ぶるがり屋 2021/12/19 22:40

青天を衝け 40話 の感想

青天を衝け 40話
「栄一、海を越えて」の感想です。

青天を衝け | NHKオンデマンド
大森美香
2021/2/14〜
(C)NHK

青天を衝け

 愛しい人物たちの、大往生に大往生。
長く見てきた物語の終わりはすぐそこ。
 寂しいな。

 前作は生き急ぎ死に急ぎ、「もうここで決するしかない!」でしたし、英傑の物語はだいたい志半ば、若くして終わりますから。
こんな大往生と大往生の末の、人生の終わりを感じる物語は初めてな気がします。
 悲しくないし満足だけど、寂しいな。

 篤二くんに「いつも具合が悪くなる、戦と相性が悪い」と言われた栄一が、和親となれば「戦争の匂いがしない」となるのが面白い。
前回、幕末を経て日露戦争時に戦争を推し進めるのは当然ですが、私はとっても日本の左翼なので苦しかったです。
渦巻く民衆の熱気に自らの行き過ぎた熱に気づき、世界戦争に続く恐ろしい時代へ、一人「No War !」と進む姿に惹かれました。
 そうですよね、味方でも敵でもおかしろい、魅力に満ちた人間たちばかりでしたよね。
もっと生きて欲しかった。
一緒に生きて語らい競い、励みたかった。
でもみんな、もう居ない、死んでしまった。

 盟友を失い、異郷の地で友がらの心遣いを得て。
騒乱と絶望の中で、ひとつなぎの優しさを得て。

 喜作もここでお別れですか…
でもこのお別れも、喜作らしい実に爽快で、人の愚かさに寄り添う気持ち良さでした。
篤二は頑張ったし、栄一はムカつくよね。
栄一は家庭人としてはダメですよね!(笑
 ひこばえの木の下で、藍畑の中で、祭りの中で踊りながら。
理想と現実を見たアメリカの荒野も、変わらぬ血洗島の空も、ただ美しく。

 この物語のもう一人の主人公といえば、
…喜作は3人目の主人公ということで、2人目は、やはり徳川慶喜だったでしょう。

 命を賭して死ぬことが悪い訳じゃないけれど。
惇忠が喜作が栄一が生き延びて、多くのものを失って傷ついた各々が救われたように。
慶喜が生き延びて栄一が救われ、栄一が生き延びて、共に生きて、慶喜は幸せに生きて死ねたのですね。
徳川将軍として、誰よりも。
尽未来際、生きてくれてありがとう。

 「ようやく今思うよ。」
今までの「〜のだ。」ではなく、あえての平らな言葉遣い。
ああ、本当にここで、慶喜はたった一粒の人間に、栄一の友人になったのだなぁ。
敗軍の将でも徳川最後の将軍でも、光り輝く英傑でもなく。
たった一人の慶喜に。

 …猪飼さんちょっとだけでたけど、あの方だけはまだ存命なのだろーか。
生きてても死んでても美味しいな(笑

 渋沢栄一と井上馨と大隈重信のコント、もう一回だけでも見たかったけど、見られなかったなぁ。
大隈重信は追い出したけど、きっと誰にも言えなかった泣き言を大声で叫べて、少しは救われたのかな。

 このドラマ唯一の不満は栄一の不老ですが、ここら辺は日本の求められる役者・スター像から仕方ないのかなー、とは思うのですが。
それはそれとして、敬三くんが篤二さんより年嵩にしか見えないのはどーかな!(笑

 子供時代から一緒に生きてきた喜作を失い、青春時代を捧げた慶喜を失い。
栄一の次なる道は、アメリカの次は、中国へ。
孫文との結べなかった手は悲しいなぁ。
 次回、最終回。
『青春はつづく』

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