シロフミ 2020/08/05 21:47

シローとユイの話・その3

「ぁあぅ……っ」
 切なげに伸ばされた掌が、虚しく枕をつかむ。届かない相手へのもどかしさを精一杯埋めるように、ユイは手につかんだ枕を引き寄せ、ぎゅっと両腕に抱く。
 うつ伏せになり、膝を付いて腰を持ち上げ体勢のユイの後ろにまたがったシローが、硬く尖った肉槍を深々と少女の孔に押しこんでゆく。ぶじゅり、と粘液をこぼす生殖器の粘膜は、すでにこの交わりが何度となく繰り返されてきたことを示すほどにスムーズだ。
 シローが最も楽な体勢となる、獣の姿勢での交合で、ふたりは今日3回目となる受胎行為を繰り返す。
 ただの快感を求める交わりとはまるで違う、濃密な行為。これは紛れもない生殖行為であり、ユイのおなかの奥に子種を注ぎ、卵子とくっつけて生命の種とする行ないだった。そこには愛欲や性欲よりも、もっと深い魂の結び付きがある。
「ふぁああ……ぅ♪」
 同時に、愛しい相手に身体も心も魂まで支配される服従の歓びが、深くユイを満たしていた。雄がその身に限界まで溜め込んだ滾るような激しい獣欲を、全て残さず、余すところなく受けとめる、それもまた雌の歓びである。
 深々と身体の奥を突き上げられる逞しい滾りに、ユイは切なく声を上げた。
 赤黒い肉の塊が、少女の小さな孔を構わず前後し、激しくくねり、うねって掻き回す。都合二度の射精を受けとめたユイの柔孔からは泡立った白濁がひっきりなしに吹きこぼれ、ベッドのシーツを汚してゆく。
 シローとユイが心ゆくまで交わっていると、もうベッドはどうしようもないくらい汚れてしまう事がほとんどだ。両親に気付かれないように後始末をするのも一苦労である。
 今のところシローが悪戯した、とごまかすことで事なきを得ているが、いつまでもそれで済ませられるわけもなく、ユイはお小遣いをはたいて同じシーツを何枚も用意する羽目になった。
 シローとのえっちの準備のために、デパートのレジに並んでいるのだ――と想像するだけで、ユイは高鳴る胸を抑えきれなかった。
「ぁあああっ、シロー、しろぉ……っ、おっきいの、すごいの、おなかに……こすれるぅ…っ♪ すごい、よぉ……」
 ぎゅっと抱き締めた枕に、ユイの唇からこぼれた嬌声と泡立った唾液が染み込んでゆく。一番気持ちイイところをもどかしく擦られる刺激に、甘い電流がびりびりと腰骨からおなかの上へと伝播し、少女の官能を揺さぶった。
 シローの身体はユイよりもふた周りも大きく逞しい。シローが力いっぱい腰を振るうとそれだけでユイはガクガクと揺さぶられるほどだ。
 シローが十分に興奮して生殖器の根元に大きな精瘤を作る頃になると、ユイはシローの抽挿だけで身体をベッドの上から引きずり下ろされそうになってしまう。
「ぁっ、あくうぅ……ふあ、ぁああぁああああ!!!」
 ぐい、とシローが力強くユイの身体を持ち上げた。
 深々とおなかの奥までもを肉杭に貫かれたユイは、ちょうどシローのペニスに引っかかるようにふわりと身体の浮くのを感じる。
 突如の浮遊感に耐えかね、びく、とユイが達する。しかしこの程度では、まだ全然終わりでもなんでもない事をユイとシローはお互いに熟知している。この交わりはそれぞれが感じ合いながら、見上げるだけでも背筋がぞくぞくとするような絶頂の頂きを踏破するものだ。
「ぁ、あっ、ま、また……シロー、っ、またイっちゃうっ……、また、ぁああっ!!」
 本来はユイのほうが背中に乗れるほどに体格の違う二人だ。ユイが下になってシローを支えるのは無茶にも思える。それでもユイは砕けそうになる膝を柔らかなシーツに突き立てて、今にもひしゃげそうな腰を保ち、シローの獣欲を受けとめる。
 いくぶん肉が付いてきたとは言え、ユイの細い腰や背中はまるで折れそうにしなって、シローの怒張を根元まで受け入れる。そうしてこね回される胎内は熱くとろけ、まだまだ狭い柔襞をきゅうきゅうと疼かせ、シローの精を絞り取るのだ。
「し、シローっ、そこ……その奥っ、だめぇ……赤ちゃん、赤ちゃん、ぶつかっちゃうよぉ…っ」
 熱く疼いた子宮の入り口をシローの怒張が突き上げる。
 受胎と共にたっぷり熱を持った生命の揺り篭は、些細な刺激ですらユイに法外な悦楽をもたらした。それでも飽きたらず、シローは執拗にユイの膣奥の神秘の扉を執拗に小突いた。まるでそれは、今ユイの胎内に宿った命の代わりに、自分がそこに押し入りたいというような行為にすら見える。
 あるいは、自分の遺伝子で作られた子供すらさらに受胎させんと願う、ある種偏執的なまでの生殖欲求がもたらすものかもしれない。
 およそ、生命は自分の血を受け継ぐものを育てるために生きている。
 だから、こうしてシローがユイを求め続けるのは正しいことだった。誰ひとりシローの渇望に気付かない家の中で、ユイだけはその子供を孕み、育てると応えてくれたのだから。
「ぁああああ……っ」
 うつ伏せのまま枕に爪を立て、ユイが腰を震わせる。
 同時に、シローも少女の胎内奥深くに突き立てた肉槍をびくびくと痙攣させた。絡みあった淫肉がとろけあい、ひとつの命になろうと繋がりあう。、
「ふ……はぁ……っ」
 ぞくぞくと、快感の頂きに昇り詰めたまま、ユイはとろんと情欲にとろけた目でシローを振り返る。
 胎内に弾けるシローの白濁を感じながら、ユイはぎゅっと枕を噛んだ。
 ユイの幼い生殖器は、きめの細かい柔襞を波打たせ、渇いた大地が撒かれた水を残らず吸い上げるようにシローの吐き出した生命の素を飲みこんでゆく。それがたっぷりとおなかの奥底にまで届くのを感じ取り、胸を満たす陶酔に目を細めた。
「あは……っ、ねえ、シローの赤ちゃん、きっとおんなのこだよ……あたしと一緒で、しろーのミルク、ごくごくっておいしそうに飲んじゃってるもん……」
 きゅぅ、と子宮の奥底で疼く胎動を実感し、ユイは快感の声を上げる。
 節操なく蠢き、まだ硬さを保ったシローのペニスをしっかりとくわえこんでうねる細い腰は、まるでシローの生殖器が絞り出す精液を残らず飲みこんで、もう一度孕んでしまおうとしているかのようだ。
 おなかに赤ちゃんを宿しているはずなのに、まだまだユイの貪欲な性欲はとどまらない。それもこれも、愛しいシローを求めるが故だ。
「シロー、もっといっぱい、熱いのだして……? あたし、シローの赤ちゃん、いっぱい産んであげるから……シローみたいにかわいくてカッコいい赤ちゃん、いっぱい産むからぁ……っ♪」
 拙い語彙から選ばれるのは、まぎれもない愛の言葉。何よりも愛しい相手を求め、深く繋がりあうことをせがむユイを、逞しい四肢でしっかりと押さえつけ、シローが吠える。
「ぁあんっ……♪ シローっ……好き、大好きっ……だいすきだよぉ……っ」
 好き、以上の表現を知らないユイには、いまの自分の胸を満たしている気持ちを言葉にして伝える方法が分からない。だから、その百分の一でも、千分の一でも届くように、『好き』という言葉を繰り返す。
 そうして想いを口にすればするほど、ユイの心はきゅうきゅうと切なく声を上げ、よりいっそう膨らんだ愛しさに満ちてゆく。
 これを多分、しあわせ、と呼ぶのだと。
 ユイはそう思った。
「い、いくよ、あたし、だめ。飛んじゃうっ………シローぉおっ……!!!」
 そうして4度。ゆっくりと押し上げたユイの腰後ろから、たっぷりと濡れぼそった秘裂を漲る生殖器が串刺しにする。
「ふぁあああああぁあ……」
 シローを思いやる後背位での交わり。獣の交わり。この体位を続ける限り、シローはユイを必要以上に気遣う心配ことなく存分に動くことができ、なんどもなんども絶頂にのぼりつめる。そのたびに吐き出される怒涛のような白濁が、胎内に余すところなく注ぎ込まれてゆくのがユイは好きだった。
 激しくたかぶる肉の塊はがちがちに硬さを保ったママまだ未発達の膣を貫いて、やすやすと子宮の入り口にまで到達する。薄い肉に覆われた細い少女の身体を突き上げ、こね回し、蹂躙する。
 体の一番奥をごつごつと突き上げるボルチオ感覚に、ユイは唇からこぼれる涎を拭うこともできずに嬌声を上げ続けた。



 ◆ ◆ ◆



 マイが帰宅したのは、年も押し迫った十二月の終わり。まもなくクリスマスという季節。普段は寮生活の姉も、学校が終わって長い休みに入ると共に、懐かしい我が家に戻ってくるのだ。
 夏休みにはその帰りを待ちわびて、家の門でじっと姉の姿が見えるのを待っていたユイは、冬のこの日、玄関ではなく居間でシローと共に姉を出迎えた。
「あ!! おかえりなさい、お姉ちゃんっ」
 わぉんっ!!
 一緒になって嬉しそうな声を上げるシローの首に、さりげなくぎゅっと手を回してユイは笑う。
 それはユイ自身も無意識のうちの防衛行為だった。
「……ただいま」
「ああ、帰ってたの? なによぅ、言ってくれれば迎えに行ったのに」
「やめてよ恥ずかしい……たいした荷物じゃないもん」
 どこか不機嫌そうに目を細めて応えた姉は、台所からやってきた母親にぶっきらぼうな挨拶を返す。家を出てからますます無愛想になった姉に、ユイは首を傾げた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「なにが?」
「んーと、……なんか。」
「なんか、じゃ分かんないわよ」
 疲れたように荷物を投げ出し、ソファーに腰を下ろす姉。この半年でまた背が伸びて、ずいぶん足腰もすらっとしたように見える。胸も大きくなっているようにみえて、ユイには微妙に羨ましい。
「はい、疲れたでしょう」
「ん、ありがと母さん」
 お茶を受けとって、喉を湿らす姉。
 しかし、その視線はさっきからちらちらと、不自然なほどシローのほうを窺っていた。シローもそれに気付き、どこか注意深く様子を窺っている。ユイもそれに気付き、そっとシローの背中に手を寄せた。
「あら、あら。シロー、分からないの? お姉ちゃんよ?」
 いつまでも警戒をとかず、じっとしたままのシローに語りかける母親。それでもシローの態度はかたくなだ。
「ごめんねぇ、やっぱりずっとおうちに居ないと忘れちゃうのかしら。前はあんなにおねえちゃんにべったりだったのにねぇ」
「……いまはユイと仲いいんだね」
「そうね。お姉ちゃんの代わりだと思ってるのかも。前はそうでもなかったけど、今はユイもいい子でいっぱいお世話してるし、シローもユイの事好きになったのかもねぇ」
「ふーん……」
 そうやって頷く姉の視線にも、どこか針のようなものが含まれている気がする。気のせいだと思うにはあまりにもはっきりとした違和感。
 ユイはとうとう居心地の悪さに耐えかね、立ち上がった。
「お母さん、あたし、シローの散歩いってくるねっ」
「え? ああ、ちょっとユイ、せっかくだからお姉ちゃんと一緒に行ったら?」
「いいよ。行ってくるっ。……いこ、シロー」
 おぅんっ、と応えるシローを伴い、姉にくるりと背中を向けて。
 ユイはシローと連れ立って外へと駆けていった。



 ◆ ◆ ◆



「ユイ、あんた太ったんじゃない?」
「そうかな?」
 テレビもそっちのけでシローとじゃれあいながら答えるユイに、姉は不審げに眉を潜める。そんな様子はまるで気にせず、ユイはシローと一緒にごろごろとカーペットの上に寝そべって、胚芽クッキーをかじっていた。
「そうやってお菓子ばっか食べてるから。母さん怒ってたよ」
「べつにいいでしょ? おなかすくんだもん」
 事実、それは確かだった。朝昼晩と3時のおやつだけでは、ユイのおなかはまったく満足してくれない。おなかの中ですくすくと育っているだろうシローの赤ちゃんのためにも、栄養補給は必須なのだった。しかしユイの少ないお小遣いでは、とても毎日の栄養補給には足りない。
 というわけで頻繁になってしまうつまみ食いは、目下のところユイが母親に大目玉を食らう一番の要因。食べすぎてたまに気持ち悪くなってしまうところまで来ればさすがに怒られてもしかたがないだろう。
「まあいいじゃないの。ユイもお手伝い頑張ってくれてるもの」
「母さんも甘いなぁ……悪い癖ついちゃうと良くないと思うけど」
「あらあら。マイもすっかりお姉さんになっちゃったわねぇ。この前までユイの事泣かしてばっかりだと思ってたのに」
「いつの話よ、もう……」
 これまでまるっきりほっぽっていたシローの世話をなにからなにまで引き受けるようになった分、母親も強くは言えない。朝晩早く起きての散歩に、週に二日のシャンプーにブラッシング、ごはんの世話。ユイはシローを家に上げるための努力を惜しまなかった。確かに、ここまで一生懸命元気に動いていればおなかもすくだろう、というのが母親の理解なのである。
 すっかり放任の母親の説得は(もともとそういう性格なのだが)諦めて、マイはちらりとユイを眺める。
「ねえ、ユイ」
「なーに?」
 逃げることができない分、ユイは自分でも知らずにシローとの距離を詰めていた。白くてふかふかの毛皮に顔を埋め、ことさらにべったりと身体を寄せあい、シローとの仲を強調している。
 それは、自分たちの仲を脅かす相手に対してのはっきりとした壁であり、戦線布告である。姉という異物を前に、ユイは幼いながらも女の本能として、愛しい相手を奪われまいと行動しているのだ。
 無論のこと自覚はない。
 だが、姉を不審がらせるのには十分だ。
「あんたさ、そんなにシローの事好きだったっけ?」
「うんっ。大好きっ」
 間髪入れず答えるユイ。それに併せるようにシローも大きく一声、わぉんっ!! と吠える。
「本当に、すっかり仲良しさんね」
「そうだよ、シローもあたしのことが一番好きだもん」
「あらあら。妬けちゃうわねぇ」
 ユイのその言葉の真意をまるで理解せぬままに母親は応じる。なんどもなんども肌を触れあい、深々と身体を交えながら確認しあった愛があるとは考えもしない。まして、ユイのおなかの中にその愛の結晶がすくすくと育っているなどとは、まるで思考の埒外であった。
 当たり前だ。誰もそんな事は考えない。犬と女の子が、本当に心を交わしあって愛を育むなんて思いもしない。
 ――そのはずだ。
 そんなふたりをじっと、黙ったまま見つめるマイの瞳に。
 ユイは気付くことはなかったのだった。



 (続)

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