ボロボロ 2020/09/02 23:23

【ラヴ・コラプション】第5話 拘束【先行公開】

第5話 拘束

重い体とは裏腹に、意識が戻ってから脳が覚醒するまでには数秒も掛からなかった。
四肢は拘束具でベッドの脚に括り付けられ、引き千切ろうとするが徒労に終わる。

やられた。まんまと誘い出された。
ミコは、警察が一連の失踪事件に関係があると見ていることに既に気づいていた。そのうえで知らぬ顔で俺を迎え入れ、こうして俺を拘束した。

「おはよ、サ・ト・ウさん♡ お目覚めはどう?」

ベッドの端にミコは座っていた。裸のまま、スマートフォンを触っていたようだ。
目覚めた俺にキラキラとした笑顔を向けるが、先ほどまでと同じ人間の顔には見えない。美しい姿の裏には、想像を超えた狡猾さが秘められていた。

それにしても、どうやって俺をベッドの上まで運んだのか。この露骨に非力な体に、大の大人を浴室から運んでくるだけの力があるようには思えない。やはり協力者がいるのだろうか。

「チッ……まさか全部掌の上だなんてな……。」
「もっちろん♡ ウチの店の情報網、あんまりナメないほうがいいよ?佐山さんの職場にも、ウチのために情報を持ってきてくれるイイ子がいっぱいいるんだから。」
「ッ!警察内部か……!」
「警察の人はねぇ、結構従順で命令を忠実に実行してくれる子が多いかな?やっぱり”犬”としての才能があるんだろうね。アハハッ♡」
「こんなことしてゆるさ「許されると思うなよ、って?」」

嵌められたことへの怒りと職を侮辱されたことが相まって、つい声が荒ぶる。一方、それに被せてあしらうミコの声は余裕綽々だ。

「フフッ、さっきまで『あ゛~♡ぎもぢ~♡』とか言って気持ち悪い喘ぎ声出してた人がエラソーな口利かないでくれる?あんまり調子乗ってるとさァ、コレ使っちゃうよ?」

わざと馬鹿にするように俺の真似をする。恥ずかしさで顔から火を噴きそうだ。
ミコが取り出したのは俺が携帯していた護身用ナイフだった。連続失踪事件に暴力が絡んでいた場合、素手による戦闘では危険だろうと用意しておいたものだ。もっとも、こんなふうに拘束されてしまっては何の意味も無いが。

「ッ……!」
「わたしも、出来るだけ痛い想いなんてさせたくないんだよ?だからさ、一緒にゲームしようよ♡ 名付けて、”パイズリ射精我慢インターバルゲーム”♡」
「ゲームなんて、するわけないだ『あっそ、じゃあ死んじゃおっか♡』」

笑顔のまま、全力でナイフを俺の首元に向かって振り下ろす。その眼は本気だ。

「ま、まってくれ!!」

すんでのところで刃が止まる。あと0.1秒遅ければこのベッドは真っ赤に染まっていただろう。

「やる、やるから……!」
「一応言っておくけど、もうアンタに拒否権なんてないんだよ?♡」
「わかった!わかってる!だから命だけは……!」
「……まぁいいや、改めてルール説明するね。」

ミコが説明した“パイズリ射精我慢インターバルゲーム”のルールは以下の通りだった。

【1】10分間のパイズリ焦らし+2分間のパイズリ射精我慢を1セットとし、3セットを行う
【2】パイズリ焦らしでは、俺が射精してしまわない範囲でミコが調節しながらパイズリを行う
【3】パイズリ射精我慢では、ミコが俺を本気で射精させるためのパイズリを行う
【4】ゲーム中に合計3回以上射精してしまったら俺の負け、それ以外ならミコの勝ち

「ルールは分かった……もし俺が勝ったら、どうなる?」
「そのときはここから解放してあげる♡ でももし佐山さんが3回以上射精しちゃったらァ……佐山さんの入院中の弟のこと、ちょっと可愛がってあげちゃおうかな?フフッ。」
「ッ!!弟には手を出すなッ!」

俺が警察に入った理由でもある弟。
両親が死んで以来、俺が守り育ててきた。弟のことまで調べがついているとは……。

「アハハッ、それならちゃ~んと我慢して、このゲームに勝たないとね?」

ミコは舌なめずりをして、磔にされた獲物をじっくりと見下ろす。
途端に、トパーズ色だった瞳はルビーのように紅く変化し、明らかに纏っている空気が変わっていく。
首筋から肩にかけて、更には脇腹から内腿にかけて、薄っすらと赤黒い刺青が浮かび上がる。

「!! なんだ、それ……ッ!」

有り得ない現象を前に、なんとか声を絞り出す。

「アハッ、何にも不思議に思わなかったの?わたし、サキュバスなんだァ♡」

悪魔となったミコの心底楽しそうな声と共に、地獄の快楽を伴うゲームがはじまった。

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