台本を書こう!便利だけど読むのはつらい「必殺おうむ返し」
必殺おうむ返しとは
「飲みに行こうよ。……イヤか?」
「イヤじゃないよ、って……ほんとに? そっか、よかった」
こんな極端なのは普通ないですが、わかりやすく書いてみました。
このように、シチュエーションボイスなど一人読み台本の場合に
に主人公(リスナー)が言ったセリフを、キャラ(読み手)におうむ返しに繰り返させることで聞き手に伝える手法です
書き手からすると便利だからどんどんやりたくなります。
私も自分で書くとき、よくやります。
でもこれ
普通の会話ではまずやらない行為なので、読むさいに自然な感じを出すのが難しいです
流れやテンポも狂います
こっちもプロの声優じゃないんで、できればそういう無理難題はさけたい
しかしフリー台本の書き手も「こっちだってプロじゃねえわ」とばかりに全力でこの技を繰り出してきます
私からするとこの「必殺おうむ返し」が登場する頻度は
1000字に1~2回程度にしてあったら、もうそれだけで傑作に見えます
とにかく少なければ少ないほどありがたいので
「禁じ手」「最終手段」くらいの認識でちょうどいいかもしれないです
「○○って…」が頻出してしまう理由
作家さんが毎日のようにシチュボきいてるコアな人ならたぶん違和感が麻痺しています
または書き手が設定する、主人公の性格やイメージですね
声劇一人読みは、まず第一にキャラクターの個性や魅力をセリフで表現する場だから
主人公の魅力は表現されることもあるしされないこともある、二次的なものです
二次的どころか「多くの人が感情移入できるように主人公(リスナー)は無個性が良い」と主張する台本師さんもいるくらいなんですが、
でもとくに女の子は、ディズニーじゃないけど
盗賊の頭だったり王子様だったりする彼とも堂々と対等に渡り合うような
生き生きした気の強い女性主人公が好き
普通ではひるんでしまうような場面でも自分の主張を曲げず
彼もそれに対して「おまえは他の女と違うな」なんて感心してくれる…
そんなシーンが大好きです
だって心や中身に注目してほしいですもん
そして「この人はちゃんと中身をみてくれる人だ」と彼のへの好感度が急上昇する瞬間こそが、そういう「ヒロインが言った言葉に彼が反応する」シーンです
でも、元気よく会話するお喋りな主人公を表現するのは
2人読みの声劇じゃないと基本ムリ
初心者はまず「主人公(リスナー)は寡黙な人間である」という前提で出発したほうが無理がないです
私も初心者なので、そうやっています
無口で、たまーに何か言うだけの主人公(リスナー)と、相手の反応をチラ見しつつも会話をリードしていく語り手 というイメージです
修正方法
練習として「○○って…」を絶対使えない台本
「主人公(リスナー)は動物や人形など、口のきけない存在」とか
「人間だけど何かの理由で声を出せない状況にある」という設定の台本を読んだり書いたりする
または、一回おうむ返しの部分を全削除してみます
意外と意味が通じちゃいます
「飲みに行こうよ。……イヤか?」
「イヤじゃないよ、って……ほんとに? そっか、よかった」
これだけで、主人公が肯定的な返事をしたことがわかります。
断られた場合
「飲みに行こうよ」
「明日課題の提出しなきゃいけないから今日は無理? そっか、また今度な」
書くのは楽だけど読むのがつらいです
↓
「飲みに行こうよ」
「・・・・・・・」
「そっか、残念。じゃあまた今度な。課題がんばれよ!」
書いててなんとなく物足りないかもしれないけど、自然な会話に近いので読むのは楽です
課題を理由に断られたことは、なんとなく伝わります
それにたぶん、物足りないくらいでいいんです
空白の部分は、読み手も自分で想像して口調や演技で補うべきだし
同時に聞き手も想像力を使ってたくさん補ってくれています
もしかすると音声作品は「台本・読む人・聴く人」の3人で作ってるようなもので
10人きいてくれたら10個の異なるイメージ世界がうまれていて
完成形なんて、どこにもないのかもしれません