショーツは『おしっこ』で湿っている。だけど、その濡れ方は洗濯後のように均一ではない。ゴムの付いた上の部分はほとんど濡れておらず、一番濡れているのは当然、股に当たる部分だった。

 クロッチの部分をよく覗き込んでみる。そんな事をしている場合ではないのだが、何か抗えない強大な力にそうさせられているように、自作の『シミ』を注視する。
 ただ『おしっこ』が滲んでいるだけと思っていたそこは、微かに白く汚れていた。

「何だろう?」と思って触れてみると、ヌルヌルと粘り気のあるものが指に付いた。
 細く糸を引くその液体は、私の愛液だった。私はアソコを濡らしていたのだ。

 一体いつから、そんな状態になっていたのかは分からない。あるいは何かの反動で(いわゆる人体の神秘というやつだ)思いがけず溢れてきただけなのかもしれない。もしくは彼の家に誘われたことで、何かを期待する気持ちが私にあったのだろうか?

 そうだ!私がトイレに向かうのを邪魔する際、彼はどさくさに紛れてズボン越しに私の股間を弄ったのだ。あのせいで、あくまで生理現象により濡れてしまったのだ。だとすれば、それは私のせいではない。

 それでも。なぜ下着に愛液が付着しているのか、その理由に心当たりがあった。
 またしても私は思い出す。あの瞬間の感覚を…。


 決壊を迎える直前、限界を越える寸前、ふいに股間が湿る感触を覚えた。
 私は、ついに『チビった』のだと思った。(実際、彼にはそう思われてしまった)だけどその液体は尿とは異なり、私の陰部に温かくまとわりついたのだった。

 まさしくそれは、濡れるという感覚だった。私は『おしっこ』を我慢しながらも『おもらし』の誘惑によって、アソコを濡らしてしまったのだ。

 何ということか。あろうことか私は羞恥によりヴァギナを開かせてしまったのだ。
 それに気づくと、記憶の想起によって、再び股間が熱を帯びるのが分かった。

 私は制服に愛液が付いてしまわないように、股の部分を指でそっとつまむ。だが、時すでに遅し。ズボンを離した瞬間、冷たい感触が確かに伝わってきた。
 そして。制服ズボンを濡らすその液体は今、目の前のショーツのクロッチ部分にも白く染み込んでいるのだった。

 さらに、私の下着の汚れはそれだけに留まらなかった。

 続いてショーツの後方、お尻に触れる部分を凝視してみる。割れ目に当たる部分にカピカピになった茶色い粉のようなものが線状に付着している。そこに鼻を近づけて嗅いでみると、思わずむせてしまいそうなほど強烈な臭いがした。


 それは、紛れもない『うんちの臭い』だった。
 私は、『おしっこ』のみならず『うんち』さえもショーツに付着させていたのだ。

 おそらく、朝トイレに行って排便をした時にきちんと拭けていなかったのだろう。
 私は『大』をした後、大体二、三回は拭くようにしている。ペーパーに付いた便を確かめ「もうこれくらいでいいだろう」と水を流し、トイレを後にする。(ちなみに集合住宅である私の家に、ウォシュレットなんて気の利いたものはない)

 たまに肛門付近にショーツがひっつくような感触もあったが、汗だろうと気にしてなかった。それがまさか、こんなにも『ウンカス』をこびりつけていたなんて…。

『おもらし』の後始末をする際、彼に下着の裏地を見られなくて本当に良かった。
 パッと見ではよく分からないだろうが。凝視されれば確実に私の『ウンスジ』が、ショーツに刻み付けられた痕跡がバレてしまうところだった。

 それに。お尻を触られなくて良かった。仮に割れ目をなぞられたなら、彼の指に『うんち』を付けてしまう可能性だってあった。ましてやお尻を嗅がれでもしたら、『うんちクサさ』を彼に知られてしまう恐れだってあった。


 ふと我に返る。イケない、いつまでも悠長に観察を続けている場合ではない。
 家族は皆寝静まっているとはいえ。いつトイレのために、あるいは小腹を空かせて起きてくるか分かったものじゃない。急がなければ…。

 蛇口を開けて水を出す。ジャーと小気味の良い音。命令を与えられ、感情もなく、水を流す装置。そこに後悔や羞恥があるはずもなく、調整された勢いで溢れ出す。
 漏れ出したわけではなく、垂れ流してしまったわけでもない。私のそれとは違う。だからこそ、堂々としている。

 黒ショーツを水に浸す。やがて、きれいな水によって『おしっこ』は押し出され、押し流されてゆく。ジャブジャブと手で揉んで洗いながら、ショーツから滴る液体を眺めていると、それは何だか『おもらし』しているみたいだった。

 既視感を覚えつつ、体験を再現し客観視しているような奇妙な感覚に襲われる。
 私はこんな風に『おもらし』をしたんだ、と再びアソコがじんじんと疼いてくる。それと共に、わずかに尿意を催してきた。私は尿道に力を込めてみる。

――このまま、しちゃおうかな…。

 どうにも理性が緩みかけている。けれど片付けが余計に大変になることを考えて、私はその衝動を堪えるのだった。

――よしっ、もういいだろう。

 水を止め、ショーツを固く絞る。確認のために今一度、匂いを嗅いでみる。
『おしっこ臭』はすっかり消えていた。洗剤の香りこそしないものの、それはもはや濡れた洗濯物とほとんど変わらない。私は洗面所の明かりを消した。


 ひと仕事終えて部屋に戻る。濡れたショーツを乾かすためテーブルの上に広げる。制服を脱いでベッドに横になる。ブラは付けているが下は穿いていないため下半身は丸出しになっている。
 だがここは数少ない私のプライベート空間であり、深夜に家族が入ってくることもないだろうから構わないだろう。

 これからシャワーを浴びて寝るか、朝になってからシャワーを浴びるかを考える。
 今日は大学帰りにそのままバイトに行った。その疲れもある。それに汚れた下着を洗ったことで、まるで自分自身も清められたかのような錯覚もあった。

 手を頭の後ろに組んで脚を伸ばす。目線を下方に向けると、生え揃った自分の毛が見えた。浴室以外でこうして自分の陰毛を眺めるのは、何だかヘンな感じがした。
 シャワーを浴びているときのそれは濡れてしなしなになっているが、今のそれは(やや湿り気を帯びながらも)乾いていて、ふんわりとボリュームを保っている。

 陰毛に手を伸ばす。柔らかくも髪の毛とは少し違った感触。それを撫で付けつつ、私は夢想に耽る。

――いつか、この場所に触れてくれる男性がいるのだろうか?

 不安にも似た焦燥を抱いている。根拠不明な情報ではあるけれど、若者の初体験の年齢は年々下がってきているらしい。大学生にもなって処女、というのは恥ずかしいことなのだろうか?

「そんなことはない」と言う人だっているだろう。個人差があるものだし、焦る必要なんてない、と。だけど当事者にとってみれば、平均的という指標こそが重要なのであって、それが悪魔のように囁き、私を急かせるのだ。

「遅れている」と…。


 私の処女膜は未だきつく閉じられている。守りたくもないのに、固く守られてきたその部分が、まだ顔も知らない誰かによってこじ開けられる瞬間を想像する。

――やっぱり、痛いのかな…?

 少しだけ怖くなる。だがそれも、自分が周囲から取り残される怖さに比べれば全然平気なものに思える。

 いつの間にか私の指は陰毛を弄るのを止めて、さらにその奥にあてがわれていた。
 男性を迎え入れる場所。『おしっこ』の出る場所。その周辺をなぞってみる。

 きつく閉じられているはずのその部分は、微かな湿り気と温かみを帯びている。
 そして指の動きに合わせて、次々と液体は溢れ出してくる。

 時に乱暴に、時に優しく、アソコを自分の指で愛撫する。己の意思の赴くままに、私の指は気持ちいい場所を熟知している。

 次第に息が上がり、動悸が激しくなってくる。イケないことと思いつつも私の指はもう止まらない。
 膣内を出し入れし、クリトリスを転がす。そのスピードは徐々に速くなる。

――もう、イキそう…。

 私は両脚に力を込めて絶頂が訪れるのを待つ。やがて私の指はペニスへと変化し、その持ち主を想像する。それは自然と彼の姿になった。

「もう、イちゃいそうです…」

 小声で私は呟く。「いいよ」と優しげな彼の声がそれに応える。

――『おもらし』しちゃった結衣に、お仕置きしてください!!

 後から思い返すと、赤面してしまいそうな台詞を脳内で叫ぶ。
「俺も、もうイキそう」情けないような、彼の声が聞こえる。イク時は一緒がいい。そして…。


 ビクンと体が跳ねる。膣が収縮し、私の指(ペニス)をきつく咥え込む。そして、熱い精液が私の中に発射される。「ドピュ!ドピュ!」と。だがその感触は想像上のものでしかなかった。

 ふいに私は尿意を感じた。トイレに行くほどではないものの、そこに力を込める。

「私、また『おもらし』しちゃいそうです!」

 声を抑えつつも、けれど理性を失った私の宣言は予想以上に大きく響いた。

――ジョロ…。

 私の『放尿』は頼りない放物線を描き、そのままベッドへと染み込んでゆく。

――気持ちいい…。

『おしっこ』するのがこんなに気持ちいいだなんて、初めての感覚だった。これまでオナニーの経験は何度かあるけれど『おもらしオナニー』をしたのは初めてだった。

――こっちも、弄っちゃおうかな…。

 やや腰を浮かせて、伸ばした指はアソコを通り越し、その先のアナルに触れる。
 普段弄ることのないそちら側。そこが、そういうことをするための穴でないことは知っている。(あるいは上級者はこっちも使うらしいが…)

 紛れもない排泄専用の穴。ショーツのお尻部分に羞恥を刻み付けた、その元凶。
 ぷっくりとした出口を指で弄ぶ。本来、出す専門の方。

 あまり深く入り過ぎてしまわないよう気をつけながらも、第二関節まですっぽりと飲み込まれる。指にまとわりつくヌルッとした感触は腸液だろうか、それとも…。

――また、出ちゃいそう!!

 溢れ出す衝動を予感する。

――チョロ…。

 またしても私は『おもらし』をしてしまう。肛門を犯しつつ、別の出口から液体を迸らせてしまう。
 間違っていることなのに。イケないことなのに。それなのに『アナルオナニー』を止めることはできず、未知なる快感に私は酔いしれるのだった。

 すっかり放心した状態のまま、自ら描いた放物線の残像を脳裏に焼き付ける。
 私が『おしっこ』の染み込んだシーツの後始末に頭を悩ませたのは、それからもう少し経ってからのことだ。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/03 19:08

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