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シロフミ 2020/08/05 21:49

シローとユイの話・その5

 ドアの隙間から吹き込んでくる冷たい風が、急速に部屋の中に満ちていた熱気を拡散させてゆく。
 ぐっしょりと湿ったベッドの上、産まれたままの姿となって、シローの太く大きな肉槍に一番大事なところを貫かれたまま、ユイは呆然と姉の姿を見上げていた。
「あ……お、おねえちゃん……」
 突然のことに動揺するユイだが、混乱した思考は真っ白に頭の中を塗りつぶし、他に言葉を紡げない。
 アレだけの射精を終えてなお、シローの生殖器は大きく膨らんだままで、いまもなおユイの胎内にぎっしりと食い込んでいるため、動くことすらかなわなかった。
 その通りだ。シローの生殖器は人間のそれと違い、軟骨によってできている。事が終わってもすぐにしぼむことはない。それはユイも実体験を持ってしっかり学んでいた。
 動揺したのはユイだけではない。シローが慌ててユイの上から飛び降りようとして、身体を逆に向ける。とたん、ユイの膣の中でシローのペニスは繋がったままぐりんっ、とひっくり返った。
「ひぁああああッッ!!」
 ぶじゅっ、と白濁と蜜の混じり合った粘液を吹き上げ、イったばかりで敏感なユイの身体が跳ねる。
 同時に、ずくん、と胎内が重く沈む。
 急速に冷えこむおなかの奥。さっきまであれほど切なく疼き、びくびくと動き続けていたおなかが、ぴたりと動きを止め、まるで何もなかったかのように鎮まってゆく。
(え……?)
 突然の違和感に、ユイはぞっとする。
 同時に、冷たい何かを背骨に差し込まれたような、痛みのような鈍い感覚。とても快感とは呼べない、重苦しい圧迫感。
「――っ」
「あ、ま、待って!! 待って、おねえちゃんっ!!」
 だっ、と姉が走りだすのを見て、わけもなくユイの背筋に悪寒が走った。とんでもなく嫌な予感が、お腹の奥にずんっ、とのしかかる。
 おなかの中に満ちていた希望が、しぼみ、崩れ、粉々になってゆくような、空恐ろしいほどの虚無感。
 ユイは姉を呼びとめようと必死に身体を起こした。しかしいまだにシローと繋がったままでは、思うように立ち上がることもできない。逆にシローの生殖器にごつんっ、とお腹の奥を突き上げられ、頭の奥がえも言われぬ法悦に真っ白に塗りつぶされる。
 キモチだけが急速に冷えてゆく中で、びくびくと蠢き快感を紡ぐ生殖器が、恐ろしいほどに寒々しい。
「ふあ……っ、あ! …っ」
 勝手に上がる高い声だけが、ユイの鋭い快感の余韻を知らせている。
 ぢゅぶり、と動いたシローの肉槍の隙間から、どろどろと混じり合った赤と白とそれ以外の半透明の液体が、激しく吹き出してシーツの上にべちゃべちゃとこぼれてゆく。飼い犬と繋がったまま、なんどもなんども絶頂を繰り返すユイを。
 たったひとりの、血を分けた妹の、そんな姿を、足を止めた姉は肩越しに振り返り――
 とてもとても、醜いものを見たかのような、そんな表情で睨んで、まっすぐに駆け出していった。



 ◆ ◆ ◆



 それから二週間が経って。
 クリスマスも、年末の大掃除も、お正月も、いつもなら笑いながら過ごしていたであろう期間は、まったく味気ないまま過ぎ去って。
 ユイは、じっと自分の部屋の中にいた。
 ベッドもシーツも、見知らぬものに変えられている。壁紙も張り返られ、知らないハーブの匂いまでしていた。いつのまにか他の人の部屋になってしまったかのような自分の部屋の中で、ユイはごろん、と寝転がって知らない天井を眺める。
 あの、クリスマスイヴの晩。ユイが我に戻った時、シローはもう家のどこを探してもいなくなっていた。
 不思議に思ったユイが、シローはどこにいるの、とお母さんに聞いたら、わけもなくぶたれた。
 ユイはその夜すぐに病院に連れていかれ、次の日の朝からさらに大きな病院に移されて、いろいろな検査をされた。あんまり長い間座らされたり立たされたりお話を聞かれたりで、とちゅう何度か気持ち悪くなって吐いてしまった。お医者さんも慌ててユイを病室に戻したりした。
 退院したころにはもう冬休みもおしまい近くで、けっきょくそれからもユイはずっと学校を休まされることになっている。
 その一方で、お父さんとお母さんは気持ち悪いくらいユイに優しくなっていた。
 あの日、気が狂ったみたいに泣き叫んで暴れるお母さんと、もっと激しく泣きながら怒ったお父さんは、庭にあったシローの家をすぐに壊して、ゴミに出してしまった。シローの首輪も散歩用のロープも、ごはんもトイレもなにもかも、あっという間になくなって。ユイの家からはシローのいた痕跡は一つ残らず消えてしまった。
 ユイのおなかは、まるで何にもなかったかのようにぺしゃんこになっていた。あんなに大きくなっていた下腹部の膨らみは、触っても何も感じられない。
 いくら呼びかけても、いつまで経っても、赤ちゃんは答えてくれなかった。
「ねえ、お母さん」
 ユイはそうして、ある日の晩、眠る前に、部屋に来たお母さんに聞いてみた。
「あたしの赤ちゃん、どこにいっちゃったの?」
 母親はとてもとても辛そうな顔をしてユイを抱き締め、そのまま泣いた。



 ◆ ◆ ◆



「失礼ながら、お嬢さんに初潮は……?」
「いえ……家内からは聞いていません。恐らくは、まだ……」
「そうですか。では――おそらく、想像妊娠……というのが一番近いのではないかと」
「どういう、ことですか?」
「ここから先は、非常に……ご両親にはお話しし辛いことになります。申しわけないのですが、どうか冷静になってお聞きください」
「……はい。どうにか……努力してみます」
「お嬢さんが、どうしてあのような行為に興味を持たれたのかはわかりません。最近の子供は早熟ですので、どうしてもそのような知識は、昔よりも得やすくなっているでしょう。……統計的にも、ああした行為を、不完全ながら知っている子供は多いのが現実です」
「興味って……!! そんな!! 娘は被害者ですよ!? あの、あのケダモノに、無理矢理慰みものにされだんだっ!!」
「……興奮なさらずに。お願いします。ですが、そうした子供の理解では、どうしても知識に誤りがある。まだ性的に無知なお嬢さんは、おそらく――その、犬との交わりで、自分が妊娠した、と思いこんだのではないかと考えられます。
 今の子供ならば、セックスをすれば……それが具体的にどのような行いかは知らずとも、子供ができるというのは比較的幼いうちからも漠然とは理解していることです。しかしその一方で、犬と人間の間に赤ちゃんが産まれるのかということを、科学的にきちんと理解するのは難しい。だから――お嬢さんは、犬に犯された、という衝撃的な事実を受け止め、自分を守るために、そう想いこもうとしたのではないでしょうか」
「守るため……? そんな!! 何故ですか!? あんな、一方的に、……っ、傷つけっ、られた……ユイが、どうして、どうしてそんな風に!!」
「……あくまでこう考えられる、という推測でしかありませんが……たとえば、自分がしたことは悪いことではないのだと。赤ちゃんを作るための大切なことなのだと、そう思い込むことでショックから大切な心を守るという働きが、人の心にはあるのです。事実、お嬢さんはあれを苦痛だとは感じていなかったようです。……申し上げにくいことではありますが、これは確かな事実です」
「…………」
「さすがに、口止めされているというようなことは考えられませんからね……失礼。言葉が過ぎました。お詫びします
 ……大変に言いづらいことですが、お嬢さんのおなかは……その、とてもまともとは言えない状況まで傷ついていました。幸いなことに治療が可能な範囲ではありましたが、当然です。成熟した女性ならまだしも、お嬢さんのような娘さんが、……あの、あんな、暴力的な行為に耐えられるわけがない。……想像を絶する苦痛だったでしょう。それに耐えるためには、そうして心を騙し、守るしかなかったのでしょう――」
「……っ、なんてことだ……そんな……ユイ……っ」



 ◆ ◆ ◆



「ねえ、おねえちゃん」
「……なに?」
 寮生活の姉は、年明けとともに戻らなければならない。冬休み最後の日、なにかにせかされるかのように荷物をまとめていた姉の部屋を訪れ、ユイは聞いてみた。
「シローのこと、好きじゃなかったの?」
 いろいろ分からないことは多かったけれど、なによりもそれが一番、ユイには不思議で仕方なかったのだ。だって、あんなに気持ちよさそうに、シローとえっちをしていた姉が、あんなにもシローを憎んだことが。シローの居場所を無茶苦茶にしてしまった両親を、姉がまったく止めようとしなかったことが。
 どうしても信じられなかった。
「…………ユイ、あんたはまだ分からないかもしれないけど、あれってすっごくイケナイことなんだよ。……あんな風に、その、……犬……と、えっちするなんて」
「……なんで? だって、お姉ちゃん、あんなに――」
「やめて!! なんでも何もないの!! だ、だって、おかしいわよ!! どうして、人間と、犬なんかがっ……あんな、あんなことっ……」
 まるで、あの時の自分のしていたことを忘れたみたいに。姉は嫌悪感を剥き出しにしてシローを蔑んでいた。
 やっぱりよく分からなかったので、ユイはそのまま部屋に戻って、ベッドに潜り込んだ。たぶんもう姉は、シローのことを好きだった頃のことを忘れてしまったんだろうと判断したのだ。
「……そのうち、あんたにもわかるから。だから……これでいいの」
 ドアを閉めるときにそう呟いた姉は、どこか泣いているようだった。



 ◆ ◆ ◆



 ユイの家の人々は、口に出すのもおぞましい“あのこと”をすっかり夢の中のこととして片付けたがっていた。そしてそれは、事実成功していた。
 さすがに、両親がげっそりと疲弊して、落ち込んだ姿を前にすればユイもあれからシローのことを話題にすることはなかったし、すっかり病気がちになってしまった娘を両親も心の底から心配していたため、家では誰もが神経質すぎるほどにこの話題を避けていた。
 ひとつ変わったことがあるとすれば、両親が揃ってとんでもないほどの犬嫌いになったことだろう。ペットショップで売っているようなミニチュアダックスフントにさえ、滑稽なほどの嫌悪感を示し、ユイが近寄ろうものなら鬼のような形相になってそこから引き離そうとした。
 どうやら、またユイがあのときのようなことになるのを恐れてのことらしい。ユイには不思議でならない。シローと他の犬は違うのだ。たとえば、道を歩いている人や、学校のクラスメイト、その誰も彼もを好きになったり、結婚したいと思ったりしないのと同じ。
 ユイにとっての大切な相手はシローだけなのだ。
 そうしていつしか季節は流れ、ユイは学校を休んだまま春休みを迎えようとしていた。両親はこのままユイを、次の学年になってから学校に行かせるつもりだと言っている。ちょうどいい区切りだから、という言い訳で。
 学校のクラスメイトと会えないのはユイも寂しかったけれど、お見舞いの手紙を読み返して、自分が忘れられていないことを確認できれば、それもそれでいいかな、と思うようになっていた。
 そして、いつしかユイの家にも、昔のような穏やかな毎日が続くようになり、寒かった冬もゆっくりと終わって、春の足音が聞こえ始めている。
 誰も彼もが、すっかり、あの呪わしい冬に起きていた何もかもを忘れようとしていた。


 そう。
 ――たったひとり、当のユイだけを除いて。



 ◆ ◆ ◆



「うぇ……キモチ悪い……」
 トイレから戻るなり、ユイは呻いてベッドの上に寝転がった。
 テーブルの上には食べかけのチーズケーキと、転がったフォーク。
 今日は珍しくお父さんもお母さんも家にいない。一人で勉強をするのにも飽きてしまったユイは、ドリルを放り投げてカーペットに寝転がり、少し早い3時のおやつを始めていた。
「ぅうーーっ……」
 頬を膨らませてベッドの上、気分が落ち着くのを待つ。せっかくとっておきのおやつを食べようとしていたのに、すっかり食欲も失せてしまった。慣れたせいでいくらか余裕はできたものの、時折やってくる吐き気はいまも辛い。
 今も時々、急にキモチ悪くなって吐いてしまったり、急におなかがいっぱいになって全然ごはんが食べられなかったり、逆にすごくおなかがすいてしまったり、ユイの食事は不規則だ。お医者さんは、これも精神的なものだろう、ともっともらしいことを言っていたけれど。
 ユイにはもっとはっきりと、その原因が分かっている。
「……もぅ、元気だなぁ……あたし、こんなに困ってるのにっ」
 おなかの中を蹴飛ばす赤ちゃんに口を尖らせ、ユイはやれやれと頭を掻く。
 一度は治まったはずの悪阻は、1月のおしまいの頃からぶりかえしていた。たしか、近所のお姉さんに聞いた時、こういうのは3ヶ月もするとおさまるはずだというのを覚えていたのだが、どういうわけかいまも続いている。
 無論のこと、ユイに、犬の受胎期間が人間と違って、およそ50~70日だという知識はない。もっともそれを当てはめても、犬と人間の遺伝子が結合した子供の受胎など推し量れるわけもないのだが。
 キモチ悪いのは嫌だったが、けれどそれも愛しいシローの子供が順調に育っている証と思えば、自然ユイの胸は高鳴る。
(赤ちゃん、元気になったんだ……)
 確かにしっかりと感じられる、おなかのなかの小さな生命の鼓動に、ユイは心の底から安堵する。
 一度はぺしゃんこになっってしまったユイのおなかは、ふたたびまあるく大きく膨らんでいた。ユイはそれを、もう一度赤ちゃんが元気になった証拠だと思っていたが、それは正確ではない。
 あの時、あのクリスマスの日までにユイのおなかに育っていたものがなんなのかは、結局、分からない。医者の言うような想像妊娠であったのかもしれない。
 しかし、あの夜――シローとの最後の交わりで、再び奇蹟は起きた。
 本来、そのまま腐り死に、育つことなどないままに排出されるはずの受精卵は、最善の準備を施され、整えられた柔らかな子宮粘膜にしっかりと包まれ、十月十日を過ごすベッドの上へと着床している。
 結合せぬ遺伝子、適合せぬ因子。まったく別の種族同士が結び付いた生命の卵は、停止することなく激しく蠢き、脈動し、力強く鼓動を打ち鳴らす。
 やがては脊椎をつくり、心臓を産み、手足をともなって力強く動くことになるだろう。
 極限ともいえる二人の愛の営みは、シローとユイ、番いとなった二人の願いを叶え、
 少女の胎の中に、確かな生命を芽生えさせていた。
 これに気付かなかった大人達を責めるのは酷だろう。犬と人間の受胎など常識では考えられないことだし、なによりもユイに月経があり、きちんとおなかに赤ちゃんを宿すことができる身体であることを知っている者は誰一人としていない。一番最初の排卵が起きてから今まで、ずっと少女の子宮は小さな生命に埋められていて、ユイは一度も月経というものを経験していないのだ。
「シロー……っ」
 ユイは、すぐ隣の『シロー』を抱き締める。
 いま、ユイの部屋の真ん中には、真っ白い毛並みのぬいぐるみが置かれている。なにをするにもユイはこのぬいぐるみ、『シロー』といっしょだった。
 顔をしかめる両親に駄々をこね、1ヶ月おくれのクリスマスプレゼントとして買ってもらった犬のぬいぐるみ。あんな目に遭わされた娘が、今も変わらずその張本人の獣を慕っている事実をどう受けとめればいいのか、両親は激しく迷いながらも、ユイの嬉しそうな顔で無理矢理自分達を安心させることにした。
 文字通り『犬に噛まれた』として……ユイにはまだ愛も恋も、セックスも区別がつかないのだと――幼い心を勝手に決めつけ、納得することにしたのだ。
「ねえ、シロー……」
 どこかに行ってしまった愛しいパパに、そっと囁きかけるようにおなかをさする。
 幼い容貌には、不似合いな慈母の笑み。
 ユイのおなかの奥では、なにか得体の知れないものが蠢き、きしきしと身体を造り替えているような錯覚すらあった。しかしそれもおなかに子を宿した母の大きな歓びのひとつである。
 ユイにはもう不安はなかった。あんなにいっぱい自分のことを愛してくれたシローと、自分の赤ちゃんが、ちゃんと元気に産まれてこないはずがないのだ。
「シロー、ちゃんと赤ちゃん、元気だよ……」
 いまはその胎動もはっきり感じられる。お腹の奥でびくびくと蠢く感触を、ユイはしっかりと感じ取っていた。
 するりと下着を膝まで下ろし、熱く火照った股間に指を伸ばす。
 トロけた蜜がたっぷりと分泌されたそこは、すっかりほぐれて淡い桃色を覗かせ、愛しい相手の愛撫を待ちわびている。ここにはいないシローの代わりに、ユイは自分の指先でそこを慰める。
「あは……赤ちゃん、またシローのミルク、いっぱい飲みたいって言ってる……」
 くちくちと小さな秘裂をいじる指が、ぷっくらと膨らんだクリトリスをつつき、伸びた小指が、蜜にまみれた後ろの孔を刺激する。小さなすぼまりはゆっくりと裏返り、ユイの小指の先端が埋まるほどにとろとろに蕩けていた。
 これも、シローが丹念に舐めてくれたときに覚えた刺激だ。始めはおしっこの孔のあたりだけがじんじんとするのだが、シローがずっとそれを続けていると、おしりの孔もお腹の奥も、全部がぼうっと熱くなり、とろとろに溶けてゆく。それでいてじんじんと響く甘い刺激はさらに強まってゆくのだ。
「ふぁ……っ」
 軽い絶頂が少女の身体をふわりと持ち上げる。折り重なった柔襞の置くから、わずかに色のついた蜜がこぽりと溢れ吹いた。陶酔の中、ユイはそれを再び秘裂に塗り伸ばし、拙い自慰を繰り返してゆく。自分でそこをいじる経験はまだまだユイには浅く、甘い感覚はまだまだもどかしくも切ない。
「ぁ、ぁんっ……」
 ちゅぷ、ちゅぷ、と揃えた二本指が小さな入り口をくぐり抜け、細く狭い膣口を擦る。よじれ合わさった粘膜の柔らかな襞を絡め、くちくちと拙い手つきでその奥を掻き回す。
 しかし、こんな指なんかでは、とてもじゃないだ物足りない。胎奥に感じる空虚な感覚がもどかしかった。
「しろぉ……っ」
 切なげに喘ぐ少女の声が、熱の篭った部屋の中に消えてゆく。
 愛しい相手の、焼けるように熱い生殖器で、遮二無二胎内を掻き回して、滾るような白濁でいっぱいにして欲しい。そうしてもらわなければ身体の奥にポッカリと開いた空虚な感覚は埋まらない事を、ユイは本能的に感じ取っている。
 そうしながらも、ユイのおなかはゆっくりと育ち、いつしか臨月に達し、
 運命の時、出産の時が刻一刻と迫っていた。




 (続)

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シロフミ 2020/08/05 21:48

シローとユイの話・その4

「ふぅ……」
 ぼうっと熱っぽい頭を、枕のうえにころん、と転がす。
 12月の寒さですっかり冷えたベッドのなかで、頭まで毛布を被って、ぎゅっと身体を丸めながら、ユイは溜息をつく。
 おなかの中で、とく、とく、と息づく赤ちゃんの鼓動は、日に日にはっきりと感じられるようになっていた。自分が大事な大事な赤ちゃんを育てている、ということに覚える歓びは大きく、毎日がとても新鮮だ。
 お母さんになるという事は、こんなにも素晴らしいのだと知り――ユイは驚きでいっぱいだった。
 けれど、不満もある。
 おなかの奥が熱っぽく疼く。脚の付け根は今日もじんっと鈍く痺れ、甘い刺激を求めて少しずつ蜜を分泌している。少しずつ大きくなったおなかに合わせるように、ユイの身体も変化し続けている。
「シロー……っ」
 胸の奥が切ない。愛しい相手の名前を呼ぶだけで、きゅんと締め付けられるように、小さな胸が苦しかった。
 シローはマイが帰ってきてから、いくらユイが誘っても応じてはくれなくなっていた。いつも一緒にいてくれはするものの、それ以上のことはまるでしてくれない。誰も見ていないから、とキスをねだっても、まるで興味がないようにぷいとそっぽを向いてどこかに行ってしまう。
(……シロー、どうしちゃったんだろ……)
 今朝の散歩は姉と一緒だった。昨日も、その前も。そして夕方には、ユイがちょっと気分が悪くなり、ベッドでうとうととしていた隙に、マイが勝手にシローを散歩に連れて行ってしまったのだ。
 ショックだった。シローなら、ユイが行くまでちゃんと待っていてくれると思っていたのに。姉はユイの落胆を知ってごめんなさいと頭を下げてくれたけれど、そんな問題じゃなかったのだ。
(シローは、あたしのこと……嫌いになっちゃったのかな……)
 そう考えると、おなかの奥にしくんっ、と鈍い痛みのようなものが沸き起こる。まるで冷たい鉄を飲みこんだみたいに、ママになろうとしている身体がしくしくと軋むのだ。少女にはまだ理解できない、嫉妬という感情だった。
 急に訪れた姉――それは、かつてシローと愛を交わしていた相手だ。幼いながらもユイは、シローを奪われることを警戒している。
「っ……ごめん、ごめんね……」
 しらず、おなかを押さえていた手のひらに力が篭っていた。パジャマが引っ張られる感触でユイははっと我に帰り、慌てておなかから手を離し、できるだけ優しく、そっと撫でさする。
 この時期の胎児はとても繊細で、母親の不安を敏感に嗅ぎ取って反応する。もっとも安静にしなければならないときだった。
 早まる赤ちゃんの鼓動から、まだ治まらない動揺を感じ、ユイはそっと語りかける。
「だいじょうぶ……なんでもないよ。いい子だから……ね……?」
 小さな身体で精一杯、ユイは母親であろうとしていた。訳の分からない不安と焦燥にに押し潰されそうになりながら、賢明におなかの赤ちゃんのことを思いやる。誰もが見知らぬなかで、赤ちゃんのことを大切に思ってあげられるのはユイだけなのだから。
 そうして一人、小さな胸を痛めているうちに、次第に一つの感情が形をとりはじめてゆく。深い混沌とした思いのなかから、次第に輪郭をあらわにしてきたのは――はっきりとした姉への拒絶感。
「――やっぱり、お姉ちゃんが悪いんだよ……」
 ぎゅっと枕をつかみ、うつ伏せになって。おなかを庇いながら、ユイはちいさく、拙い呪詛の言葉を口にする。
「ずるいよ。お姉ちゃん……いまさら帰ってきて、シローのこと……取っちゃうなんて……」
(お姉ちゃん、シローの赤ちゃん産んであげられないのに。あたしだけなのに)
 とく、とく、と早まる鼓動。赤ちゃんに合わせるように、いつしかユイの胸も高鳴っていた。
 ユイの脳裏を、シローと番っていた姉の姿がかすめてゆく。
 何度も何度も声を上げて、シローの精液を受けとめていた――姉の姿を。
(違う……もんっ)
 大好きなシローに、大切なシローに、一番すてきなことをしてあげられるのは、自分だけなんだ――そんな幼くも、どろどろとした感情が少女の胸の中に渦巻く。
 シローの事は、嫌いじゃない。少しも嫌いにはなっていない。ユイは何度も何度も、自分の心に問いかけてその答えを確認した。
 シローは、ユイのおなかのなかの赤ちゃんのお父さんだ。シローがユイを大切に思ってくれているのも間違いない。ユイは乙女心に、それをはっきりと確信していた。シローが父親として、その子供を孕んだ自分を思いやってくれるのを感じ取っていた。
 確かに、孕んだ雌相手に雄が欲情することはない。それでもユイがえっちしたい、と訴えれば、シローはしっかり応じてくれていたのだ。
 それも、これも。
 すべて――マイの帰宅から、狂ってしまった。
「お姉ちゃんがいるからいけないんだ……」
 ぼそっとつぶやいて、ユイは枕に顔をうずめる。
 ユイとシローが関係を持ってからまだ二月あまり。一年半もの間シローを独占していた姉に、シローも心を揺り動かされているのだろうか。そう考えるだけで、なんだか心の中をもやもやしたものがいっぱいになってゆく。
 シローと愛しあっている時とはまるで違う、嫌な気分だった。




 クリスマスがやってくる。今年のユイは去年みたいにプレゼントをあれもこれも欲しいとねだってわがままを言うことはなかった。それどころか、自分には何も要らないと言いだしたのだ。不思議がる両親に、ユイはシローの新しい家をねだった。シローがまだ子犬の頃から住んでいた庭の犬小屋は、もうすっかり古びていて、わんぱくざかりのシローが噛みついたり蹴飛ばしたり引っ掻いたりして、すっかりボロボロなのだった。
 『あたしより、シローにプレゼントあげてよ!!』と強弁するユイにすっかり困惑しながら、両親は年明けまでにシローの犬小屋を新しくすることを約束し、ユイへのプレゼントは欲しいものができるまで延期、ということにした。
「ふぅ……」
 パーティの余韻に浸りながら、ベッドの上に腰を下ろす。
 両親はまだリビングで、突然訊ねてきた大学時代の友人と楽しそうに騒いでいる。肩を叩き笑い合う父親や、まるでクラスメイトとユイがするように楽しそうにお喋りする母親は、ユイの知っている両親とはまるで違う顔をしていた。
 姉は、友達と別にパーティの予定があるといって、午後から家を開けていた。父親はなんどもなんども門限を守るように繰り返していたけれど、たぶんその時の『わかってる』という返事はウソであると、ユイも気付いていた。
「…………はぁ」
 久々に訪れた、一人の時間。
 ユイはここ何日かそうしてきたように、ベッドの上に横になり、そっとおなかを撫でる。そろそろ服の上からでも感じられるようになった、ふっくらとしたおなか。お風呂で裸になってみると、ちょうどごはんを食べ過ぎた時みたいにぽこん、となだらかに盛り上がっている。おヘソを持ち上げるような格好で膨らんだおなかの中、赤ちゃんを育てる揺り篭のなかに、シローとユイの赤ちゃんがすくすくと育っている。最近ではスカートを選ばないといけなくなってきていた。
 ほら見なさい、やっぱり太ったじゃない、と笑う姉の顔がユイの頭を掠める。
(ふーんだ。そんなんじゃないんだからねっ!!)
 もっともっと、とっても大切でとても大事で、なによりも素敵な――今まさに芽吹き、育ち続ける命が、ユイのおなかの中にいるのだ。
 ユイには、確かにプレゼントなんか不要だった。だって、ユイの一番欲しいものはもうちゃんとユイのおなかの中で、元気に大きくなっている。
(シローと、あたしの赤ちゃん……)
 それは、クリスマスプレゼントに子供が願うには微笑ましいものだったかもしれない。妹や弟をねだるのと同じように、まだ性の何たるかも知らない子供が、母親を真似して赤ちゃんを欲しがる事は決して不自然なことではない。
 ――それが、正真証明の、その子の血を受け継いだ子供でなければ、だが。
 大好きなシローの赤ちゃんと一緒に迎えるクリスマス。最近はすっかりシローと遊ぶこともできなくなったユイにとって、なによりも、とてもとても大切な出来事だった。
 きっと、それだけでも十分だったのだ。

 ぎぃ……

 わずかに軋むドアの音に、ユイはまどろんでいた意識を浮上させる。
 冬のこの季節、ドアは乾燥して静かには開かない。なんだろう、とゆっくりベッドの上に身体を起こそうとしたユイに、それはがばっ、と飛び付いてきた。
 それは無論のこと、サンタクロースなどではなく、プレゼントを渡すタイミングを見るため、息を潜めてやってきた父親でもなく。
 雪のように真っ白な、大きな大きな身体。
「ふぁわ!?」
 いきなりの事に驚いて頓狂な声をあげるユイから、寝惚けまなこが一瞬で吹き飛ぶ。
 真っ白な毛皮を振るい、シローははっはっ息を荒げ、尻尾を振って、ベッドの上に飛び乗っていた。あっと思う間もなく、ユイはその大きな身体にのしかかられ、組み伏せられてしまう。
「し、しろー……!?」

 あぉんっ!!

 とても、元気の良い返事。
 あまりの事にユイは混乱し、その名を呼ぶことしかできない。だって確か、今日はお客さんが来るから、とシローはできたばかりの新しい家にいるようにと、庭に締め出されていたはずだ。
 けれど、丸い目をいとおしげに細め、ぐりぐりと濡れた鼻先を押し付けてくるふかふかの白い毛皮は、まちがうことなくシローのもの。
「し、シロー……来てくれたんだ……っ」
 ユイの心に、ぼっ、と熱い火が灯る。大好きな大好きな相手が、クリスマスにやってきてくれた。それだけでもう、空っぽに思えていた胸の中がいっぱいになるようだ。
 いっぱいの元気をアピールするように、シローは大きな舌でぺろぺろとユイの顔を舐め始める。
「ぁは…く、くすぐったいってばぁ……っ」
 答えながらもユイも抗わない。シローの逞しい肩にそっと腕を絡め、ぎゅっと顔を寄せた。元気良く吠えるシローの声が、ユイの心を解きほぐしてゆく。
(シロー……っ)
 切ない胸が、とくとくと早まる。愛しくてたまらない思いが溢れ出す。とにかくなんでも構わない。シローにこの気持ちを伝えたかった。
 クリスマスに、恋人と過ごす――
 その言葉に、もうひとつ特別な意味があることを、ユイは始めて知ったのだ。
「あ……」
 不意に、その感触に気付いて、ユイは顔を赤らめる。
 こつこつと太腿をつつく固い感触。その先をべっとりと濡らす粘液。けれど決して不快ではない。むしろとても愛しく懐かしい匂い。
 ユイにじゃれつくシローの下半身からは、すでにぎんぎんと滾った赤黒い生殖器が突き出していた。この一週間あまりお預けを食わされたシローのそれは、これまでユイが見たこともないくらい大きく、凶悪な形をしている。剥き出しになっている肉槍の先端を見ているだけで、おなかの奥を犯されているような錯覚すら覚えてしまうほどだ。
 すっかり準備万端のパートナーに、ユイは嬉しくなって抱き付いた。
「シロー、ずっと、我慢してたの……?」
 わぉんっ!!
 力強く、吠えて答えるパートナー。ユイの下腹部に、たっぷりと子種の詰まった生殖器が押し当てられる。シローはもう興奮していて、軽く腰を振り始めている。こんなときまでまっすぐ正直なシローに、ユイも恥ずかしさを堪えて囁く。
「そ、そうなんだ……。あ、あたしも……シローと、えっち……したかった……よ?」




「えへ……もうこんなにおっきくなっちゃったの……すごいよね、シローの赤ちゃん、とっても元気だよ……?」
 パジャマを脱いで、ふっくらと膨らんだおなかをそっと撫で、ユイはシローに報告する。おなかだけではなくて、ユイの胸も一回り大きくなっていた。ほの淡い薄ピンクから、鮮やかな桜色へと色づいて尖った胸の先端は、ユイがおなかの中に宿した生命の存在をはっきりと示し続けているようだった。
「ぁは……シロー、くすぐったいよぉ……」
 興味深げに下腹部にぐりぐりと鼻先をおしつけてきたシローの頭をそっと抱え、ユイは胸の奥に溜まった熱い吐息をこぼす。シローのヒゲや白い毛皮が柔らかなユイのおなかをくすぐって、ユイは堪えきれずにくすくすと笑った。
「ぁあっ、シローっ……だめぇ……そこ、舐めちゃ……っ」
 ユイの腕からするりと抜け出して、シローはユイの下半身に鼻先を突っ込んだ。荒い息の隙間から長い舌を伸ばして、ユイの股間を舐め始める。
 動物においては、妊娠した雌は発情することはない。動物にとっての性交は生殖が目的であり、子を孕んだ時点でその役目が終わるからだ。
 しかし、シローは違っていた。人間と交わる方法を知り、その快楽を知ったシローは、愛しい相手の求めに応じるまま、おなかを膨らませたユイに対してはっきりと欲情をしている。
「ふぁあああ……っ、や、やだぁ……そこ、擦れるぅ……っ、くちゅくちゅってぇ…っ」
 たちまちとろけたユイの唇から甘い声が漏れる。
 シローは執拗に舌を動かし、少女の股間をべちゃべちゃと唾液で汚す。手指の代わりに自在に動く犬舌の感触は、人間のそれとはまるで違う。世の女性にはこれが忘れられずに愛犬をセックスのパートナーにする者も多いのだ。
 まして、姉との1年半にも及ぶ行為で仕込まれ、まだ処女だったユイをあっというまに快感の虜にしたシローの舌技だ。たちまちのうちにユイはシローの舌に夢中になった。
 少女の白い肌の奥の奥。新たな生命を孕み、ほっこりと湯気をたてそうにほころんだ小さな秘裂だけでなく、その上の小さな突起やヒクつく尿道口、そして小さな双丘の狭間にある慎ましやかなすぼまりまでもを舐め上げる。
 点ではなく面での快感は、おなかに子を宿してはいてもまだまだ未発達なユイを容易く快感の先端へと押し上げた。
「ぁ、あっ、あ、あーっ!!」
 甲高い声でびくびくと身体を仰け反らせるユイを、さらなる快感の波で押し潰そうと、シローはくるりと体勢を入れ替え、ユイの身体をまたぐように向きを変える。
 すると必然、シローのおなかから生えてびくびくと震える生殖器がユイの目の前にやってくる。
 たらたらと先走りの粘液を滴らせる赤黒いペニスに、ユイは心の底からきゅんと疼く愛しさを感じてしまう。
「シローっ……」
 切なさのまま、ユイは両手に握ってもまだ余るような、大きく長い生殖器を掴み、大きく口を開けて頬張った。熱く滾る肉の塊が、少女の柔頬の中に包まれてぶしゅっと弾け、灼熱の液体を吹き上げる。
「んむっ……すご…っ、シローの、おっきくて……硬い…ちゅぅ…るるっ…… あは、……れるっ…っむっ、ここ、いっぱい……シローのせーえき、詰まってるんだ……」
 自分を孕ませた愛しいパートナーのペニス。それを再び身体の中に感じる歓びに、ユイは夢中になってシローの剛直を舐め上げた。はじめの時のようなぎこちなさはもうない。ただひたすらに、愛しい相手に尽くしたい、シローに気持ち良くなってもらいたい、それだけを思う真摯な愛撫だ。
「あたしのおなかとおんなじだね……シローが、せーえき、いっぱいおなかの中に、びゅるびゅるって出してくれたから……赤ちゃんができたんだもんね」
 その内側に溢れそうなほどの生命の素を漲らせ、いびつに膨らんだ生殖器を、喉奥までくわえ、ユイは口での奉仕を繰り返した。じゅるりじゅるりと太くねじくれた肉槍が幼い唇の中に抜いては差し込まれる様は、まるでそこを孕ませんとしているかのよう。
「あはっ……シローっ……あたし、お口でも……赤ちゃん、できちゃうかもっ……」
 濃厚な愛撫はシローも同じだ。ふくらんだ秘花を鼻先で押し分け、そのさらに奥、柔らかくも繊細な肉襞がたっぷりと蜜を含み、よじれた幼い膣口までも、シローの舌が押し入ってゆく。ちゅぷりちゅぷりとかき混ぜられる入り口からは、すでに半透明のどろっとした本気蜜が溢れている。
 二週間の『おあずけ』に焦らされて、ユイの感度は普段とは段違いだ。ただでさえ妊娠という現象は女性の身体に発達を促し、感じられる快感も遥かに大きなものとなる。しっかりと胎児が育ち、ユイがその動きを幻ではなく確かな胎動として捉えられるようになって、少女は幼いながらも一人の女性としての成熟を始めつつある。
 お互いに生殖器を舐めあう変則的な快感で、それぞれに何度か昇り詰め、先に堪えきれなくなったのはシローのほうだった。
「あんっ……♪」
 ユイとしては、このままシローの熱く灼けるような精液を飲み干しても良かったのだが(そして十分にそれだけで絶頂に達することができたのだろうが)、シローはそんな場所で一滴たりとも自分の遺伝子を無駄にするつもりはないようだった。
 再び姿勢を入れ替えたシローは、ユイの上に覆い被さって漲る生殖器をそそり立たせ、ユイの柔らかな下腹部に肉槍を突き立てんとしはじめた。
 大きく開かれた少女の脚の付け根に、ぬめる粘液を撒き散らすシローのペニスが何度も往復する。ほころんだ花弁は桜色に充血して小さくヒクつき、その奥に熱く太いシローの滾りを受け入れんと妖しく蠢いている。

 あぉんっ!!

 高々と鳴いたシローが、自分の組み伏せた雌に、再度己の証を刻み込まんとした瞬間。
「っ、待って……っ」
 ぐい、と今まさに肉の先端に貫かれんばかりだったユイは、残る理性を総動員してシローを制していた。シローの先走りと自分の唾液でべたべたになった顔をぬぐい、ゆっくりと腰を持ち上げる。
「待って、……シローっ……ね、お願い……あたし、ママだから…、お母さんだから……っ、このままだと、赤ちゃんが、痛くなっちゃうんだよ……」
 幼い瞳を切なさに細め、ぎゅっとシローの胸にすがりつく。
「ごめんね……でも、あたし……シローの赤ちゃん、ちゃんと、産んであげたいから……っ」
 シローは一人寂しく沈んでいたユイを慰めてくれるつもりだったようだが、この状態で正常位を保ちシローを迎え入れれば、ユイはどうしてもシローの体重を全部おなかで受け止めることになってしまう。そうなればおなかの赤ちゃんがどうなってしまうか分からなかった。
 だから、ユイはおなかに負担がかからないように、シローの方にうつ伏せになって、おしりを持ち上げる。この姿勢なら、赤ちゃんは潰されない。
 今のユイには、シローと同じくらい、おなかの中の赤ちゃんが大事なものになっていたのだ。
「シロー、おねがい……っ」
 シローを愛した証。シローを大好きになった証。はじめはシローとの繋がりとしてしか認識できなかったおなかのなかの小さな生命は、いまや少女にとってもかけがえのない宝物になっていた。
 だから。
 その赤ちゃんにも、いますぐお父さんであるシローを知って欲しかった。お母さんであるユイが、シローのことをどれだけ好きで、シローもどれだけユイのことを好きになってくれていて、こんなにもこんなにも気持ち良くしてくれたということを、少しでも多く伝えたかった。
 これはきっと、赤ちゃんがおなかの中にいる間しか伝えられないことだと、ユイはひとり確信していた。

 わぅ!!

「ふぁああああああああ!!!」
 パートナーが動物本来の交尾の姿勢に近いかたちで己を迎え入れてくれることを悟ったシローは、ぐいと力強くその上にのしかかり、はちきれんばかりに膨らんだ生殖器を深々と少女の柔孔に押し込んでゆく。
 腰を前後に震わせての挿入は、快感でたっぷりと濡れぼそっているにも関わらず、狭くきつい細孔をまるで肉の刃で切り裂くように鮮烈な快感となって両者を襲った。
「ぁ、あっ、シローっ、しろーの、おっきいの……おなか、いっぱい入って…っ!!」

 ぐじゅぶ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぐちゅるっ!!

 激しい前後運動に併せて、身体を左右に揺さぶる脚踏み運動。唸るペニスがまるで円を描くようにユイの胎内を掻き回し、孔の奥底を擦り上げる。小さなユイを押し潰さんばかりに背後からのしかかり、逞しい四肢をベッドに踏ん張って、シローは力強く腰を振り立てた。
「ふぁあ、あっ、ああああああ!?」
 ユイも負けてはいない。蜜を溢れさせうねる柔襞はよじれるように重なり合って、シローの生殖器をぎゅうぎゅうと締め付ける。おヘソのすぐ下まで感じる大きなシローの肉槍を、小さな身体は精一杯受け止める。
 種族の壁を越えた、神々しいまでもの美しさが、そこにはあった。
 シローの生殖器の根元に、大きく膨らんだ精瘤すらも深々と飲みこんで、ユイはシローの身体に引きずられるようにベッドの上で身体を跳ねさせる。ありえないほどに深々と、しっかりと繋がり合った生殖粘膜から、言葉にできない熱い想いがどっと流れこんでくる。
「っ、し、シローっ!! シロぉっ……!!!」
 わけもなくユイの両目が涙を溢れさせた。枕に顔を伏せ、カバーを噛み、怒涛のようなシローの想いに答える。
 重力に強調されてよりはっきり目立つユイのおなかを揺さぶるように、シローは野太い生殖器を無茶苦茶に振り回す。ベッドにしがみ付くユイの身体は潰されそうに軋み、同時にシローの巨きな生殖器を根元まで受け入れてはきゅぅと柔らかく、きつく締め付ける。そのたびにびくびくと震え、一次射精液を吹き上げるシローのペニスが、自分の身体の中に溶け込んでゆくような錯覚さえあった。
「っあ、ぅ、ふあ、っく、あんっ、あああっ!!!」
 おなかの中の赤ちゃんにはっきりと伝わるように、ユイはなんどもなんども心の中で赤ちゃんに呼びかけた。
(……わかる? ……これがお父さん、だよ? っ……あたし、いっぱいいっぱい、シローにきもちよくしてもらって、いっぱい、いっぱい、いーっぱいえっちしてもらって、あなたが産まれるんだよっ……!!)
 いつもよりもずっと、はっきりとシローを感じる。
 すっかり熟した子宮は、服の上からこそ目立たないが、ユイの細いおなかには到底納まりきらないようなほどに大きく膨らんでいるのだ。勢い子宮口も大きく下がり、ただでさえ狭い少女の膣を圧迫している。おまけにユイが最も感じる神秘の揺り篭の入り口、敏感な子宮口まで数センチも降下しており、シローの熱く硬く尖った生殖器はそこを容赦なくがつんがつんを突き上げるのだ。
 すっかり開発し尽くされた少女の敏感な性感でこれを堪えられようはずもない。
「っ、すごい、すごいよぉ……しろーの、しろーのおちんちん、赤ちゃんのすぐそばまで……っ、ふああ、ぁう、ぁぁううううっ!? ……ぁぁああああああああぁーっ!!」
 もう、限界だった。
 ユイはシローの身体の下で強引に腰をひねり、ぐるんと身体を回し、シローにまっすぐ向き直る。深々とくわえこんだ精瘤がユイの膣内をぐりんとこそげ、ユイはまた数度達したが――それはもうどうでもいい。
 シローにまっすぐ、その身体を迎え入れる正常位をとって、ぎゅっと赤ちゃんのいる大きなおなかをシローのおなかに押し付ける。すこしでもシローに、この自分の気持ちを伝えたかった。胸の中が愛しさでいっぱいになって、熱い気持ちがとめどなく溢れだして、嬉しすぎて死んでしまいそうな、この気持ちを。
 シローと、シローの赤ちゃんと、一緒に、何もかも一緒に感じていたい。それだけがユイを突き動かしていた。
「……シローっ……!!」
 これ以上の言葉をユイは知らない。
 だから、ありったけの気持ちをこめて、シローに囁く。応えてくれるように。自分のことだけを、見てもらえるように。
「お願い……あたしを、シローの……お嫁さんにして……っ!!」
 その告白と共に、今度こそユイは絶頂の輪へと飛び込む。

 わぅっ、あぉんっ、きゃううっ!!!

 同時に、シローも、泣き喚くような鋭く高い吠え声を連続させる。
 シローは、産まれて始めてはっきりと、ユイの身体で絶頂を味合わされたのだ。
 もともと本能に多く頼って生きる動物は、理性で生きる人間に比べて快感を感じることが少ないという。生来備わった発情という身体の仕組みによって生殖に疑問をもたない分、感じる快感が少なくても子作りをやめることがないからだ。
 人間が恋愛やセックスに至上の快感を見出すのは、理性を発達させたヒトという種族が、生殖に興味をうしなって子孫を作らなくなる可能性を防ぐためだと結論する学説は多い。
 シローの最後の一突きを受け止め、ぐちゅるゅっ、と蠢いた柔孔は、大きく滾る生殖器からありったけの白濁液を絞り取った。両手に余るほどの大量の精液を、ユイは狭い胎内に飲みこんでゆく。激しい刺激に合わせておなかの中の赤ちゃんがもがき、ユイは全身を戦慄かせて頭のてっぺんから爪先までを貫く激しい法悦に震える。

 ごるびゅぅううっ!! びゅる、びゅるるっ、っびゅるるるううぅっ!!

「ふわあああああああああぁああああ…………♪」
 途切れることのない、天上の歌声のような美しい声が、熱気の篭った部屋の中に響き渡る。
(赤ちゃん、すごく動いてるっ……あは、まだあたしのおなかの中なのにっ、シローのミルク、とっても美味しそうに飲んでるよぉ・・…)
 つぎつぎ注ぎ込まれるシローの射精は、終わることを知らないかのように続く。
 ユイの下腹部は一回りも膨らんでいた。開きかけた子宮口に無理矢理大量の白濁液が流しこまれているのだ。子宮の底、生命を宿した揺り篭の中で、赤ちゃんすらも飲み込もうと膨らむ刺激に、ユイは気絶しそうな陶酔を感じ、何度も何度もベッドの上で背中を跳ねさせる。
 びく、びくと背中をのけぞらせ、声を抑えて。
(ぁ、あ、あっ…………赤ちゃん、うごい、てる……っ)
 流し込まれた子種を取りこむために子宮口が緩む。十分以上に熟れ膨らんでいた子宮を、シローの野太い肉竿で直接突き上げられたのだから、ただでさえ不安定な状態にある胎が無事に済むはずはない。
 腹奥を直接掻き回す激しい交合によって、ユイの下腹部はびくびくと痙攣した。自分の意思に反して暴れだしたおなかをそっと撫でまわし、ユイはそれでも果てることなく続く快感の高波の狭間に溺れ続けている。
「ぁああ……っ、くぅぅ……っ」
(どうしよ……このまま、赤ちゃん、産まれちゃうのかも……。……あは、クリスマスに産まれた赤ちゃんなら、イエス様と同じ誕生日だなぁ…………だったら、あたし、マリア様かも……)
 ぼうっとした頭で、そんなことを考える。
 ユイは小学校こそ公立だが、その前に通っていた幼稚園はミッション系だった。まだ赤ちゃんがどこから来るのか知らなかった頃、イエス様の誕生を劇で演じることになったユイは、マリア様役の女の子が最初おなかを大きくしていて、次に厩に出てきたときには赤ちゃんを抱いていたのを見たときに、とてもドキドキしたのを思いだす。
 その時は、やっぱりあの子のおなかにはさいしょ、赤ちゃんが入っていて、それをあの厩の中でそとに出したんだろうか、でもどうやって? どこに赤ちゃんがはいるところがあるんだろう? と一人で思い悩んだりした。
(あは……ホントのクリスマスプレゼントって、赤ちゃんだったのかも……シローと、あたしの赤ちゃん……)
 これも苦痛からの逃避のための作用だろうか、切羽詰った状態の身体を切り離し、どうでもいいことがユイの頭の中を駆け抜けてゆく。
 びくびくと蠢く身体から乖離して、ユイの精神はいつまでも甘く切ない陶酔の中にどこまでもどこまでも沈んでいこうとする。
 このまま、赤ちゃんが産まれる――
「シロぉ……っ」
 ユイは混濁する意識の中、愛しい相手の名を呼び、最も愛しい相手を受け入れるやり方で迎え入れたシローに抱きつく。
 込み上げてくる愛おしさに、疼く下半身に、どうしようもなくなってユイがぎゅっとその腕に力を篭めた、その時だった。
「ユイ……」
 ふわりと忍びこんできた冬の寒さ。
 開けっ放しになっていたドアの隙間、その向こうに、
「あんた、やっぱり……」
 顔を蒼白にさせて、肩と唇を小さく震わせ、呆然と立ち尽くすマイの姿があった。



 (続)

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シロフミ 2020/08/05 21:47

シローとユイの話・その3

「ぁあぅ……っ」
 切なげに伸ばされた掌が、虚しく枕をつかむ。届かない相手へのもどかしさを精一杯埋めるように、ユイは手につかんだ枕を引き寄せ、ぎゅっと両腕に抱く。
 うつ伏せになり、膝を付いて腰を持ち上げ体勢のユイの後ろにまたがったシローが、硬く尖った肉槍を深々と少女の孔に押しこんでゆく。ぶじゅり、と粘液をこぼす生殖器の粘膜は、すでにこの交わりが何度となく繰り返されてきたことを示すほどにスムーズだ。
 シローが最も楽な体勢となる、獣の姿勢での交合で、ふたりは今日3回目となる受胎行為を繰り返す。
 ただの快感を求める交わりとはまるで違う、濃密な行為。これは紛れもない生殖行為であり、ユイのおなかの奥に子種を注ぎ、卵子とくっつけて生命の種とする行ないだった。そこには愛欲や性欲よりも、もっと深い魂の結び付きがある。
「ふぁああ……ぅ♪」
 同時に、愛しい相手に身体も心も魂まで支配される服従の歓びが、深くユイを満たしていた。雄がその身に限界まで溜め込んだ滾るような激しい獣欲を、全て残さず、余すところなく受けとめる、それもまた雌の歓びである。
 深々と身体の奥を突き上げられる逞しい滾りに、ユイは切なく声を上げた。
 赤黒い肉の塊が、少女の小さな孔を構わず前後し、激しくくねり、うねって掻き回す。都合二度の射精を受けとめたユイの柔孔からは泡立った白濁がひっきりなしに吹きこぼれ、ベッドのシーツを汚してゆく。
 シローとユイが心ゆくまで交わっていると、もうベッドはどうしようもないくらい汚れてしまう事がほとんどだ。両親に気付かれないように後始末をするのも一苦労である。
 今のところシローが悪戯した、とごまかすことで事なきを得ているが、いつまでもそれで済ませられるわけもなく、ユイはお小遣いをはたいて同じシーツを何枚も用意する羽目になった。
 シローとのえっちの準備のために、デパートのレジに並んでいるのだ――と想像するだけで、ユイは高鳴る胸を抑えきれなかった。
「ぁあああっ、シロー、しろぉ……っ、おっきいの、すごいの、おなかに……こすれるぅ…っ♪ すごい、よぉ……」
 ぎゅっと抱き締めた枕に、ユイの唇からこぼれた嬌声と泡立った唾液が染み込んでゆく。一番気持ちイイところをもどかしく擦られる刺激に、甘い電流がびりびりと腰骨からおなかの上へと伝播し、少女の官能を揺さぶった。
 シローの身体はユイよりもふた周りも大きく逞しい。シローが力いっぱい腰を振るうとそれだけでユイはガクガクと揺さぶられるほどだ。
 シローが十分に興奮して生殖器の根元に大きな精瘤を作る頃になると、ユイはシローの抽挿だけで身体をベッドの上から引きずり下ろされそうになってしまう。
「ぁっ、あくうぅ……ふあ、ぁああぁああああ!!!」
 ぐい、とシローが力強くユイの身体を持ち上げた。
 深々とおなかの奥までもを肉杭に貫かれたユイは、ちょうどシローのペニスに引っかかるようにふわりと身体の浮くのを感じる。
 突如の浮遊感に耐えかね、びく、とユイが達する。しかしこの程度では、まだ全然終わりでもなんでもない事をユイとシローはお互いに熟知している。この交わりはそれぞれが感じ合いながら、見上げるだけでも背筋がぞくぞくとするような絶頂の頂きを踏破するものだ。
「ぁ、あっ、ま、また……シロー、っ、またイっちゃうっ……、また、ぁああっ!!」
 本来はユイのほうが背中に乗れるほどに体格の違う二人だ。ユイが下になってシローを支えるのは無茶にも思える。それでもユイは砕けそうになる膝を柔らかなシーツに突き立てて、今にもひしゃげそうな腰を保ち、シローの獣欲を受けとめる。
 いくぶん肉が付いてきたとは言え、ユイの細い腰や背中はまるで折れそうにしなって、シローの怒張を根元まで受け入れる。そうしてこね回される胎内は熱くとろけ、まだまだ狭い柔襞をきゅうきゅうと疼かせ、シローの精を絞り取るのだ。
「し、シローっ、そこ……その奥っ、だめぇ……赤ちゃん、赤ちゃん、ぶつかっちゃうよぉ…っ」
 熱く疼いた子宮の入り口をシローの怒張が突き上げる。
 受胎と共にたっぷり熱を持った生命の揺り篭は、些細な刺激ですらユイに法外な悦楽をもたらした。それでも飽きたらず、シローは執拗にユイの膣奥の神秘の扉を執拗に小突いた。まるでそれは、今ユイの胎内に宿った命の代わりに、自分がそこに押し入りたいというような行為にすら見える。
 あるいは、自分の遺伝子で作られた子供すらさらに受胎させんと願う、ある種偏執的なまでの生殖欲求がもたらすものかもしれない。
 およそ、生命は自分の血を受け継ぐものを育てるために生きている。
 だから、こうしてシローがユイを求め続けるのは正しいことだった。誰ひとりシローの渇望に気付かない家の中で、ユイだけはその子供を孕み、育てると応えてくれたのだから。
「ぁああああ……っ」
 うつ伏せのまま枕に爪を立て、ユイが腰を震わせる。
 同時に、シローも少女の胎内奥深くに突き立てた肉槍をびくびくと痙攣させた。絡みあった淫肉がとろけあい、ひとつの命になろうと繋がりあう。、
「ふ……はぁ……っ」
 ぞくぞくと、快感の頂きに昇り詰めたまま、ユイはとろんと情欲にとろけた目でシローを振り返る。
 胎内に弾けるシローの白濁を感じながら、ユイはぎゅっと枕を噛んだ。
 ユイの幼い生殖器は、きめの細かい柔襞を波打たせ、渇いた大地が撒かれた水を残らず吸い上げるようにシローの吐き出した生命の素を飲みこんでゆく。それがたっぷりとおなかの奥底にまで届くのを感じ取り、胸を満たす陶酔に目を細めた。
「あは……っ、ねえ、シローの赤ちゃん、きっとおんなのこだよ……あたしと一緒で、しろーのミルク、ごくごくっておいしそうに飲んじゃってるもん……」
 きゅぅ、と子宮の奥底で疼く胎動を実感し、ユイは快感の声を上げる。
 節操なく蠢き、まだ硬さを保ったシローのペニスをしっかりとくわえこんでうねる細い腰は、まるでシローの生殖器が絞り出す精液を残らず飲みこんで、もう一度孕んでしまおうとしているかのようだ。
 おなかに赤ちゃんを宿しているはずなのに、まだまだユイの貪欲な性欲はとどまらない。それもこれも、愛しいシローを求めるが故だ。
「シロー、もっといっぱい、熱いのだして……? あたし、シローの赤ちゃん、いっぱい産んであげるから……シローみたいにかわいくてカッコいい赤ちゃん、いっぱい産むからぁ……っ♪」
 拙い語彙から選ばれるのは、まぎれもない愛の言葉。何よりも愛しい相手を求め、深く繋がりあうことをせがむユイを、逞しい四肢でしっかりと押さえつけ、シローが吠える。
「ぁあんっ……♪ シローっ……好き、大好きっ……だいすきだよぉ……っ」
 好き、以上の表現を知らないユイには、いまの自分の胸を満たしている気持ちを言葉にして伝える方法が分からない。だから、その百分の一でも、千分の一でも届くように、『好き』という言葉を繰り返す。
 そうして想いを口にすればするほど、ユイの心はきゅうきゅうと切なく声を上げ、よりいっそう膨らんだ愛しさに満ちてゆく。
 これを多分、しあわせ、と呼ぶのだと。
 ユイはそう思った。
「い、いくよ、あたし、だめ。飛んじゃうっ………シローぉおっ……!!!」
 そうして4度。ゆっくりと押し上げたユイの腰後ろから、たっぷりと濡れぼそった秘裂を漲る生殖器が串刺しにする。
「ふぁあああああぁあ……」
 シローを思いやる後背位での交わり。獣の交わり。この体位を続ける限り、シローはユイを必要以上に気遣う心配ことなく存分に動くことができ、なんどもなんども絶頂にのぼりつめる。そのたびに吐き出される怒涛のような白濁が、胎内に余すところなく注ぎ込まれてゆくのがユイは好きだった。
 激しくたかぶる肉の塊はがちがちに硬さを保ったママまだ未発達の膣を貫いて、やすやすと子宮の入り口にまで到達する。薄い肉に覆われた細い少女の身体を突き上げ、こね回し、蹂躙する。
 体の一番奥をごつごつと突き上げるボルチオ感覚に、ユイは唇からこぼれる涎を拭うこともできずに嬌声を上げ続けた。



 ◆ ◆ ◆



 マイが帰宅したのは、年も押し迫った十二月の終わり。まもなくクリスマスという季節。普段は寮生活の姉も、学校が終わって長い休みに入ると共に、懐かしい我が家に戻ってくるのだ。
 夏休みにはその帰りを待ちわびて、家の門でじっと姉の姿が見えるのを待っていたユイは、冬のこの日、玄関ではなく居間でシローと共に姉を出迎えた。
「あ!! おかえりなさい、お姉ちゃんっ」
 わぉんっ!!
 一緒になって嬉しそうな声を上げるシローの首に、さりげなくぎゅっと手を回してユイは笑う。
 それはユイ自身も無意識のうちの防衛行為だった。
「……ただいま」
「ああ、帰ってたの? なによぅ、言ってくれれば迎えに行ったのに」
「やめてよ恥ずかしい……たいした荷物じゃないもん」
 どこか不機嫌そうに目を細めて応えた姉は、台所からやってきた母親にぶっきらぼうな挨拶を返す。家を出てからますます無愛想になった姉に、ユイは首を傾げた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「なにが?」
「んーと、……なんか。」
「なんか、じゃ分かんないわよ」
 疲れたように荷物を投げ出し、ソファーに腰を下ろす姉。この半年でまた背が伸びて、ずいぶん足腰もすらっとしたように見える。胸も大きくなっているようにみえて、ユイには微妙に羨ましい。
「はい、疲れたでしょう」
「ん、ありがと母さん」
 お茶を受けとって、喉を湿らす姉。
 しかし、その視線はさっきからちらちらと、不自然なほどシローのほうを窺っていた。シローもそれに気付き、どこか注意深く様子を窺っている。ユイもそれに気付き、そっとシローの背中に手を寄せた。
「あら、あら。シロー、分からないの? お姉ちゃんよ?」
 いつまでも警戒をとかず、じっとしたままのシローに語りかける母親。それでもシローの態度はかたくなだ。
「ごめんねぇ、やっぱりずっとおうちに居ないと忘れちゃうのかしら。前はあんなにおねえちゃんにべったりだったのにねぇ」
「……いまはユイと仲いいんだね」
「そうね。お姉ちゃんの代わりだと思ってるのかも。前はそうでもなかったけど、今はユイもいい子でいっぱいお世話してるし、シローもユイの事好きになったのかもねぇ」
「ふーん……」
 そうやって頷く姉の視線にも、どこか針のようなものが含まれている気がする。気のせいだと思うにはあまりにもはっきりとした違和感。
 ユイはとうとう居心地の悪さに耐えかね、立ち上がった。
「お母さん、あたし、シローの散歩いってくるねっ」
「え? ああ、ちょっとユイ、せっかくだからお姉ちゃんと一緒に行ったら?」
「いいよ。行ってくるっ。……いこ、シロー」
 おぅんっ、と応えるシローを伴い、姉にくるりと背中を向けて。
 ユイはシローと連れ立って外へと駆けていった。



 ◆ ◆ ◆



「ユイ、あんた太ったんじゃない?」
「そうかな?」
 テレビもそっちのけでシローとじゃれあいながら答えるユイに、姉は不審げに眉を潜める。そんな様子はまるで気にせず、ユイはシローと一緒にごろごろとカーペットの上に寝そべって、胚芽クッキーをかじっていた。
「そうやってお菓子ばっか食べてるから。母さん怒ってたよ」
「べつにいいでしょ? おなかすくんだもん」
 事実、それは確かだった。朝昼晩と3時のおやつだけでは、ユイのおなかはまったく満足してくれない。おなかの中ですくすくと育っているだろうシローの赤ちゃんのためにも、栄養補給は必須なのだった。しかしユイの少ないお小遣いでは、とても毎日の栄養補給には足りない。
 というわけで頻繁になってしまうつまみ食いは、目下のところユイが母親に大目玉を食らう一番の要因。食べすぎてたまに気持ち悪くなってしまうところまで来ればさすがに怒られてもしかたがないだろう。
「まあいいじゃないの。ユイもお手伝い頑張ってくれてるもの」
「母さんも甘いなぁ……悪い癖ついちゃうと良くないと思うけど」
「あらあら。マイもすっかりお姉さんになっちゃったわねぇ。この前までユイの事泣かしてばっかりだと思ってたのに」
「いつの話よ、もう……」
 これまでまるっきりほっぽっていたシローの世話をなにからなにまで引き受けるようになった分、母親も強くは言えない。朝晩早く起きての散歩に、週に二日のシャンプーにブラッシング、ごはんの世話。ユイはシローを家に上げるための努力を惜しまなかった。確かに、ここまで一生懸命元気に動いていればおなかもすくだろう、というのが母親の理解なのである。
 すっかり放任の母親の説得は(もともとそういう性格なのだが)諦めて、マイはちらりとユイを眺める。
「ねえ、ユイ」
「なーに?」
 逃げることができない分、ユイは自分でも知らずにシローとの距離を詰めていた。白くてふかふかの毛皮に顔を埋め、ことさらにべったりと身体を寄せあい、シローとの仲を強調している。
 それは、自分たちの仲を脅かす相手に対してのはっきりとした壁であり、戦線布告である。姉という異物を前に、ユイは幼いながらも女の本能として、愛しい相手を奪われまいと行動しているのだ。
 無論のこと自覚はない。
 だが、姉を不審がらせるのには十分だ。
「あんたさ、そんなにシローの事好きだったっけ?」
「うんっ。大好きっ」
 間髪入れず答えるユイ。それに併せるようにシローも大きく一声、わぉんっ!! と吠える。
「本当に、すっかり仲良しさんね」
「そうだよ、シローもあたしのことが一番好きだもん」
「あらあら。妬けちゃうわねぇ」
 ユイのその言葉の真意をまるで理解せぬままに母親は応じる。なんどもなんども肌を触れあい、深々と身体を交えながら確認しあった愛があるとは考えもしない。まして、ユイのおなかの中にその愛の結晶がすくすくと育っているなどとは、まるで思考の埒外であった。
 当たり前だ。誰もそんな事は考えない。犬と女の子が、本当に心を交わしあって愛を育むなんて思いもしない。
 ――そのはずだ。
 そんなふたりをじっと、黙ったまま見つめるマイの瞳に。
 ユイは気付くことはなかったのだった。



 (続)

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シロフミ 2020/08/05 21:46

シローとユイの話・その2

 ベッドの上に仰向けになり、脚を大きく開いて、無防備な腹を晒す。服従を示す姿勢で相手を受け入れ、どこまでも深く身体を接する――もっともポピュラーで、もっとも有名な交合の体位だ。
  正常位――対面の臥位がそう名付けられているのは、この体位が人間にとってもっとも相応しい交わりのカタチだということを示している。こうして女性の側が 仰向けに相手を迎え入れるのは、人間のみが行なう性交の姿勢。番う相手を対等なパートナーと認め、心から受け入れる事の証なのだ。
 ユイは、その姿勢でシローを受け入れようとしていた。
「……シロー……、いいよ……?」
 ごくっ、と緊張の唾を飲みこみ、ユイは押し付けられる生殖器をそっと脚の間に導く。蜜に塗れた下腹部ではなく、その大元の柔らかく桜色をのぞかせる部分に。
 ユイの腰の下には枕が差し込まれ、程良い高さまで持ち上げられている。姉との交わりを覗き見て覚えた、シローとの交わる為の工夫の一つだ。
 これから、ユイは“はじめて”を経験する。
 シローのおちんちんで、処女を失うのだ。
「っ……」
 覚悟はしていても、犬のペニスで処女膜を貫かれるのは、予想以上の恐怖と興奮をユイにもたらした。
 いまだ驚くほどの硬度を保ち、はちきれんばかりに子種を溜めこんだ肉の塊。ただひとつの望みである“受胎”を待ちわびて猛り狂うシローの生殖器をぐっと股の間に挟み、ユイは緊張で震える指をそっとシローの首へと回す。
「平気だよ……? あたしなら……だいじょうぶだから……。お願い、お姉ちゃんみたいに……して?」
 パートナーの耳元へ、そっと唇を寄せ、甘く蕩けた声で囁きかけた。
 ぉうんっ!!!
  応えるように一吠えしたシローは、弾かれるようにユイの腰を押さえ付け、びくびくと跳ね回る生殖器を少女のふっくらとした丘に突き立てた。姉との蜜月を過 ごした愛犬の手際は驚くほど素晴らしく、種族の壁など感じさせない洗練された動作で、幼い丸みを残した柔肌が獣欲に滾る怒張に侵食されてゆく。
「ぅあ……あぁ、あっ、ああっ、っはぅっ、んぅっ!!」
 激しく腰を振りたてるシローだが、いくら柔らかくほぐれ蜜を溢れさせていても、ユイの処女孔は一息に貫かれるほど深くはない。ぬぷ、ぬぷと浅い抽挿を繰り返されながら、桜色の秘肉は甘い蜜をこぼす。
 焼けた鋼のように熱い感触が少しずつ幼い秘孔をこじ開け、生命を繋ぐ肉杭がユイの身体に撃ちこまれてゆく。
「ぁ、あぅっ……し、シローっ……シローっ!! ぁああぅっ!!」
 もはや言葉は意味をなさない。逞しく突き立てられる雄の証を精一杯受けとめることが、交尾の上で雌に許された自由だ。番う相手を心行くまで満足させ、ありったけの遺伝子を受け取る――そのために、ユイの身体はシローを拒まない。
「っ、……お姉ちゃんっ、おねえちゃあんっ……」
 我知らず姉を呼びながら、ユイはぎゅっとシローの首に回した手に力を込める。愛犬の激しい息遣いが少女の鼓動を高め、切なく疼く胸をいっそう加速させる。
 シローがぐいと腰を前に突き出した。挿入を試みる角度が変わり、ユイはまた別の場所をえぐられる快感に声を上げる。
 同時に、ユイは自分の腰がゆっくりとシローの動きに同調して持ち上がるのを、どこか他人事のように自覚していた。
(ぁ、あ、あっ……シローのが、おっきいのが入ってきちゃうっ……お姉ちゃんと同じに、初めて、シローにあげちゃうんだ……っ)
 その想像は、ユイの幼い心をぞくりと撫で上げた。
 華奢な身体がしなやかに反り、獣欲に滾る破瓜の衝撃を受け止めようともがく。
 少女の胎内に繋がる細い道を探り当てたシローは、ゆっくりと角度を合わせて腰を振るい立てた。
 ずんっ、と情け容赦ない突き上げが少女を襲う。
「ぁ、ああーっ、あああっ、あーーーっ!!」
  容赦のない圧迫感がユイの小さな孔にねじ込まれる。圧倒的な大きさの灼熱の塊が、入るはずのない孔の奥底めがけて侵入を試みてくる。細く狭い膣口を無理矢 理押し広げ、シローの生殖器が突き込まれる。何度かしたことのある一人遊びよりもはるかに深くまで、容赦なく、強引に。
 胎内を引き裂くぷちぷちという幻聴は、無垢な少女の内側が初めての相手を受け入れる証拠。血を滲ませながらも健気に、ユイの柔襞はシローの生殖器を包み込む。
 じゅぶり、と淫らな音をたてて薄赤い蜜をこぼし、ユイはとうとう無垢なる乙女の証を、愛しいパートナーに捧げた。
「あ……ぁ、か、は……っ」
 シローの生殖器は加減を知らぬまま、幼い肢体をそのままの勢いで深々と貫いてゆく。あっという間に幼膣を最奥部まで貫かれ、ユイは肺の中の空気を絞り出されてかはっ、と呻いた。
 途方もない存在感。頭のてっぺんから爪先までを熱く大きな衝撃が貫き、何度も波のように寄せては押し返す。
「ぁ……く…ん……はっ…ふ」
 あまりの衝撃になにも言葉にならなかった。愛おしさと快感と、悲しさと痛さと心地よさ。言語には変換不可能な、もっと原始的な感情が少女の心を満たしてゆく。
 破瓜の衝撃にいまだ引きつり、麻痺したようにびりびりと疼くユイの柔孔は、わずかに身じろぎするだけで、その奥深くにまで受け入れたシローの生殖器の存在を感じさせる。
 ぎちぎちと今にも裂けてしまいそうに張り詰めながらも、蜜にぬめる柔襞はゆっくりと蠢き、シローの滾りをきつく締めつけていた。
「っは、……はふっ……シロー……、わかる? ……ッ……あたし、シローに、…はじめて、……奪われちゃったんだよっ……?」
 ユイはいつしか目元に涙を浮かべ、荒い息を堪えながらシローを呼ぶ。
 びく、びく、と絡まり合ったふたつの肉が、激しく反応し蠢いている。じぃんと麻痺した下半身からは、どこからどこまでが自分の身体で、シローの身体なのか解らないほどだ。
 少女の無垢な胎内が猛り狂う犬の生殖器と交合し、熱く滾った粘液を互いに分泌して混ぜ合わせている。わずかにシローが腰を揺すり、生殖器がほんの数ミリ単位で前後するたび、白く泡立った交合部から粘液がこぼれ、シーツの上でずり上がるユイの下腹部を汚した。
「すご……っ、っは、ぁあっ、シローの、おっきいのが、いっぱいぃっ……」
 まるぜ串刺しに貫かれてしまったかのような、圧倒的な満足感がユイを襲う。
 シローの抽挿が次第に大きくなり、ユイの処女孔も徐々にではあるが滑らかにそれを受け入れだしていた。
 大人向けのコミックで読んだ事のあるセリフを真似しながら、ユイは自身の興奮を促して身体のテンションを高める。はちきれそうなシローの生殖器は力強くうねり、ピンク色の肉槍自身にほぐされてユイの身体も“そこ”で紡がれる快感を貪るコツを覚えだしていた。
 引きぬかれては押しこまれる動作の一往復ごとに、ユイの小柄な身体はシーツの上をずり上がってはずり落ちる。ぬぷりゅっ、と吐き出される蜜と粘液の混じり合ったものが、わずかな赤色を伴ってシーツを汚す。
「ぁ、あっ、あ、あっ、あっ、シロー、シローっ、お、おなか、ヘンになっちゃう……っ、熱いの、熱いのいっぱいっ……」
 逞しい四肢でユイの下半身を持ち上げながら処女孔を犯し、シローはすでに射精の体勢に入っていた。軟骨の隆起と共に先走りから変じた犬の射精は、一次射精液となる白濁を伴って激しくユイの胎内に注ぎ込まれる。
「シローっ、いっぱい……いっぱいでてるっ……すごいよぉ……しろーの赤ちゃん、できちゃうっ……」
 途方もない熱量が、まるでポンプで押し込まれるようにユイの狭い孔に満たされてゆく。狭く細い孔を押し上げる先端が激しく白濁を噴き上げて、ユイの子宮口に直接叩き付けられる。長い『おあずけ』を食った、大量の半粘性の塊が少女の胎奥を突き上げた。
「ふぁあああああああぅぅぅっ!?」
 十月十日をかけ、赤ちゃんを育ててゆく大切な場所に、その“赤ちゃんの素”を容赦なく注ぎ込まれるという初体験。未知の感覚にユイはたまらずシローの肩に縋り付いた。腰が勝手に浮き上がり、意志とは別に動いてシローの生殖器に絡みつく。
 びくびくと痙攣する腰をシローの身体に押しつけ、ユイは少しでもこの歓喜を受け止めようとしていた。あれほど巨大だったシローの生殖器が、根元までずぶりとユイの幼孔に埋まり込む。
 それでもなお、納まりきらない射精の白濁粘液が少女の孔から次々と吹き出してゆく。
「シロー…っ、すご…、こ、こんなに、熱いの、いっぱい…っ♪」
 未経験の快楽に打ち震えるユイ。
 しかし、シローにとってこんなものは最初の射精、ただの準備段階にすぎない。
 犬の交尾はひたすらに長く、射精も果てしなく続く。最初の抽挿は、雌の身体が交尾できる状態であるかどうか確認すると同時に、排卵を誘発させ受精を促すための準備。そして他の雄が注ぎ込んだであろう子種を柔孔から残らず掻き出し押し流すためのものだ。
 たっぷりと注ぎ込んだ白濁で、ユイの幼膣がすっかり満たされたことを確認したシローは、さらに息を荒げユイの下半身に深く腰を押し付けてきた。
 生殖器の根元には、いつのまにか大きく膨れ上がった巨大な瘤が浮き上がっている。シローはそれをユイの胎内に押し込もうとしているのだ。
「え……な、なにっ!? シローっ、何するのっ!? や、やだっ、やめてえっ!!」
 ユイ自身の拳にも近いサイズの巨大な圧迫感に、ユイは悲鳴を上げる。こんなものは姉との交わりでも見たことがなかった。
 これは、より深く雌と交合するためにシローの種が持つ獣性の一つ。完全に雌を己のものとする仕組みだった。
  パートナーの乱心に暴れ出すユイだが、すでに深く発情し、獣の生殖本能に支配されたシローはそれを聞き入れることはない。マイとのような遊び半分の交合で はなく、ユイは本物の生殖を――シローの遺伝子を身体の奥底で受け取り、受精し、受胎し、子を孕み、産む事を望んでいるのだ。
 賢くも聡いシローは、パートナーの意志をはっきりと汲み取り、この小さな雌の胎内に己の遺伝子を遺す事を最優先する。
「シローっ、だめ、い、痛……っ、さ、裂けちゃうぅ……っ だめ、それだめぇ!!」
 熱く滾った生殖器を迎え入れるだけで精一杯の狭い処女孔に、ユイ自身の拳に近いサイズの精瘤がむりやりにねじ込まれてゆく。目前に迫った受胎を前に、シローは本能のまま小さな雌をしっかりと組み伏せ、押さえ付け、逞しい腰を激しく打ち付けて狭くきつい柔腹を蹂躙した。
「ぁ、あ、あ、あぁーーッ!!?」
 ぐぷ、とくぐもった音が響く。
 背筋を仰け反らせ大きく口を開いて、ユイは全身を貫く衝撃に翻弄される。
 先端から根元まで、ユイの両手で握っても遥かに余る巨大な生殖器。それが、とうとう余さず少女の胎内に埋め込まれる。
 本来なら小さな身体を引き裂いてしまいかねない暴挙だったが、たっぷりと時間をかけてほぐされていたユイの秘肉は柔軟に伸縮して、雌を孕まさんと凶悪に変貌したシローの生殖器を飲み込んでいた。
 ありえないほど深く、ちょうど幼い孔の奥底までをシローの生殖器に貫かれ、ユイは悲鳴を上げる。
 とは言え、少女の孔もそれが限界だ。限界まで広がった柔襞は、まるであつらえたようにぴったりとシローの生殖器と噛み合い、隙間なくひとつに繋がってゆく。同時に鋭い生殖器の先端はまだ未発達の子宮口を突き刺していた。
「か……はっ」
 横隔膜が押し上げられ、肺が中に残った空気を吐き出そうとする。その呼吸だけで
内臓が蠢き、胎内を埋めているシローの生殖器を感じ取る。
 まるで、全身を串刺しにされてしまったかのような途方もない存在感。ついに本当の意味でシローとひとつになり、ユイはお腹の中全てに愛しい相手の生殖器を感じていた。
「ま、まって……だめ、ダメ、シローっ……」
 猶予を求めるユイの懇願は、届かない。
 びく!びく! と生殖器を跳ねさせ、シローが体を揺すり脚踏みをはじめる。
 これは犬に特有の射精のポーズだ。熱くうねる肉棒は大きく膨らみ、ポンプのようにたった今作ったばかりの白濁液を注ぎ込み始める。第二次射精液は、雌の胎内に直接注ぎ込まれ、受精を促すためのさらに濃い子種の塊だ。
 子宮口に食いこんだシローの先端が噴き上げる灼熱のマグマに、ユイはシーツを握り締めて激しく首を振りたてた。少女の細い腰がうねり、滾る獣欲を一滴残らず白濁を絞り取らんばかりに蠢く。
 ユイの身体もまた、シローの猛りに影響されるように、愛しい相手の仔を孕もうとしていた。倫理や優生学の既存概念を残らず叩き壊すように、二人の交わりは美しかった。まるで――ふたりが本来そんな雄雌の番いであるかのように。
 奇跡のように神々しくさえある、無垢な少女と逞しい雄犬の交合。吹きこぼすこともできぬ程の奥深くに子種を流し込まれ、針のように細い子宮口の奥へと、似え滾る白濁が殺到する。
「ぁ、あっ、かは、っう、あ、あああぅぅっ!!!」
 同時、ユイの胎内でも変化が起きていた。繰り返される興奮に、急遽の成熟を余儀なくされた卵巣が激しく脈動し、対となるべき生命の卵を吐き出したのだ。
 その衝撃をはっきりと感じ取り、跳ねまわるユイの腰を押さえ付け、シローはさらに深く生殖器を押し込む。これが幼いユイに許された数少ない受精のチャンスだと、シローは知っているのだ。
 だが、その巨大な精瘤を身体の中に埋めこみ、先端を子宮口にがっちりと嵌めこんだ状態では、わずかな前後運動でさえ悶え狂わんばかりの快楽をユイにもたらす。
 シローはそんなユイを励ますように長い舌でべちゃべちゃと火照った顔を舐め回し、そのまま少女の桜色の唇を奪った。深く舌を差し入れ、少女にも舌を使うように促す。
「んむっ、んぅっ……ひぐっ……ぁ、ふっ……」
 溢れんばかりの愛で、種族と倫理の壁を突き崩すかのような行為だった。煮え滾る情欲が、少女の細い身体に手加減抜きで叩き付けられていた。
 まるで、人との交わりかたを理解しているかのような行為。
 あるいは、それもまたシローがマイとの間で得た手管のひとつかもしれない。少年が夢中になって恋人を抱くように。シローはユイの細く小さな身体を組み伏せて、一心不乱に腰を振る。
 大きくねじられる腰の動きにユイの処女孔はふかく捩れ、折り重なった襞を使って猛りを締め付ける。逆栓のように胎内に押し込まれた精瘤がくねり、ユイの下腹部に緩やかな盛り上がりを見せる。
「ぁ、あ、だめ、こわれ……ちゃうっ、……シロー、あたし、もうだめぇ……っ!!!」
 限界を訴えるユイに対し、間髪入れずに激しく噴き上げた白濁液が狭い膣内を満たす。栓を越えて溢れ出した粘液がベッドの上にこぼれ、大きな染みをつくり、さらにその上にどろどろと濃く煮詰められた生命のスープをぶち撒けてゆく。
 ユイは悲鳴を上げて子宮を貫く衝撃に翻弄された。
「ぁ、あ、シローっ、しろー、おナカ、熱い……シローのが、どろどろっていっぱいになって、できちゃう、シローの赤ちゃん、できちゃうぅ……っ」
 遺伝子の壁など、誰が知ろう。犬と人とが子を成すことができぬという事実など妄言とばかり、万に一つの失敗もなくこの機会を生かすため、少女の胎内を、1%の可能性も残さず完全に受胎させんとばかりに執拗に執拗に白濁が注ぎ込まれてゆく。
 少女の身体を完全に征服し蹂躙するために、いつまでもシローの射精は止まらない。それが大自然の摂理、生存競走の果てに作り出された獣の交わりだ。
「ぁ、あふぅ、か、くぁ、ひぐぅうううっ!?」
 シローが不意に腰を持ち上げ、ぐりん、とユイの身体をまたいで後ろ向きになった。狭い膣内を無理矢理捻じ曲げられた生殖器が回転し、ユイはシーツを引きちぎらんばかりに掴む。
 これがシローの獣としての交わりの第3段階。
 ちょうど股間同士をくっつけ合い、互い違いに向き合った格好。専門用語で『ジョイント』と呼ばれる体位だ。本来は雌も同じ四つん這いになってお尻をくっつけ合うのだが、ユイが仰向けになっているため些か変則的な格好となる。
 しかし、シローが反対を向いてしまったため狭く小さな膣内に納められた生殖器の角度はありえないほどにねじれ、柔襞をよじられたユイの官能は立て続けに爆発する。
「……あぐ……っ、シロー、まだ……まだそんなに、いっぱいっ……もうだめ、もう……おなか、こわれちゃう……しろーので、しろーのアツいので、おなか、ホントに……こ、こわれちゃうよぉ……っ!!!」
 ユイは知る由もないが、これこそが犬の交尾におけるクライマックスだった。雌が受胎を終えるまで徹底的に精液を注ぎ続ける体勢なのだ。既にどうしようもないほどにユイの柔孔に子種を注ぎこんでおきながら、シローはまったく満足していない。
 シローは感じているのだ。ユイの胎内に、いままさに番いとなる卵子が放出されていることを。そして、いまだそこに自分の遺伝子がたどり着けていない事を。
 枕にしがみ付こうとするユイに対し、シローはベッドの上に四肢を踏ん張らせて前に進もうとする。
「ひぁぐっ!? あ、ぐ、ぅ、あ、あ!!」
  そのままでは交合部が外れ、生殖器が抜け去ってしまうだろう。しかしユイの狭い穴の中で一層大きく充血し膨らんだシローの生殖器は、がっちりと噛みあって まるで一つの器官のように連結していた。ユイの抵抗を振りほどかんばかりに、シローはベッドから身を乗り出して、前脚を床に下ろした。
 ずむっ、と激しい一撃がユイの脳髄を揺らす。同時にまたも爆発するような射精が起こり、ユイの子宮にさらに濃密な白濁が叩き込まれる。
 人間どうしでは決して味わうことのできない、身体のなかが相手の遺伝子でたっぷりと満たされてゆく感覚。ユイは全身でそれを感じている。
 ユイの小さな身体を引きずり下ろすように、シローは前進を止めない。
 ベッドにしがみ付いて必死に抵抗するユイだが、所詮は体格が違う。力強く一歩を踏み出すシローに引きずられ、少女は甲高い悲鳴を上げた。
「ぁう、あ、あ、あっ、あ、あぁあああああ!! ふぁあああああっ!!!」
 またも激しい射精がユイの奥底に叩き付けられる。
 灼熱に溶け合った交合部が、激しく脈動し暴れ回る。途方もない絶頂が立て続けに襲い、快感は天井知らずに止まらず、たとえようもな愛しさが下腹部から全身へと広がってゆく。
 ユイはいつしか言葉も理性も思考も失って、シローの番いとなっていた。愛しいパートナーの子供を宿し、産み落とすための大切な交わりを、心の底から歓び受け入れてゆく。
 そして――とうとう、限界を超えて注ぎ込まれたシローの似え滾る生殖細胞が、少女の揺り篭を突っ切り、生命の神秘を産みだす卵巣への道へと堰を切ったように流れこむ。
 狭い子宮口をこじ開けて流し込まれた精子の群れは、本来とは違う雌生殖器の状態に戸惑いながらも、力強く粘液の中を泳ぎ続けた。
 まだ生殖には未成熟のはずの胎内は、執拗な交合によってパートナーの遺伝子を受け入れるのに最高の状態に高まっており、流れ込んだ子種を余すところなく、赤ちゃんを育てるための神秘の揺り篭の奥へと招いている。
 そこには既に排卵を起こしたユイの処女卵子が待ち受けていた。
 いまだユイは初潮を迎えていないため、真実これが一番最初の排卵となる。文字通りの処女地を蹂躙するシローの生殖細胞はそれを察知し、徒党を組んでなだれこんだ。
 己の遺伝子を繋ぎ、子孫を残す。ただその一点のためだけに生み出されたシローの精細胞は、凶暴なまでに猛り狂い、生殖のゴールとなるべき生命の素、ユイの処女卵子に殺到する。
 その数は、人間同士の交わりなどではありえないほどに多い。
 本来、熾烈な生存競走を勝ち抜くために発達した、完璧な受精を可能とする獣の生殖行為の仕組みがこれだ。
 精瘤を使ったジョイントも、何十分にもわたる大量射精もすべてそう。
 他の雄が入りこめぬよう、雌の膣に栓をして、自分の遺伝子が卵子を残らず蹂躙するまで精子を注ぎ込むようにプログラムされているのだ。雌もそれに応えるため、一度に多数の卵子を排出して少しでも多くの遺伝子を受け入れるのだ。犬はそうして数多くの子供を孕む。
 しかしまだ未成熟なユイの身体が生み出せる卵子の数など限られている。5~12頭という犬の出産に比べて、ユイの作り出した生命の卵は圧倒的に少なく、わずかな数でシローの注ぎ込んだ膨大な精子を受けとめねばならなかった。
  それゆえに、あまりに過酷な条件が引き起こした受精の瞬間は、まさに陵○と呼ぶに相応しいものだった。本来は一対一で結び付くはずの精子と卵子の番いは、 そのルールをかなぐり捨て、無垢な生命の卵に白濁の群れが殺到する。少しでも強い因子を、少しでも強い生命を残すための、凶悪なまでの受精。無垢な卵子に 所構わず集り、食い破り、引き裂く――まさに生命の蹂躙だった。
 そのすさまじさたるや、母体たる少女にまで届くほど。
 無数の精子に啄ばまれ、その柔らかな細胞を徹底的に犯し尽くされた処女卵子が、激しく暴れまわって卵管を転がり回る。シローの隠された獣性のまま、柔らかな粘膜を食い破るかのようだ。
 そしてとうとう、ふっくらと柔らかな子宮まで辿り着いた受精卵が、十月十日を過ごす揺り篭に飛びこむ――その瞬間。
 胎内の最奥部に広がる途方もない歓びは、波のように寄せては返し、ユイを何度となく法悦の頂きへと突き上げる。
 半ば気を失いながら、夢のように茫洋とした意識の中で、ユイはその瞬間を感じ取っていたのだった。




「ちょっとユイちゃん、またそんなの食べちゃって!!」
 居間に響くのは鋭い声。床に寝そべっていたユイを母親は目ざとく見とがめて、目を吊り上げていた。
「あーっ!? なにするの、ママっ」
「お休みだからってそんなにごろごろして……おやつは3時までがまんしなさい!!」
 空になりかけていたポテトチップの袋を取り上げられ、ユイはむぅーっ、と頬を膨らませる。
「……おなかすいたんだもん」
「ウソおっしゃい。さっきお昼食べたばっかりでしょう。おかわりまでして。あんまり食べてばっかりだとおなか壊すわよ?」
「ふーんだ。いいもん。……そんなにイジワルするんだったら、ママには抱っこさせてあげないから。この子だってママのこと嫌いになっちゃうんだからね」
 ユイはこっそりと服の上からおなかを撫でる。
「……なあに? 何か言った?」
「別に。なんでもないよ。いこ、シロー」
 独り言が大きすぎて母親が何かを聞きとがめたようだったが、ユイはぷいと顔を背けると、口うるさい母親にべーっ、と舌を出して、シローを連れて部屋に戻る。
 2階のユイの部屋は、完全防音の一個建てだ。小さくても女の子ならプライバシーの尊重を、といういかにもな理由で作られたこの部屋を、母親はあまりよく思っていないのをユイは知っている。
 後ろ手にドアの鍵を掛けると、ユイはぼん、と仰向けにベッドに身体を投げ出して、シローを招いた。
 先に部屋に入って尻尾を振っていたシローは、わぉん、といい返事をしてベッドに上がってくる。のしかかるような勢いで寄ってきた大きな白い身体を、ユイはぎゅっと抱き締める。
「ん……シロー、いい匂い……」
 その言葉は、無垢な少女としてではなく、既に甘く蕩けた恋する乙女のもの。
 愛しいパートナーと抱き合いながら、ユイのもう片方の手は、そっと膨らみはじめた小さな腹部をいとおしげに撫でる。


 種族が違えども、受精そのものは起こりうる。
 卵子と精子が結び付く、その作用そのものは哺乳類であればさして変わることがない生命誕生の一過程だ。たとえ適合しない結び付きでも、番いとなることまでは許されていると言えるかもしれない。
 しかしその先――結び付いた生殖細胞が、遺伝子を交換し、ふたりの子孫たる生命を紡ぎ上げるかどうかは違う。
 適合しない染色体は決して結合することなく、遺伝子の壁は厳然と種族を越える愛を否定するのだ。そうして出来損なった不完全な生命の卵は、決して芽吹くことなく、孵ることなく壊死し、やがては雌の胎内から排出される。
 ユイとシローの愛が作り出した受精卵――それもまた不完全な命の素。同じように残酷な結末を辿る運命にあった。

 ……そのはずだった。

 それは果たしていかなる奇跡か、あるいは悪魔の業か、生命への冒涜か。
 あるいは、二人の想い合う心が、世界の箍を外したのだろうか。
 胎の奥で静かに息づく小さな鼓動。確かな生命の存在。
 あれから4週間。種族と倫理の壁を叩き壊して、少女の胎内には確かに、熱く疼き続ける子宮の存在感があった。
 ぴく、とおなかの奥で蠢く感触を聞き取った気がして、ユイは陶酔の吐息をこぼす。
「あは……また動いた……ほら、分かる? シローの赤ちゃんだよ?」
 ユイはシローによく聞こえるようにと、彼の頭をぎゅっと抱え、小さなおなかをシローの耳に押し付けた。
 こちらもまた、新たな生命の父親となった歓びで、ユイの胎内に息づく我が子の生命を感じ取ったのか、シローは楽しげにおぅんっ、と鳴く。
「……赤ちゃん、すっごく元気なんだ。毎日いっぱい動いて、あたしのおなかけとばすの。きっととっても可愛くて元気に産まれるよね」
 おなかを撫でながら、ユイはまだ見ぬ我が子の姿に思いを馳せる。
 自分の身体と繋がった生命が、確かに胎内に育ちつつある。その静かな興奮に、ユイの身体はじんわりと火照り、せつない程の愛しさが込み上げてくる。
 粘液にまみれた胎胞に包まれ、こんこんと眠るようにすくすく育ち続けるシローの子。
 それがいつしか、すっかり大きくなって、ふっくらとお腹を膨らませる――
 愛しい愛しい相手との愛の結晶が身体を満たしてゆく、その歓び。少女から一足飛びに母へと続く歓び。あまりに倒錯的な快感に、ユイは込み上げてくる愛しさを、すこしでもパートナーと分け合いたくて、ぎゅっとシローの身体に抱きついた。
 それに反応するように、シローもまた小さく腰を震わせ、眼を細めてユイの顔を舐めた。
 ユイもその舌を迎え入れ、二人の顔はあっというまに互いの唾液でべたべたになった。耳や首筋までたっぷりとかわいがられてしまい、すっかり赤くなった頬をしずかに俯かせ、
「……シロー、……えっち、する?」
 ユイがゆっくりとその耳に囁くと、シローも力強く『おぅんっ!!』と吠え、尻尾を振ったのだった。




 (続)

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シロフミ 2020/08/05 21:45

シローとユイの話 その1

 都内、郊外の一軒家の、2階。
 階段から向かって一番奥、西向きの部屋には、ほの淡い11月の西日が差し込んでいた。秋と呼ぶには少し肌寒い気候も、閉じられた窓と薄いカーテンを超した陽射しの中で和らげられ、穏やかなものとなっている。
 部屋の中は、机に小さなテーブル、カーペットにクローゼットがふたつ。机には教科書とノートと参考書。クローゼットの扉には制服が掛けられ、床には数冊の雑誌が積まれている。絵に描いたかのような典型的な学生の部屋であった。
 だが、その中で行なわれている事はいささか様子を異にしていた。
 部屋にひとつしかないドアには固く鍵が掛けられ、その中に篭った熱気と匂いを閉じ込めている。シングルベッドが軽く軋み、その上で小さな肢体が跳ねあがる。
「ふぁああ……」
 こぼれるのは幼い声。まだ舌足らずな甘い響きは、それでも確かに快感を紡ぐ嬌声だ。ベッドの上に組み敷かれた少女は、下腹部からじんわりと広がる甘い快感に身体を震わせ、切ない吐息を繰り返す。
 スカートは太腿の上までめくれ上がり、幼い下着はくるりと丸まって足首に引っかかっているのみ。露になった白い肌のなか、小さなおなかは少女の吐息に併せて上下し、しっとりと汗に濡れた細い腰がくねる。
「っ、……シローっ、……キモチ、いいよぉ……っ」
 とうとう堪えきれなくなった甘い疼きに、自分を押さえ付ける愛しい相手の名が少女の口を付く。

 わぉんっ!!

 尻尾を振り立て、すっかり冬毛に生え変わった真っ白な毛皮を震わせて。体長170cmの(犬の種類)は、力強く少女に答えた。
 シローがユイの家にやってきたのは、今から3年前の冬。
 妹が欲しい、とねだっては両親を困らせ続けていたユイのもとに、ちょうどクリスマスイブに父親が連れてきた子犬は、まるで本当のサンタクロースが冬という季節を運んできてくれたかのように、真っ白な毛並みをしていた。
 ダンボールの中に敷かれた毛布に包まって、昏々と眠っていた小さな小さな生命は、惜しみない白瀬家全員の愛情を一身に受けて育った。あっという間に大きくなってしまったシローは、いまではユイをその背中に乗せられるほどだ。
 小さかった頃とまるで同じ、無垢な黒い瞳をきらきらと輝かせて、シローはユイの身体をベッドの上に組み敷いていた。

 わふ、わふぉ!!

「ふぁああ!?」
 シローはすっかり露になった生殖器を滾らせて、ユイの大切なところに擦り付けてくる。我を忘れたように腰を振る愛犬は、熱く尖った生殖器にもたらされる少女の快感に夢中になっていた。
 閉じ合わされた少女の幼い脚の間にはたっぷりと蜜が塗れ、そこを前後する赤黒い生殖器をリズミカルに締め付ける。一方で綻び始めたユイの幼い花弁は熱い滾りに擦られ、幾重もの快感を紡ぎだしていた。
 折り重なる快感がお互いの行為を加速させ、ユイはまるで本当にシローを受け入れてしまったような錯覚さえ覚える。
「ぁふ……にゃぁ……っく」
(キモ、チ、いいようぅ……っ) 
 ユイもえっちなことには興味津々な年頃だ。自分が寝た後にお父さんとお母さんが何をしているのかは知っているし、こっそりとインターネットで男の子についている“それ”の写真を見たこともある。
 形こそ違え、シローの股間にそそり立つ怒張はそれに勝るとも劣らないサイズに膨張していた。その根元にはぱんぱんに膨れ上がった子袋がくっついて、シローの腰の前後に合わせて揺れていた。
 もう何ヶ月もお預け状態を続けられたシローの子袋には、夜毎姉の胎内に流しこまれていた子種がはちきれんばかりに詰まっているのだろう。
「シロー、苦しいの? ……え、えっちできなくてっ、苦しいの……?」
 熱い息を堪えながら、背中を捻って問うユイには答えず、シローはぐっと少女の背中に深く覆い被さると、生暖かい舌でユイの顔を舐めまわす。
 さっきまで自分の大切なところを責めなぶっていた舌だ。自分の匂いが染みついてしまっているようで、ユイは真っ赤になって顔を反らした。
(…………んむ、っ……)
 羞恥を堪え、ちゅぶちゅぶと顔に塗りたくられる獣臭い唾液をユイが小さな舌で舐めとると、ぞくぞくと甘い痺れが少女の背を震わせる。
 体勢が変わったことで、シローの突き上げが一段と激しくなる。シローの逞しい生殖器はよりいっそう深い角度でユイの内腿を突き上げ、下腹部にぺちぺちとぶつかる。前後運動のたびに包皮に埋もれた最も敏感な部分を擦りあげられ、ユイはびく、と背中を仰け反らせた。
「ひゃうぁっ、あ、ぁあ……シローっ、シローっ……!!!」
 ぐちゅん、ぐちゅん、とシローの逞しい剛直が突き上げられるたび、ユイはシーツに爪を立てて込み上げる快感を飲み込む。
 脚の付け根を行き来する硬く熱い生殖器から発された熱が、じんわりと全身に染み込み、伝播していくかのよう。頭の奥までをじんと痺れさせるピンク色の刺激に、ユイは口のなかに溜まった唾液をこくりと飲み下す。
「お……ねえちゃん……っ」
 何年も前からずっとずっと、ドアの隙間に覗き見ていた姉の部屋での光景がユイの脳裏をよぎる。
 ちょうど今のユイと同じ格好で、シローの熱い滾りを受け入れていた、姉の姿を。
(お姉ちゃん……こんなにキモチいいコトしてたんだ……っ)
 それは、ユイだけしか知らない姉とシローの秘密。
 娘のプライバシーを尊重するという名目でつくられた完全防音の部屋の中で、マイは毎夜のようにシローを自分の部屋に招き、まだ熟しきっていない瑞々しい身体をシローの獣欲に捧げていた。
 時に四つん這いになって膝を付き、時に愛しい相手を受け入れるように仰向けになって。マイはシローの逞しい背中を抱き締め、その白い身体を受け止めていた。
 シローのてらてらと光る太く赤黒い生殖器が、たっぷりと蜜を滴らせた姉の薄い桜色の花弁を掻き分けながら激しく出入りし、やがてその奥底に煮え滾るほどの白濁液をマグマのように噴出させる。
  力強くも猛々しい雄の表情でシローが力強く腰を叩きつけるたびに、ピンク色を覗かせる女の子の部分からは蜜が噴きこぼれ、シーツの上に散ってゆく。指なん かとは比べ物にならない太く長い肉の塊。限界まで硬く大きくなったそれが、じゅぷじゅぶといやらしい音を立てて、大切な場所からおなかの奥深くまで沈み込 み、ぬめる肉孔を深々と掻き回す。
 顔を真っ赤にしながら枕を噛む姉は、逞しいシローの身体の下で腰をくねらせて大きな生殖器を根元までくわえこみ、押し殺した悲鳴をあげながら、何度も何度も絶頂に達していた。
 そこには言葉や性別、そして種族すらも超越し、打算もなく純粋に想い合う二人の愛の姿があった。
(ふぁ……っ)
 姉とシローの恥態を思い出し、ユイのおなかの奥がきゅんと切ない悲鳴を上げる。とく、とく、と高まる鼓動は、心と身体の両方をもどかしいキモチで満たしていく。
(シロー……、すっごく、苦しそう……)
 1年以上に渡った姉とシローの蜜月も、この春――マイが都内の私立の学校に進学を決め、通学のため寮での生活をはじめるようになってからは途切れている。
 自分を受け入れてくれるパートナーを失ったまま秋を迎えたシローは、これまでにない頻度で暴れ、犬小屋や塀に当り散らすようになった。豹変した彼を見て、ただただ困惑するばかりの両親のそばで、ユイだけがその真実の理由に気付いていたのだ。
「シロー、お、お姉ちゃんいなくて、寂しいよね……? ずっとずっと、苦しかったんだよね……? えっち、できなくて……苦しいんだよね……」

 わぉぅんっ!!!

 答えの代わりとばかりに、シローの生殖器がひときわ強くユイの秘所の入り口、もっとも敏感な部分に押し付けられる。
「ひぁああああ!? ……っく、ぁ、ふぁ、だめ、だめぇ……それダメ…っ、ヘンになっちゃうっ、だめえぇっ……!!」
 断続的な快感に少女の肉芽はすっかり縮こまり、包皮の中に埋まっていた。その上を前後するシローの生殖器はぴちぴちと跳ねながら透明な先走りを吹き出している。姉との夜毎の営みで巧緻な愛撫を覚えたシローは、ユイの身体を徹底的に責めなぶる術を心得ていた。
「ぁ、あっ、あ、あ♪、あ…っ♪」
 いつしかオクターブを越えて高まるユイの喘ぎに応えるように、シローは執拗なまでにぐいぐいと腰を押し付けてきた。
 押し広げられた無毛のスリットの奥では、粘度の高い愛液にぬめる柔襞が小さくほころびて内側に溜まった蜜を覗かせている。まだ誰の侵入も許したことのない処女粘膜の内側では、すっかり準備の整った瑞々しい柔襞が、さらなる刺激を求めて小さく蠕動していた。
「シローっ、シロー、シロぉ……っ」
 きゅんきゅんと、少女の胎内で純潔に護られた子宮が疼く。もっと深く、もっと強い繋がりを、少女は本能で求めていた。
 激しく尻尾を振りたて、溢れんばかりの好意をぶつけてくるシローに、いつしかユイも本当のいとおしさを覚え始めている。シーツを掴む手に力が篭る。耳元で響くシローの熱く荒い息がぞくぞくと背筋を震わせる。
「ぁ、あ、あ、あっ、ぁっ、あっ、ぁーっ!!」
 こりっ、と尖ったシロ-の肉槍が、ユイの肉芽を突き上げる。
 跳ねあがる嬌声のオクターブは、かき鳴らされる天使の竪琴のよう。
 最後のひと擦りに突き上げられて、ユイはびくっとベッドの上に手足を突っ張った。腰がじんわりと甘く痺れ、おなかがふわふわと宙に浮かぶようだ。下腹部のさらに奥深くから湧き上がった熱が、こぽり、と大きく少女の蜜口から溢れ落ちる。
(ふわぁ……っ)
 甘い吐息がユイの唇から溢れ出す。
 かつて一度も経験したことのない、あまりにも高い快楽の頂き。ユイの拙い一人遊びではとても到達することのできない悦楽の境地だった。
 脱力した少女の身体がベッドに沈む込むと同時、シローはユイの身体の下から生殖器を引き抜いた。いまだ満足に至らないそれは、ぺちんと勢い良くシローの腹の下で跳ね回る。
「ぁふ……」
 心も体も溶かしてしまうような絶頂の余韻に浸りながら、ユイは力の入らない身体をもぞもぞと入れ替えた。
 シーツの上に背中を推しつけ、両足をぐっと広げ、仰向けになってシローを見上げる。
(シロー……、すっごく、キモチよかったよぉ…っ)
 さくら色を覗かせてほころびた花片から、なおも間断的にとろとろと甘い蜜を吹き、ユイはまだ興奮覚めやらぬ様子のシローの首に手を伸ばした。舌を出して息を荒げている愛しいパートナーに、甘く囁きかける。
「……ね、シロー、わかる? ……わたし、シローにイかされちゃったんだよ……?」
 まだ、とくとくと疼く股間を晒すように、ユイは大きく脚を広げて、シローの身体を迎え入れる。逞しい肩をぎゅっと抱き締め、お日様の匂いをさせる毛皮に顔を埋めて深呼吸すると、ユイの背中にぞくぞくと甘い痺れが走った。
(シローの匂いだ……っ)
 安堵感をたっぷりと与えてくれる、枯草とお日様の匂い。大切な家族として2年半を共に過ごした、自分をどこまでもキモチ良くさせてくれる相手の存在感が、幼い少女の胸いっぱいに広がってゆく。
 快感の余韻に身を委ね、幸せに浸るユイは、ゆっくりとシローの鼻先に顔を近付け、目を閉じてキスをした。
 すぐに応じて舌を伸ばしてくるシローを受け入れ、唾液を飲み下す。
「んぅ…っ、んむ、れるっ……ちゅ」
 ゆっくりと舌を絡め、粘度の高い唾液を啜る。
 事後の余韻に浸る優しいキス――ユイはそのつもりでいたが、シローはそうではなかったらしい。逞しい四肢をベッドの上に踏ん張らせ、シローはユイの腕を振り解いて、ぐいと腰を持ち上げる。
「きゃうっ?!」
 たちまちユイはシローの下に組み伏せられてしまった。
 まるで見せつけるように、シローは猛々しくそそり立つ生殖器を少女の眼前に突き付ける。ほこほこと湯気を立てて、ユイの蜜にぬめる肉色の巨槍は、まだまるで満足していないとばかりに先走りの粘液の飛沫をユイの顔に飛ばした。
(し、シローの、おちんちん……っ)
 目の前にはっきりと晒される、シローの雄性、獣欲の塊。いつもの元気いっぱいでやんちゃなシローとはまるで結び付かない、恐ろしいまでもの迫力を伴ってグロテスクにびくびくとのたうつそれが、ユイの柔頬へと押しつけられた。
 交合の相手を求め、その内側に呆れるほどの子種を蓄えた凶悪な生殖器――肌に触れるペニスの先端は熱く脈打ち、灼けるほどのすさまじい熱量が少女の胸を高鳴らせる。
 早鐘のような心臓の鼓動に突き動かされるように、ユイは両の手を熱く尖る肉槍の先端へと伸ばす。
「シロー、イってないんだ……よね」
 細い指が、びくびくと跳ねる生殖器を包む。柔らかくも熱く蠢く巨大な肉の槍は、少女の手のひらには遥かに余る。粘膜におっかなびっくり触れながらも、次第に大胆に。小さな手のひらから大きくこぼれ出すシローの生殖器を、ユイはやさしくしごき始めた。
 ちゅ、くちゅ、ちゅぷ……
  硬くはりつめた、火傷しそうに熱い生殖器をくねらせ、シローが小さく吠える。腰にダイレクトに伝わる刺激が、シローの獣の官能を呼び覚ましているかのよう だ。落ちつきなく腰を左右に振りたて、しきりに生殖器を揺する。ユイは手の中から暴れて飛び出しそうになるシローの肉槍をそっと握るので精一杯だった。
「……シロー…? こ、これ、してると……キモチいいの……?」
 様子の変わりだしたシローに、驚きながら、おずおずとユイは指の動きを繰り返す。
  手指を持たない獣同士の交わりでは、こうした手淫など未体験の感覚のはずだ。それを甘んじて受け入れているのは、やはり姉も同じようにシローを悦ばせたこ とがあるからだろう。自分の手のひらでシローが気持ち良くなっていることに感動を覚え、ユイはやわらかく白い手を使って、精一杯シローに奉仕する。
 ほどなく、シローの生殖器先端から滲む粘液に変化が現れた。さっきまでは比較的さらさらして水のようだった先走りが、徐々に粘りを増し、色も白く濁り始めたのだ。
(うわぁ……こ、これ……シローの……せーえき…かな?)
 むっと立ち込める雄の匂いに、頭がくらくらとする。指の間をこぼれ落ちる粘液が、ユイのはだけた胸の間にぽたぽたと散った。まだブラの必要もない薄い胸、それでも尖ったピンクの先端に、シローの先走りが垂れ落ちる。
「シロー……もっと、してあげる…よ……♪」
 とうとう我慢できなくなり、ユイは興奮に震える小さな唇で、赤黒い生殖器の先端をくわえた。
 クラスメイトが持ってきたえっちな雑誌で覚えた知識。その行為をなんと呼ぶのかは知らなかったが、グラビアの中の男の子は、やっぱりとても気持ちよさそうにお姉さんの口でおちんちんをしゃぶられていた。
「んぅっ!?」
 小さな唇が触れた途端、ぴゅぅ、と吹き出した粘液がユイの口の中に広がる。圧倒的な存在感で喉奥から食道までをも占領するシローの味とシローの匂いに、ユイの股間が再び熱く疼き始めた。
「シロー、……ちゅ……む……お姉ちゃんはしてくれなかったよね。……んむっ……れるっ……お、姉ちゃん、自分が……キモチ良くなるだけで、んっ、んんっ……し、シローのこと、…ちゅ…・…こんな風に……してくれなかった…あむっ……よね?」
 自ら仰向けになり、無防備な腹を晒して、犬の生殖器を口に含む――それは獣に屈服するのと同義の行為だ。人としての尊厳も無くす行為とそしられかねないだろう。しかし、ユイに有るのは愛しい相手に尽くしたいという一心のみだった。
 あるいは、それもまた歪んだ姉への反発心――あるいは嫉妬なのかもしれない。
 自分は姉とは違う。あんなにたくさん、好きだと言ってくれていたシローをあっさり見捨てて、どこかに行ってしまった姉とは違うのだと。ユイはただ、そう言いたかったのかもしれない。
 なおも強く脈動するシローの生殖器に、小さな舌を絡め、唇を押しつけて前後させ、指をさらに大きくスライドさせる。シローの動きが次第に早まり、息が荒くなってゆく。ユイはいつしか全身を使い、シローの快感を高める事に夢中になっていた。
 口腔に拡がる生臭く苦い味を堪え、精一杯の動作で溢れ出す半透明の白濁を舐め取り、飲み下してゆく。唇を大きく広げ、熱い剛直の先端を口に含んで、奉仕を繰り返す。
「んむっ……ねぇ、……シロー、キモチいい? ……あたし、うまくできてる、かな?」
 本当なら、もっと根元まで、全部を口の中、喉の奥まで含んで慰めてあげたい――けれどユイの唇ではどうしてもそれは叶わなかった。精一杯の口腔奉仕に、シローは激しく声を荒げる。
 尻尾を激しく振りたてながら吠え、それでもぐいぐいと腰を押しつけてくる。何度も喉の入り口を熱い生殖器の先端で擦られ、そのたびに咳き込みそうになりながら、ユイは生殖器への愛撫を止めなかった。
「んぅ…っ!!!」

 うぉ、おぉおんっっ!!

 シローが腰を止め、大きく吠える。同時に、爆発するように、シローの生殖器が先走りを噴き上げた。
 それをも全て唇の中に受け止め、ユイは小さな喉を動かして飲み込んでゆく。
「ん……じゅるっ……んくっ……ぁふ……すごいよ……シローの、熱くて、おっきくて……シローの、味が、いっぱい……んっ」
 じゅるっ、と先端に詰まった粘液を吸い上げて嚥下する。すると、ユイの胃や食道までもがかぁっ、と熱を持って疼くのだ。少しでもシローを受け入れたい、そんな想いでユイの頭はいっぱいになり、同時に少女の下腹部は切なく甘い疼きを繰り返す。
 とうとう最後の一滴まで、ほとんど残さずに飲み下し、ユイはおおきく息をついた。
「はあっ……」
 シローの獣欲の爆発がおさまるのを見届け、なおもたらたらと粘液をこぼすシローの生殖器から口を離す。
 そうして、ユイは正面からぎゅっとシローを抱き締めた。
「シロー……」
 そっと、愛しい相手の名を――もはやペットと飼い主、という枠では括れない思いをこめて、ユイはシローの名を囁く。
 ぉん? と首を振るシローの耳にぐっと唇を押しつけ、ほほを当て、決意を込めるように先を続けた。
「……あたしなら、……いいよ?」
 こつん、とシローの頭に額を寄せて、荒い息をゆっくりと押さえながら、ユイは胸に溢れそうになる想いを口にする。
 じっと、ただ真摯に。
 精一杯の言葉で、シローを抱き締めた。
「お姉ちゃんはしてくれなかったこと、シローにしてあげたいよ……」
 ゆっくりと、確認するように一語一語を区切りながら、ユイはシローに訊ねる。そうすることで、本当にシローと意志を通じ合わせることができるというように。
 ユイは、一人の少女としてシローを愛していた。
 心に満ちる甘く切ない思いを、かすかに震える唇に乗せて言葉にしてゆく。それは悪魔の誘惑のように、あるいは天使のもたらす福音のように、産まれてからずっと家族同然に過ごしてきた愛犬に囁かれていった。
「あたし……」
 こくり、と緊張で再び渇いた喉に、粘つく唾を飲みこんで。

「――あたし、シローの赤ちゃん、産んであげたい」

 ユイは、はっきりとそう告げた。
 姉とシローの、あまりにも倒錯的な行為を覗き見て、火照る身体を持て余すように拙い自慰に耽るようになった頃から、ずっと心に秘めてきた願いだった。
 種族の壁を超え、遺伝子と、生命としての尊厳の境界すら破壊せんとする、甘くも切ない懇願。おなかの奥で疼く子宮の求めるままに、シローの子供を孕み、産みたいと――ユイは偽りなくそう思っている。
「シローは、嫌? あたしとの赤ちゃん、欲しくない……の?」
 なによりも、シローを置き去りにしてどこかにいってしまった姉なんかよりもずっとずっと、シローを愛しているのだと。少しでも多く伝えたい。
 情欲に濡れ、半裸の身体を粘液と汗でとろとろに濡らし、蕩けるような笑顔ですがるような少女の問いに、シローまっすぐな視線で答えを返す。
 ――ぉんっ。
 低く響いたその吠え声は、了承、の合図だった。



 (続)

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