シロフミ 2020/08/05 21:49

シローとユイの話・その5

 ドアの隙間から吹き込んでくる冷たい風が、急速に部屋の中に満ちていた熱気を拡散させてゆく。
 ぐっしょりと湿ったベッドの上、産まれたままの姿となって、シローの太く大きな肉槍に一番大事なところを貫かれたまま、ユイは呆然と姉の姿を見上げていた。
「あ……お、おねえちゃん……」
 突然のことに動揺するユイだが、混乱した思考は真っ白に頭の中を塗りつぶし、他に言葉を紡げない。
 アレだけの射精を終えてなお、シローの生殖器は大きく膨らんだままで、いまもなおユイの胎内にぎっしりと食い込んでいるため、動くことすらかなわなかった。
 その通りだ。シローの生殖器は人間のそれと違い、軟骨によってできている。事が終わってもすぐにしぼむことはない。それはユイも実体験を持ってしっかり学んでいた。
 動揺したのはユイだけではない。シローが慌ててユイの上から飛び降りようとして、身体を逆に向ける。とたん、ユイの膣の中でシローのペニスは繋がったままぐりんっ、とひっくり返った。
「ひぁああああッッ!!」
 ぶじゅっ、と白濁と蜜の混じり合った粘液を吹き上げ、イったばかりで敏感なユイの身体が跳ねる。
 同時に、ずくん、と胎内が重く沈む。
 急速に冷えこむおなかの奥。さっきまであれほど切なく疼き、びくびくと動き続けていたおなかが、ぴたりと動きを止め、まるで何もなかったかのように鎮まってゆく。
(え……?)
 突然の違和感に、ユイはぞっとする。
 同時に、冷たい何かを背骨に差し込まれたような、痛みのような鈍い感覚。とても快感とは呼べない、重苦しい圧迫感。
「――っ」
「あ、ま、待って!! 待って、おねえちゃんっ!!」
 だっ、と姉が走りだすのを見て、わけもなくユイの背筋に悪寒が走った。とんでもなく嫌な予感が、お腹の奥にずんっ、とのしかかる。
 おなかの中に満ちていた希望が、しぼみ、崩れ、粉々になってゆくような、空恐ろしいほどの虚無感。
 ユイは姉を呼びとめようと必死に身体を起こした。しかしいまだにシローと繋がったままでは、思うように立ち上がることもできない。逆にシローの生殖器にごつんっ、とお腹の奥を突き上げられ、頭の奥がえも言われぬ法悦に真っ白に塗りつぶされる。
 キモチだけが急速に冷えてゆく中で、びくびくと蠢き快感を紡ぐ生殖器が、恐ろしいほどに寒々しい。
「ふあ……っ、あ! …っ」
 勝手に上がる高い声だけが、ユイの鋭い快感の余韻を知らせている。
 ぢゅぶり、と動いたシローの肉槍の隙間から、どろどろと混じり合った赤と白とそれ以外の半透明の液体が、激しく吹き出してシーツの上にべちゃべちゃとこぼれてゆく。飼い犬と繋がったまま、なんどもなんども絶頂を繰り返すユイを。
 たったひとりの、血を分けた妹の、そんな姿を、足を止めた姉は肩越しに振り返り――
 とてもとても、醜いものを見たかのような、そんな表情で睨んで、まっすぐに駆け出していった。



 ◆ ◆ ◆



 それから二週間が経って。
 クリスマスも、年末の大掃除も、お正月も、いつもなら笑いながら過ごしていたであろう期間は、まったく味気ないまま過ぎ去って。
 ユイは、じっと自分の部屋の中にいた。
 ベッドもシーツも、見知らぬものに変えられている。壁紙も張り返られ、知らないハーブの匂いまでしていた。いつのまにか他の人の部屋になってしまったかのような自分の部屋の中で、ユイはごろん、と寝転がって知らない天井を眺める。
 あの、クリスマスイヴの晩。ユイが我に戻った時、シローはもう家のどこを探してもいなくなっていた。
 不思議に思ったユイが、シローはどこにいるの、とお母さんに聞いたら、わけもなくぶたれた。
 ユイはその夜すぐに病院に連れていかれ、次の日の朝からさらに大きな病院に移されて、いろいろな検査をされた。あんまり長い間座らされたり立たされたりお話を聞かれたりで、とちゅう何度か気持ち悪くなって吐いてしまった。お医者さんも慌ててユイを病室に戻したりした。
 退院したころにはもう冬休みもおしまい近くで、けっきょくそれからもユイはずっと学校を休まされることになっている。
 その一方で、お父さんとお母さんは気持ち悪いくらいユイに優しくなっていた。
 あの日、気が狂ったみたいに泣き叫んで暴れるお母さんと、もっと激しく泣きながら怒ったお父さんは、庭にあったシローの家をすぐに壊して、ゴミに出してしまった。シローの首輪も散歩用のロープも、ごはんもトイレもなにもかも、あっという間になくなって。ユイの家からはシローのいた痕跡は一つ残らず消えてしまった。
 ユイのおなかは、まるで何にもなかったかのようにぺしゃんこになっていた。あんなに大きくなっていた下腹部の膨らみは、触っても何も感じられない。
 いくら呼びかけても、いつまで経っても、赤ちゃんは答えてくれなかった。
「ねえ、お母さん」
 ユイはそうして、ある日の晩、眠る前に、部屋に来たお母さんに聞いてみた。
「あたしの赤ちゃん、どこにいっちゃったの?」
 母親はとてもとても辛そうな顔をしてユイを抱き締め、そのまま泣いた。



 ◆ ◆ ◆



「失礼ながら、お嬢さんに初潮は……?」
「いえ……家内からは聞いていません。恐らくは、まだ……」
「そうですか。では――おそらく、想像妊娠……というのが一番近いのではないかと」
「どういう、ことですか?」
「ここから先は、非常に……ご両親にはお話しし辛いことになります。申しわけないのですが、どうか冷静になってお聞きください」
「……はい。どうにか……努力してみます」
「お嬢さんが、どうしてあのような行為に興味を持たれたのかはわかりません。最近の子供は早熟ですので、どうしてもそのような知識は、昔よりも得やすくなっているでしょう。……統計的にも、ああした行為を、不完全ながら知っている子供は多いのが現実です」
「興味って……!! そんな!! 娘は被害者ですよ!? あの、あのケダモノに、無理矢理慰みものにされだんだっ!!」
「……興奮なさらずに。お願いします。ですが、そうした子供の理解では、どうしても知識に誤りがある。まだ性的に無知なお嬢さんは、おそらく――その、犬との交わりで、自分が妊娠した、と思いこんだのではないかと考えられます。
 今の子供ならば、セックスをすれば……それが具体的にどのような行いかは知らずとも、子供ができるというのは比較的幼いうちからも漠然とは理解していることです。しかしその一方で、犬と人間の間に赤ちゃんが産まれるのかということを、科学的にきちんと理解するのは難しい。だから――お嬢さんは、犬に犯された、という衝撃的な事実を受け止め、自分を守るために、そう想いこもうとしたのではないでしょうか」
「守るため……? そんな!! 何故ですか!? あんな、一方的に、……っ、傷つけっ、られた……ユイが、どうして、どうしてそんな風に!!」
「……あくまでこう考えられる、という推測でしかありませんが……たとえば、自分がしたことは悪いことではないのだと。赤ちゃんを作るための大切なことなのだと、そう思い込むことでショックから大切な心を守るという働きが、人の心にはあるのです。事実、お嬢さんはあれを苦痛だとは感じていなかったようです。……申し上げにくいことではありますが、これは確かな事実です」
「…………」
「さすがに、口止めされているというようなことは考えられませんからね……失礼。言葉が過ぎました。お詫びします
 ……大変に言いづらいことですが、お嬢さんのおなかは……その、とてもまともとは言えない状況まで傷ついていました。幸いなことに治療が可能な範囲ではありましたが、当然です。成熟した女性ならまだしも、お嬢さんのような娘さんが、……あの、あんな、暴力的な行為に耐えられるわけがない。……想像を絶する苦痛だったでしょう。それに耐えるためには、そうして心を騙し、守るしかなかったのでしょう――」
「……っ、なんてことだ……そんな……ユイ……っ」



 ◆ ◆ ◆



「ねえ、おねえちゃん」
「……なに?」
 寮生活の姉は、年明けとともに戻らなければならない。冬休み最後の日、なにかにせかされるかのように荷物をまとめていた姉の部屋を訪れ、ユイは聞いてみた。
「シローのこと、好きじゃなかったの?」
 いろいろ分からないことは多かったけれど、なによりもそれが一番、ユイには不思議で仕方なかったのだ。だって、あんなに気持ちよさそうに、シローとえっちをしていた姉が、あんなにもシローを憎んだことが。シローの居場所を無茶苦茶にしてしまった両親を、姉がまったく止めようとしなかったことが。
 どうしても信じられなかった。
「…………ユイ、あんたはまだ分からないかもしれないけど、あれってすっごくイケナイことなんだよ。……あんな風に、その、……犬……と、えっちするなんて」
「……なんで? だって、お姉ちゃん、あんなに――」
「やめて!! なんでも何もないの!! だ、だって、おかしいわよ!! どうして、人間と、犬なんかがっ……あんな、あんなことっ……」
 まるで、あの時の自分のしていたことを忘れたみたいに。姉は嫌悪感を剥き出しにしてシローを蔑んでいた。
 やっぱりよく分からなかったので、ユイはそのまま部屋に戻って、ベッドに潜り込んだ。たぶんもう姉は、シローのことを好きだった頃のことを忘れてしまったんだろうと判断したのだ。
「……そのうち、あんたにもわかるから。だから……これでいいの」
 ドアを閉めるときにそう呟いた姉は、どこか泣いているようだった。



 ◆ ◆ ◆



 ユイの家の人々は、口に出すのもおぞましい“あのこと”をすっかり夢の中のこととして片付けたがっていた。そしてそれは、事実成功していた。
 さすがに、両親がげっそりと疲弊して、落ち込んだ姿を前にすればユイもあれからシローのことを話題にすることはなかったし、すっかり病気がちになってしまった娘を両親も心の底から心配していたため、家では誰もが神経質すぎるほどにこの話題を避けていた。
 ひとつ変わったことがあるとすれば、両親が揃ってとんでもないほどの犬嫌いになったことだろう。ペットショップで売っているようなミニチュアダックスフントにさえ、滑稽なほどの嫌悪感を示し、ユイが近寄ろうものなら鬼のような形相になってそこから引き離そうとした。
 どうやら、またユイがあのときのようなことになるのを恐れてのことらしい。ユイには不思議でならない。シローと他の犬は違うのだ。たとえば、道を歩いている人や、学校のクラスメイト、その誰も彼もを好きになったり、結婚したいと思ったりしないのと同じ。
 ユイにとっての大切な相手はシローだけなのだ。
 そうしていつしか季節は流れ、ユイは学校を休んだまま春休みを迎えようとしていた。両親はこのままユイを、次の学年になってから学校に行かせるつもりだと言っている。ちょうどいい区切りだから、という言い訳で。
 学校のクラスメイトと会えないのはユイも寂しかったけれど、お見舞いの手紙を読み返して、自分が忘れられていないことを確認できれば、それもそれでいいかな、と思うようになっていた。
 そして、いつしかユイの家にも、昔のような穏やかな毎日が続くようになり、寒かった冬もゆっくりと終わって、春の足音が聞こえ始めている。
 誰も彼もが、すっかり、あの呪わしい冬に起きていた何もかもを忘れようとしていた。


 そう。
 ――たったひとり、当のユイだけを除いて。



 ◆ ◆ ◆



「うぇ……キモチ悪い……」
 トイレから戻るなり、ユイは呻いてベッドの上に寝転がった。
 テーブルの上には食べかけのチーズケーキと、転がったフォーク。
 今日は珍しくお父さんもお母さんも家にいない。一人で勉強をするのにも飽きてしまったユイは、ドリルを放り投げてカーペットに寝転がり、少し早い3時のおやつを始めていた。
「ぅうーーっ……」
 頬を膨らませてベッドの上、気分が落ち着くのを待つ。せっかくとっておきのおやつを食べようとしていたのに、すっかり食欲も失せてしまった。慣れたせいでいくらか余裕はできたものの、時折やってくる吐き気はいまも辛い。
 今も時々、急にキモチ悪くなって吐いてしまったり、急におなかがいっぱいになって全然ごはんが食べられなかったり、逆にすごくおなかがすいてしまったり、ユイの食事は不規則だ。お医者さんは、これも精神的なものだろう、ともっともらしいことを言っていたけれど。
 ユイにはもっとはっきりと、その原因が分かっている。
「……もぅ、元気だなぁ……あたし、こんなに困ってるのにっ」
 おなかの中を蹴飛ばす赤ちゃんに口を尖らせ、ユイはやれやれと頭を掻く。
 一度は治まったはずの悪阻は、1月のおしまいの頃からぶりかえしていた。たしか、近所のお姉さんに聞いた時、こういうのは3ヶ月もするとおさまるはずだというのを覚えていたのだが、どういうわけかいまも続いている。
 無論のこと、ユイに、犬の受胎期間が人間と違って、およそ50~70日だという知識はない。もっともそれを当てはめても、犬と人間の遺伝子が結合した子供の受胎など推し量れるわけもないのだが。
 キモチ悪いのは嫌だったが、けれどそれも愛しいシローの子供が順調に育っている証と思えば、自然ユイの胸は高鳴る。
(赤ちゃん、元気になったんだ……)
 確かにしっかりと感じられる、おなかのなかの小さな生命の鼓動に、ユイは心の底から安堵する。
 一度はぺしゃんこになっってしまったユイのおなかは、ふたたびまあるく大きく膨らんでいた。ユイはそれを、もう一度赤ちゃんが元気になった証拠だと思っていたが、それは正確ではない。
 あの時、あのクリスマスの日までにユイのおなかに育っていたものがなんなのかは、結局、分からない。医者の言うような想像妊娠であったのかもしれない。
 しかし、あの夜――シローとの最後の交わりで、再び奇蹟は起きた。
 本来、そのまま腐り死に、育つことなどないままに排出されるはずの受精卵は、最善の準備を施され、整えられた柔らかな子宮粘膜にしっかりと包まれ、十月十日を過ごすベッドの上へと着床している。
 結合せぬ遺伝子、適合せぬ因子。まったく別の種族同士が結び付いた生命の卵は、停止することなく激しく蠢き、脈動し、力強く鼓動を打ち鳴らす。
 やがては脊椎をつくり、心臓を産み、手足をともなって力強く動くことになるだろう。
 極限ともいえる二人の愛の営みは、シローとユイ、番いとなった二人の願いを叶え、
 少女の胎の中に、確かな生命を芽生えさせていた。
 これに気付かなかった大人達を責めるのは酷だろう。犬と人間の受胎など常識では考えられないことだし、なによりもユイに月経があり、きちんとおなかに赤ちゃんを宿すことができる身体であることを知っている者は誰一人としていない。一番最初の排卵が起きてから今まで、ずっと少女の子宮は小さな生命に埋められていて、ユイは一度も月経というものを経験していないのだ。
「シロー……っ」
 ユイは、すぐ隣の『シロー』を抱き締める。
 いま、ユイの部屋の真ん中には、真っ白い毛並みのぬいぐるみが置かれている。なにをするにもユイはこのぬいぐるみ、『シロー』といっしょだった。
 顔をしかめる両親に駄々をこね、1ヶ月おくれのクリスマスプレゼントとして買ってもらった犬のぬいぐるみ。あんな目に遭わされた娘が、今も変わらずその張本人の獣を慕っている事実をどう受けとめればいいのか、両親は激しく迷いながらも、ユイの嬉しそうな顔で無理矢理自分達を安心させることにした。
 文字通り『犬に噛まれた』として……ユイにはまだ愛も恋も、セックスも区別がつかないのだと――幼い心を勝手に決めつけ、納得することにしたのだ。
「ねえ、シロー……」
 どこかに行ってしまった愛しいパパに、そっと囁きかけるようにおなかをさする。
 幼い容貌には、不似合いな慈母の笑み。
 ユイのおなかの奥では、なにか得体の知れないものが蠢き、きしきしと身体を造り替えているような錯覚すらあった。しかしそれもおなかに子を宿した母の大きな歓びのひとつである。
 ユイにはもう不安はなかった。あんなにいっぱい自分のことを愛してくれたシローと、自分の赤ちゃんが、ちゃんと元気に産まれてこないはずがないのだ。
「シロー、ちゃんと赤ちゃん、元気だよ……」
 いまはその胎動もはっきり感じられる。お腹の奥でびくびくと蠢く感触を、ユイはしっかりと感じ取っていた。
 するりと下着を膝まで下ろし、熱く火照った股間に指を伸ばす。
 トロけた蜜がたっぷりと分泌されたそこは、すっかりほぐれて淡い桃色を覗かせ、愛しい相手の愛撫を待ちわびている。ここにはいないシローの代わりに、ユイは自分の指先でそこを慰める。
「あは……赤ちゃん、またシローのミルク、いっぱい飲みたいって言ってる……」
 くちくちと小さな秘裂をいじる指が、ぷっくらと膨らんだクリトリスをつつき、伸びた小指が、蜜にまみれた後ろの孔を刺激する。小さなすぼまりはゆっくりと裏返り、ユイの小指の先端が埋まるほどにとろとろに蕩けていた。
 これも、シローが丹念に舐めてくれたときに覚えた刺激だ。始めはおしっこの孔のあたりだけがじんじんとするのだが、シローがずっとそれを続けていると、おしりの孔もお腹の奥も、全部がぼうっと熱くなり、とろとろに溶けてゆく。それでいてじんじんと響く甘い刺激はさらに強まってゆくのだ。
「ふぁ……っ」
 軽い絶頂が少女の身体をふわりと持ち上げる。折り重なった柔襞の置くから、わずかに色のついた蜜がこぽりと溢れ吹いた。陶酔の中、ユイはそれを再び秘裂に塗り伸ばし、拙い自慰を繰り返してゆく。自分でそこをいじる経験はまだまだユイには浅く、甘い感覚はまだまだもどかしくも切ない。
「ぁ、ぁんっ……」
 ちゅぷ、ちゅぷ、と揃えた二本指が小さな入り口をくぐり抜け、細く狭い膣口を擦る。よじれ合わさった粘膜の柔らかな襞を絡め、くちくちと拙い手つきでその奥を掻き回す。
 しかし、こんな指なんかでは、とてもじゃないだ物足りない。胎奥に感じる空虚な感覚がもどかしかった。
「しろぉ……っ」
 切なげに喘ぐ少女の声が、熱の篭った部屋の中に消えてゆく。
 愛しい相手の、焼けるように熱い生殖器で、遮二無二胎内を掻き回して、滾るような白濁でいっぱいにして欲しい。そうしてもらわなければ身体の奥にポッカリと開いた空虚な感覚は埋まらない事を、ユイは本能的に感じ取っている。
 そうしながらも、ユイのおなかはゆっくりと育ち、いつしか臨月に達し、
 運命の時、出産の時が刻一刻と迫っていた。




 (続)

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

最新の記事

記事のタグから探す

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索