ぶるがり屋 2023/11/26 15:12

どうする家康 39話 の感想

どうする家康 39話
「太閤、くたばる」の感想です。


見逃し配信 - どうする家康 - NHKプラス

【作】古沢良太
【音楽】稲本響
【出演】松本潤、岡田准一、有村架純、野村萬斎、イッセー尾形 ほか
【デザイン】GOO CHOKI PAR
(C)NHK

どうする家康

 ヒドいタイトルだ(笑
渇望の化け物・豊臣秀吉というドラマ、最終回。

豊臣家の形

 願いと憎しみの、豊臣秀頼の誕生。
可愛いなぁ。
秀吉も、さぞ可愛かろうなぁ。
その気持ちの重さが、唐入りにつながる悲劇が痛々しい。
鼻切り、聞くだけで痛い気持ちになります。

 茶々とねねが仲良くとまではいかずとも、お互いの立場に敬意を持ってつながっているようで安心します。
ただ、秀吉が居なくなってしまったら切れてしまうような、そんな遠さも感じたり。

三成の見た星

 力よりも、知恵。
知恵で世を治める。

それが夢という石田三成。
貧しく美しく、でも夢を語るだけでは夢で終わると知り、教える徳川家康。
本当にこのドラマの三成と家康は心が近いなぁ。

 ただ戦国を嫌という程苦し身生き抜いてきた世代と、ある程度以上の権力基盤の下、戦国が終わりつつある時代を生きてきたものとは、常識も夢の難しさも違いますよねぇ。
厭離穢土欣求浄土と、知恵で治める世。
同じようで少し違う、石田三成と徳川家康の絆と違いが、少し怖いです。

徳川秀忠登場

 成長著しい秀忠!
姿も人を惹きつける青年で、人懐っこい眩しい陽気さ、ええなぁ。
江との結婚で、また豊臣との絆も深まりますね。

酒井忠次 老将、最後の奉公

 幼い白兎、松平元康を支えた老将。
若き秀忠が物語に登場し、忠次は去っていくのですね。

 最後の会話、最後の法要、最後のえびすくい
ああ、駿府の花園から、藁ばかりの岡崎から、こんなにも遠くまで来たのだなぁ。

 老いて目も見えず、体も動かず。
出陣の陣触れも、そんなものがある筈もないのに、
ずれた、収まらぬ鎧姿を笑って支える妻。
そして、そのまま。
「ご苦労様でございました。」

三成に託したもの

 愛する家族を失い、殺し、体も心も虚ろになって。
権力の後ろ盾を失う茶々も、ずっと支えて来たねねも、傷だらけに見えて。

 有力な人物を一人一人読んで、秀頼の未来を頼む。
ボケたふりや今にも死にそうなふりで、何人も試したのでしょう。
おそらくはおそらくはその中でも一番強く、秀頼を託された三成。

 ああ、そうか。
ここで家康との道が分かたれるのですね。
三成の理想とは、豊臣の世。
こんなの、理想を夢見て秀吉に絶対の忠誠を誓う三成に、違う道が取れるわけないじゃないですか。
命を捨てるじゃないですか。
この理想と切望が、豊臣家、秀頼の悲劇の端緒になってしまうじゃないですか。

 ああでも、上手くいけば秀頼の生き残る唯一の道だったかもしれないのか……
世の安寧、民の幸せ
でもこれも、秀吉の"試し"に聞こえるなぁ……

 「そんなもん、嘘じゃ」
ですよねー!

家康に遺したもの

 さすが秀吉、最後まで謀って嘘ついて試して、
恐ろしいほどに賢しく欲望深いままだった。

 三成の理想なんて信じて居なくて、力のままに家康が天下を奪うと読み切っていて。
それでも愛する秀頼のために、無様に倒れて死んだふりして、人の気持ちを操って頼み込むんだ。

 家康と秀吉、最後の問答に心惹きつけられ、揺さぶられました。
戦国を人生を戦い抜き生き抜いて来た傑物2人の、初めての魂のぶつかり合い。
言えなかった言いたくなかった、好意と羨み。

 領地も配下も今生きているのも不思議なくらいか弱く、家康と一緒に傷つきながら育ってきたものですが、秀吉はそれすらも無かったのですものね。
だから家康よりも、無様に秘境に残忍に、織田信長の後を引き継いだ、天下を奪った。
渇望、そして劣等感こそ、秀吉の力だったのかもしれないなぁ。

 でも共に生き抜いてきた家康だから、その苦しみも分かる。
「天下を引き継いだのはそなた
誠に、見事であった。」

自分の心さえ操ってきた秀吉の、虚をつかれたような顔。
そして、安らかな笑顔と言葉。
きっとここだけは、本当の藤吉郎。

 「上手くやれなされや。」
「二度と戦乱の世には戻さん 後は任せよ。」

物語初期から続いた2人の相剋が、やっと交わった一瞬だったと思います。

茶々が引き継いだもの

 全てを残した秀吉の、最期を看取るのは茶々。
血を吐く秀吉の顔を引きずり擦り上げて
「秀頼はあなたの子とお思い?」
ああ、なんて昏い情念。
悲しく重く、泣き出しそうな憎しみ。
手で擦り上げた笑顔は、本物か偽物か。
茶々のその涙は。

 憎まれて呪われて、痛く苦しい残酷な終わり。
でも私は、茶々に愛も有ったように感じるのです。
憎しみと蔑みと呪いと愛、誰よりも強い感情に包まれて秀吉は死んだのだと。
秀吉は、報いを受けたのだと。

天下簒奪

 秀吉は死んだ。
そして災いの種は撒き散らされている。
いやホント、これからゴタゴタゴタゴタ続きますからね……

 天下取りを恐れ嫌がる家康に忠次が遺したのは、愛子をいたわるような抱擁と言葉。
よく耐え忍ばれましたなぁ。
殿だから、出来るのです。
戦が嫌いな殿だからこそ。
嫌われなされ 天下を獲りなされ。

 再び天下取りに動き始める徳川家康。
それは多くの者の願いであり、三成を裏切ることでもある。

戦国の終わりに、秀吉の遺したもの

 乱世の苦しみを、織田信長は焼き尽くそうとして自ら焼かれ。
豊臣秀吉は全部飲み干して鎮め、飲み切れなかった災いが溢れて。
そんな戦国を終わらせた化け物の、心を家康が引き継ぎ。
ゴタゴタ過ちを三成が引き継ぎ、憎しみを茶々が引き継いでしまったように感じました。

 戦国が終わるまで、まだ一歩。
苦しみは終わらないんだ……

どうする家康

 織田がつき羽柴がこねし天下餅。
敗北と苦渋を積み重ね、ついに天下最大の権力者の座に着き、
天下を狙う狸と呼ばれ始める家康。

 次回、『天下人、家康』
どうする家康。

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