尾上屋台 2019/06/30 12:22

「どろろ」2クール目

・アニメ公式


前回書いた通り、

物語としては非の打ち所がないですね。
間違いないって感じで。

で、この後編では、百鬼丸が身体を取り戻していく過程が、そのまま生まれ故郷の衰退に繋がっていくという、その辺のジレンマを描いてますね。
まあジレンマといっても、百鬼丸自体はそこに何の疑問も持ってないとこがミソで。

個人か、組織かでは、組織を優先するのが日本なんで、こういうテーマを疑いもなく和風の世界観でやってるってのは、痺れる程に上手い作り方ですよね。

しかしまた、多宝丸サイドの見方ってのも、間違ってない。
この矛盾する両サイドがぶつかってこそ、そこにテーマが生まれるわけで。
どっちか一方が圧倒的に正しい作品って、やっぱ底が浅いわけですよ。
どっちも正しいよな、でも様々な要素が折り重なって、主人公は百鬼丸だよな、っていう。

百鬼丸は身体の様々な要素を奪われて誕生するんですが、一番奪われてるのは、やっぱ個人の尊厳なんですよ。
それを、無抵抗な赤子の段階で奪われてる。
だから描き手として百鬼丸は、自分が身体を取り戻すことに、疑いを持っちゃいかんのですよね。
ここで百鬼丸が、でも国のこともあるしなあ、みたいに思っちゃうと、テーマがぼんやりしちゃいますから。
迷わなければいいってことではもちろんなく、これがある程度満たされた人間だったら七転八倒して悩むこと自体がテーマになるんですけど、百鬼丸は最初に、一番大切なものを奪われてますからね。
ここは迷わないことが、テーマの明示になってるわけです。
実際に、迷ってはいかんとこですしね。

ここで活きて来るのが、どろろなんですよね。
どっちかっていうとちょっと狂言回し的な前半のポジションから、この後半では視聴者に対する明確なナビゲーターになってるわけで。
視点や考え方の提供ですよね。
こういう見方もできる、これは正しいことなんだろうかってのを、きちんと視聴者に提供してくれてる。
わかりやすくテーマを示してくれてると同時に、その答えをもってないってとこが、また上手い。
この物語はどういう形で決着するんだろうっていう、大きな食いつきもしてくれていて、なんかこう、まったくもって無駄がないというか。

とにかくこの作品、構成において全く非の打ち所がないんですよ。
僕はある程度の歳になってからこうして毎クール、アニメをチェックしてるわけですけど、子供の頃と違って、今は構成がどうなってるのかって部分に、目が行くようになったわけで。
で、今みたいな感じでアニメチェックするようになってから何年も経ちますけど、そうやって見出した中では、間違いなくトップクラスの構成力ですね。
もう最初っから「上手い!」と思いっぱなしでしたけど、こうして全話見てみて、全体としての構成も、溜息が出る程上手い。

これだけ上手いにも関わらず、大切なものってのはしっかり描いてきますからね。
傑作ですよ、ホントに。

こういう作品に出会えてよかったなあと、そう思わせてくれる作品でした!

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