フリーセンテンス 2022/06/28 10:53

女胎叫喚中編 女スパイ奇怪蟲獣強○摂食○問編

 ・・・・・・世界に破壊と殺戮をもたらす悪の企業ライトエンド社。世界中に武器と兵器を売り捌き、人の命と引き換えに多額の利益をあげているこの軍需企業には、その行いに相応しい数の「敵」が存在している。それも世界中のあちこちに。
 彼ら「敵」は多種多様でその勢力も大小様々だ。合衆国と敵対する国家、同業の対立企業、テロ組織、反戦争団体、平和主義団体、ジャーナリスト、環境保護活動家などなど。国家から個人の市民活動家にいたるまで、その数はごまんとおり、彼らは日々、様々な方法でライトエンド社を「攻撃」してくる。物理的な攻撃から誹謗中傷にいたるまで、ライトエンド社は日々「敵」からの攻撃にさらされ続けている。そのなかでもっともポピュラーかつ平和的な攻撃方法が訴訟であった。
業務を妨害するため、あるいは経済的な損失を与えるため、ライトエンド社の「敵」はありとあらゆる理由をつけて法廷闘争を仕掛けてくる。その件数は合衆国内だけで年間数百件にも昇り、全世界では軽く万を超えるだろう。ライトエンド社はこの問題に対処するために一八〇〇人を超える弁護士を雇っており、日々、世界中の法廷で闘争に明け暮れているのだが、彼ら弁護団とは別に会社を護る組織がライトエンド社には存在していた。それが保安部である。
 保安部の主な役割は、社員の安全確保と、外部への情報漏洩を未然に防ぐこと。ライトエンド社は決して清廉潔白な企業などではなく、黒を通り越して常闇にどっぷりと浸かった邪悪の権化ともいうべき企業であって、日頃から表沙汰にはできないような業務を遂行している。ゆえに、ほんの少しの情報漏洩が命取りになりかねず、実際、過去の裁判では内部情報の流出によって敗訴したケースが一度や二度ではなかった。
この問題は、会社に多額の損失をもたらすだけでなく、場合によっては合衆国の安全保障にも危険を及ぼしかねないため、ライトエンド社は情報漏洩を防ぐため二重三重のセキュリティを敷いて対策を取っていた。そしてそのなかでもっとも力を入れているのがスパイの摘発であった。
 スパイの脅威は今も昔も変わらない。ライトエンド社に敵対する勢力のスパイは、様々な方法でもって情報を入手しようと暗躍する。標的は、ライトエンド社の社員全員。スパイの標的にされた社員は、金銭を渡され、麻薬の味を覚えさせられ、性的関係などで篭絡されるだけでなく、時には家族や恋人を人質に取られて脅迫されるなどして、ライトエンド社に関する様々な情報を搾り取られる。最初はほんの少しの要求が、次第にエスカレートしてゆき、最後には、渡せば自分も会社も取り返しにつかない状況になるような極秘情報まで渡すよう迫られるのだ。その結果、待っているのは我が身の破滅だ。
 罪悪感から自殺する者、警察に捕まって刑罰を受ける者、会社側に情報漏洩がバレて懲戒処分を受ける者、そして用済みと判断されて抹殺される者など、ろくでもない末路しか待っていない。そうやって、これまでに数多の社員が生きたまま地獄へと落ちていった。
 もちろん、ライトエンド社側も黙ってやられているばかりではない。情報漏洩を防ぐため、そしてスパイの脅威から社員たちを護るため、保安部が秘密裏に活躍しているのであった。
 保安部は、主に各国の特殊部隊や諜報機関の出身者たちで構成されており、書類上はダミーの氏名と部署名で社員登録が成されている。暴力のスペシャリストでもある彼らは、特殊な訓練によってスパイを見つけ出し、摘発するだけでなく、逆に相手から情報を収奪することにも長けており、人の心を抉る○問と尋問に精通していた。
その中に「マッド・テラー」と呼ばれる男がいた。通称はマッド。本名はザミエル・ゼル・ランズベルグ。年齢は三二歳。長身で、体格もよい。保安部における階級は主任で、五五名の部下を直属として与えられているだけでなく、会社の機密情報へのアクセス権と、活動資金として年間三〇〇万エボルドルを自由に使用することが許されていた。後述の特権は、彼の家系が長年に渡ってライトエンド社に貢献してきた対価であった。
彼の家系は曽祖父の代からずっとライトエンド社に務めてきた。彼の祖父も、父も、保安部で辣腕を振るい、会社の暗黒面で貢献を果たしてきた。マッドの祖父は兵器工場の建設に反対していた地元の市民活動家のリーダーを拉致して放射能物質を投与して見せしめとし、父親は当時の最高経営責任者に無礼な質問をしたジャーナリストを誘拐して○問した挙げ句、その死体を海に浮かべた。そして、彼らの血を引くマッドもまた、会社のために凄惨な行為を平然とやってのける人物であるのだった。
 マッドには人並外れた鋭い勘と、会社にとっての危険人物を見抜く慧眼と嗅覚のようなモノを兼ね備えており、その危機管理センサーがひとりの社員に反応したのがその年の五月上旬であった。
その人物の名は、トマス・ロッド。本社勤務の三七歳で、頭脳的には極めて優秀な男なのだが、小太りで、容姿が悪く、性格も内気で臆病であるため、アラフォーになっても女性との交際経験は皆無という人物であった。別に童貞でも会社にとって有益な人物であれば構わないのだが、こういうタイプは女スパイの標的にされやすい。そしてこの男、トマスが、最近、社内で妙に明るくなったという話がマッドの耳に届いたのだった。
マッドはすぐに彼のプライベートを調べあげた。その結果、トマスに最近、なんと彼女ができていたことが判ったのだ。彼女の名前はセシリア・イア・ハート。部下から提出された写真を見て、マッドは口元を吊り上げた。それはセシリアが、とてつもない美女だったからだ。
 セシリアは、容姿が端麗で、瞳は大きく、鼻はやや低いものの、胸がとても大きく、尻の肉付きもよく、全体的に見て豊満な肉体の持ち主だった。肌の色も白く、パッと見、セクシー女優の卵か、駆け出しのグラビアアイドルを彷彿とさせるような女性だった。ビキニ姿になれば青年誌の表紙を飾ることも容易いだろうし、高級娼婦としてデビューすれば富裕層の顧客を数多く持つことも簡単だろう。そんな美女が、提出された写真の中でアラフォーデブの童貞男と腕を組んで、しかも相手の腕を自分の胸を押し付けながら笑顔で歩いているのだ。マッドでなくともなにか裏があると気づくワンシーンだった。
「世の中には弱い女に手を差し伸べる強い男はいても、その逆は決してあり得ない。それが自然の摂理であって、この世の真実だからだ。これはなにか裏があるな」
マッドはすぐ彼女を調べるよう命令を出した。その結果、彼女が自分の過去を改ざんした痕跡が見つかったのだ。それも非合法の手段を用いて。
 セシリアは、トマスに会った時、自分は西レメア大陸のノゼルダ出身で、幼少期に難民として合衆国に渡ってきたと説明していたが、それは真っ赤な嘘だった。
彼女の本名はアメリア・ルイーゼ・セントリアといって、生粋の合衆国人であった。そして、改ざんされる前の彼女の家族関係を調査した結果、彼女の姉が、八年前に行方不明になっていたことが判ったのだ。その姉の名前に、マッドは見覚えがあった。
「姉の名前はアリーア・ルイーゼ・セントリア・・・・・・ふふふ、なるほど。そういうことか」
マッドは八年前、同僚のクロスノイドから、この女性の拉致を頼まれたことを思い出した。そしてその女性が、後に非合法な「生体実験」の材料にされたことも知っていた。
「つまり、復讐ということか」
セシリア改めてアメリアは、おそらく、なんらかの理由で、姉の行方不明にライトエンド社が関わっていると知ったのだろう。そして、姉の行方を探すためか、もしくはライトエンド社に対する復讐のため、社員であるトマス・ロッドに近づいたというわけだ。これで一応、辻褄が合う。
「しかし、解せぬな・・・・・・」
マッドには気になる点があった。それはアメリアが用いた戸籍改ざんの手段についてであった。アメリアは自分の過去を改ざんするため、合衆国の国民登録情報を改ざんしていた。これにはかなり高度な知識と技術、それに手段が必要で、とても一個人ができるような代物ではない。巨大な組織、それもマフィアやただの犯罪組織などではなく、国家規模の力を借りなければ不可能だ。
「これはなにか裏があるな」
アメリアの背後関係を探る必要性を感じたマッドは、より強い情報を掴むため、彼女をしばらくの間、泳がせておくことにした。しかし、トマス・ロッドと会った彼女が、暗に性行為をちらつかせ、遠回しに会社の情報を探ろうとし始めたことに気づいて、マッドはアメリアの身柄確保に舵を切った。彼は数人の部下を集め、命令を下した。
「あの女を拉致しろ。後は俺が吐かせる」
・・・・・・ノゼルダ出身の難民、セシリア・イア・ハートが行方不明になったのは、彼女がトマス・ロッドと付き合い始めてからちょうど三か月目のことであった。

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