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おねショタの記事 (7)

ももえもじ 2023/04/27 16:41

#1.男が自分だけの世界で僕は……

舞台

 男が絶滅してからX年が経つも、人類の存続に左程の変化は訪れなかった。
 奇病と人口生殖の作用により、生まれてくる人間が女性だけとなり、異性という概念が歴史の上で語られるようになった程度だろう。誰も異性を知り得なくなれば、それはもう神話や空想上の産物だった。

 なお、その残された資料が問題である。性を語る資料として、前時代に遺されたアダルトビデオなどのポルノが使われているからだ。
 教育の場にて、女子たちがAVを大画面で真面目に鑑賞する姿は滑稽と言える。
男女の性行為を紙に描写するテストがあったり、畜生向けのエロ同人をバカ正直に教科書とする学園も存在した。

 お陰で女たちによる性への関心は尽きていない。誰もが男女の営みを夢見ていた。
 そんな世界でX年振りに一人の男が誕生する。当然ながら、世界は激震した。
 男に「天人」と名づけられると、生まれた地もそのまま「天人町」と改名された。
 なお、衰退の末期では希少な男性を崇める法律が敷かれている。完膚なきまでの男尊女卑ならぬ絶対男崇な制度であり、とどのつまり「男は、いつ如何なる時でも、好きな女性と好きなだけヤれる」という内容だった。

 窮地に立たされた社会が最後の最期に下した苦渋の決断である。大規模なデモを起こした阿鼻叫喚な法律だったものの、現代の生き残りには然るべき為ん術という認識でしかなく、X年ぶりに男が誕生したことで絶対男崇の制度は当たり前の如く再可決されるのだった。

 国宝どころか、星の宝として扱われる天人。
 誕生から〇二年が経った天人は、進学先として国内最大規模の学園へと入学する。
学生数は三万人。言わずもがな、天人以外の全員が女性だった。
 〇二歳と言えば、性欲を自覚する頃合いである。
 そして天人には、自身が望めば好きな時に好きな女とヤれる権利がある。多感な年頃と絶大な権力……天人の学園生活は、波瀾万丈を極めない訳が無かった。

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ももえもじ 2022/04/18 13:23

【再録】人妻AVデビュー

『36歳です。仕事に興味があります』

 物語は、SNSへと届いた一通のメールにより始まった。
 明らかな捨て垢のオファーに訝しむも、結局と廣峯勇志は誠実な対応で相手を出迎える。話を聞けば、送信者は結構な年上であり、更には現役の人妻だという。人妻相手ではトラブルが多く、そもそも廣峯にはロリコンの嫌いがあり、年上に興味を持った経験すら無い。案件を断ろうと何度も考えた末の、松浦紗友里との出会いだった。

「あっ、もしもし。ユリです。い、いま到着しました……」

「峰岸です。もう隣に居ますよ」

「あっ……!? あはは……は、初めまして」

 約束の日にて廣峯が初めて紗友里と出会う。既に廣峯は待ち合わせの場所にて待機しており、その声に驚いた紗友里が思わずスマホを落としそうになる。

「え、と……早速ホテルでしょうか……?」

「いきなりで良いんですか? 僕としては、打ち解ける為にも、まず軽く食事を考えていました。メールでも、そう伝えていたと思います」

「あっ、そうでしたっ……ごめんなさい」

 互いに偽名で自己紹介を交わす。落ち着いて話す廣峯とは対照的に、紗友里は緊張を極めて何度も口を噛む。異性との会話にすら慣れていない印象だった。
 自分より7つも年上の、なんとも慌てた様子に、廣峯が一先ずホッと息を吐く。経験の豊富な廣峯でも、初めて会う女性には警戒心や不安が拭えず、それだけに紗友里の初々しい態度は、程良いアイスブレイクとなった。

 また、想定よりも整った紗友里の容姿に廣峯が感嘆する。予め紗友里の写真はメールで送られていたものの、写りが悪くてスカを喰らっていたのだ。
(やっぱり、実際に会わないと分からないもんだな……)
 しかし、実際の紗友里は顔立ちがきめ細かく、着痩せしながらも存在感を放つ乳房の膨らみや、僅かに赤み掛かった美しい髪など、写真だけでは分かり得ない魅力を多く備えていた。

 三十代にも拘わらず垢が抜けない雰囲気も、廣峯の扇情を大いに煽る。廣峯の視線が何度も上下に揺れ動き、その度に紗友里が気恥ずかしそうに萎縮していた。

「好きな物を注文して構いませんよ」

「え、えっと……ごめんなさい。結構です」

「要りませんか?」

「正直に申しますと、不安ばかりで何も喉に通りません……」

「そうですか。大丈夫ですよ。じゃあ、自分だけ注文させて頂きますね」

「はい」

 一行は、駅にあるカフェへと足を運んでいた。
 これから二人は、ホテルで身体を重ねなければならない。明らかに性的経験の乏しい紗友里は、緊張と不安で食欲が湧かず、赤面を隠すように俯いてばかりだ。
 空腹の廣峯は、そんな紗友里に構わず次々に軽食を頼んでいく。一息を吐くと、廣峯は本題を切り出した。

「ギャラは10万円です。宜しいですか?」

「……はい」

「こちら契約書と誓約書になります。よく確認した後に、サインを下さい」

「分かりました」

「大丈夫ですか? 顔が真っ赤ですけど……」

「うああ!? ご、ごめんなさいっ!!」

「い、いや、謝らなくて全然良いですけど」

「うう……」

「あの、一つ聞いても良いでしょうか?」

「な、なんでしょうか!?」

「どうしてユリさんはAVに出演する気になったんですか? 失礼ですが、全然そういうタイプには見えません。ユリさんのような淑やかな女性からオファーが来た時はビックリしましたよ」

「…………」

 水耕栽培に携わる廣峯勇志は、副業としてAV制作を営んでいた。
 AVと言ってもメーカーに勤める訳では無く、個人によるインディーズである。素人との行為を撮影しては、それにモザイク等の編集を行い、サイトで販売する。大体の相手は、素人と言えどアダルトを生業とする者であり、こうした仕事にも抵抗が無い女性ばかりだ。

 しかし、明らかに紗友里は違う。異性への耐性は無く、そもそもが人妻である。話から察するに、旦那には確実に秘密にしての、今日という仕事だった。
 アダルトに初心者な上に、旦那には内緒の人妻と来れば、理由は一つしかない。察しは付くものの、廣峯は紗友里の言葉を待った。

「実は、借金があるんです。夫には絶対に知られたくなくて……」

「そうでしたか、すみません。話さなくて大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

 紗友里の指先は震えていた。
 感情を必死に押し殺すように、声も上擦っている。業界とは無縁の人妻が急にアダルト産業へと首を突っ込んだのだ。借金で精神的に追い詰められた末ならば、紗友里の震えも必然だった。

 借金か脅迫か、その辺りを予想していた廣峯に驚きはない。優しい言葉と共に、紗友里の手を握って慰める。この仕事をしていれば、訳アリな女性との出会いも多い。いまにも不安で事切れそうな紗友里に、これでもかと廣峯が慎重に接する。物柔らかい廣峯に、紗友里は初めて笑顔を見せた。

「優しいんですね」

「普通ですよ。どんな僕を想像していたんですか……」

「アダルト関係の仕事には、もっと物騒なイメージがありました」

「なのに、よく来てくれましたね」

「今日の約束を取り付けた時は何度も後悔しました。今朝も後悔で泣いちゃって。だから、峰岸さんが優しい人で本当に良かったです。本当に、本当に……」

 紗友里の借金は、完全に私的な理由による破産だった。
 専業主婦として暮らす傍らに、趣味の買い物が高じた結果である。その内気な性格から、旦那や家族にも破産を打ち明けられず、一人でカードの請求に怯える日々を送っていた。

 そして廣峯がSNSで発信した「高額バイト」のハッシュタグに引っ掛かった次第である。初対面の男と性行為を行い、マスクの着用が可能とは言え、更には撮影もされる不安に、紗友里のストレスは限界に達していた。
 そんな現況での温もりは有難く、紗友里の瞼には涙を浮かべていた。

「それでは、そろそろ行きましょうか」

「は、はい。ホテル……ですよね?」

「勿論です」

「……ッ!!」

 最後のパンケーキを口に放り込んだ廣峯が言う。時刻は、間もなく夕方に差し掛かっている。旦那にはママ友との飲み会だと伝えており、夜間は丸々と廣峯に費やす予定である。紗友里にとっては仕事でも、旦那から見れば不倫でしかない。旦那ではない異性と肩を並べてホテルへと向かう紗友里は、チクチクと罪悪感を感じながら、不安と緊張で心臓を高鳴らせていた。

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ももえもじ 2020/07/15 17:29

ショタハーレム

依頼作品です。


「ねえ、これ見て。精子って、マジで美容効果あるらしいよ!」
「えー、ウソだぁ? よく聞く話だけど、本当なの?」
 ティーンエイジャー向けの如何にもな雑誌を読んでいた女子が、周りにいる四人の女友達に記事を見せつける。
「ふむふむ、タンパク質がどうたらこうたら……これって迷信だよ。精子って実際、タンパク質なんか全然入ってないらしいよ」
「私もそう思ってたんだけどさ……」

 雑誌の続きには、こう書いてあった。
【――だが、精子や我慢汁による美容効果は、タンパク質よりもホルモンの分泌にある。精子を一身に受けると、女性はホルモンが活性化によりストレスの発散やリラックス効果が伴い――】

「…………」
 文字を追うごとに口数が減っていく。グラフや比較写真、専門用語の羅列が五人の好奇心を巧妙にくすぐらせる。

【美少年の精子は特に効果が高く、若いうちから定期的に飲むことで、いつまでも若々しく健康的な身体を保つことができると言われている】

「……………………」
 こんな記事さえ読まなければ、後に一人の男の子と大勢の女の子の運命を大きく揺れ動かすこともなかっただろう。

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ももえもじ 2020/05/23 00:20

【小説】彼シェア!!-男の少ない島では彼氏の共有も当たり前!!-第一話

概要

引っ越した先は、女性率の高い離島だった。
島の名前を鉢割島といい、300人を下回る人口だが、
その内の8割が女性だと言われている。
転入先の学校も、自分以外は全員が女子という。

海陸を興味津々に見つめる、7人のクラスメイト。
教鞭を執りながら、熱い視線を送り続ける女教師。
とんだ出来事にて女教師と肉体関係を結んでから、
海陸を巡る女子達の争奪戦が始まるのだった。

女教師の誘惑-第一話(前半)

「おはよ、海陸くん♪」
「あ、お、おはよう」
「おはよー、海陸くん!」
「おはよう……」
「か、海陸くん。お、おはよっ!」
「う、うん」
「海陸くん、一緒に学校行こ!」
「……うん」
「海陸くん、もう学校には慣れた?」
「えっと、まあ……」
「ってか、海陸くん遠すぎ。もっと近くで話そうよ」
「う……」
「そんなに緊張しなくても良いのにぃ!」
「朱里、嫌われてるんじゃない?」
「そ、そんなことないし! ……だよね?」
「…………うん」
 女性を苦手とする海陸にとって、鉢割島での生活は息苦しかった。
 鉢割島とは、人口が三百人程度の小さな離島である。閑散とした小島だが、学校や役所、警察といった公共施設は一通り揃っているので、生活に不便を感じる者は少ない。しかし、鉢割島には他に類を見ない珍しい特質があり、そのせいで海陸は酷く悩ましい生活を強いられていた。
「ねぇ、海陸くん」
「な、なに?」
「海陸くんって、女嫌い?」
「そんなことはないけど……」
「ホントにぃ? いっつも、ぶっきらぼうだけど」
「それは、ごめん」
「じゃあ、もっと色々お話しよーよ」
「言ったでしょ。女子が……苦手なんだ」
「あははっ、可愛い~っ!」
「でも、早く慣れないと大変だよ?」
「そうそう。鉢割島は女ばっかりだからね」
「学校じゃ、海陸くん以外、全員女子だし」
「わ、わかってるよ……」
 鉢割島には、人口の殆どが女性という特徴があった。
 総人口の内、男性は五十人もおらず、夷塚海陸の通う学校も、自分以外は男子生徒がいない現状である。異性に不慣れな海陸は、転校から一週間にして女子ばかりの環境に参っていた。

*鉢割分校
島で唯一の学校だが、それでも全校生徒数は八人しかいない。
内訳、女子が七人で、男子は海陸が一人だった。



「それじゃ、授業を始めるわよ~」
「先生、今日も海陸くんに教わりたいですっ!」
「ダメ、昨日のは特例だから。ほら、みんなプリントやって~」
「え~」
 なお、鉢割島における最大の苦痛は授業にある。
 生徒数が八人だけの学校では、教員も一人しか在勤していない。
 それ故に教室は一つしか使われておらず、全ての授業は学年も関係なしに一緒くたで行われている。
「ね、海陸くん。こっそり、教えてよ♪」
「え、でも……」
「良いじゃん、良いじゃん♪」
「あー、朱里ズルい! 私にも教えてよ~!」
「コラ~、ダメだってば!」
 校舎は、こじんまりしたプレハブで造られている。
 狭い教室に、男子は自分だけ。
 思春期の只中な海陸が居心地の悪さを感じるのも仕方なかった。
「良いでしょ、先生♪ 分からないとこがあるんですー。でも、いま先生は菜津ちゃん達で手一杯みたいだし?」
「それを言われると辛いわね。……分かったわよ。夷塚くん、今日も森江さんと紅音さんの面倒をお願いして良いかしら?」
 海陸に、女教師の仲上奈美が仰ぐ。
 生徒の年齢がバラバラな以上、鉢割校で一般の授業は行えない。
 個別に奈美が対応している訳だが、全員を一人で捌くなんて容易ならざる話である。よって、鉢割校では教師だけでなく生徒も当意即妙に教鞭を執ることがあった。
「わ、分かりました……」
「やったぁ~! よろしくね、海陸くん♪」
「じゃ、私も良いよね?」
「う、うん」
「えへへ、嬉しい! 後でちゃんとお礼するね❤」
「え~? 朱里もぉ?」
「私もお喋り……いや、教わりたいし! 翠、椅子持ってこよ!」
「オッケー」
 都会の進学校から現れた海陸は、もはや鉢割校における二人目の教師のような扱いだった。転校初日から、海陸は毎日と鉢割校の生徒に勉強を教えていた。
「海陸くん、よろしく~」
「翠のついでに私までありがと♪ 数学、全然ダメでさぁ~」
 翠、朱里が自分の席から椅子を運んでくると、海陸を挟み込むよう両脇にピタリと置いて座った。肩や太腿が触れ、海陸に緊張が走る。
「ね、ねぇ、近くない? これじゃあ、肩がぶつかっちゃうよ……」
「そう? 私は気にしないよ?」
「私も気にならないかな。離れてちゃプリントが見えないし」
「…………」
 海陸のプリントを覗き込もうと、朱里と翠が左右から身を乗り出す。
 わざとらしく海陸に体重を預け、肩から密着してくる。
 女子の確かな重みと馥郁に包まれて脳をクラクラさせるが、海陸の焦燥感など露知らず、二人は顔を近づけて耳元に温かい吐息を吹きかけるように囁いた。
「海陸くん、プリント進めるの早すぎだよぉ」
「ねぇねぇ、ここの答え、なんでそうなるのぉ?」
「ふ、二人とも……顔が近い。もっと、離れて……お願い……」
「え~? 別に良いじゃん。離れてたら、やりにくいよ」
「両手に花の状態で恥ずかしいの? 意識してくれるのは嬉しいけど、そろそろ慣れてよ。いまは授業中なんだしさぁ♪」
「そうそう、私達は真剣に勉強してるんだよぉ? ふふふふふっ❤」
「ううっ……」
 二人は真剣と言うが、実際は海陸の慌てる姿が見たくて詰め寄ってるだけである。故意に寄り添い、海陸の腕に胸を押し付けてくる。予想通り赤面する海陸に、二人はクスクスと笑った。
「…………」
 傍から見れば、イチャイチャしているようにしか見えない。
 女教師の奈美は、そんな光景を横目で窺いながら溜め息を吐いた。
 授業中に騒ぐ二人に呆れた訳ではない。
 人目も憚らず海陸に迫れる二人が羨ましかったのだ。
(良いわねぇ、翠ちゃんも朱里ちゃんも。あんなにグイグイと積極的になれて。ふふふ、海陸くんってば、本当に女性に慣れてないのねぇ。二人に挟まれて顔が真っ赤になってるわ。いっつも迫られてるクセに、未だに慌てふためいちゃって……ああぁあ~、可愛すぎるわぁっ!)
 奈美は、一回り年下の海陸に心酔していた。
 教師として島に呼ばれて五年余り。男性の居ない環境で身を焦がし続けていた奈美にとって、海陸は漸く見つけたハイエンドなのだ。
 転入前の面接にて、一目惚れだった。
 その甘い容姿や純情は、他の島民と比べるまでもない。
 歳の差など気にならないくらい、海陸に夢中になってしまっていた。
 名前を呼ばれるだけで身体が火照ったり、無意識にチラチラと視線を送ったりと、まるで学生に戻った気分である。
 だが、奈美は教師であり、間違っても学生ではない。
 教師と生徒に隔たる壁は明らかであり、どうすることも出来ない奈美は、遠慮なく色目を使える翠と朱里に、ずっと羨望の小波を立たせていた。
 ……今日までは。
「勉強、教えてくれてありがとね。これあお礼だよ、チュッ」
「私も助かったよ。私からもお礼ね、チュゥッ❤」
「あ、あううう……」
 不意に、教室が黄色に沸いた。
 やり取りを見ていた女子達の歓声である。
 手ほどきの対価として、翠と朱里が海陸の頬にキスをしたのだ。
 左右の頬に二人の唇が触れ、海陸が飽きもせず血液を沸騰させる。耳まで真っ赤に染めており、いまにも湯気が出そうな様子だ。
 行為を遠目から覗いていたクラスの女子が各々に悋気の声を漏らす。
『あぁ~、良いなぁ……』
『朱里ちゃん、海陸くんと毎日キスしてて、羨ましい……』
『私もしたいなぁ~』
『私も積極的に迫りたいけど……ううう』
 やはり、たった一人の男子ということで、海陸との熱い親交を求める女子は多い。しかし、殆どは島民らしく異性に慣れておらず、翠や朱里のような積極的なアプローチは掛けられずにいた。
(このままじゃ、二人に海陸くんを取られちゃう。そんなの嫌だわ。絶対に嫌。そうはさせないわ。もう、なりふり構っていられない!)
 輪の中で、島外出身の奈美だけが対抗意識を燃やす。
 ――私は遠くから見守っているだけで良い。片思いだけで幸せだ。
 始めこそ静観を決めていた奈美だが、それも懐かしいだけの記憶である。
 募る想いは日に日に肥大しており、いまや頭の中は海陸との男女関係についてばかり。道徳のメッキなんて欠片もなかった。
「ねぇ~、海陸くんからもキスしてよ❤ ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ」
「そっちからしてくれるまで、ずっとキスし続けるよ? ちゅっ、ちゅっ」
「う、うああっ、や、やめてよっ……」
「コホン! 三人とも、授業中よ。そこまでにして」
「あ、先生」
「あはは、ごめんなさい♪」
 未だに頬へのキスを続ける翠と朱里に、奈美が教師として割って入る。
 指を咥えて見てるだけではない。二人を引き剥がして海陸を救い出すと、奈美は出来るだけ平静を装いながら要件を口にした。
「……夷塚くん。昼休みに職員室に来てもらって良いかしら」
「は、はい。なんでしょう?」
「えーっと……あー、鉢割島での進路先を纏めた資料とか渡すわ」
「あ、分かりました」
「ええ。それじゃあ、昼休みに」
「はい」
「…………」
 話を終えて背を向けると、奈美がホッと一息吐く。奈美には、前々から企てていた腹積もりがあった。海陸と『仲良くなる』為の計画である。
 その為には、まず二人きりにならなければならない。奈美は、教師の職権を利用して昼休みに海陸を誘い出すのだった。



 それが、何故こんなことになってしまったのか。
(あああああっ、なんで海陸くんの顔が目の前にっ? あぁああ、顔が近いわぁっ。ほんの少し顎を傾けるだけで唇が重なっちゃう! しても良いのかしら? ダメよ、未成年とのエッチは犯罪……あぁあぁあ、止まらないわああぁっ! んっ、ちゅっ、んんんっ……❤)
 昼休みの職員室にて、教師と生徒の接吻が披露されていた。
 勿論、海陸と奈美の二人である。
 椅子に座る海陸へと奈美が圧し掛かり、怒涛の如く唇を奪っていた。
「んっ、ちゅっ、ちゅくっ、んっ……」
 箍が外れれば、もう抑えられない。
 唇を押し付けたかと思えば、その直後には舌が伸びて海陸の口内を凌○していく。海陸の舌先を搦め取り、無理やり表へと引っ張り出して剣戟を始めていた。
(んっ、はあぁあぁあああんっ! 海陸くんの唇っ、柔らかすぎっ! あああ、穢れの無い未成熟な唇を、私が吸い尽くしているっ! もう、何も言うことない。このまま教員をクビにされても構わない。もっと、もっともっともっともっと味わいたいいぃいっ❤)
 口付けを交わしただけで、奈美はオーガズムに陥っていた。
 唾液の交換に至ると、もう絶頂の連続である。一目惚れから一週間余り、ずっと思い煩っていた相手と交われたのだから、感慨無量も止む無しだろう。
 氾濫する快感物質が脳内を侵しまくっている。生き残った微かな理性が自制を試みるも、一度決壊したダムでは塞き止めようがない。欲望という津波が奈美を襲い、そのまま海陸を犯していった。
(どうして、こんなことになってしまったのだろう……)
 朦朧とする思考の中で、二人が同時にそんなことを考える。
 奈美も、元々は此処まで迫るつもりなんてなかった。
 転校から一週間という時期を逆手に、教師として海陸を職員室に呼び出したのが切っ掛けである。鉢割島での進路先や、学校生活について親身に話を聞きながら、どんどん仲を深めていこうと計画していたのだが、ほんの細やかな味付けに「媚薬」を用意したのが明らかな間違いだった。
 教師ではなく、異性として意識してもらいたい。
 そう至り、差し出した麦茶に媚薬を混入させたのだ。
『媚薬入り麦茶を飲めば、忽ち淫らな気分になり、海陸くんが私を性的に意識するようになるかもしれない。そうなったら、胸元を露出しておっぱいを強調したり、ミニのタイトスカートで誘惑なんかしちゃおう!』
 下策も下策、教師が考えたとは思えない作戦である。
 だが、行為に至るまでの煩わしい過程をすっ飛ばすには有効な裏技かもしれない。奈美が使用した媚薬は海外製の危険ドラッグであり、その効果は実際の通り、服用者の理性を破壊して本能を剥き出しにする程のパワーがある。道徳には反するが、これを切っ掛けに、想い人の気が引ける可能性は十分にあった。
 しかし、それは海陸が服用した場合に限る。
 あろうことか、極度の緊張により、奈美は海陸に用意したハズの麦茶を、自分で飲んでしまうという信じられない失態を○すのだった。
 職員室に想い人と二人きりなんてシチュエーションは、奈美にとって思いのほか毒だったらしい。緊張で喉がカラカラに乾ききってしまい、気付いた時には麦茶に手を伸ばしていた。
「んっ、ぬちゅっ、くちゅぅっ、にちゃっ、んっ、ああぁあああっ! なんて気持ちいいのっ、んっ、はっ、た、ただのキスなのに……あっ、ま、またイッちゃうっ……キスだけでっ、あっ、こ、こんなにっ……あぁあぁああああっ、し、幸せぇっ❤ んっ、ぢゅううっ、んっ!」
 そして、現在に至る。
 媚薬の効果は瞬く間に表れ、後は自制の叶わない結果へと帰した。
 椅子に座る海陸へと圧し掛かり、ねっとりと唇を味わい、たっぷり唾液を啜る女教師の姿が見える。息つく間も与えない猛攻は、まるで理性を失った野獣そのものだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁあっ、んっ、んふふふふ……海陸くんの股間、勃起したちん〇んが私のお尻に当たってっ、あああぁあ、気持ちいいわぁっ!」
 いま、自分が職員室に居ることすら忘れてしまっている。
 薬物で感度が底抜けに高まり、全身が性感帯のような感覚に苛まれているのだ。少しの刺激でも、身の浮く快感に溺れてしまう。そんな状態からの濃厚なキスは、奈美を絶頂の渦へと飲み込んでいった。
「あぁっ、海陸くんの唇、柔らかすぎっ、んっ、ちゅっ、ベロも柔らかくて、唾も美味しいわぁっ! しかもっ、海陸くんの勃起テントっ、はっ、はっ、はぁっ、ぁっ、私のお尻に当たってっ、気持ちいいっ! グリグリしてるっ、幸せすぎてっ、死んじゃうぅうっ!」
 尻で味わう海陸の股間に、奈美が悶絶と発狂を繰り返す。
 タイトスカートを捲り、否応なしに膨らむ海陸の股間を臀部で圧迫する。尻の割れ目に挟むように股間を重ねると、グラインドして官能を貪っていた。
 向き合うように相手の股間へと座り、腰を揺らしながら天を仰いで白目を剥くそれは、インドの性の書を彷彿とさせる。
「あああぁっ、はぁあっ、あぁん、海陸くん……❤」
 ぐりぐり、ぐりっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ……
 繊維の擦れる音と、奈美の乱れる声。それと、海陸の下着からは粘液の音が聞こえる。粘液の音は、我慢汁の接着音だ。下着の中にて、奈美の臀部に扱かれたペニスが悲鳴を上げながら噴き出していた。
 全身が射精を予感すると、海陸がふと我に返る。
 それまで、されるがままだった海陸だが、股間の盛り上がりを指摘されて漸く正気を取り戻す。両手で奈美の肩を押し上げて、せめてとばかりに唇だけでも離した。
「はぁ、はぁっ、はぁっ、せ、先生……い、い、いきなり、なにするんですかっ! はぁ、はぁ、はぁ……」
 海陸からすれば、教師から突然の逆レ○プを受けた状況である。当然、何が何だか全く分からない様子である。茹蛸のように真っ赤になって戸惑うばかりの海陸に、奈美が顔を寄せて告白した。
「はぁっ、はぁっ、ご、ごめんなさい、海陸くん……あなたのことが好きで好きで堪らなくて。つい、こんなことを……」
「えっ!?」
「ごめんなさい……教育者としてこんなこと……本当に申し訳ないと思っているわ。んっ、ふぅっ、ふうっ、ふぁあっ! ……でも、身体が止まらないのぉっ! 海陸くんのおちん〇んがお尻に当たってっ、ふあぁあっ!」
 謝罪の言葉を陳列するが、奈美の動きは止まらない。
 それどころか、腰の動きは益々に加速している。
 ――信用していた教師に、いきなり逆レ○プされたのだ。きっと、海陸は深く傷ついたかもしれない――
 そう思うも、どうしても動きを止められなかった。
 溢れる想いが強すぎて。全身に感じる海陸から離れられなくて。
 もっともっと、海陸に触れていたかった。
 例え、後日に教師をクビになっても。
 それくらいに、強い想いが溢れて止まない。
 媚薬のせいだと言い聞かせながら、奈美は悔悟の涙を流していた。
「す、好き? せ、先生が、ぼ、僕のことを?」
「うううぅっ、初めて会った時から、ずっと……海陸くん、海陸くん、大好き、大好きなのぉっ! あっ、んはぁあっ、うっ、ううぅうぅっ、ごめんなさぃいっ……」
 薬でトリップしてることもあり、奈美の口から本音がボロボロと零れる。美女に面と向かって好意を伝えられた海陸が一層に顔から火を噴き出す。
「う、そ、そんな。えっと、あの、えっと……うっ、あぁあっ!」
「分かってる。付き合える訳ないわよね。なら、一度だけ。一度だけで良いの。一度だけで良いから、触れさせて……」
「う、あ、あ……」
「………………ダメ?」
 奈美のしおらしい態度も何処か作為的に見えた。
 この状況で断る気概があるのなら、そもそも海陸がクラスメイトの女子に好い様に玩ばれることはない。奈美の予想通り、海陸は涙目で口をパクパクさせるのみだ。それを奈美は強引に肯定と受け取り、再び臀部を揺らしてキスに馳せた。
「海陸くん、大好きっ! ……ぬちゅぅうっ、んっ❤」
「はぁっ、はぁっ、ぁっ、せ、先生ぃ、お、お尻が当たってっ、あっ、はっ、これ、はぁっ、も、もう離れてくださいっ! こ、これ以上されたら……」
「ふふ。良いのよ、イッても❤ 私なんて、さっきからず~っとイッてるんだから。海陸くんとキスをして、お尻で勃起を感じて……はぁぁっ、また身体が熱くなってくるっ。またイッちゃうわぁあっ❤」
「う、うあぁあっ! そ、そんなに強く擦らないでくださっ、ああぁああっ、あっ、あっ、はぁっ、はぁっ、イ、イクッ、うううぅううぅっ!」
 奈美にテントの上から座られて、まだ十分も経っていない。
 しかし、海陸はとうに限界を超えていた。絶頂の触手が扉を何度も抉じ開けんと這っている。だが、ズボンを履いたままで、しかも女教師の目の前で射精など海陸が受け入れられるハズもない。必死に栓を閉めて、押し寄せるオーガズムに抗っていた。
「あぁあん、海陸くんのおち〇ちん、パンツとズボンを挟んでるのに、熱さが伝わってくるわぁっ。もうイキそうなんでしょう? イッて良いのよ? ほらぁ、我慢しちゃだめぇええっ❤」
「うあぁぁあああっ! ヤバいっ、あっ、あぁあっ、うああああっ!」
「はぁっ、はぁっ、はぁあっ、海陸くん、海陸くんっ、大好きっ、好き好き、大好きぃっ❤ んっ、ちゅぅうっ、んっ、んんんんーーっ❤」
「う、あぁあぁあああああぁっ!」
 悪足掻きも空しく、海陸の官能的な絶叫が職員室に木霊した。
 海陸が上半身を海老反りに大きく跳ねらせて天を仰ぐ。お互いに離れた唇からは透明色が糸を紡ぎ、ズボンの中では脈打つ肉棒が白濁液を滴らせた。
 ドクッ、ドクッ、ドクッ……ヌプゥッ……
「うっ、ぁ……」 
 下着に不快感が染み渡るが、それがどうしたと言わんばかり。
 あまりの快感に、海陸は声も出せなかった。
 余韻にどっぷり浸かり、意識が薄れていくのを感じる。
 身体を動かす気力もない。
 一度の射精で、魂ごと全て吐き出した感覚だった。
「はぁああ……海陸くぅん……❤」
 一方で奈美は、かつてない程の愉悦に溺れている。
 想い人のイキ顔を眼前で観られたのだ。
 しかも、下半身には精液の熱や感触が染み渡っている。
 これ以上の幸せがあるものかと、目を反転させてアヘ顔を決めていた。

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後半

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ももえもじ 2020/05/22 16:50

【小説】ショタが占い師を始めたら人妻が殺到した-第一話

旧:団地妻の誘惑~辻占ハーレム~

プロローグ

 太齊の一族は、占い師を家業に代々と永らえていた。
 末裔の翔太も例外ではなく、やがて迎える成人の時まで研鑽を積む日々である。昼間は学業を勤しみ、夜は占いの修行に精を出す毎日だ。そして、近くに迎える成人の際に、翔太は占い師として独立を果たす予定だった。
 しかし、師範を務める父が入院してしまい、事態が一変することになる。金銭的な問題が発生したのだ。代々と続く由緒ある占い師とは形ばかりであり、太齊家の実は金詰りの一途だった。
 伝統ばかりを重んじて他に稼ぐ手段の無い眷属は、それでも占いに縋りつくしかなく、生活費も儘ならない父は、急遽に翔太を占い師として稼ぐように指示をする。修行も半ばに、翔太の学業と両立してのデビューとなった。

第一話-初日

「本当に、僕が占い師を務めることになるなんて……ああ、緊張する。自信がないよ。まだ修行も途中だし、上手く行く気がしない……ああ、どうしよう……」
 とある商店街の一角にて翔太が手に汗を握る。言葉の通り、今日が翔太の占い師としての初舞台なのだ。父が使用していた占いの演台に手を付き、不安を露わにしながら客足を待っていた。
「それにしても、天井も壁も無いなんて知らなかった……これじゃあ、周りから丸見えじゃん。声も丸聞こえだろうし、恥ずかしいかも……せめて外じゃなくて部屋だったら良かったなぁ」
 名ばかりの太齊には店舗を構える資金すら無い。翔太に設けられたスペースは遮蔽物の一つも無く、周囲から丸見えだ。慣れない翔太は、とにかく落ち着かなかった。
「…………」
 しかし、そんな不安も時間が経つに連れて和らいでいく。土曜日の午前中だと言うのに、商店街は非常に閑散としており、目に付く人が数える程にも見当たらないのだ。
 今頃になり、商店街がシャッター通りになっていることに気が付く。
開いている店は僅かであり、それらも客足が良いとは到底も言えない状態だった。
「噂には聞いてたけど、この街って本当に廃れていたんだ。こんなに大きい商店街なのに、ウソみたいに人が居ないや」
 翔太の居る商店街は、ここ数年で立派な空洞化現象へと陥っていた。
 シャッター通りという言葉は幾度と耳にしていたものの、こうして実際に目の当たりにしたのは初めてである。不況を身近にした翔太は、シンとした商店街に小さな恐怖を感じていた。
 同時に、安堵感も然り。飽くまで父が退院するまでの繋ぎな翔太は、このまま客足が無ければ……などと、不謹慎なことも考えてしまう。
「お父さんには申し訳ないけど、やっぱ僕に占い師は早いよ。だから、このままお客さんが来ないことを祈ろう。お客が来ないっていうなら、お父さんも怒れないし。あはは」
 ……されど、翔太の淡い願いは露と消える。及び腰で祈りを捧げる傍らにて、既に遠目から翔太を窺っている女性が数人と居た。
「あの子って占い師なのかしら? 初めて見るわね」
「や~ん、めっちゃ可愛い~っ!! 女の子みたーいっ❤」
「えっ、なにあの可愛い子っ。男の子……だよね? いつもはキモいエロ親父だったのに。あのハゲは引退したってことなのかな?」
 近隣に住む三人の人妻である。若いながらも滲む母性を隠しきれず、如何にもママ友と呼ぶべき一行だ。土曜日に集って商店街を歩き回る最中に、占い屋で独り佇む翔太を一人が着目した。
 いつも不気味なオーラを漂わせる陰気な中年とは打って変わっての翔太は、商店街を馴染みとした三人にとって異彩でしかない。一人を惹き付けると、続いて二人も翔太に関心が向けられた。
 太齊翔太――。
 年頃の男子にしては、体格が華奢で顔付きも幼い。未だ声変わりも果たしておらず、中性という言葉がピッタリな存在だ。当然のように人目を惹きやすいタイプであり、家庭を持つ三人組の人妻も例外ではなかった。
「あら、本当に可愛いじゃない」
「えーっ!! 陽子ってば反応薄すぎっ、あんなに可愛いのにっ!!」
「ヤバい。あの子、モロにタイプなんだけど。何歳なのかなぁ……」
「ええ、里香もショタコンだったの?」
「だって、可愛いじゃん~っ!! 陽子はそう思わない?」
「まあ、それは分かるけど…………可愛いわね、とっても」
 三人の内の一人、花田里香が翔太を指差して咲き誇るテンションで騒ぎ出す。矢次陽子の疑問の通り、里香にはショタコンの気があったらしい。翔太を見つけた途端に、まるで人気アイドルに遭遇した時のような黄色い声で燥いでいた。
 また、同じくショタコンの久住凛も騒いでいる。凛と陽子は学生の頃からの知り合いであり、凛が極度の少年愛だと知る陽子は、早々に訝しい顔を浮かべていた。
 この時点で悪寒を抱く辺り、陽子は流石というべきだった。
「何歳なんだろ~」
「学生かしら。バイトで占い師だなんて珍しいわね」
「ねえ、行ってみない?」
「言うと思ったわ。まあ、占ってもらうだけなら別に構わないわよ」
「やったぁ~!! 行こ行こっ♪」
「……占ってもらうだけなら、ね」
 そうして、三人衆が翔太の元へと歩き出す。自分の場所に真っ直ぐ向かってくる集団に気付くと、翔太は軽く心臓を叩いて出迎えた。

「こんにちわーっ!! 占い、やってます?」
「あ、は、はいっ。やっていますっ!!」
「じゃあ、三人分お願いしまーす♪」
「はいっ。あ、ありがとうございますっ」
「ねぇねぇ、バイトしてるの? 君のこと、初めて見たけど」
「……そう、ですね。見習いの身です。で、でも安心してくださいっ。物心が付いた時から訓練されてきたので、も、問題ないと思いますっ。よ、よろしくお願いします!」
「へぇー、もしかして家業だったり? えらーいっ❤」
「それなら腕前も安心ね。よろしくー」
「は、はいっ!!」
「や~ん、可愛い~っ!!」
 三人の来訪者に、とうに翔太の背中は冷や汗でびっしょりだ。なんとか平静を装うも、父子家庭に育った翔太は年の離れた女性に慣れておらず、心の内は緊張感で一杯だった。
(ね~っ、近くで見るとマジで可愛いんだけどっ!!)
(本当っ、こんなに可愛い男の子は初めて見たよっ!)
(ちょっと、二人とも。感想は後にしなさいよ……)
(陽子、なんでそんなに冷静なの!? この可愛さ、ヤバくない!?)
(はぁ……)
 対して女性組はテンションが上がりっ放しである。特に里香と凛は、翔太の甘い容姿に感極まってる様子だ。まずは一番手に凛が椅子へと腰掛け、釈台を挟んで翔太と向き合った。
「まずは私からねっ。凛って言うよ。君の名前も聞いて良い?」
「あ、太齊翔太です」
「わあ、格好良い苗字と可愛い名前っ♪」
「うんうんっ。よく似合ってる~」
「え、待って。太齊って聞いた覚えがあるわ。いつもの占い師と同じ苗字じゃなかったかしら? もしかして、翔太君は血縁者なの?」
「あーっ、そういえば、確かにっ。聞き覚えあるっ!!」
「し、知ってるんですね。太齊陞三は僕の父なんです」
「ええーっ、全然似てないじゃんっ!!」
「前に一度だけ占ってもらったことあるよ。印象的なヒトだったから、つい覚えちゃってた。それにしても、翔太君が息子だなんて。本当に似てないね。うん、遺伝子って不思議……」
 入院した翔太の実父を陞三という。特徴的な禿髪や下品な言動から、悪い意味で印象的だったらしい。陞三を知る三人は、翔太が実子だと知って色んな意味で驚いた。
「父の占いを受けたんですか。それは……プレッシャーですね」
「え、なんで?」
「父に比べたら、僕なんてまだまだですから」
「……翔太君が不安に思う必要は、決して無いと思うわよ」
 翔太も、三人が陞三の占いを体験済みだと分かって驚きを見せる。発言や態度から、翔太が父を尊敬していることは明らかだ。そこからなにかを閃いたのか、凛は一人で密かに唇の端を釣り上げていた。
「それでは、う、占いを始めますっ」
「あははっ。翔太君、早速声が裏返ってるよ?」
「あ、う……ご、ごめんなさいっ」
「お姉さんが緊張を解いてあげよっか?」
「あっ、凛だけズルい。翔太君の手を勝手にっ!」
「うあああっ!? ちょ、ちょっとっ!?」
「ふあぁ……陽子ぉ、翔太君が真っ赤になってて可愛いぃよぉ……」
「凛、里香。そのくらいにしないと、占いが一向に進まないわよ」
「むう」
 三人の若妻に面と向う翔太は、既に顔を火照らせていた。
 テーブルを挟んでいるも、凛が身を乗り出す所為でお互いの距離が近いのだ。両腕を台に乗せながら、凛が蠱惑的に翔太を見つめている。
そして、不意に翔太の手を取り、優しく握り始めた。
 熱を孕んだ視線と、母性の滲んだスキンシップである。これは凛の得意とする無言のナンパ術だった。
 出会い頭でロックオンする凛に、陽子が代わりに謝ってくれる。
「ごめんなさい、翔太君。凛のコレは、もう病気みたいなものだから。ところで、翔太君はどんな占いが出来るのかしら?」
「あ、え、えっと、一般的な占いの知識は網羅してるつもりです。そ、その中でも僕の家庭では、身体の部位から『気』を読むことを得意としています……」
「身体の部位って、つまり手相占いとか?」
「は、はい。そうです。手だけではなく、他にも脚や顔色とかも……そ、それと、その……く、唇や胸などもあります……」
「ええー、胸っ? 翔太君ってば、実はムッツリタイプ?」
「そうやって女の身体を触るのが目的だったりしてー❤」
「ち、違いますよっ! ほ、本当に、そういう占いがあるんですっ! 実際にお父さ……父は成果を挙げていますし、僕も子供の頃からそう訓練を積まされましたっ!」
「まあ、私も聞いたことはあるわね。唇占いなんかは結構有名かも」
「へえ~」
「それよりさ。胸で占うって、実際にどうするの?」
「そ、それは……」
「そりゃ、やっぱ揉むんでしょっ?」
「だよね。翔太君になら、いくらでも胸を揉ませてあげるよ❤」
「い、いや。そんなこと出来ませんっ! 服の上から形状を推測して、その、そこから、う、占っていこうと思っています……」
「えー」
 言葉を紡ぐに連れて翔太の声色が弱くなる。幼少から訓練を積んだ内容とは言え、こうして実際に女性へと説明するのは、かなり抵抗があるようだ。恥ずかしさを極めた翔太は、性的な会話が始まるや否や顔を真っ赤にした。
 なお、部位による占いは、太齊一族の伝統的手法ではない。これは、先代の陞三による独断である。翔太の尊敬とは裏腹に、陞三は占いを建前にセクハラすることを生き甲斐とした下種だったのだ。
 最初に一般的な手相占いから始まり、続いて女性の美脚を弄ったり、或いは唇の形や弾力から「気」を読むという建前でキスに迫ることも多かった。
 占いに託けて女性にセクハラばかり働いていれば、女性から顰蹙を買うのも当たり前だ。ともかく、スキンシップによる占いしか興味を示さなかった不道徳な陞三は、残念なことに代々と続く伝統的な術を捨ててしまい、翔太にも己のセクハラ術しか伝えていなかった。
(なるほど。でも、翔太君のお父さんは、絶対にセクハラ目的だったよね。いつだっけ? あれは、思い出しただけでゾッとするよ)
(一年くらい前かしら。占いとか言って、不意に胸を掴んで来た時は、本当に殴ろうかと思ったわ。ああ、忌々しい嫌な記憶よ……)
(翔太君も……お、同じことしてくるのかな?)
(どうかしらね)
(翔太君は純粋そうだし、お父さんの教えとか全て鵜呑みにしてそう。翔太君がセクハラな占い……これ、利用できるかも)
 無垢な翔太は、父の教えが不適切な占いだと未だに気付いていない。
反対に、勘の鋭い三人は直感的に事情を察知してしまう。凛と里香は、まるで方程式を解いたように頷くと、より濃い妖しい笑みを浮かべて翔太に詰め寄った。

「じゃ、翔太君。どうぞっ❤」
「えっ、な、なにしてるんですかっ!?」
「なにって……触って確かめるのが、お父さんの教えなんでしょ?」
「あ、で、でも……だからと言ってっ、これは……あ、あう……」
 握っていた翔太の繊手を、おもむろに凛が自らの胸部へと寄せる。凛の豊満な胸に翔太の手が吸いつく。翔太は当然のように童貞であり、服越しでも女性の乳房を触ったのは、これが初めてだった。
 初めて触れる生身に、翔太の顔面が一気に熱を上げる。
「遠慮しないで、もっと力を籠めて揉んで良いんだよ?」
「ダ、ダメですよ……こ、これセクハラになっちゃう……」
「セクハラのハラは嫌がらせって意味だよ。私は別に嫌がってないし、これは占いなんだから、本当に遠慮しなくて大丈夫だってば♪」
「ふ、服の上から目で診断も出来ますから……」
「それでお父さん以上の占いが出来るの?」
「あ……い、いえ……」
「凛が良いって言うなら、直接触った方が良いんじゃない?」
「あ、う、あ……あうう……」
 トマトのように赤くなった翔太の顔に苦慮が滲む。実父を敬慕する健気な翔太は、陞三の代理として顧客には満足してもらわなければと心に誓っている。
『ならば、ちゃんと父の教えの通りに占いを執行すべきだろう……』
 という翔太の胸中を見抜いた凛や里香は、ここぞとばかりに翔太に迫り出す。気付けば、里香まで鼻息を荒くして翔太の手を取っていた。
「あ、翔太君。片手が空いてるね。一緒に私のことも占ってっ!!」
「え? ……わああぁあっ!?」
「あっ、里香までっ!!」
「翔太君の左手が暇してるみたいだったから♪」
「そっか。それじゃあ、二人同時に占いお願いしまーす❤」
「あぁあ、ちょっ、ちょ……あぁあっ……」
 右手が凛の谷間に埋もれたまま、空いた片方の手を里香が奪い取り、自分の胸へと押し付ける。これで両手が二人の乳房に埋もれた状態となる。経験の無い翔太には刺激が強すぎたようで、もはや言葉もない。凛と里香は、ドストライクである翔太の面白いくらいに哀れな姿から、予想以上に嗜虐心を擽られて己の理性を剥がしつつあった。
(やだぁ、翔太君ってば可愛すぎだよぉ。真っ赤な顔して、いまにも泣きそうじゃんっ。こんな可愛い男の子、反則すぎるよっ❤)
(こんなことになるなんて。ちょっとヤりすぎかもって思うけど……もう自分を抑えられそうにないや♪)
「あ、あのっ、ここ外ですしっ! 人目に付くので、ちょ、ちょっとマズいですよ……そのっ、胸に手を……」
「ん~、んふふふ❤ 大丈夫、大丈夫。この商店街がどれだけ人通り少ないか、私達が一番よく知ってるから。それに、これはただの占い……でしょ?」
「そうだよ。君のお父さんも同じことしてたよ? 恥ずかしがるのは、翔太君がエッチな期待をしてるからじゃないかなぁ?」
「そ、そんな。ぼ、僕はエッチなことなんて……」
「あぁあ~ん、可愛い可愛い可愛いぃいっ❤」
「はあ……」
 その半歩後ろでは、一人だけ正気の陽子が溜息交じりに肩を竦める。極度のショタコンな凛が暴走するのは常々であるも、里香まで翔太に魅入られたのは意外だと苦笑いする。けれど、然程には驚いておらず、二回りは年上の、二人の人妻に迫られてきりきり舞いな翔太を、寧ろ面映ゆい感情で見つめていた。
 よき大人を演じて居ても、翔太に対して陽子も裏腹では邪な感情を抱いていたのだ。未だに男性として整い切れていない愛らしい翔太の、親友達から辱められる光景が性志向のドツボに嵌り、陽子はジクリと一人で下半身を熱くさせていた。
(ああやって、ズカズカと行動の出来る凛と里香が羨ましいわ……)
 カミングアウトをしないだけで陽子も立派なショタコンだったのだ。
本当は翔太を犯したい。めちゃくちゃにしてやりたい。そんな思いが駆けていた。けど、自身のキャラ的に、一歩が踏み出せずにいた。
溜息も、不甲斐ない自分に対する遺憾である。夫に感じたことのない、身を焦がすような想いが駆ける。眼前の光景を目の当たりに、陽子は人知れず欲情を果たし、姿勢も次第に内股へと変えていた。
「あ、はあっ、はぁ、はぁっ、はぁっ……」
「翔太君、めっちゃ息が荒くてウケる。ねえねえ、おっぱいの感触に夢中になるのは良いけどさ、占いの方もしっかりね。私達は、占いに来てるんだからねぇ❤」
「そうそうっ。まあ、もっと沢山おっぱいを揉まないと占えないって言うんなら、しょうがないけどさぁ?」
「あ、い、いえ。も、もう結構ですっ。すいませんっ!!」
 一方で翔太は、人妻の熟した乳房を両手に放心していた。
 翔太が二人の言葉に我へと返る。占いを前面に立たせる辺り、凛も陽子もちゃっかりしている。翔太は慌てて手を引っ込めると、診断の結果を発した。
「えっと、二人とも、恋愛運が著しく上昇しているように感じました。な、なにか……大きな恋をしたような現象が血流に表れています。と、とても強い気です」
「えーっ、おっぱい触っただけで、そこまで分かるの!?」
「その、胸の健康状態は意外と心に直結してるみたいですので……」
「へぇ~、かなり当たってるかも、それ❤」
「うんうん。本当に頑張って勉強したんだね、翔太君っ!」
「あ、ありがとうございます……」
 凛と里香が翔太を淫靡に見つめる。議論の余地なく、二人の情炎は翔太にて炙られているのだ。いつの間にか、二人の顔も翔太と同様に熱い淫蕩に染まっていた。
「おっぱい占い、ありがとうね。じゃあ、次は唇の占いかな?」
「えっ!?」
「これも、触って確かめるんだよね? これは唇同士でかなぁ?」
「い、いや、唇占いは形だけでも十分ですのでっ!!」
「でも、実際に触れ合った方が確実な診断が出来るんでしょ?」
「と、言う訳で……」
「どうぞ、翔太君っ❤ んーーーっ!!」
「うあぁあああっ!?」
 結婚により失った恋愛感情が、何年振りと久しく萌芽しているのだ。塞き止めていた欲望が津波の如く溢れ出し、よもや勢いを止められる状態にない。凛と里香は、その火照った身体を卓上へと乗り上げると、キスの体勢で翔太に接近した。
「遠慮しなくて良いから❤」
「あの、翔太君。私にも……」
 目を瞑り、軽く顎を傾けて待機する。二人の美女が目の前でキスを待つ光景には、流石の翔太も平静では居られない。とうに股間は火を噴いており、台に敷かれたタロットクロスで隠れてなければ、屹立が明らかな程だった。
 逃げること叶わず、その場から全く動けず固まってしまう。
「あ、あのっ、キスはしなくて良いですからっ!!」
「翔太君のお父さんはキスしてきたよ?」
「そう、こんな風にね……」
 故に、完全に裏返った声で抵抗の意思を見せるも、勢いそのままに顔を寄せる凛に成す術もなく……やがて翔太は占いと称した凛の唇に吸い込まれていった。
「んっ❤」
「ふあぁあっ、あっ……!!」
 ゆっくりと唇同士が重なった。
 翔太のファーストキスである。唇の突端が触れた途端に、それこそ夢のような感覚に陥り、氾濫する脳汁に溺れてしまい、四肢を何度も痙攣させていた。
「ん~、んふふっ、ん~っ❤」
「ん、ぁ、ふぁ…………ぁ……」
「翔太君、白目を剥いてるわね」
「めっちゃ感じてて可愛い~、やっぱり初めてだったのかなぁ❤」
 背筋はエビ反りに、身体は獲れた魚のようにピクピクと身悶えする。
瞳が蕩けて急速に色を失い、意識も虚ろと化す。その様子は、まるで凛が翔太の生気を吸い取っているようだった。
 対する凛も、性的反応を露わにする。胸占いの時点で既に身体中を焦がしていた凛は、翔太とのキスを口火に汗だく状態だ。顔の紅潮はより濃厚に、服の下ではジメジメと汗が滴り、局部も別の反応により濡れそぼっていた。

「……ちょっと、これはやりすぎじゃないかしら?」
「占いだから大丈夫っ!!」
「はぁ、全く……」
「良いなぁ、凛。次は私の番だよ!!」
「…………」
「それとも、陽子が先が良い?」
「……私は、やらなくて良いわ」
「えーっ、なんでえ?」
「私は、ショ、ショタコンじゃないもの」
「陽子ってば、堅物っ!!」
「……いまの凛、きっとビックリするくらい濡れてるわよ」
「やっぱり?」
「あんな凛を見たのは初めてだわ。年下に入れ込む姿は、これまでも何度と見てきたけど、今回は桁が違うわね。翔太君のことを相当気に入ったみたい」
「無理ないよ。あんな、天然記念物の男の娘が相手だもん。私も実は、見てるだけで濡れてるし。あはは」
「ぷはあっ、ああぁあっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……さ、最高……翔太君とのキスっ、思わず別世界に行っちゃう所だったっ……」
 口付けから数分後に、漸く凛が翔太を解放する。唇が離れて透明の糸が紡がれる程に、お互いが唾液塗れだ。相当の体力を消耗したのか、唇が離れるや肩で息を繰り返した。
 目を虚ろにする二人の官能性に、里香が内股で身悶えする。
「ふあ……ディープキスでもないのに、なんか凄い激しさを感じたよ。二人とも、汗びっしょり。しかも顔もエッチで……もう見てるだけで、私まで変になっちゃうよ」
「はあ、はぁ、里香。ヤバいよ、翔太君とのキス❤」
「観てるだけで伝わってきたよ。二人ともエロ過ぎっ! ねえ、次は私の番ってことで良いよねっ? もう我慢できないよ……」
「……ん、勿論っ」
「翔太君っ、良いよねっ!?」
「はあ、はぁ、はぁ……う、ううっ……」
 凛の満面に広がる悦びが程度を物語っている。凛が退くと、続いて里香がテーブルを跨いで翔太に迫る。里香も、とうに情欲が極まっているのだ。いまやキスをしない選択肢など在りはせず、翔太もそれを理解していた。
 バトンを渡すように、凛から里香へと翔太が移る。
「そ、それじゃあ、失礼しま~す……」
 翔太を優しく抱き締める。それだけなのに、有頂天に達しかねない幸せな心地が身に広がってきた。
 年頃の少年を胸へと抱く多幸感や背徳感に酔い痴れる。一通り堪能すると、里香は取って食うような目つきで翔太に舌を伸ばした。
「んっ、ちゅっ、んんんっ……ぐちゅっ、ぶちゅううっ、ぬりゅっ」
「ふあ、ぁ……ちょ、ちょっ、これっ……あぁあああっ!!」
「うあ……里香のキスって、あんな激しいの?」
「ああ、もう滅茶苦茶ね」
「んぢゅるっ……だ、だって止まらないんだもんっ。んっ、わ、私の唾液で翔太君をっ、これでもかってベトベトにしてあげたいっ、あむ、んんんんっ、幸せっ、幸せっ、幸せだよぉおおおおっ❤」
「ふあ、あっ……あああっ……」
 占いという体裁は何処へやら、里香の濃厚なディープキスに塗れる。ディープキスを知らぬ翔太は、先程と同様に下唇を閉ざした受け身の状態を固定している。里香は、その上から舌で満遍なく舐めていた。
 元々、里香は夫以外との行為に飢えていたのだ。結婚後はマンネリ続きで新鮮味の無い夫とのセックスは食傷に他ならず、遂に獲得したこのチャンスは、とにかく里香の飢えに餓えた野性的な欲望を大いに爆発させた。
「んちゅっ、んんっ、んはぁっ、んっ……」
 まず最初に軽くキスを交わし、それから舌を伸ばすも翔太は応じず、歯止めを失った里香の猛攻が満面へと広がる。唇に留まらず、頬や鼻、果ては目にまで触手が伸びる。まるで愛犬のように翔太の顔中に舌を這わせていた。
「里香ってば、激しすぎる。あんな激しいの、見たことないよ。翔太君をべろべろして……うう、エッチすぎるっ……」
「…………」
「べちゃっ、んっ、んちゅっ、はぁっ、はぁ~、幸せっ……陽子、凛、こんな気持ちになったの、初めてだよぉ……もっと、もっと翔太君を穢し尽くしてあげたいっ!!」
 翔太を一目した時から、里香の口中には大量の唾液が湧いていた。
 餓えた獣が御馳走を前に涎を溢れさせない訳がない。里香が惜しみなく涎を塗り付けていく。翔太の顔中にベッタリと満遍なく――。
 忽ち、鼻を曲げかねない臭気が漂った。
 口に溜まった涎の、独特な臭いだ。
 しかし、いまに限っては、それすら興奮の元である。すえた臭気が官能性を帯び、傍観する陽子と凛にまで情欲が伝染する。キスや胸の占いで既に出来上がっている凛は、淫乱な瘴気によって更に情欲を加速し、陽子の目も憚らず、まるで憑りつかれたように己のスカートに腕を突っ込み始めていた。
「ちょ、ちょっと、凛っ、なにオナニー始めてるのよっ」
「はぁああんっ、見てるだけで、私までっ、はぁ、はぁ、はぁっ……陽子ぉ、私っ、いま信じられないくらい興奮してる……なにこれ……こんなの初めてだよ。友達のキスシーンを見て、こんなに濡れちゃうなんてっ、ああぁっ……」
「……気持ちは、分かるけどさ」
「あううっ、あぁあっ、あっ、うあぁあっ!!」
「あぁあっ、翔太君っ、声も可愛い。ほら、翔太君も舌を伸ばしてっ。翔太君も私のこと舐めてっ、もっと、もっとベトベトしたいのぉ」
 べちゃっ、ぴちゃっ、ぬちゅっ、くちゅっ、ぬちゅっ……
 人気の無い商店街に体液の粘る音が響く。翔太の顔面を、とにかく自分の唾液で満たそうとする里香と、そんなシーンに発情して自慰にひた走る凛である。この狂騒の渦を、もう誰にも止められはしない。里香が満足するまでの暫くと、延々に行為は続くのだった。

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