尾上屋台 2018/12/31 12:40

「色づく世界の明日から」

・アニメ公式


「凪のあすから」のスタッフがやるってことで、これは結構期待値の高い作品でした。
で、その期待を裏切らないでくれたなあと。

自分の殻を破れるかどうか、ってのはやっぱ大きなテーマとしてあったと思いますね。
これを学生時代、青春と絡めたってのは、林檎とシナモンくらい相性がいい、実に真っ当な描き方だったと思います。
文科系の部活でやったってのも、いいですね。
これがスポーツ系だと勝ち負けみたいのが絡んでくるんで、自分の殻がどうこうみたいのは、スパイス程度にしかならないというか。
ちょっと鬱屈した思いってのは、文科系の方が描くのに適してたかなと。

これは凪あすの時にも思ったんですけど、特に大きな事件が起きるわけでもなく(最初と最後は別として)、それでいて見る側を飽きさせないってのは、すごく高度な構成だと思うんですよ。
特に僕なんかは根が戦闘モノ好きですから、こういう見せ方ってのは、ホントすごいなと。
まあ、僕の場合まったく戦闘なんてない、おまけに恋愛モノのシナリオで仕事してたこともあるんで、あんまこういうこと言っちゃうのもアレなんですけど(笑)。
いや、でもホント、そういうのはすごく苦労しましたもん。
自分でシナリオ書いててもちゃんと話になってるのかって確信なくて、編集の人にオッケーもらうまで、ちゃんと仕事できたって感覚、なかなか持ちづらかったですしねえ。
で、時折こういう作品見て、勉強してるってわけで。
複雑ですよね。
こういう作品で「良い作品」って思わせる構成って、すごく複雑だと思います。

で、話戻すと、自分の殻を破れるかどうか、みたいのが主題のひとつだと思うんですけど、これはやっぱ、学生の、それもハイティーンで多くの人が直面するテーマなんだろうなと。
ここでひとつ殻を脱ぎ捨てられるかみたいのは、その後の人生で大きいですもんね。
ある時期に閉じこもってしまうことを選択してしまうと、えらくこじらせた大人になってしまうでしょう?
殻に閉じこもるって表現じゃなくても、新しい自分に出会うような、世界が広がるような感覚って、ひょっとしたらこの時期特有のものかもしれないですし。
自分を突き詰めてしまうのって、もっとずっと歳くってからでいいんですよね。
ある程度の年齢からそれをやれば、それがその人の立ち位置になったり、強みになったりする。

でもそういう、広げていくのって、やっぱ自分一人の力じゃできないわけですよ。
助け合うのか競い合うのかは問わないにしても、周りの人間あってのことで。
この作品は、それぞれがそれぞれにそうした作用が起こることを、よく表現してたと思います。
無駄なキャラが一人もいない。
で、メインのキャラの閉じた感覚、そこからの解放を、色彩と絡めたってところが良かったと思います。
多少メタファーとしてはわかりやす過ぎる感じもしますけど、そこはアニメだからこそできたって感じもしますし、やっぱいい取り合わせだったんだろうなと。

凪あすは2クールだったんで、あっち程の大作感はないんですけど、それでも1クールできちっとまとめあげてくれて、良作です。
できれば2クールで見たいと思ったんですけど、テーマがばらけちゃうかもで、やっぱこのくらいの尺が良かったんでしょうね。

大作ではなかったかもですが、極めてよく出来た佳作といって良いのではないでしょうか。
今期一番の作品でした。

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