シロフミ 2020/08/05 21:48

シローとユイの話・その4

「ふぅ……」
 ぼうっと熱っぽい頭を、枕のうえにころん、と転がす。
 12月の寒さですっかり冷えたベッドのなかで、頭まで毛布を被って、ぎゅっと身体を丸めながら、ユイは溜息をつく。
 おなかの中で、とく、とく、と息づく赤ちゃんの鼓動は、日に日にはっきりと感じられるようになっていた。自分が大事な大事な赤ちゃんを育てている、ということに覚える歓びは大きく、毎日がとても新鮮だ。
 お母さんになるという事は、こんなにも素晴らしいのだと知り――ユイは驚きでいっぱいだった。
 けれど、不満もある。
 おなかの奥が熱っぽく疼く。脚の付け根は今日もじんっと鈍く痺れ、甘い刺激を求めて少しずつ蜜を分泌している。少しずつ大きくなったおなかに合わせるように、ユイの身体も変化し続けている。
「シロー……っ」
 胸の奥が切ない。愛しい相手の名前を呼ぶだけで、きゅんと締め付けられるように、小さな胸が苦しかった。
 シローはマイが帰ってきてから、いくらユイが誘っても応じてはくれなくなっていた。いつも一緒にいてくれはするものの、それ以上のことはまるでしてくれない。誰も見ていないから、とキスをねだっても、まるで興味がないようにぷいとそっぽを向いてどこかに行ってしまう。
(……シロー、どうしちゃったんだろ……)
 今朝の散歩は姉と一緒だった。昨日も、その前も。そして夕方には、ユイがちょっと気分が悪くなり、ベッドでうとうととしていた隙に、マイが勝手にシローを散歩に連れて行ってしまったのだ。
 ショックだった。シローなら、ユイが行くまでちゃんと待っていてくれると思っていたのに。姉はユイの落胆を知ってごめんなさいと頭を下げてくれたけれど、そんな問題じゃなかったのだ。
(シローは、あたしのこと……嫌いになっちゃったのかな……)
 そう考えると、おなかの奥にしくんっ、と鈍い痛みのようなものが沸き起こる。まるで冷たい鉄を飲みこんだみたいに、ママになろうとしている身体がしくしくと軋むのだ。少女にはまだ理解できない、嫉妬という感情だった。
 急に訪れた姉――それは、かつてシローと愛を交わしていた相手だ。幼いながらもユイは、シローを奪われることを警戒している。
「っ……ごめん、ごめんね……」
 しらず、おなかを押さえていた手のひらに力が篭っていた。パジャマが引っ張られる感触でユイははっと我に帰り、慌てておなかから手を離し、できるだけ優しく、そっと撫でさする。
 この時期の胎児はとても繊細で、母親の不安を敏感に嗅ぎ取って反応する。もっとも安静にしなければならないときだった。
 早まる赤ちゃんの鼓動から、まだ治まらない動揺を感じ、ユイはそっと語りかける。
「だいじょうぶ……なんでもないよ。いい子だから……ね……?」
 小さな身体で精一杯、ユイは母親であろうとしていた。訳の分からない不安と焦燥にに押し潰されそうになりながら、賢明におなかの赤ちゃんのことを思いやる。誰もが見知らぬなかで、赤ちゃんのことを大切に思ってあげられるのはユイだけなのだから。
 そうして一人、小さな胸を痛めているうちに、次第に一つの感情が形をとりはじめてゆく。深い混沌とした思いのなかから、次第に輪郭をあらわにしてきたのは――はっきりとした姉への拒絶感。
「――やっぱり、お姉ちゃんが悪いんだよ……」
 ぎゅっと枕をつかみ、うつ伏せになって。おなかを庇いながら、ユイはちいさく、拙い呪詛の言葉を口にする。
「ずるいよ。お姉ちゃん……いまさら帰ってきて、シローのこと……取っちゃうなんて……」
(お姉ちゃん、シローの赤ちゃん産んであげられないのに。あたしだけなのに)
 とく、とく、と早まる鼓動。赤ちゃんに合わせるように、いつしかユイの胸も高鳴っていた。
 ユイの脳裏を、シローと番っていた姉の姿がかすめてゆく。
 何度も何度も声を上げて、シローの精液を受けとめていた――姉の姿を。
(違う……もんっ)
 大好きなシローに、大切なシローに、一番すてきなことをしてあげられるのは、自分だけなんだ――そんな幼くも、どろどろとした感情が少女の胸の中に渦巻く。
 シローの事は、嫌いじゃない。少しも嫌いにはなっていない。ユイは何度も何度も、自分の心に問いかけてその答えを確認した。
 シローは、ユイのおなかのなかの赤ちゃんのお父さんだ。シローがユイを大切に思ってくれているのも間違いない。ユイは乙女心に、それをはっきりと確信していた。シローが父親として、その子供を孕んだ自分を思いやってくれるのを感じ取っていた。
 確かに、孕んだ雌相手に雄が欲情することはない。それでもユイがえっちしたい、と訴えれば、シローはしっかり応じてくれていたのだ。
 それも、これも。
 すべて――マイの帰宅から、狂ってしまった。
「お姉ちゃんがいるからいけないんだ……」
 ぼそっとつぶやいて、ユイは枕に顔をうずめる。
 ユイとシローが関係を持ってからまだ二月あまり。一年半もの間シローを独占していた姉に、シローも心を揺り動かされているのだろうか。そう考えるだけで、なんだか心の中をもやもやしたものがいっぱいになってゆく。
 シローと愛しあっている時とはまるで違う、嫌な気分だった。




 クリスマスがやってくる。今年のユイは去年みたいにプレゼントをあれもこれも欲しいとねだってわがままを言うことはなかった。それどころか、自分には何も要らないと言いだしたのだ。不思議がる両親に、ユイはシローの新しい家をねだった。シローがまだ子犬の頃から住んでいた庭の犬小屋は、もうすっかり古びていて、わんぱくざかりのシローが噛みついたり蹴飛ばしたり引っ掻いたりして、すっかりボロボロなのだった。
 『あたしより、シローにプレゼントあげてよ!!』と強弁するユイにすっかり困惑しながら、両親は年明けまでにシローの犬小屋を新しくすることを約束し、ユイへのプレゼントは欲しいものができるまで延期、ということにした。
「ふぅ……」
 パーティの余韻に浸りながら、ベッドの上に腰を下ろす。
 両親はまだリビングで、突然訊ねてきた大学時代の友人と楽しそうに騒いでいる。肩を叩き笑い合う父親や、まるでクラスメイトとユイがするように楽しそうにお喋りする母親は、ユイの知っている両親とはまるで違う顔をしていた。
 姉は、友達と別にパーティの予定があるといって、午後から家を開けていた。父親はなんどもなんども門限を守るように繰り返していたけれど、たぶんその時の『わかってる』という返事はウソであると、ユイも気付いていた。
「…………はぁ」
 久々に訪れた、一人の時間。
 ユイはここ何日かそうしてきたように、ベッドの上に横になり、そっとおなかを撫でる。そろそろ服の上からでも感じられるようになった、ふっくらとしたおなか。お風呂で裸になってみると、ちょうどごはんを食べ過ぎた時みたいにぽこん、となだらかに盛り上がっている。おヘソを持ち上げるような格好で膨らんだおなかの中、赤ちゃんを育てる揺り篭のなかに、シローとユイの赤ちゃんがすくすくと育っている。最近ではスカートを選ばないといけなくなってきていた。
 ほら見なさい、やっぱり太ったじゃない、と笑う姉の顔がユイの頭を掠める。
(ふーんだ。そんなんじゃないんだからねっ!!)
 もっともっと、とっても大切でとても大事で、なによりも素敵な――今まさに芽吹き、育ち続ける命が、ユイのおなかの中にいるのだ。
 ユイには、確かにプレゼントなんか不要だった。だって、ユイの一番欲しいものはもうちゃんとユイのおなかの中で、元気に大きくなっている。
(シローと、あたしの赤ちゃん……)
 それは、クリスマスプレゼントに子供が願うには微笑ましいものだったかもしれない。妹や弟をねだるのと同じように、まだ性の何たるかも知らない子供が、母親を真似して赤ちゃんを欲しがる事は決して不自然なことではない。
 ――それが、正真証明の、その子の血を受け継いだ子供でなければ、だが。
 大好きなシローの赤ちゃんと一緒に迎えるクリスマス。最近はすっかりシローと遊ぶこともできなくなったユイにとって、なによりも、とてもとても大切な出来事だった。
 きっと、それだけでも十分だったのだ。

 ぎぃ……

 わずかに軋むドアの音に、ユイはまどろんでいた意識を浮上させる。
 冬のこの季節、ドアは乾燥して静かには開かない。なんだろう、とゆっくりベッドの上に身体を起こそうとしたユイに、それはがばっ、と飛び付いてきた。
 それは無論のこと、サンタクロースなどではなく、プレゼントを渡すタイミングを見るため、息を潜めてやってきた父親でもなく。
 雪のように真っ白な、大きな大きな身体。
「ふぁわ!?」
 いきなりの事に驚いて頓狂な声をあげるユイから、寝惚けまなこが一瞬で吹き飛ぶ。
 真っ白な毛皮を振るい、シローははっはっ息を荒げ、尻尾を振って、ベッドの上に飛び乗っていた。あっと思う間もなく、ユイはその大きな身体にのしかかられ、組み伏せられてしまう。
「し、しろー……!?」

 あぉんっ!!

 とても、元気の良い返事。
 あまりの事にユイは混乱し、その名を呼ぶことしかできない。だって確か、今日はお客さんが来るから、とシローはできたばかりの新しい家にいるようにと、庭に締め出されていたはずだ。
 けれど、丸い目をいとおしげに細め、ぐりぐりと濡れた鼻先を押し付けてくるふかふかの白い毛皮は、まちがうことなくシローのもの。
「し、シロー……来てくれたんだ……っ」
 ユイの心に、ぼっ、と熱い火が灯る。大好きな大好きな相手が、クリスマスにやってきてくれた。それだけでもう、空っぽに思えていた胸の中がいっぱいになるようだ。
 いっぱいの元気をアピールするように、シローは大きな舌でぺろぺろとユイの顔を舐め始める。
「ぁは…く、くすぐったいってばぁ……っ」
 答えながらもユイも抗わない。シローの逞しい肩にそっと腕を絡め、ぎゅっと顔を寄せた。元気良く吠えるシローの声が、ユイの心を解きほぐしてゆく。
(シロー……っ)
 切ない胸が、とくとくと早まる。愛しくてたまらない思いが溢れ出す。とにかくなんでも構わない。シローにこの気持ちを伝えたかった。
 クリスマスに、恋人と過ごす――
 その言葉に、もうひとつ特別な意味があることを、ユイは始めて知ったのだ。
「あ……」
 不意に、その感触に気付いて、ユイは顔を赤らめる。
 こつこつと太腿をつつく固い感触。その先をべっとりと濡らす粘液。けれど決して不快ではない。むしろとても愛しく懐かしい匂い。
 ユイにじゃれつくシローの下半身からは、すでにぎんぎんと滾った赤黒い生殖器が突き出していた。この一週間あまりお預けを食わされたシローのそれは、これまでユイが見たこともないくらい大きく、凶悪な形をしている。剥き出しになっている肉槍の先端を見ているだけで、おなかの奥を犯されているような錯覚すら覚えてしまうほどだ。
 すっかり準備万端のパートナーに、ユイは嬉しくなって抱き付いた。
「シロー、ずっと、我慢してたの……?」
 わぉんっ!!
 力強く、吠えて答えるパートナー。ユイの下腹部に、たっぷりと子種の詰まった生殖器が押し当てられる。シローはもう興奮していて、軽く腰を振り始めている。こんなときまでまっすぐ正直なシローに、ユイも恥ずかしさを堪えて囁く。
「そ、そうなんだ……。あ、あたしも……シローと、えっち……したかった……よ?」




「えへ……もうこんなにおっきくなっちゃったの……すごいよね、シローの赤ちゃん、とっても元気だよ……?」
 パジャマを脱いで、ふっくらと膨らんだおなかをそっと撫で、ユイはシローに報告する。おなかだけではなくて、ユイの胸も一回り大きくなっていた。ほの淡い薄ピンクから、鮮やかな桜色へと色づいて尖った胸の先端は、ユイがおなかの中に宿した生命の存在をはっきりと示し続けているようだった。
「ぁは……シロー、くすぐったいよぉ……」
 興味深げに下腹部にぐりぐりと鼻先をおしつけてきたシローの頭をそっと抱え、ユイは胸の奥に溜まった熱い吐息をこぼす。シローのヒゲや白い毛皮が柔らかなユイのおなかをくすぐって、ユイは堪えきれずにくすくすと笑った。
「ぁあっ、シローっ……だめぇ……そこ、舐めちゃ……っ」
 ユイの腕からするりと抜け出して、シローはユイの下半身に鼻先を突っ込んだ。荒い息の隙間から長い舌を伸ばして、ユイの股間を舐め始める。
 動物においては、妊娠した雌は発情することはない。動物にとっての性交は生殖が目的であり、子を孕んだ時点でその役目が終わるからだ。
 しかし、シローは違っていた。人間と交わる方法を知り、その快楽を知ったシローは、愛しい相手の求めに応じるまま、おなかを膨らませたユイに対してはっきりと欲情をしている。
「ふぁあああ……っ、や、やだぁ……そこ、擦れるぅ……っ、くちゅくちゅってぇ…っ」
 たちまちとろけたユイの唇から甘い声が漏れる。
 シローは執拗に舌を動かし、少女の股間をべちゃべちゃと唾液で汚す。手指の代わりに自在に動く犬舌の感触は、人間のそれとはまるで違う。世の女性にはこれが忘れられずに愛犬をセックスのパートナーにする者も多いのだ。
 まして、姉との1年半にも及ぶ行為で仕込まれ、まだ処女だったユイをあっというまに快感の虜にしたシローの舌技だ。たちまちのうちにユイはシローの舌に夢中になった。
 少女の白い肌の奥の奥。新たな生命を孕み、ほっこりと湯気をたてそうにほころんだ小さな秘裂だけでなく、その上の小さな突起やヒクつく尿道口、そして小さな双丘の狭間にある慎ましやかなすぼまりまでもを舐め上げる。
 点ではなく面での快感は、おなかに子を宿してはいてもまだまだ未発達なユイを容易く快感の先端へと押し上げた。
「ぁ、あっ、あ、あーっ!!」
 甲高い声でびくびくと身体を仰け反らせるユイを、さらなる快感の波で押し潰そうと、シローはくるりと体勢を入れ替え、ユイの身体をまたぐように向きを変える。
 すると必然、シローのおなかから生えてびくびくと震える生殖器がユイの目の前にやってくる。
 たらたらと先走りの粘液を滴らせる赤黒いペニスに、ユイは心の底からきゅんと疼く愛しさを感じてしまう。
「シローっ……」
 切なさのまま、ユイは両手に握ってもまだ余るような、大きく長い生殖器を掴み、大きく口を開けて頬張った。熱く滾る肉の塊が、少女の柔頬の中に包まれてぶしゅっと弾け、灼熱の液体を吹き上げる。
「んむっ……すご…っ、シローの、おっきくて……硬い…ちゅぅ…るるっ…… あは、……れるっ…っむっ、ここ、いっぱい……シローのせーえき、詰まってるんだ……」
 自分を孕ませた愛しいパートナーのペニス。それを再び身体の中に感じる歓びに、ユイは夢中になってシローの剛直を舐め上げた。はじめの時のようなぎこちなさはもうない。ただひたすらに、愛しい相手に尽くしたい、シローに気持ち良くなってもらいたい、それだけを思う真摯な愛撫だ。
「あたしのおなかとおんなじだね……シローが、せーえき、いっぱいおなかの中に、びゅるびゅるって出してくれたから……赤ちゃんができたんだもんね」
 その内側に溢れそうなほどの生命の素を漲らせ、いびつに膨らんだ生殖器を、喉奥までくわえ、ユイは口での奉仕を繰り返した。じゅるりじゅるりと太くねじくれた肉槍が幼い唇の中に抜いては差し込まれる様は、まるでそこを孕ませんとしているかのよう。
「あはっ……シローっ……あたし、お口でも……赤ちゃん、できちゃうかもっ……」
 濃厚な愛撫はシローも同じだ。ふくらんだ秘花を鼻先で押し分け、そのさらに奥、柔らかくも繊細な肉襞がたっぷりと蜜を含み、よじれた幼い膣口までも、シローの舌が押し入ってゆく。ちゅぷりちゅぷりとかき混ぜられる入り口からは、すでに半透明のどろっとした本気蜜が溢れている。
 二週間の『おあずけ』に焦らされて、ユイの感度は普段とは段違いだ。ただでさえ妊娠という現象は女性の身体に発達を促し、感じられる快感も遥かに大きなものとなる。しっかりと胎児が育ち、ユイがその動きを幻ではなく確かな胎動として捉えられるようになって、少女は幼いながらも一人の女性としての成熟を始めつつある。
 お互いに生殖器を舐めあう変則的な快感で、それぞれに何度か昇り詰め、先に堪えきれなくなったのはシローのほうだった。
「あんっ……♪」
 ユイとしては、このままシローの熱く灼けるような精液を飲み干しても良かったのだが(そして十分にそれだけで絶頂に達することができたのだろうが)、シローはそんな場所で一滴たりとも自分の遺伝子を無駄にするつもりはないようだった。
 再び姿勢を入れ替えたシローは、ユイの上に覆い被さって漲る生殖器をそそり立たせ、ユイの柔らかな下腹部に肉槍を突き立てんとしはじめた。
 大きく開かれた少女の脚の付け根に、ぬめる粘液を撒き散らすシローのペニスが何度も往復する。ほころんだ花弁は桜色に充血して小さくヒクつき、その奥に熱く太いシローの滾りを受け入れんと妖しく蠢いている。

 あぉんっ!!

 高々と鳴いたシローが、自分の組み伏せた雌に、再度己の証を刻み込まんとした瞬間。
「っ、待って……っ」
 ぐい、と今まさに肉の先端に貫かれんばかりだったユイは、残る理性を総動員してシローを制していた。シローの先走りと自分の唾液でべたべたになった顔をぬぐい、ゆっくりと腰を持ち上げる。
「待って、……シローっ……ね、お願い……あたし、ママだから…、お母さんだから……っ、このままだと、赤ちゃんが、痛くなっちゃうんだよ……」
 幼い瞳を切なさに細め、ぎゅっとシローの胸にすがりつく。
「ごめんね……でも、あたし……シローの赤ちゃん、ちゃんと、産んであげたいから……っ」
 シローは一人寂しく沈んでいたユイを慰めてくれるつもりだったようだが、この状態で正常位を保ちシローを迎え入れれば、ユイはどうしてもシローの体重を全部おなかで受け止めることになってしまう。そうなればおなかの赤ちゃんがどうなってしまうか分からなかった。
 だから、ユイはおなかに負担がかからないように、シローの方にうつ伏せになって、おしりを持ち上げる。この姿勢なら、赤ちゃんは潰されない。
 今のユイには、シローと同じくらい、おなかの中の赤ちゃんが大事なものになっていたのだ。
「シロー、おねがい……っ」
 シローを愛した証。シローを大好きになった証。はじめはシローとの繋がりとしてしか認識できなかったおなかのなかの小さな生命は、いまや少女にとってもかけがえのない宝物になっていた。
 だから。
 その赤ちゃんにも、いますぐお父さんであるシローを知って欲しかった。お母さんであるユイが、シローのことをどれだけ好きで、シローもどれだけユイのことを好きになってくれていて、こんなにもこんなにも気持ち良くしてくれたということを、少しでも多く伝えたかった。
 これはきっと、赤ちゃんがおなかの中にいる間しか伝えられないことだと、ユイはひとり確信していた。

 わぅ!!

「ふぁああああああああ!!!」
 パートナーが動物本来の交尾の姿勢に近いかたちで己を迎え入れてくれることを悟ったシローは、ぐいと力強くその上にのしかかり、はちきれんばかりに膨らんだ生殖器を深々と少女の柔孔に押し込んでゆく。
 腰を前後に震わせての挿入は、快感でたっぷりと濡れぼそっているにも関わらず、狭くきつい細孔をまるで肉の刃で切り裂くように鮮烈な快感となって両者を襲った。
「ぁ、あっ、シローっ、しろーの、おっきいの……おなか、いっぱい入って…っ!!」

 ぐじゅぶ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぐちゅるっ!!

 激しい前後運動に併せて、身体を左右に揺さぶる脚踏み運動。唸るペニスがまるで円を描くようにユイの胎内を掻き回し、孔の奥底を擦り上げる。小さなユイを押し潰さんばかりに背後からのしかかり、逞しい四肢をベッドに踏ん張って、シローは力強く腰を振り立てた。
「ふぁあ、あっ、ああああああ!?」
 ユイも負けてはいない。蜜を溢れさせうねる柔襞はよじれるように重なり合って、シローの生殖器をぎゅうぎゅうと締め付ける。おヘソのすぐ下まで感じる大きなシローの肉槍を、小さな身体は精一杯受け止める。
 種族の壁を越えた、神々しいまでもの美しさが、そこにはあった。
 シローの生殖器の根元に、大きく膨らんだ精瘤すらも深々と飲みこんで、ユイはシローの身体に引きずられるようにベッドの上で身体を跳ねさせる。ありえないほどに深々と、しっかりと繋がり合った生殖粘膜から、言葉にできない熱い想いがどっと流れこんでくる。
「っ、し、シローっ!! シロぉっ……!!!」
 わけもなくユイの両目が涙を溢れさせた。枕に顔を伏せ、カバーを噛み、怒涛のようなシローの想いに答える。
 重力に強調されてよりはっきり目立つユイのおなかを揺さぶるように、シローは野太い生殖器を無茶苦茶に振り回す。ベッドにしがみ付くユイの身体は潰されそうに軋み、同時にシローの巨きな生殖器を根元まで受け入れてはきゅぅと柔らかく、きつく締め付ける。そのたびにびくびくと震え、一次射精液を吹き上げるシローのペニスが、自分の身体の中に溶け込んでゆくような錯覚さえあった。
「っあ、ぅ、ふあ、っく、あんっ、あああっ!!!」
 おなかの中の赤ちゃんにはっきりと伝わるように、ユイはなんどもなんども心の中で赤ちゃんに呼びかけた。
(……わかる? ……これがお父さん、だよ? っ……あたし、いっぱいいっぱい、シローにきもちよくしてもらって、いっぱい、いっぱい、いーっぱいえっちしてもらって、あなたが産まれるんだよっ……!!)
 いつもよりもずっと、はっきりとシローを感じる。
 すっかり熟した子宮は、服の上からこそ目立たないが、ユイの細いおなかには到底納まりきらないようなほどに大きく膨らんでいるのだ。勢い子宮口も大きく下がり、ただでさえ狭い少女の膣を圧迫している。おまけにユイが最も感じる神秘の揺り篭の入り口、敏感な子宮口まで数センチも降下しており、シローの熱く硬く尖った生殖器はそこを容赦なくがつんがつんを突き上げるのだ。
 すっかり開発し尽くされた少女の敏感な性感でこれを堪えられようはずもない。
「っ、すごい、すごいよぉ……しろーの、しろーのおちんちん、赤ちゃんのすぐそばまで……っ、ふああ、ぁう、ぁぁううううっ!? ……ぁぁああああああああぁーっ!!」
 もう、限界だった。
 ユイはシローの身体の下で強引に腰をひねり、ぐるんと身体を回し、シローにまっすぐ向き直る。深々とくわえこんだ精瘤がユイの膣内をぐりんとこそげ、ユイはまた数度達したが――それはもうどうでもいい。
 シローにまっすぐ、その身体を迎え入れる正常位をとって、ぎゅっと赤ちゃんのいる大きなおなかをシローのおなかに押し付ける。すこしでもシローに、この自分の気持ちを伝えたかった。胸の中が愛しさでいっぱいになって、熱い気持ちがとめどなく溢れだして、嬉しすぎて死んでしまいそうな、この気持ちを。
 シローと、シローの赤ちゃんと、一緒に、何もかも一緒に感じていたい。それだけがユイを突き動かしていた。
「……シローっ……!!」
 これ以上の言葉をユイは知らない。
 だから、ありったけの気持ちをこめて、シローに囁く。応えてくれるように。自分のことだけを、見てもらえるように。
「お願い……あたしを、シローの……お嫁さんにして……っ!!」
 その告白と共に、今度こそユイは絶頂の輪へと飛び込む。

 わぅっ、あぉんっ、きゃううっ!!!

 同時に、シローも、泣き喚くような鋭く高い吠え声を連続させる。
 シローは、産まれて始めてはっきりと、ユイの身体で絶頂を味合わされたのだ。
 もともと本能に多く頼って生きる動物は、理性で生きる人間に比べて快感を感じることが少ないという。生来備わった発情という身体の仕組みによって生殖に疑問をもたない分、感じる快感が少なくても子作りをやめることがないからだ。
 人間が恋愛やセックスに至上の快感を見出すのは、理性を発達させたヒトという種族が、生殖に興味をうしなって子孫を作らなくなる可能性を防ぐためだと結論する学説は多い。
 シローの最後の一突きを受け止め、ぐちゅるゅっ、と蠢いた柔孔は、大きく滾る生殖器からありったけの白濁液を絞り取った。両手に余るほどの大量の精液を、ユイは狭い胎内に飲みこんでゆく。激しい刺激に合わせておなかの中の赤ちゃんがもがき、ユイは全身を戦慄かせて頭のてっぺんから爪先までを貫く激しい法悦に震える。

 ごるびゅぅううっ!! びゅる、びゅるるっ、っびゅるるるううぅっ!!

「ふわあああああああああぁああああ…………♪」
 途切れることのない、天上の歌声のような美しい声が、熱気の篭った部屋の中に響き渡る。
(赤ちゃん、すごく動いてるっ……あは、まだあたしのおなかの中なのにっ、シローのミルク、とっても美味しそうに飲んでるよぉ・・…)
 つぎつぎ注ぎ込まれるシローの射精は、終わることを知らないかのように続く。
 ユイの下腹部は一回りも膨らんでいた。開きかけた子宮口に無理矢理大量の白濁液が流しこまれているのだ。子宮の底、生命を宿した揺り篭の中で、赤ちゃんすらも飲み込もうと膨らむ刺激に、ユイは気絶しそうな陶酔を感じ、何度も何度もベッドの上で背中を跳ねさせる。
 びく、びくと背中をのけぞらせ、声を抑えて。
(ぁ、あ、あっ…………赤ちゃん、うごい、てる……っ)
 流し込まれた子種を取りこむために子宮口が緩む。十分以上に熟れ膨らんでいた子宮を、シローの野太い肉竿で直接突き上げられたのだから、ただでさえ不安定な状態にある胎が無事に済むはずはない。
 腹奥を直接掻き回す激しい交合によって、ユイの下腹部はびくびくと痙攣した。自分の意思に反して暴れだしたおなかをそっと撫でまわし、ユイはそれでも果てることなく続く快感の高波の狭間に溺れ続けている。
「ぁああ……っ、くぅぅ……っ」
(どうしよ……このまま、赤ちゃん、産まれちゃうのかも……。……あは、クリスマスに産まれた赤ちゃんなら、イエス様と同じ誕生日だなぁ…………だったら、あたし、マリア様かも……)
 ぼうっとした頭で、そんなことを考える。
 ユイは小学校こそ公立だが、その前に通っていた幼稚園はミッション系だった。まだ赤ちゃんがどこから来るのか知らなかった頃、イエス様の誕生を劇で演じることになったユイは、マリア様役の女の子が最初おなかを大きくしていて、次に厩に出てきたときには赤ちゃんを抱いていたのを見たときに、とてもドキドキしたのを思いだす。
 その時は、やっぱりあの子のおなかにはさいしょ、赤ちゃんが入っていて、それをあの厩の中でそとに出したんだろうか、でもどうやって? どこに赤ちゃんがはいるところがあるんだろう? と一人で思い悩んだりした。
(あは……ホントのクリスマスプレゼントって、赤ちゃんだったのかも……シローと、あたしの赤ちゃん……)
 これも苦痛からの逃避のための作用だろうか、切羽詰った状態の身体を切り離し、どうでもいいことがユイの頭の中を駆け抜けてゆく。
 びくびくと蠢く身体から乖離して、ユイの精神はいつまでも甘く切ない陶酔の中にどこまでもどこまでも沈んでいこうとする。
 このまま、赤ちゃんが産まれる――
「シロぉ……っ」
 ユイは混濁する意識の中、愛しい相手の名を呼び、最も愛しい相手を受け入れるやり方で迎え入れたシローに抱きつく。
 込み上げてくる愛おしさに、疼く下半身に、どうしようもなくなってユイがぎゅっとその腕に力を篭めた、その時だった。
「ユイ……」
 ふわりと忍びこんできた冬の寒さ。
 開けっ放しになっていたドアの隙間、その向こうに、
「あんた、やっぱり……」
 顔を蒼白にさせて、肩と唇を小さく震わせ、呆然と立ち尽くすマイの姿があった。



 (続)

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