時 自若 2021/06/13 19:47

浜薔薇の耳掃除「第16話」

蘆根の元に尾花から。
「髭剃り教えてほしいって言われたんですけど」
それならこっちよりも本職に聞こうぜ!と蘆根に話を持ってきた。
「出来るだけ安く」
「まあ、学生だもんな」
「それもありますが…」
「大丈夫だ、そういう話は慣れている!」
だから主婦層に大人気なんだよ、蘆根さん。
「でもまあ、家でやるにはどうすればいいかってなると、市販のものを使うか」
そうして嬉しそうに、ドラッグストアに行くらしい。
猫砂も買わなきゃなっていってるけど、猫砂はまだあったでしょ!(お母さんみたいに)
「ついでに100円ショップも見てきた」
そっちも趣味じゃないんでしょうか?
「で結論としては、風呂場でも剃る場合は、泡たてた方がいいから」
「あれですか?泡用のボディタオルですか?」
「いや、あれなくてもやれる」
そうして洗面器に、香りの少な目のボディソープをワンプッシュし、それをお湯入れて、カシャカシャカシャと手でかき混ぜると、泡が立ってくる。
「この泡の部分を使って、剃ればいいぞ」
そ~っと尾花はかき混ぜた洗面器を見てくるが、こんなにモコモコの泡って立つのかな?と。
「俺のこれは練習しているから」
三日で細かい泡を立てれるようになりました。
「そこまで細かくなくてもいいんだ、泡立てたら、その泡使えばいいし、これだとなボディタオル忘れたとかでも結構対応できるんだよな」
泡で出る洗浄剤は便利であるが、ちょっと高いし、専用のものが必要になる。
「出張のときに、持っていきたいんだけどもなって思ったんだよ」
そこでホテルの大浴場で、あ~泡で洗いたいなって思ったときに。
「泡ボトルって使ったことある?」
「ああ、100円ショップで売っているようなやつですか?」
「そう、あれって原液使えないんだよね、で薄めなくちゃいけないけども、そうすると悪くなるのが早いんだよ」
「悪くなるのが早いのは知りませんでした」
「じゃ、どうするかなって思ったんだよ」
そうしたらやっぱりボディタオル、でも出張だと乾かさなきゃいけない。
泡を立てる…
「たまにイツモも水でバシャバシャやっていたりするけど、その時思い出したのはアライグマだったな」
もしかして泡たつんじゃないか?
バシャバシャ
立つことには立ったが、泡がそこまで良くはない、だがこれならいいのでは!
「洗浄剤の原液を水で薄めると、寒いときは冷たかったりするじゃん、だったらお湯でこうやったら、もうちょっと泡が欲しくても一回かき混ぜて作ればいわけだし」
と、このやり方を教えてもらったが、尾花の友人からは。
「確かにあれだといい感じになるけど、泡が立たない、なんであんなに細かいのになるの?」
と言われた。
「それは蘆根さんだから」
そういうしかない。
そしてそれでも物足りない場合が俺がシェービングするぜ!と蘆根に言われたが、金がないのでというと。
「良かったな、仕事がもらえて」
尾花の友人の永島は、全人類が憧れの猫をモフモフする仕事をもった。
蘆根の飼い猫のイツモ、彼のテリトリーは自宅と店と裏の家である。
自宅と店はわかるだろうが、裏の家と言うのはイツモの友人である犬のフェカリスの住処である。
このフェカリスの元に、蘆根が仕事している間はイツモが遊びに来るが、散歩の時間もどかないし、フェカリスもいいじゃないですかと寛容になる。
今でも尾花がフェカリスから、イツモを剥がそうとすると妨害を受ける、だからこそここで、
先にイツモを全力でモフモフし、その間にフェカリスを散歩という方針に切り替えるのだ。
モフモフモフモフモフモ!
永島がフェカリスのそばで転がるイツモをモフリ始める。
「じゃあ、俺散歩いってくるから」
「ああ」
その間にモフられご機嫌のイツモを確保し、ガレージまで連れてくる。
ここから散歩が終わるまで、イツモは永島にひたすら遊んでもらうのであった。
しかしそこは猫、油断すると。
シュタ!
ジャンプ力があり、飛び付いてきたりする。
イツモは人に爪を引っ掻けたりしない猫である、人と接するときは常に肉球で、それ故に、始めての肉球がイツモだったという場合も多いそうだ。
それぐらい友好的な場合、向こうから来てくれる猫である。
「イツモはマッサージも旨いな」
店で三人が食事をとっていると、タモツがそんなことをいった。
「えっ?イツモがですか?」
本日の食事は魚屋さんのおすすめで、なんでか食卓には鯛が三匹上がっている。
豪華!
「これがそうなんだよ、なんていうのかな…」
「たまにぎゅっ、ぎゅっ押してくるんだが、あれはいいマッサージ師になるな」
「そうそう、あの押す力加減と、なんかここですか?みたいに探ってくるんだよな」
「猫は子供の頃、お母さんのお腹押してお乳もらうから、生まれながらに上手なんだろう」
そういう話をされたのだが、傑はそんなに上手いのかな?と思っていたのだが、ある日のこと。
帰ろうとしたところにイツモがやったきた。
そしていきなりギュギュと押してくる。
(あっ、本当に上手いかも)
感心するのだが、他の猫がニャアと泣くと、イツモはそっちに行ってしまった。

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