フリーセンテンス 2022/07/17 09:29

忘れられているかもしれませんが・・・・・・女胎狂喚の後編、頑張って書いてます。

こんな感じで。


 ・・・・・・妖獣兵器開発チームが研究と開発をおこなっている施設の地下四階部分には、この建物でもっとも重要な場所がある。世界中から搔き集めた生体資料を秘蔵している保管庫である。
 ここには絶滅した超致死性病原体に感染した胎児の標本や各種奇形生物のホルマリン漬け、小瓶に分けて詰められている粘性液体類、古代生物の生体組織、特異体質者から採取した細胞類、一九五一年に極北大陸で発見されたアミノ酸を含んだ三〇億年前の隕石など、もはや二度と入手できないような科学者垂涎の品々が厳重に保管されている。そしてその中でも特に厳重に保管されているのが、極北大陸で発見されたミイラ化した妖獣兵の一部であった。
 極低温で保管されている妖獣兵のミイラは、全身ではなく肩と腕の一部だけである。しかしそれだけで大きさは二メートル近くあり、水分が抜けて干からびているとはいえ、異形の腕はなお太さと逞しさを保っており、鋭い爪はそのままで、この生物が生きていた在りし日の恐ろしさと禍々しさを充分過ぎるほど感じることができる代物だった。
 その冷凍ミイラの前に、クロスノイドは静かに佇んでいた。自分の背丈よりも巨大な干からびた巨腕をジッと見つめながら。彼は小脇に白い巨大なオタマジャクシ状の物体が入った密封瓶を抱えていた。それはこの妖獣兵のミイラと関連があるモノである。
「古代の世界ではこの化け物が何千体と造られて猛威を振るっていたというから恐ろしい。ふふふ、想像しただけで寒気がするよ」
口ではそうはいうものの、顔には邪悪な笑みが浮かんでいる。それはまともな思考の持ち主が浮かべれるような笑みではなかった。未知に対する好奇心ゆえ、良心の欠片を邪神に売り渡した闇の司祭めいた笑みだった。
 世界中で語り継がれている妖獣兵の恐ろしさは想像を絶する。一体で何百人もの重装兵を相手にすることができたというその化け物は、その強さもさることながら、おぞましい異常性で人々を恐怖させたと言われている。伝えられている話によると、妖獣兵は人間を生きたまま引き千切り、内臓を引きずり出して喰らうだけでなく、眼球を抉ってそれを飴玉のように舐めることを好んだという。この残虐性は、彼らを生み出した古代レメア帝国人に由来するものだといわれていた。
 伝説によれば、妖獣兵を生みだし、彼らの力を最大限活用することによって三大陸征服という覇業を成し遂げた古代レメア帝国は、悪虐非道な国家であったという。征服された国々の人々は全て奴○にされ、家畜以下の生活で強○的な労働を強いられただけでなく、帝国人の暇つぶしや戯れで虐殺されることがしばしばあったそうだ。それも、ただ殺されるだけではない。○問されて地獄の苦しみを与えられながら殺されたり、親子や兄弟同士で殺し合いをさせられたり、意図的な飢餓や病気にさせられて死にゆく過程を見世物にされたりしたというのだ。その中でも特に有名なのが妖獣兵を使った公開虐殺で、裸同然で闘技場に閉じ込められた何十人もの人々が、成す術なく逃げ惑いながら次々と殺戮される様が最大の娯楽であったという。狂っている。とても正気とは思えない狂気の沙汰だ。
東西両大陸に残るレメア時代の遺跡には、その当時、虐げられていた人々の呪詛が何百万と残っており、そのことからして、古代の世界が想像を絶するほど悲惨な世界であったということが伺い知れるというものだ。
 古代レメア帝国は、繁栄の絶頂期、ポールシフトによって滅亡し、本拠地があった大陸は厚い氷の下に閉じ込められてしまった。全滅といってよい。他の大陸でもポールシフトによっておびただしい数の犠牲者が出たが、レメア人は誰ひとりとして助からなかった。人々は、生き残ることよりも、まずはレメア人へ復讐することを優先し、国家滅亡級の災害が渦巻くその最中に、レメア人虐殺に奔走したからである。レメア人に対する憎しみはそれほどまで深かったということだ。
「・・・・・・彼らほどではないにせよ、我々も世界中から強い恨みと憎しみを買っている。だとすれば、我々にもいつかは天罰が下るかもしれないな」
 小脇に抱える密封瓶の中で、巨大な白いオタマジャクシが激しく動いた。まるで「そうだ、その通りだ」といわんばかりの勢いと絶妙なタイミングで。
クロスノイドが所属するライトエンド社は死の商人だ。他人の犠牲と哀しみの上に我が身の春を謳歌している企業である。そして、クロスノイドはこれから、自分が所属する組織がさらに富栄えるよう、世界に新たな不幸が生まれる「種」を撒くつもりなのであった。小脇に抱えている瓶の中で蠢く巨大なオタマジャクシが、ソレである。
「さて、そろそろいくか。畑の方も、もうずいぶんと前に準備が整っているようだしな」
そう言って、クロスノイドは踵を返した。
 地下四階の保管庫を後にし、エレベーターに乗り、地下二階を目指す。六〇秒とかからず目的の場所に到着した。
そこは管理・隔離区域である。実験体や実験生物を閉じ込め、様子を観察し、場合によっては処分もおこなう。八年前、アリーア・ルイーゼ・セントリアという母胎から生まれた妖獣兵器のプロトタイプも、「ここ」でも誕生したのだ。
そして「ここ」に、「種」を撒かれる「畑」がいた。硬質強化アクリルガラスの向こう側――外界から隔絶された無機質な隔離空間の中で喘ぎ狂っている美女がソレである。
「んほぉぉおぉぉおぉおぉおぉぉぉおぉおぉぉぉおぉぉおぉッッッ! イ、いぐッ、イッぢゃうッッ! またイグッ、いぐッ、イグイグッ、イッぢゃうぅぅうぅうぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅぅうぅうぅぅッッッ! んほぉぉおおぉぉぉぉおおぉぉおおぉおぉおぉおぉぉおおぉぉおぉおぉぉおぉおぉぉおぉぉおぉおぉぉおぉぉッッッ! うひぃいぃいぃぃいぃいぃぃいぃぃいぃいぃぃいぃぃいぃぃッッッ、ぐひぃいぃぃいぃいぃぃいぃいぃぃいぃいぃぃぃいぃいいぃぃいぃいぃぃいぃぃぃぃッッッッ、あぎひひひぎひぃぃいぃいいぃいぃぃいいぃぃいぃぃぃいぃぃぃぃいぃいぃぃいいぃぃいぃいぃいいぃいいぃぃッッッッ!」


・・・・・・完成まで、もう少しお待ちくださいm(_ _)m

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