尾上屋台 2016/03/30 06:24

「灰と幻想のグリムガル」

・アニメ公式
http://grimgar.com/

今期一番面白かった、そして心揺さぶられたのがこの作品ですね。
ホント、良かった。

命や痛みが軽いなあと思う作品が多い中、この作品のそれらはひたすら重いですよね。
まず主人公たちが弱い。
ゴブリン一匹にパーティ全員で挑みかかっても負けたりして。
ようやく倒せた最初の一匹目も、本当に苦戦した末で。
そのゴブリンも、刺されたり斬られたりしたら大暴れするし、最後まで抵抗を続けるわけです。
別に作品に現実感を投影する必要はないかもですが、本来、戦いってこうですよね。
刃物で斬られればぶわーっと血も出ますし、痛いから、死んでしまうから、やられる方も、さらに言えばやる方も必死ですよ。
弱い者同士の戦いを、最初にこうやって見せたとこで、ああ、この作品は他の作品とは違う、自分なんかはちょっと色んな意味で懐かしく、かつ今風にアレンジされたこの作品に、ぐいぐい引き込まれていきました。

そしてパーティが強くなり始めた、というより戦いに慣れてきて、さあこれからだぞってとこで、あの出来事ですよね。
おそらくパーティで一番重要なメンバーを、ああもあっさりと失ってしまうことで、 悲しいかな、パーティとしては一皮むけていくんですよね。
勝利して、たくさんのものを得て主人公たちが成長していくってのはひとつ本筋としてあるんですけど、多分一番失ってはいけないものを失うことで、成長するってのは、それも間違いなくあることで。
ああ、これはそういうもの、ちゃんと描いてくれてるなあって、変な話ですがとてもうれしかったりして。
あとこの辺りの描写は、結構泣けました。
アニメで泣けたってのは、よく考えたら久しぶりかも。

その後パーティに加わるメリィとの関係が最初ギクシャクするのも、これも経緯や最弱のパーティに入ってくるみたいな事情も考えると、すごくよくわかる感じで。
まだパーティ自身との関係も微妙なものが残る中、新しいメンバーと交流していく過程も実に丁寧で。
そうそう、こんな感じで、一言でいきなり関係良くなるとかじゃなく、人と人との距離って、お互い怯えつつも、少しずつ歩み寄ってくものですよね。
とにかくこの辺りの描写、人のありようみたいなものが、ひたすら丁寧でした。
なので、後半の展開も、ぐっと胸にくるというか。
ひとつひとつ、決着を着けるなり、乗り越えていく、そういった悲しさや切なさに溢れた物語なのでした。

これは今期一番はもちろん、今まで見てきたアニメの中でも、五本の指に入る傑作だと思いました。
僕自身も目指してる、人のありようみたいなものに対してとても丁寧で、真摯な作品だったなあと。
今回、話が散漫にならないよう書かなかった思いも多々あるんですけど、そういったものは自分の作品に、少しでも反映させていければなと思いました。

非常に大きなものを得た、という意味では、ただの息抜きや楽しみだけじゃない、久々に語れる、誰かと話をしてみたいと思わせるアニメに出会ったなあと、そんな作品だったのでした。

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