HARE / define 2021/04/27 23:48

『種付けおじさん』って、どこでセックスのテクニックを身につけるの?

 私の名前は、宇摩真良男(うま・まらお)だ。独身のまま、43才になってしまった。
 そう、独身だ。さらに言えば、いくら過去を遡っても、一度も恋人がいたことはない。
 だからと言って、女性が嫌いとか苦手とかそういうわけではない。
 ただ、俺が彼女達へ向ける想いの万分の一さえ返してはもらえなかっただけだ。
 それも仕方がないだろう。何しろ、髪は薄く、腹はメタボだ。それがなくとも、見た目も良いとは言えない。
 どうにもならない現実を前に、俺は一般の相手――素人の女と関係を持つことについては諦めた。
 今さら恋愛など無理だし、婚活などしても相手にはされないだろう。
 代わりというわけではないが、少ない給料を貯めてはプロに相手をしてもらうっていた。
 それでも十分に満たされていた。しかし、そんなささやかな贅沢も、今後は難しくなるだろう。
 俺は、リストをされたのだ。
 先月末に、上司である係長に肩を叩かれてから、退職まではあっという間だった。
 抵抗せずに素直に従ったからか、それなりの額の退職金をもらい、退職も会社都合といいう形にしてもらった。
 おかげで失業保険をすぐにもらうことができた。そのことには感謝している。
 とはいえ、霞を食って生きているわけでないので、すぐに同業種他社へ転職をしようと、いくつか当たってはみたが結果は思わしくなかった。
 だから、俺はここへ来たのだ。自分が唯一、他人よりも優れていると言えるのではないか、そう言えることを生かすために。
「こ、こんにちは。ここは『種付けおじさん養成所』でしょうか?」
 そう――この場所は、都市伝説のように語られている『種付けおじさん』のための養成所だ。
 本気にしているわけじゃない。
 だが、驚くほど料金は安く、しかも授業は基本的には実践メインとのことだ。
 もし、それが事実なら?
 職を失って、今後の生活もおぼつかない俺にとって、風俗の代わりになるかもしれないと、一縷の望みをかけて来たのだ。
「ようこそ、いらっしゃいました。ここのことは、どなたかのご紹介で?」
 俺を出迎えてくれたのは、70を超えているだろう、老人だった。
 その見た目を一言で言い表すのならば、執事と言えば想像しやすいかもしれない。
 しかし、身に着けている服はファッションに疎い俺でさえ、一流の物だとわかる。それを一分の隙も無く着こなしている。
 それだけでなく、老いを一切感じさせないくらいに、背筋はしっかりと伸び、羨ましいほどに豊かな白髪は、綺麗に撫でつけられている。
「いえ、そのネットで見つけまして……」
「ほう、ここに紹介なく、自力で辿りついたのですが、それはすばらしい!」
「は、はあ……ありがとうございます」
「あなたは自覚していないようですが、ここは、あらゆるエロコンテンツに興味を持ち、渡り歩かなければ、見つけることも不可能なんですよ?」
「はあ……」
 そうは言われても、エロは俺の人生において唯一とさえ言ってもいい娯楽だ。
 情報を集め続けるのは苦でもなんでもなく、息を吸うようにやっていた当たり前のこと。だから、それを褒められてもピンと来ない。
「その……ここは、あれですか? 本当に『種付けおじさん』を養成しているんですか?」
「ええ。あなたはすでにご存じかと思いますが、数多くの需要はあるのに、供給は全く追いついていません」
「需要、あるんですか……」
「もちろん数多の方々に求められております」
「で、あなたが『種付けおじさん』を目指した理由(わけ)をお教えいただけますか?」
「あ、はい。実は……」
 俺は自分の身の上を語った。とはいえ、話すことなどほとんどない。
 子供の頃から秀でたことはなく、女性にモテず、風俗以外では全く相手にされず、さらに先月、仕事を失ったこと……俺のこれまで人生を語り終えるのに、5分もかからなかった。
「なるほど。それで一念発起してこちらにというわけでございますね」
「そ、そんな感じですね……」
 実際は、ただ性欲が解消できればと思っていたのだが……。
「ここまで自力で辿り着いたことは評価いたしますが、誰もが『種付けおじさん』になれるわけではございません。まずは資格があるか確かめることにいたしましょう」
「え……? 資格とか必要なんですか?」
「もちろんです。『種付けおじさん』になれるのは、中年男性の中でも、ごくごく一部の人間だけでございますので」
 この時点で、俺は諦めた。
 なにしろ、持っている資格なんて普通免許くらいだ。あとは資格と言えるようなものは一つも持っていない。
「では、隣の部屋へ移動し、着ている物を全て脱いでください」
「へ? あ、全部ですか?」
「もちろんです。まずは、ペニスの通常状態の長さ、太さ、そして勃起時の状態の硬度や、角度、そして形状を計測いたします」
 それならどうにかなるか?
 他人とはっきりと比べたことはないが、風俗嬢には本気で嫌がられるくらいには大きいようだ。
「さらには射精時の精液の射出速度、精子の含有量や移動速度――これは妊娠のさせやすさのチェックです――などについて、データを収集いたします」
「え? あの……」
「もちろん、耐久力、持続力、そして重要なのは回復力です。1日に10回程度の射精で萎えてしまうようなペニスでは『種付けおじさん』としては能力不足です」
「え? 10回だけいいんですか?」
 仕事がなくなった俺は、ひがな一日、オナニーをしていた。1日に15回や20回くらいなら、普通にできる。
「ほう。10回だけと返答されるとは、久しぶりに逸材を迎えることになるかもしれませんね。では、隣室へ向かってください」


「まさに予想以上の、そしてすばらしい結果でした。文句無しの合格です。おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
 結果から言えば、俺は全てのチェックをかなりの高評価で突破したようだ。
「では、宇摩様には、明日から一年をかけて『種付けおじさん』養成プログラムを受けていただきます」
「え? 一年もですか?」
「ご安心ください。その間の衣食住は全てこちらでご用意いたします。あなたはただ『種付けおじさん』になることだけを目指していただければ良いのです」
 これは転機だ。おそらく、俺の人生において最後のチャンスだろう。
「よ、よろしくお願いします!」
 こうして、俺は『種付けおじさん』となるべく、訓練を開始したのだ。







 以前、ネットで「種付けおじさん」って、どこでああいうセックスのテクニックを身につけているんだ? という疑問を見かけたことがあります。

 たしかにそのことについて考えが及んでなかったなーと、そのことが印象に残っていました。

 全部がそうだとは言いませんが、エロ漫画やゲーム、小説などに出てくる「種付けおじさん」は、容姿はあまり良いほうでは無く、女性に無縁なタイプとして描かれていることが多いですしね。

 そんなおじさんが、上位的存在の美人や美少女をセックスで虜にする。

 ギャップと逆転劇の面白さなんでしょうけれど、でも、そんなことができるならそもそもすでに恋人とか妻とかいるんでは? と。

 そこで、もしも本当に『種付けおじさん』を養成する機関があったら? という思いつきから書いてみました。

 読んでいてわかった方もいるとは思いますが、養成所の下りのあたりは、ハンター×ハンター(漫画)を読み返していて思いついたことです。

 まさか冨樫先生も、ハンター×ハンターを読んでいる人間が『種付けおじさん養成所』を思い浮かべるだなんて想像もしていないでしょう。

 ……自分も想像したこともありませんでしたし。

 この後、主人公は「メ○ガキ軍曹」や「援交JK教官」、「人妻講師」、「ギャル先生」などの経験豊富な相手と様々な訓練を重ね、テクニックを磨き、本物の「種付けおじさん」になっていきます。



訓練生「やあ、キミが今日から入ってきた新人くんかな」

主人公「あ、はい。そうです。よろしくお願いします」

メ○ガキ「ふーん……逸材とか言われてたけど、本当かしら? そんなふうに見えないんだけど」

訓練生 「メ、メ○ガキ軍曹!?」

主人公「めすがきぐんそう? なあ、お嬢ちゃん。パパと一緒なのかな? キミみたいな子が、こんなところに来たらだめだよ?」

訓練生「お、おい、新人、その方は――」

メ○ガキ「そっか~☆ あたしのことを知らないんだ。でも、キモおじさんが、私に馴れ馴れしく声をかけてくるとか、ふざけてんの?」

主人公「うあああっ!?」

訓練生「さすがメ○ガキ軍曹。三擦り半で射精させるとは……」


 ……みたいな感じですかね。

 あ、これはただの思いつきネタなので、続きません。

 一瞬、ASMRにしたら面白いかも? と考えてしまったので、いつかやるかもしれませんが。

 さて、次は、前回の「記憶干渉」についてのぐだぐだ話になると想います。

 その次に、催○の短編の最終話「感情・感覚の変化」の予定です。

 実はまだ書いてないので、少し間が空くかもしれません。ご容赦ください。

 では、また次の更新で。

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