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ハーレムの記事 (14)

ももえもじ 2023/09/08 00:01

シェア彼氏!! 離島で男子は一人だけ

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一 放課後女子会


「ねえ、亜香里。リア」
「男が欲しいという話なら、もう聞き飽きてるわよ?」
「うッ……なんでよ!?」
「アオイ、毎日うるさい。同じこと」
「葵は早く受け入れるべきだわ。男子が戻ってこないという事実をね」
「なんで二人とも、そんなに冷静なん!?」
「いや、もう二年くらい経つもの」
「わ、私は元々、男子は、そんな……」
「なにその達観した風な……ホントは、むっつりスケベの癖に!!」
「はあ……私達に当たらないでよ、本当に」

 葵と呼ばれる女学生が檄を飛ばす。
 口を開けば「男、男!!」と、そればかりである。
 一言で表せば、単なる欲求不満だった。
 舞台となる孤島は、世界的な流行病により、もう二年も閉鎖した状態にある。
 最盛期には十万を超える人々が衣食住を彩っていた本島も、押し寄せる衰退の一途には抗えず、いまでは当時の賑わいなど見る影も無い。ほんの数十年の間に酷く閑散としてしまい、現在は人口が一万人を下回っている。
 その上で渡航が強く制限されている為に、島にヒトが行き来することもなく、この二年は、波風が立たない凪のような毎日が流れていた。

「女子校の人達も、みんな同じ気持ちなのかな?」
「欲求不満?」
「うん。だってオトコが居ないんだよ!? 女子校の学生って、全員常にオトコに飢えてるんかなッ!! アタシ達みたいにさッ!!」
「そんな訳ないでしょう。男子が居ないからと、一々騒いでいるのは貴女くらいだわ。それと、私とリアは取り立てて飢えてないから」
「いや、みんなも言ってるでしょ!! そりゃ最初はオトコが島から居なくなって快適だなってアタシも思ったけど、もう二年だよ。こんな長く伝染病が続くって誰も思ってなかったし、もういい加減に我慢も限界!! カレシにも会えないし!!  ってか、もう居ない訳だし!! みんなも、ストレス溜まってるって!!」
「わ、分かってるから、そんなに怒鳴らないでよ」
「女子校とは違う。此処は」
「そうね。本来の此処は共学だもの。ただ、目の前から急に男子が消えただけ。確かに、そんな例って他にあまり聞かないわよねぇ」

 そして本島には、同年代の異性が全く存在していなかった。
 女学生にストレスを齎す最大の原因である。
 別に死別している訳では無い。ただ、島に居ないというだけだ。
 昭和初期の、本島における男性の労働先は、大多数が海洋産業だった。
 時代を経るに連れて就職も多岐へと渡るようになるも、いまでも本島の男性は伝統という名の許に、若い内に本土で海洋学を強いられている。一年に二回と、島の若い男子を一挙に集めては、巨大船で大移動を行うのだ。

 その年も、通例に違わず本州での研修が進められていた。
 そこからのパンデミックにより、若人が本島と隔離された次第である。厳しい制限によって帰島する道が閉ざされてしまい、路頭に迷った男子は国が運営する臨時学園へと編入されていた。
 古臭い本島だから起こり得る事態であるも、それを中々受け入れられない葵が女の欲望を剥き出しに、幼馴染の亜香里、友人のリーアへと八つ当たりする。

「リーアはともかく、亜香里はなんでそんなに冷静なの?」
「私はともかく、って……」
「だってリーアはオトコとか興味ないでしょ?」
「興味が無い、こともない、けど……よく分かんない」

 伝染病が流行る直前に、オーストリアから滑り込んだリーアが首をかしげる。
オーストリアでの交際は皆無な上に、日本に来てすぐに島の男子が消えた為に、恋愛をよく知らなかった。

「ま、カレシが居た人達には、より辛いわよね」
「辛いってかムカつくんだよ!! 二年も離れていれば、そりゃ別れるのは仕方がないけど、向こうは本土で沢山の相手がいるのに、こっちには対象となる相手が一人も居ないっていうね!!」

 葵は本件で彼氏と断裂しており、それが一層と飢えに拍車を掛けていた。
 これは葵に限った話ではない。島といった閉鎖的な環境下では、都会と比べて男女の交際率が高いと言われており、葵の他にも本件でボーイフレンドを失った女子は多かった。
 また、本土で新たな出会いを模索する男子に対して、隔離された島ではそれも叶わない点が蟠りとなっている。

 実際に、リモートで遠距離恋愛を紡ぐ関係は、パンデミックが長期間に渡ると理解した男子側による一方的な別れ話で幕を閉じていた。
 怒りと欲求が膨らむ葵の気持ちは、亜香里も分からないでは無かった。

「亜香里は冷静よね?」
「そ、そうかしら?」
 的確な指摘だった。
 クールな亜香里も、そのひんがら目に一瞬だけ唾を飲む。
「だって、この学園で亜香里だけオトコの話が出て来ないんだもん」
「…………」

 亜香里が黙る。指で頬を掻きながら、虚空に目を泳がせている。
 それは、明らかに含みのある沈黙だった。

「なにかアタシらに隠してない?」
「さあ、どうかしらね」
「なにそのクソみたいな反応」
「こんな小さな島で……私がなにを隠してると思うの?」
「分かんないから聞いてるんでしょっ!?」
「そうよね。え、っと……」

 亜香里が空を見上げている。珍しく言葉に詰まっているようだ。
 慎重に言葉を選んでいるように見える。
 そんな意外な姿に、葵とリーアが顔を見合わせる。
 暫くが経つも、結局は亜香里から続く言葉が出ずに、放課後の女子会はお開きとなった。
 いつも通り、女子らしい話題で学園からの帰路を彩り、やがて分岐点を辿ると「また明日」と言って別れていく。

 時折り後ろを振り返りながら、ゆっくりと亜香里が歩を進めている。
 二人の姿が完全に見えなくなると、踵を返して通った道を逆戻りし始めた。
 自分の家路とは違う道である。
 辺りを警戒しながら、慌てるようにそそくさと歩く。
 薄暗い林道を通り、私有地を抜けて目的地まで急いでいる。
 小さな島では、殆んどの島民が顔見知りだ。

 こんな様子を誰かに見られたら、すぐに島全体へと噂が広まってしまう。
「やっぱり、いつまでも隠し通せる話では無いわね」
 溜息を吐いて次第には小走りを見せる亜香里。着いた先は、なんてことのない小さな一軒家である。ただ、そこは亜香里の家では無かった。

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ももえもじ 2023/04/27 16:41

#1.男が自分だけの世界で僕は……

舞台

 男が絶滅してからX年が経つも、人類の存続に左程の変化は訪れなかった。
 奇病と人口生殖の作用により、生まれてくる人間が女性だけとなり、異性という概念が歴史の上で語られるようになった程度だろう。誰も異性を知り得なくなれば、それはもう神話や空想上の産物だった。

 なお、その残された資料が問題である。性を語る資料として、前時代に遺されたアダルトビデオなどのポルノが使われているからだ。
 教育の場にて、女子たちがAVを大画面で真面目に鑑賞する姿は滑稽と言える。
男女の性行為を紙に描写するテストがあったり、畜生向けのエロ同人をバカ正直に教科書とする学園も存在した。

 お陰で女たちによる性への関心は尽きていない。誰もが男女の営みを夢見ていた。
 そんな世界でX年振りに一人の男が誕生する。当然ながら、世界は激震した。
 男に「天人」と名づけられると、生まれた地もそのまま「天人町」と改名された。
 なお、衰退の末期では希少な男性を崇める法律が敷かれている。完膚なきまでの男尊女卑ならぬ絶対男崇な制度であり、とどのつまり「男は、いつ如何なる時でも、好きな女性と好きなだけヤれる」という内容だった。

 窮地に立たされた社会が最後の最期に下した苦渋の決断である。大規模なデモを起こした阿鼻叫喚な法律だったものの、現代の生き残りには然るべき為ん術という認識でしかなく、X年ぶりに男が誕生したことで絶対男崇の制度は当たり前の如く再可決されるのだった。

 国宝どころか、星の宝として扱われる天人。
 誕生から〇二年が経った天人は、進学先として国内最大規模の学園へと入学する。
学生数は三万人。言わずもがな、天人以外の全員が女性だった。
 〇二歳と言えば、性欲を自覚する頃合いである。
 そして天人には、自身が望めば好きな時に好きな女とヤれる権利がある。多感な年頃と絶大な権力……天人の学園生活は、波瀾万丈を極めない訳が無かった。

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ももえもじ 2023/01/12 17:44

催淫体質2 読み切り


https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01014836.html
催淫体質2が発売しました。

<あらすじ>
木崎雄大(きざき ゆうだい)は、異性から興味すら持たれない程の非モテ男子だった。
天の悪戯によって雄大の人生は、30歳を迎えた途端に一変してしまう。
雄大の体臭を嗅いだ女性が強○的に発情する「催淫体質」が唐突に芽生えたのだ。
理由は一切不明。気付けば、職場の女上司、妹、義母に限らず、道行く初対面の女性までも雄大を求めるようになっていた。
これは、そんな男の夢を抱えた雄大の一ページである。

続き物ですが、こちら単品でも読むことが出来ます。

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ももえもじ 2022/04/18 13:07

人間牧場(ノベル版)

いわゆる、遺言書だ。
 使用人である和子を頼り、私の死後にお前へと届くよう手配しておいた。
 何故に、お前か?
 各地に散りばめられた子の中では、お前が最も私に近いと感じたからだ。
 お前なら、きっと私の跡を継げるだろう。
 財団の話ではない。
 そんなものは、優秀な他の兄弟が勝手にやっていれば良い。
 お前には、もっと面白いものをくれてやると言っているのだ。
 和子から鍵を受け取れ。
 牧場の鍵だ。
 財団が経営する牧場ではない。
 とにかく行けば分かる。
 和子を始めとした、ごく少数の使用人だけには話が伝わっている。
 彼女たちに教えてもらえ。歴史ある財団の、真実の姿を。
 学べ。そして……愉しめ。
 ルールさえ守ってくれるなら、好きなだけ愉しんで構わない。
 …………
 ああ、年上が好きなら、和子にも手を出して構わないぞ。
 お前が睨んでいた通り、私は多くの使用人を手塩に掛けていたからな。
 そういう訳だ。私亡き歴史を頼んだぞ。
 よい人生を。
 財閥王より~~


 という、親父の遺言書が届いてから数日が経過した。
 目的地へと向かう道すがら、俺は使用人の和子さんにおおよその粗筋を聞かされた。
 政治家だった親父の、真の素顔について……あまりに突拍子もない内容なのに、すんなり受け入れてしまう自分がいる。
 まるで最初から知っていたように、「なるほど」と、小さく一言だけ和子さんに返した。
「冷静ですね。普通なら、もっと取り乱すものですよ?」
「これでも困惑してるよ」
「……やはり、似ているのかもしれませんね」
 隣で運転する和子さんが笑う。
 少し厚めの化粧に、シンプルだけど高級そうなメガネに、隙の無いスーツ姿と、和子さんは正にデキるけど堅物なOLと言った女性である。
「俺と親父か? はは、数いる兄妹で一番の親不孝者だぞ、俺は」
 言いながらも、心では和子さんに同調していた。
 俺の父親……表向きは、甚も堅苦しい政治家だった。
 私生活でも笑顔は見せず、そもそも感情の有無が疑わしいような人間である。
 対して俺は、優秀な兄妹を差し置いて、いつまでもふらふらと遊びまわるような奴だった。
 金に、女に、遊びに。家の財産を貪る寄生虫と誹られ続けた。
『どうして、あの父親から、あんな子供が……』
周りからは、正反対の親子と言われ続けていた。
 だが、通ずる部分は確実に存在していたのだ。
 親父も、分かっていた訳だ。
 優秀な兄妹を差し置いて、俺へと招待状を渡した理由……
「着きました」
 東京から車で2時間あまり、着いた先は馴染みの薄い栃木県某所だった。
 見渡しの良い田畑の脇に車が止まる。
 目の前には、ひと気のないビルが一つ在る。
 ビルといっても、三階建て程度だろうか?
 商業ビルではない。会社という訳でも無い。
 外観からは中身の想像が付かない建物だ。
 都会っ子の俺からすれば、穴場の箱ヘルにも見えた。
「ここが?」
 俺は、車から出た。
 都会の喧騒がない田んぼだらけの拓けた地は、季春だというのに風が強くて肌寒さを感じる。
 高層ビルの一つも見えない。芯まで都会っ子の俺とは肌が合わないような場所だった。
「こんな場所に……?」
「ご主人様の祖父は有名な地主であり、ここ一帯を管理していました」
「先祖が田舎の金持ちだって話は聞いたことあるな。ここがそうか」
「お金持ち……ええ、大変な資産家でした」
 それからも和子さんは、なにやら懐かしむような遠い目で語ってくれた。
 それは、まるで自分について話しているような口ぶりである。
 俺より一回り二回り年上とはいえ、まだ40代なのに……
 親父の祖父について、なんで詳しいのか?
 聞こうとしたとき、和子さんが先制して口を挟む。
「一先ず、入りましょう」
 和子さんが鍵を取り出して開錠する。
 ……開けると、そのまま俺に鍵を渡してきた。
 一つの輪に、重厚な鍵が三つ連なっている。
 一つは、この建物の鍵。あと二つは……?
「これからは、坊ちゃんがお持ちください。いつでも、好きな時に此処へと訪ねてくれて構いません」
「遠いんだよ。頻繁に此処に来るメリット、ちゃんとあるんだろうな」
「…………」
 俺の言葉を無視して和子さんが中に入る。
 灰色のカーペット、ビジネス用の椅子やデスク、景観を崩さない造花があちこちと、まさにオフィスと言った内装だった。
 デスクの上には、まるで先程まで人が居たように、無造作にノートや書類が置かれている。
 ただ、違和感が拭えない。
 このオフィスからは、生気を感じなかった。
 親不孝者な俺の勘が騒ぐ。
「隠れ蓑か」
「ご名答です。理解が早くて助かります」
 薬の取引や違法な性風俗など、金や立場を悪用して裏社会にどっぷり浸かっていた俺である。驚きは無かった。
 また、和子さんも、さも当然のような口調だ。
「実際には、旦那様が訪れる週末は此処もオフィスとして使われていましたけれど」
「そして隠し階段か。マジで犯罪の臭いがしてきたな」
 淡々とオフィスを抜けていく。突き当りの壁に来ると、和子さんはカーペットを捲り、隠れていた取っ手を慣れた手つきで引っ張り上げる。
 すると、そこにはまるで映画のような隠し階段が現れたのだった。
 流石の俺も息を飲む。
 だが、衝撃は更なる怒涛で俺に畳みかけてきた。
「このビルには地下があります。正確には防空壕だったようですが、旦那様が手ずから整えていきました。地下には、現在四人の女性が住んでいます」
「四人の……なんだって?」
「世界から遮断された、言葉も、自分の名前すら分からない四人の女性……もとい娘が、生まれた時から此処で暮らしているのです。暮らすという表現は適切では無いでしょう。『監禁』に言い直します」
「……そうか」
 寿司は旨い。なんて当たり前みたいなテンションで和子さんは話すもんだから、俺もバカみたいな反応しか出来なかった。
「実際に見るまでは信じがたいな。見せてくれ」
「はい、此処です」
 螺旋状の階段を降りた先には、厳重に施された重々しい鉄塊の扉が聳え立っていた。
 和子さんが目配りする。鍵を使えということか。
 三本のうちの一本を差し込むと、なんなく扉は開錠した。

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ももえもじ 2020/08/22 17:07

女学園まるごと催○-聡美編

これの続きです。
https://ci-en.dlsite.com/creator/6423/article/339040

 理事室での祭りから一日が経過する。本日が就任であり、流石の祭祀も女子学園の担当に心が落ち着かない。職員室にて祭祀が一人、呼吸を繰り返していると、背後から見慣れた女性が忍び込んだ。
「祭祀せんせ❤」
「おわっ、千恵……いえ、副学長っ!?」
「あん、千恵美とお呼び下さい。私達の仲ではありませんか♪」
「ここは職員室ですよ。他の目も有るので出来ません」
「残念です。ところで、就任式は如何でしたか?」
「視界には女子ばかり。緊張の連続でしたよ」
「え~、そうは見えませんでしたが」
「そ、それより、近いですよ……」
 ホームルームの直前で緊張する祭祀に、千恵美が纏わり付く。あれから千恵美は祭祀に夢中であり、他の女性教員の目も気にせずスキンシップに酔っていた。
 二人の甘い雰囲気に、若い教員は興味津々と窺うも、年配の表情は実に訝しい。面倒事は御免と言い、祭祀が千恵美を振り払う。
「それでは、ホームルームの時間なので行ってきます」
「担当は一年七組でしたか?」
「はい」
「ふふ、様子を見に後で伺いますね♪」
「来ないで下さい……」
 祭祀にゾッコンの千恵美であるも、これは別に催○に依るものではない。もしもアプリに依る乱痴気が見つかれば大事になるのは必至だ。アプリで千恵美を完全な支配下に置けば良い話だが、なんとなく祭祀は現在の儘で放置している。祭祀は職員室を後にすると、担当する教室へと向かった。
「今宵祭祀と言います。今日から七組の担任です」
「「よろしくお願いしまーす!!」」
 そして担当クラスと顔合わせである。黒百合女学園は徹底して一貫教育制度にあり、とにかく男を寄せ付けない敷居として有名だ。祭祀のような若くて整った男性が担任なのは極めて珍しいのだろう。まるで穴を開ける勢いで全員が祭祀を射抜いていた。
「きゃ~っ、今宵先生、めっちゃ格好良くない!? ヤバいんだけど!!」
「黒百合って男禁制じゃなかったの!? こんなの聞いてないわあっ!!」
「ううー、緊張するっ!! 家族以外で男性と話したことないのに……」
「ねえ、休み時間になったら、話し掛けに行こっ!?」
「ええーっ、ちゃんと話せるかなぁ……」
「こらこら、静かに」
「あっ、ごめんなさい、先生っ」
「きゃーっ、先生に注意されちゃった♪」
 一クラス40人。80もの眼が一人の男性教員を見つめていた。
 声を潜めて女子がボソボソと祭祀を値踏みする。女子の声は直に届いているも、祭祀は祭祀で胸中が穏やかでなく、学生の話し声など右から左だ。
既にスーツの下は汗に塗れて、顔もポツポツと火照ってしまう。なんとか表情を締めるだけで精一杯だった。
 女子の反応は多種多様であり、様々な印象がチクチクと全身を蝕む。
(全校集会の時もそうだが、なんで女の視線ってこんなにエロいんだろう。みんなが俺を視ている。極め付けは教室の匂い。女の匂い。匂いと視線でそれだけでイキそうになるな)
 チラッと見る限りでも、教室に居る女子のレベルの高さが窺えた。
 誰か一人を適当に選んでも、恐らく祭祀の眼鏡に適うことだろう。
 由緒正しい黒百合女学園は授業料も莫大であり、まず入学の叶う家庭が限られている。裕福か権力者、その優秀な遺伝子の組み込まれた女子達のレベルが高いのも必然だった。
 視界一杯に映る40もの女子の顔を眺めてみる。テレビや雑誌に出てくるアイドルとは、また違った可愛さを感じる。化粧は控え目であり、物事を知らない無垢な面持ちがそそられる。祭祀には、国民的美少女と謳われる完成された存在より、こうした青臭くも素の儘で可愛い女子の方が遥かに好みだった。
 そして、そんな女子を丸ごと篭絡する力を、祭祀は持っている――
 その気になれば、今すぐにでも催○アプリを起動させては、ここに居る全ての女子を脱がしたり、一人ひとりの女性器の味を確かめることだって出来る。そう考えるだけで胸が一杯になった。
 否応なく漂う雌の匂いに、甘く蕩けた無数の視線が絡み、祭祀が教卓に膨らみを隠す。もう一度だけ深呼吸すると、祭祀はクラスに担任としての挨拶を交わすのだった。

 二

「ハンドマッサージ技能講習だって!?」
「うん、黒百合では療法学が必修なんだよっ。変わってるよねえ~」
「それでマッサージとはな。どういうマッサージなんだ?」
「それはもう~、こう? ん~、私もまだ一年だから分かんない」
「そうか……それにしても、理事長は何を考えているんだか……」
 ホームルームが終わるや、クラスの女子が祭祀に集まる。やはり、男の存在が珍しく映るのだろう、慣れない異性に緊張しながらも積極的に声を掛けてくる。声を掛けられない女子も、遠目から祭祀をチラチラと窺って関心は尽きないようだった。
 学級委員長の桧皮聡美と話す内に、祭祀は漸くとマッサージ技能講習の科目を知る。正美の権力に与かって不正に就任した為に、黒百合女学園の情報を殆ど知らないのだ。聡美に依れば、黒百合女学園には特殊な授業がいくつかあり、療法学を名乗るマッサージも、その一つだった。
「他にも華道やら……なんだ、この『庭仕事』ってのは?」
 よく見ると、黒百合女学園には療法学に留まらず、他にも一般には無い珍しい科目が盛り込まれており、これには祭祀も驚きを隠せない。興味を示すと、すぐさま理事長の元へと駆け込んだ。
「ああ、遂に知ってしまったのですね」
「こんなのが有るなんて驚きですよ。理事長の案ですか!?」
「いえ、創立から何十年と存在する伝統の講習のようですよ」
「華道や弦楽器なら頷けるけど、マッサージは突き抜け過ぎでしょ」
「そうなのですか? なにぶん、私も黒百合で育ったものですので……」
「とやかく言うのは後にして、この度は理事長様にお願いがあります」
「マッサージの講師を務めたいと仰るのでしょうか?」
「是非に」
「はぁ……」
 子供のように燥ぐ祭祀に、正美が呆れて頭に手をやる。溜息まで吐いて見せるも、祭祀が詰めかけて来ることを、正美は想定していたようだ。
 既に、正美は祭祀の為にと、講師を交代する手筈を整えていた。
「しかし、解せませんね」
「ん、なにがですか?」
「祭祀様の持つアプリなら、どんなことも可能にする力がありますよね? 別に、わざわざマッサージ講師にならずとも、もっと直接的に、それこそ好きなように女学生と興じられるのではありませんか?」
「自分で舞台を用意するより、こう偶然に起こる方が興奮し易いんです」
「私に頼む時点で偶然もなにも。いえ、では講師の変更をしておきます」
「嬉しいです。なんとお礼を言ったら良いでしょうか」
「感謝しているなら、いますぐ私とエッチして下さい……」
「いや、一時限目から授業があるので。今度に必ず埋め合わせします」
「約束ですよ?」
「はい」
 正美に軽くキスをして部屋を出ようとする。と、ドアノブに触れた所で祭祀が正美へと振り返る。正美の不安を解消する為だった。
「女子を食い荒らしたいだけなら、わざわざ教師になんてなりませんよ」
「えっ!?」
「このアプリは本当に万能です。好きなように精神操作が出来るのだから。俺がその気なら、一々正美を取り込んだりはしません。邪魔者は排除して、ただ只管に女学生を好いようにコントロールしていました」
「…………」
「暫くは、貴女の懸念するようなことには成らないと思います」
「あ、ありがとうございますっ!!」
 正美の不安とは、祭祀による女学園の混沌化だ。
 催○アプリの効力を唯一知る正美は、いつ祭祀が性欲を暴走させるのか、気が気では無かったらしい。身も心も祭祀に授けた正美であるも、やはり理事長の立場としては、女学園の平穏を望んでいた。
 そんな気遣いに感動した正美が、改めて祭祀へと抱き着いてくる。
「ああ、大好きです。夫よりも、誰よりも……」
「ちょっと、授業が始まりますってば……」
「だって嬉しいんですもの。やはり、私の主人は貴方だけです」
「暫くは、って言ったでしょ。いつかは、女学園を支配する予定ですよ」
「でも、貴方になら構いません。一生貴方に付いて行きます……」
「……お人好しめ」
 真の主人が誰かを再認識すると、正美がボロボロと涙を零して止まない。股は濡れて全身が火照っている。授業だからと言うも、そんな様子に胸が躍ってしまい、祭祀は溜息交じりに正美を抱き寄せるのだった。

 三

「今日は此処までにしておこう。みんな、お疲れさま」
「ありがとうございましたーっ」
「……ふう」
 チャイムと同時に、無事に一時間目が終了した。
 祭祀の担当は数学である。初めての教鞭にしては上出来だと自分で誇り、実際に女学生達も、祭祀の授業に不満な様子は一切も無かった。
(俺には教師の才能も有るようだな)
 催○アプリを使い、女学生を我が物とする目的で現れた祭祀だが、ただ食い散らかすだけでは面白味に欠けると言い、学を活かした教鞭も、至極真っ当な内容だった。
 祭祀にとって快感は身体だけではない。心も重要だと説く。相手の心を無下にして野獣の如く喰い続けては、すぐに食傷を起こすだろうと冷静に判断している。叶うなら、一人ひとりと時間を掛けて交流を深めたい……祭祀の神髄は、そんなロマンチストだった。
 だから、正美もゾッコンになるのだろう。口では冷たいものの、熟れた理事長に陶酔されるのも存外に心地よく、暫くは催○による無茶も控えてやろう……と、祭祀は考え始めていた。
(それに、まだ女学生の初々しい視線を堪能したいからな)
 教鞭を振るう授業中は、終始女子の視線を浴び続けていた。
 異性という珍しい存在に関心を寄せる女子、祭祀という端整な男に早速心を奪われて恋に馳せる女子や、自慰のネタにしたいと恍惚する女子など、様々な視線が堪らなかった。
 催○アプリを使えば、この心地を恐らくは味わえなくなってしまう……時間はたっぷりあると言い、暫くは女学園でたった一人の男という立場を素の儘で堪能したい一心だった。
「センセ❤」
「おっと、桧皮……どうした?」
 授業が終わると同時に、祭祀の担当する学級の委員長こと、桧皮聡美が話し掛けてくる。異性に慣れない女ばかりの学園でも、唯一と言って良い物怖じしないタイプである。好奇心は群を抜いており、寧ろ授業の間では祭祀に色目を送る程だった。
「あははっ、センセとお話しがしたくって♪」
「…………」
「センセのこと、色々聞きたいなぁ。ね、コッチ来てみんなと話そ?」
「悪いけど、忙しいから無理だ。次の授業の準備があるからな」
「え~、じゃあ、せめて一緒に職員室まで行こっ」
「まあ、それなら」
「やったー、センセは優しいね♪」
「…………」
「センセって凄いモテるんだね。私の友達の中でも評判最高だよ?」
「ほほお、それは素直に嬉しいな」
「みんなスカートは膝丈だったのに……センセが来た初日から10㎝は折るようになっちゃってさっ。まあ、私もちょっと折ったけどね。あははっ」
「ゴクッ……異性を気にする年頃ならな」
 聡美が無遠慮に祭祀へと寄り添う。ふわりと漂う少女の匂いが鼻を擽る。今時のミディアムヘアーに、パッと咲いたような満面の笑み、成長途中の胸の膨らみ、太腿を覗く絶対領域など、溢れる扇情が祭祀を大いに煽っている。祭祀が思わず喉を鳴らす程の逸材だった。
「ウチの母も、ず~っとセンセの話ばかりだなぁ」
「そうなのか」
「お母さんもスカート短くして、化粧もピシッとするようになったの!!」
「お、おい、声がデカいぞ」
 そして何より、桧皮聡美は理事長・正美の子女だった。
 職員室までの道すがら、遠巻きに祭祀を覗く女子とは対照的に、堂々とくっ付いてくる聡美である。正美とは異なり、異性に苦手意識もなく……それどころか、祭祀が気圧されるくらいグイグイと詰め寄っていた。
「ねえ、センセってお母さんに何かしたの?」
「なんもないよ」
「嘘だよね? ねえ、センセ。気になるなぁ~。良かったら、二人きりで話さない?」
「……分かったよ。じゃあ、ちょっと付いてきてくれ」
 ずばり核心を突く聡美に、祭祀が僅かに動揺する。正美の変わりようは、明らかに不自然である。実際に、何人もの教師が祭祀と正美の仲を疑っている。恐らくは私生活でも、気の緩んだ様子を見せていることだろう……そう思えば、聡美に確信があるのも必然だった。

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