ももえもじ 2020/05/22 16:50

【小説】ショタが占い師を始めたら人妻が殺到した-第一話

旧:団地妻の誘惑~辻占ハーレム~

プロローグ

 太齊の一族は、占い師を家業に代々と永らえていた。
 末裔の翔太も例外ではなく、やがて迎える成人の時まで研鑽を積む日々である。昼間は学業を勤しみ、夜は占いの修行に精を出す毎日だ。そして、近くに迎える成人の際に、翔太は占い師として独立を果たす予定だった。
 しかし、師範を務める父が入院してしまい、事態が一変することになる。金銭的な問題が発生したのだ。代々と続く由緒ある占い師とは形ばかりであり、太齊家の実は金詰りの一途だった。
 伝統ばかりを重んじて他に稼ぐ手段の無い眷属は、それでも占いに縋りつくしかなく、生活費も儘ならない父は、急遽に翔太を占い師として稼ぐように指示をする。修行も半ばに、翔太の学業と両立してのデビューとなった。

第一話-初日

「本当に、僕が占い師を務めることになるなんて……ああ、緊張する。自信がないよ。まだ修行も途中だし、上手く行く気がしない……ああ、どうしよう……」
 とある商店街の一角にて翔太が手に汗を握る。言葉の通り、今日が翔太の占い師としての初舞台なのだ。父が使用していた占いの演台に手を付き、不安を露わにしながら客足を待っていた。
「それにしても、天井も壁も無いなんて知らなかった……これじゃあ、周りから丸見えじゃん。声も丸聞こえだろうし、恥ずかしいかも……せめて外じゃなくて部屋だったら良かったなぁ」
 名ばかりの太齊には店舗を構える資金すら無い。翔太に設けられたスペースは遮蔽物の一つも無く、周囲から丸見えだ。慣れない翔太は、とにかく落ち着かなかった。
「…………」
 しかし、そんな不安も時間が経つに連れて和らいでいく。土曜日の午前中だと言うのに、商店街は非常に閑散としており、目に付く人が数える程にも見当たらないのだ。
 今頃になり、商店街がシャッター通りになっていることに気が付く。
開いている店は僅かであり、それらも客足が良いとは到底も言えない状態だった。
「噂には聞いてたけど、この街って本当に廃れていたんだ。こんなに大きい商店街なのに、ウソみたいに人が居ないや」
 翔太の居る商店街は、ここ数年で立派な空洞化現象へと陥っていた。
 シャッター通りという言葉は幾度と耳にしていたものの、こうして実際に目の当たりにしたのは初めてである。不況を身近にした翔太は、シンとした商店街に小さな恐怖を感じていた。
 同時に、安堵感も然り。飽くまで父が退院するまでの繋ぎな翔太は、このまま客足が無ければ……などと、不謹慎なことも考えてしまう。
「お父さんには申し訳ないけど、やっぱ僕に占い師は早いよ。だから、このままお客さんが来ないことを祈ろう。お客が来ないっていうなら、お父さんも怒れないし。あはは」
 ……されど、翔太の淡い願いは露と消える。及び腰で祈りを捧げる傍らにて、既に遠目から翔太を窺っている女性が数人と居た。
「あの子って占い師なのかしら? 初めて見るわね」
「や~ん、めっちゃ可愛い~っ!! 女の子みたーいっ❤」
「えっ、なにあの可愛い子っ。男の子……だよね? いつもはキモいエロ親父だったのに。あのハゲは引退したってことなのかな?」
 近隣に住む三人の人妻である。若いながらも滲む母性を隠しきれず、如何にもママ友と呼ぶべき一行だ。土曜日に集って商店街を歩き回る最中に、占い屋で独り佇む翔太を一人が着目した。
 いつも不気味なオーラを漂わせる陰気な中年とは打って変わっての翔太は、商店街を馴染みとした三人にとって異彩でしかない。一人を惹き付けると、続いて二人も翔太に関心が向けられた。
 太齊翔太――。
 年頃の男子にしては、体格が華奢で顔付きも幼い。未だ声変わりも果たしておらず、中性という言葉がピッタリな存在だ。当然のように人目を惹きやすいタイプであり、家庭を持つ三人組の人妻も例外ではなかった。
「あら、本当に可愛いじゃない」
「えーっ!! 陽子ってば反応薄すぎっ、あんなに可愛いのにっ!!」
「ヤバい。あの子、モロにタイプなんだけど。何歳なのかなぁ……」
「ええ、里香もショタコンだったの?」
「だって、可愛いじゃん~っ!! 陽子はそう思わない?」
「まあ、それは分かるけど…………可愛いわね、とっても」
 三人の内の一人、花田里香が翔太を指差して咲き誇るテンションで騒ぎ出す。矢次陽子の疑問の通り、里香にはショタコンの気があったらしい。翔太を見つけた途端に、まるで人気アイドルに遭遇した時のような黄色い声で燥いでいた。
 また、同じくショタコンの久住凛も騒いでいる。凛と陽子は学生の頃からの知り合いであり、凛が極度の少年愛だと知る陽子は、早々に訝しい顔を浮かべていた。
 この時点で悪寒を抱く辺り、陽子は流石というべきだった。
「何歳なんだろ~」
「学生かしら。バイトで占い師だなんて珍しいわね」
「ねえ、行ってみない?」
「言うと思ったわ。まあ、占ってもらうだけなら別に構わないわよ」
「やったぁ~!! 行こ行こっ♪」
「……占ってもらうだけなら、ね」
 そうして、三人衆が翔太の元へと歩き出す。自分の場所に真っ直ぐ向かってくる集団に気付くと、翔太は軽く心臓を叩いて出迎えた。

「こんにちわーっ!! 占い、やってます?」
「あ、は、はいっ。やっていますっ!!」
「じゃあ、三人分お願いしまーす♪」
「はいっ。あ、ありがとうございますっ」
「ねぇねぇ、バイトしてるの? 君のこと、初めて見たけど」
「……そう、ですね。見習いの身です。で、でも安心してくださいっ。物心が付いた時から訓練されてきたので、も、問題ないと思いますっ。よ、よろしくお願いします!」
「へぇー、もしかして家業だったり? えらーいっ❤」
「それなら腕前も安心ね。よろしくー」
「は、はいっ!!」
「や~ん、可愛い~っ!!」
 三人の来訪者に、とうに翔太の背中は冷や汗でびっしょりだ。なんとか平静を装うも、父子家庭に育った翔太は年の離れた女性に慣れておらず、心の内は緊張感で一杯だった。
(ね~っ、近くで見るとマジで可愛いんだけどっ!!)
(本当っ、こんなに可愛い男の子は初めて見たよっ!)
(ちょっと、二人とも。感想は後にしなさいよ……)
(陽子、なんでそんなに冷静なの!? この可愛さ、ヤバくない!?)
(はぁ……)
 対して女性組はテンションが上がりっ放しである。特に里香と凛は、翔太の甘い容姿に感極まってる様子だ。まずは一番手に凛が椅子へと腰掛け、釈台を挟んで翔太と向き合った。
「まずは私からねっ。凛って言うよ。君の名前も聞いて良い?」
「あ、太齊翔太です」
「わあ、格好良い苗字と可愛い名前っ♪」
「うんうんっ。よく似合ってる~」
「え、待って。太齊って聞いた覚えがあるわ。いつもの占い師と同じ苗字じゃなかったかしら? もしかして、翔太君は血縁者なの?」
「あーっ、そういえば、確かにっ。聞き覚えあるっ!!」
「し、知ってるんですね。太齊陞三は僕の父なんです」
「ええーっ、全然似てないじゃんっ!!」
「前に一度だけ占ってもらったことあるよ。印象的なヒトだったから、つい覚えちゃってた。それにしても、翔太君が息子だなんて。本当に似てないね。うん、遺伝子って不思議……」
 入院した翔太の実父を陞三という。特徴的な禿髪や下品な言動から、悪い意味で印象的だったらしい。陞三を知る三人は、翔太が実子だと知って色んな意味で驚いた。
「父の占いを受けたんですか。それは……プレッシャーですね」
「え、なんで?」
「父に比べたら、僕なんてまだまだですから」
「……翔太君が不安に思う必要は、決して無いと思うわよ」
 翔太も、三人が陞三の占いを体験済みだと分かって驚きを見せる。発言や態度から、翔太が父を尊敬していることは明らかだ。そこからなにかを閃いたのか、凛は一人で密かに唇の端を釣り上げていた。
「それでは、う、占いを始めますっ」
「あははっ。翔太君、早速声が裏返ってるよ?」
「あ、う……ご、ごめんなさいっ」
「お姉さんが緊張を解いてあげよっか?」
「あっ、凛だけズルい。翔太君の手を勝手にっ!」
「うあああっ!? ちょ、ちょっとっ!?」
「ふあぁ……陽子ぉ、翔太君が真っ赤になってて可愛いぃよぉ……」
「凛、里香。そのくらいにしないと、占いが一向に進まないわよ」
「むう」
 三人の若妻に面と向う翔太は、既に顔を火照らせていた。
 テーブルを挟んでいるも、凛が身を乗り出す所為でお互いの距離が近いのだ。両腕を台に乗せながら、凛が蠱惑的に翔太を見つめている。
そして、不意に翔太の手を取り、優しく握り始めた。
 熱を孕んだ視線と、母性の滲んだスキンシップである。これは凛の得意とする無言のナンパ術だった。
 出会い頭でロックオンする凛に、陽子が代わりに謝ってくれる。
「ごめんなさい、翔太君。凛のコレは、もう病気みたいなものだから。ところで、翔太君はどんな占いが出来るのかしら?」
「あ、え、えっと、一般的な占いの知識は網羅してるつもりです。そ、その中でも僕の家庭では、身体の部位から『気』を読むことを得意としています……」
「身体の部位って、つまり手相占いとか?」
「は、はい。そうです。手だけではなく、他にも脚や顔色とかも……そ、それと、その……く、唇や胸などもあります……」
「ええー、胸っ? 翔太君ってば、実はムッツリタイプ?」
「そうやって女の身体を触るのが目的だったりしてー❤」
「ち、違いますよっ! ほ、本当に、そういう占いがあるんですっ! 実際にお父さ……父は成果を挙げていますし、僕も子供の頃からそう訓練を積まされましたっ!」
「まあ、私も聞いたことはあるわね。唇占いなんかは結構有名かも」
「へえ~」
「それよりさ。胸で占うって、実際にどうするの?」
「そ、それは……」
「そりゃ、やっぱ揉むんでしょっ?」
「だよね。翔太君になら、いくらでも胸を揉ませてあげるよ❤」
「い、いや。そんなこと出来ませんっ! 服の上から形状を推測して、その、そこから、う、占っていこうと思っています……」
「えー」
 言葉を紡ぐに連れて翔太の声色が弱くなる。幼少から訓練を積んだ内容とは言え、こうして実際に女性へと説明するのは、かなり抵抗があるようだ。恥ずかしさを極めた翔太は、性的な会話が始まるや否や顔を真っ赤にした。
 なお、部位による占いは、太齊一族の伝統的手法ではない。これは、先代の陞三による独断である。翔太の尊敬とは裏腹に、陞三は占いを建前にセクハラすることを生き甲斐とした下種だったのだ。
 最初に一般的な手相占いから始まり、続いて女性の美脚を弄ったり、或いは唇の形や弾力から「気」を読むという建前でキスに迫ることも多かった。
 占いに託けて女性にセクハラばかり働いていれば、女性から顰蹙を買うのも当たり前だ。ともかく、スキンシップによる占いしか興味を示さなかった不道徳な陞三は、残念なことに代々と続く伝統的な術を捨ててしまい、翔太にも己のセクハラ術しか伝えていなかった。
(なるほど。でも、翔太君のお父さんは、絶対にセクハラ目的だったよね。いつだっけ? あれは、思い出しただけでゾッとするよ)
(一年くらい前かしら。占いとか言って、不意に胸を掴んで来た時は、本当に殴ろうかと思ったわ。ああ、忌々しい嫌な記憶よ……)
(翔太君も……お、同じことしてくるのかな?)
(どうかしらね)
(翔太君は純粋そうだし、お父さんの教えとか全て鵜呑みにしてそう。翔太君がセクハラな占い……これ、利用できるかも)
 無垢な翔太は、父の教えが不適切な占いだと未だに気付いていない。
反対に、勘の鋭い三人は直感的に事情を察知してしまう。凛と里香は、まるで方程式を解いたように頷くと、より濃い妖しい笑みを浮かべて翔太に詰め寄った。

「じゃ、翔太君。どうぞっ❤」
「えっ、な、なにしてるんですかっ!?」
「なにって……触って確かめるのが、お父さんの教えなんでしょ?」
「あ、で、でも……だからと言ってっ、これは……あ、あう……」
 握っていた翔太の繊手を、おもむろに凛が自らの胸部へと寄せる。凛の豊満な胸に翔太の手が吸いつく。翔太は当然のように童貞であり、服越しでも女性の乳房を触ったのは、これが初めてだった。
 初めて触れる生身に、翔太の顔面が一気に熱を上げる。
「遠慮しないで、もっと力を籠めて揉んで良いんだよ?」
「ダ、ダメですよ……こ、これセクハラになっちゃう……」
「セクハラのハラは嫌がらせって意味だよ。私は別に嫌がってないし、これは占いなんだから、本当に遠慮しなくて大丈夫だってば♪」
「ふ、服の上から目で診断も出来ますから……」
「それでお父さん以上の占いが出来るの?」
「あ……い、いえ……」
「凛が良いって言うなら、直接触った方が良いんじゃない?」
「あ、う、あ……あうう……」
 トマトのように赤くなった翔太の顔に苦慮が滲む。実父を敬慕する健気な翔太は、陞三の代理として顧客には満足してもらわなければと心に誓っている。
『ならば、ちゃんと父の教えの通りに占いを執行すべきだろう……』
 という翔太の胸中を見抜いた凛や里香は、ここぞとばかりに翔太に迫り出す。気付けば、里香まで鼻息を荒くして翔太の手を取っていた。
「あ、翔太君。片手が空いてるね。一緒に私のことも占ってっ!!」
「え? ……わああぁあっ!?」
「あっ、里香までっ!!」
「翔太君の左手が暇してるみたいだったから♪」
「そっか。それじゃあ、二人同時に占いお願いしまーす❤」
「あぁあ、ちょっ、ちょ……あぁあっ……」
 右手が凛の谷間に埋もれたまま、空いた片方の手を里香が奪い取り、自分の胸へと押し付ける。これで両手が二人の乳房に埋もれた状態となる。経験の無い翔太には刺激が強すぎたようで、もはや言葉もない。凛と里香は、ドストライクである翔太の面白いくらいに哀れな姿から、予想以上に嗜虐心を擽られて己の理性を剥がしつつあった。
(やだぁ、翔太君ってば可愛すぎだよぉ。真っ赤な顔して、いまにも泣きそうじゃんっ。こんな可愛い男の子、反則すぎるよっ❤)
(こんなことになるなんて。ちょっとヤりすぎかもって思うけど……もう自分を抑えられそうにないや♪)
「あ、あのっ、ここ外ですしっ! 人目に付くので、ちょ、ちょっとマズいですよ……そのっ、胸に手を……」
「ん~、んふふふ❤ 大丈夫、大丈夫。この商店街がどれだけ人通り少ないか、私達が一番よく知ってるから。それに、これはただの占い……でしょ?」
「そうだよ。君のお父さんも同じことしてたよ? 恥ずかしがるのは、翔太君がエッチな期待をしてるからじゃないかなぁ?」
「そ、そんな。ぼ、僕はエッチなことなんて……」
「あぁあ~ん、可愛い可愛い可愛いぃいっ❤」
「はあ……」
 その半歩後ろでは、一人だけ正気の陽子が溜息交じりに肩を竦める。極度のショタコンな凛が暴走するのは常々であるも、里香まで翔太に魅入られたのは意外だと苦笑いする。けれど、然程には驚いておらず、二回りは年上の、二人の人妻に迫られてきりきり舞いな翔太を、寧ろ面映ゆい感情で見つめていた。
 よき大人を演じて居ても、翔太に対して陽子も裏腹では邪な感情を抱いていたのだ。未だに男性として整い切れていない愛らしい翔太の、親友達から辱められる光景が性志向のドツボに嵌り、陽子はジクリと一人で下半身を熱くさせていた。
(ああやって、ズカズカと行動の出来る凛と里香が羨ましいわ……)
 カミングアウトをしないだけで陽子も立派なショタコンだったのだ。
本当は翔太を犯したい。めちゃくちゃにしてやりたい。そんな思いが駆けていた。けど、自身のキャラ的に、一歩が踏み出せずにいた。
溜息も、不甲斐ない自分に対する遺憾である。夫に感じたことのない、身を焦がすような想いが駆ける。眼前の光景を目の当たりに、陽子は人知れず欲情を果たし、姿勢も次第に内股へと変えていた。
「あ、はあっ、はぁ、はぁっ、はぁっ……」
「翔太君、めっちゃ息が荒くてウケる。ねえねえ、おっぱいの感触に夢中になるのは良いけどさ、占いの方もしっかりね。私達は、占いに来てるんだからねぇ❤」
「そうそうっ。まあ、もっと沢山おっぱいを揉まないと占えないって言うんなら、しょうがないけどさぁ?」
「あ、い、いえ。も、もう結構ですっ。すいませんっ!!」
 一方で翔太は、人妻の熟した乳房を両手に放心していた。
 翔太が二人の言葉に我へと返る。占いを前面に立たせる辺り、凛も陽子もちゃっかりしている。翔太は慌てて手を引っ込めると、診断の結果を発した。
「えっと、二人とも、恋愛運が著しく上昇しているように感じました。な、なにか……大きな恋をしたような現象が血流に表れています。と、とても強い気です」
「えーっ、おっぱい触っただけで、そこまで分かるの!?」
「その、胸の健康状態は意外と心に直結してるみたいですので……」
「へぇ~、かなり当たってるかも、それ❤」
「うんうん。本当に頑張って勉強したんだね、翔太君っ!」
「あ、ありがとうございます……」
 凛と里香が翔太を淫靡に見つめる。議論の余地なく、二人の情炎は翔太にて炙られているのだ。いつの間にか、二人の顔も翔太と同様に熱い淫蕩に染まっていた。
「おっぱい占い、ありがとうね。じゃあ、次は唇の占いかな?」
「えっ!?」
「これも、触って確かめるんだよね? これは唇同士でかなぁ?」
「い、いや、唇占いは形だけでも十分ですのでっ!!」
「でも、実際に触れ合った方が確実な診断が出来るんでしょ?」
「と、言う訳で……」
「どうぞ、翔太君っ❤ んーーーっ!!」
「うあぁあああっ!?」
 結婚により失った恋愛感情が、何年振りと久しく萌芽しているのだ。塞き止めていた欲望が津波の如く溢れ出し、よもや勢いを止められる状態にない。凛と里香は、その火照った身体を卓上へと乗り上げると、キスの体勢で翔太に接近した。
「遠慮しなくて良いから❤」
「あの、翔太君。私にも……」
 目を瞑り、軽く顎を傾けて待機する。二人の美女が目の前でキスを待つ光景には、流石の翔太も平静では居られない。とうに股間は火を噴いており、台に敷かれたタロットクロスで隠れてなければ、屹立が明らかな程だった。
 逃げること叶わず、その場から全く動けず固まってしまう。
「あ、あのっ、キスはしなくて良いですからっ!!」
「翔太君のお父さんはキスしてきたよ?」
「そう、こんな風にね……」
 故に、完全に裏返った声で抵抗の意思を見せるも、勢いそのままに顔を寄せる凛に成す術もなく……やがて翔太は占いと称した凛の唇に吸い込まれていった。
「んっ❤」
「ふあぁあっ、あっ……!!」
 ゆっくりと唇同士が重なった。
 翔太のファーストキスである。唇の突端が触れた途端に、それこそ夢のような感覚に陥り、氾濫する脳汁に溺れてしまい、四肢を何度も痙攣させていた。
「ん~、んふふっ、ん~っ❤」
「ん、ぁ、ふぁ…………ぁ……」
「翔太君、白目を剥いてるわね」
「めっちゃ感じてて可愛い~、やっぱり初めてだったのかなぁ❤」
 背筋はエビ反りに、身体は獲れた魚のようにピクピクと身悶えする。
瞳が蕩けて急速に色を失い、意識も虚ろと化す。その様子は、まるで凛が翔太の生気を吸い取っているようだった。
 対する凛も、性的反応を露わにする。胸占いの時点で既に身体中を焦がしていた凛は、翔太とのキスを口火に汗だく状態だ。顔の紅潮はより濃厚に、服の下ではジメジメと汗が滴り、局部も別の反応により濡れそぼっていた。

「……ちょっと、これはやりすぎじゃないかしら?」
「占いだから大丈夫っ!!」
「はぁ、全く……」
「良いなぁ、凛。次は私の番だよ!!」
「…………」
「それとも、陽子が先が良い?」
「……私は、やらなくて良いわ」
「えーっ、なんでえ?」
「私は、ショ、ショタコンじゃないもの」
「陽子ってば、堅物っ!!」
「……いまの凛、きっとビックリするくらい濡れてるわよ」
「やっぱり?」
「あんな凛を見たのは初めてだわ。年下に入れ込む姿は、これまでも何度と見てきたけど、今回は桁が違うわね。翔太君のことを相当気に入ったみたい」
「無理ないよ。あんな、天然記念物の男の娘が相手だもん。私も実は、見てるだけで濡れてるし。あはは」
「ぷはあっ、ああぁあっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……さ、最高……翔太君とのキスっ、思わず別世界に行っちゃう所だったっ……」
 口付けから数分後に、漸く凛が翔太を解放する。唇が離れて透明の糸が紡がれる程に、お互いが唾液塗れだ。相当の体力を消耗したのか、唇が離れるや肩で息を繰り返した。
 目を虚ろにする二人の官能性に、里香が内股で身悶えする。
「ふあ……ディープキスでもないのに、なんか凄い激しさを感じたよ。二人とも、汗びっしょり。しかも顔もエッチで……もう見てるだけで、私まで変になっちゃうよ」
「はあ、はぁ、里香。ヤバいよ、翔太君とのキス❤」
「観てるだけで伝わってきたよ。二人ともエロ過ぎっ! ねえ、次は私の番ってことで良いよねっ? もう我慢できないよ……」
「……ん、勿論っ」
「翔太君っ、良いよねっ!?」
「はあ、はぁ、はぁ……う、ううっ……」
 凛の満面に広がる悦びが程度を物語っている。凛が退くと、続いて里香がテーブルを跨いで翔太に迫る。里香も、とうに情欲が極まっているのだ。いまやキスをしない選択肢など在りはせず、翔太もそれを理解していた。
 バトンを渡すように、凛から里香へと翔太が移る。
「そ、それじゃあ、失礼しま~す……」
 翔太を優しく抱き締める。それだけなのに、有頂天に達しかねない幸せな心地が身に広がってきた。
 年頃の少年を胸へと抱く多幸感や背徳感に酔い痴れる。一通り堪能すると、里香は取って食うような目つきで翔太に舌を伸ばした。
「んっ、ちゅっ、んんんっ……ぐちゅっ、ぶちゅううっ、ぬりゅっ」
「ふあ、ぁ……ちょ、ちょっ、これっ……あぁあああっ!!」
「うあ……里香のキスって、あんな激しいの?」
「ああ、もう滅茶苦茶ね」
「んぢゅるっ……だ、だって止まらないんだもんっ。んっ、わ、私の唾液で翔太君をっ、これでもかってベトベトにしてあげたいっ、あむ、んんんんっ、幸せっ、幸せっ、幸せだよぉおおおおっ❤」
「ふあ、あっ……あああっ……」
 占いという体裁は何処へやら、里香の濃厚なディープキスに塗れる。ディープキスを知らぬ翔太は、先程と同様に下唇を閉ざした受け身の状態を固定している。里香は、その上から舌で満遍なく舐めていた。
 元々、里香は夫以外との行為に飢えていたのだ。結婚後はマンネリ続きで新鮮味の無い夫とのセックスは食傷に他ならず、遂に獲得したこのチャンスは、とにかく里香の飢えに餓えた野性的な欲望を大いに爆発させた。
「んちゅっ、んんっ、んはぁっ、んっ……」
 まず最初に軽くキスを交わし、それから舌を伸ばすも翔太は応じず、歯止めを失った里香の猛攻が満面へと広がる。唇に留まらず、頬や鼻、果ては目にまで触手が伸びる。まるで愛犬のように翔太の顔中に舌を這わせていた。
「里香ってば、激しすぎる。あんな激しいの、見たことないよ。翔太君をべろべろして……うう、エッチすぎるっ……」
「…………」
「べちゃっ、んっ、んちゅっ、はぁっ、はぁ~、幸せっ……陽子、凛、こんな気持ちになったの、初めてだよぉ……もっと、もっと翔太君を穢し尽くしてあげたいっ!!」
 翔太を一目した時から、里香の口中には大量の唾液が湧いていた。
 餓えた獣が御馳走を前に涎を溢れさせない訳がない。里香が惜しみなく涎を塗り付けていく。翔太の顔中にベッタリと満遍なく――。
 忽ち、鼻を曲げかねない臭気が漂った。
 口に溜まった涎の、独特な臭いだ。
 しかし、いまに限っては、それすら興奮の元である。すえた臭気が官能性を帯び、傍観する陽子と凛にまで情欲が伝染する。キスや胸の占いで既に出来上がっている凛は、淫乱な瘴気によって更に情欲を加速し、陽子の目も憚らず、まるで憑りつかれたように己のスカートに腕を突っ込み始めていた。
「ちょ、ちょっと、凛っ、なにオナニー始めてるのよっ」
「はぁああんっ、見てるだけで、私までっ、はぁ、はぁ、はぁっ……陽子ぉ、私っ、いま信じられないくらい興奮してる……なにこれ……こんなの初めてだよ。友達のキスシーンを見て、こんなに濡れちゃうなんてっ、ああぁっ……」
「……気持ちは、分かるけどさ」
「あううっ、あぁあっ、あっ、うあぁあっ!!」
「あぁあっ、翔太君っ、声も可愛い。ほら、翔太君も舌を伸ばしてっ。翔太君も私のこと舐めてっ、もっと、もっとベトベトしたいのぉ」
 べちゃっ、ぴちゃっ、ぬちゅっ、くちゅっ、ぬちゅっ……
 人気の無い商店街に体液の粘る音が響く。翔太の顔面を、とにかく自分の唾液で満たそうとする里香と、そんなシーンに発情して自慰にひた走る凛である。この狂騒の渦を、もう誰にも止められはしない。里香が満足するまでの暫くと、延々に行為は続くのだった。

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