尾上屋台 2017/12/26 23:12

「クジラの子らは砂上に歌う」

・アニメ公式


世界観と雰囲気、物語の運び方が上手くマッチしている作品ですね。
閉じた空間から始まるんで、どこかで大きな広がりを見せるんだろうなあという点では予想通りではあるんですけど、展開のさせ方ってのは「マジで!?」って思っちゃうくらい血なまぐさくて、おーって思わされましたね。

命の重さってのを最初にきちんと描いてるおかげで、中盤以降、人が次々と死んじゃう過程ってのは、充分重さのある描き方だと思います。
で、そこまではある意味珍しいものではないんですけど、六話のタイトルにもあった「明日、人を殺してしまうかもしれない」みたいに、奪う命の重さ(ないしは命を奪うことの重さ)を描くってのは、割合漫画、アニメでは珍しいかもしれないですね。
現代モノだったらともかく、ファンタジー入ると途端に命が軽くなっちゃうって作品も多いですから。
まあそれはそれで、展開として面白ければアリだと思うんですけど、僕の作品見たことある人はわかる通り、僕は命が重たい作品が好きですからねえ(笑)。
その意味で、この作品はかなり好みの作品でした。

あと、島の記録係である主人公の、その記録文がモノローグとして入るんですけど、これが単にビジュアルでは描ききれない心情をテキストにすることの多いモノローグとは、違うんですよ。
二話目の終わりからがらっと様相が変わるんですけど(またそのように宣言されるんですけど)、それでもなお記録であろうとするテキストに、どうしようもなく感情が入ってくるんですよね。
またその入れ方も絶妙で、ばーっと流血があるような場面で、感情を押し殺したようなモノローグが入ることで、明確に行間を挟み込んでくるというか。
テキストそのものに行間はあるわけですけど、実際にビジュアルで見せる部分とモノローグとの間にも行間があって、この見せ方は漫画/アニメならではだし、今まで誰もやってこなかったんじゃないかって。
あくまで説明じゃないんですよね。
目の前で起きてることと、そもそも行間のあるモノローグとの間にさらに行間を設けることで、多重的に感情を描いてるというか。
ああ、こういうやり方もあるんだなあって。

舞台設定にせよ、描かれる背景にせよ、切ない感じがひしひしと伝わってくる作品でした。
にもかかわらず、結構ダイナミックに物語が展開してくんですよね。
CMとか見てた時から期待感はあったんですけど、期待以上の作品でした。

自分的ヒロインは、サミですかね。
金元寿子補正がかなりかかってる感じですけど(笑)。
この子の死ってものを、ただの通りすがりみたいに描かないとこも、この作品の好きなとこでした。

で、これこそ二期目が楽しみというか、これからってとこで終わっちゃったじゃないですか。
常々言ってる通り、やっぱ続き物の話は、最低2クールやってほしいとこですよ。
2クールやることで、評価が高まる作品も少なくないと思うので。
博打みたいに何が当たるかって感じでばしばしアニメ化するよりかは、と思っちゃうんですけど、昨今のアニメ業界の状況だと難しいんですかねえ。
ただこれに関しては、次の襲撃に泥クジラが耐え切れそうもないだけに、どう展開してくかが実に楽しみだったんですけど。
こう、区切りとしてよろしくない(笑)。
短いクールでわーっとヒットするような作品ではなく、時間をかけて噛み締めるような作品だったと思うんで、いやはや、実にもったいないというか。
ま、まあこれもまた、後は原作読んでねってことなんでしょうけど・・・。

んー、まあここで愚痴ってとこでしょうがないんですけど、あるなら続編、ぜひともよろしくお願いしたい感じです!

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