時 自若 2021/06/21 14:24

浜薔薇の耳掃除「第41話」

時間があれば、ついサービスしちゃうのが蘆根である。
丁寧なブラッシングをしているが、これはメニューにはない。
「これをやると、シャンプーしたときに違うんですわね」
できればいつもいれたいが、後ろで傑が見ているので、こういう他のお客さんがいないときでなければできませんでした。
「お客さん」
「なんです?」
「お客さん、紫外線対策した方がいいかもしれませんね」
「えっ?」
「髪がこの時期で、紫外線の傷みしているってことは、お客さん、日光に弱いのかもしれません」
「あ~家族に湿疹でるアレルギーがいて」
「それならなおさら、たぶんそれだけで使っている化粧品減るかもしれませんね」
そんなことを言われたので、帰りにドラッグストアによって、どういうのがあるか物色。
「すいませーん」
声をかけた店員が、とても詳しい方でした。
「お客様はアルコールに弱いですか?」
「いや、大丈夫だよ」
話をしていくと、自分が普通の人より日光に弱いことがわかった。
「頭は帽子でいいとは思いますが…そうですね、こちらの寝癖直しはウォータータイプなんですが、UVカットの力も強くて、今お使いのシャンプーできちんと落とせますから」
などの話をした後に。
タブレットでカタログを見せてくれた。
「これはうちのお店ではなく、他店のPBなんですけども、続けやすい値段だとこちらもございます」
この店員…店のことではなく、お客様ファースト…できる!
「後はセールの際に買う、困ったときに買うと高くつきますから」
とりあえず使うぶんと、もしもこれから買う場合の地元でどこで売っているのか、とセール価格も教えてもらった。
「でさ、良かった、今まで乾燥しているからクリーム塗ってたけど、あれ紫外線ダメージだった」
ケアしたら潤いました。
「でもさ、あの店員さん凄かったな、自分のお店の話だけではなかったじゃん」
「ああ、そういう人ってこの辺の人ですね」
「えっ?そうなの?」
「この辺は昔は商売やってるところ多くて、それこそ宿や薬屋、酒屋とか並んでたらしいんですよ
「へぇ~」
「その商売人の人たちは本当にすごくて、知らない人でも、世話焼いてくれますから」
これ良かったよ。
「それは本当ですよ」
傑が話に入ってくる。
「うちのホームページで、デザートとか甘いものの特集やってね」
「春苺のは見たよ、あれ見て買いにいったらもう終わってた、でもキャラメルホッとミルクはあったから買えた」
「それはどうもありがとうございます、そういう美味しいのもお客さんがある程度教えてくれるようになったんで」
「そういえばついているのね、お客さんに教えてもらいましたって」
「そうなんですよ、最初はせっかく教えてもらったんだしなって感じだったんですが、今ではこっちも楽しみにしてます」
傑くん、あれ食べた?限定のレモンサイダーゼリー。
「えっ?それはどこで売っているんですか?って話によくなってます」
「けどやっぱり時代なんでしょうね」
「時代?」
「ええ、安くて美味しいもののの方が見ている人たちが実際に買ってくれる、買いやすいって感じです」
「そういえば炊き出しなんだけども、あれ、普通の人も食べれるの?」
「大丈夫ですよ、近所の方々も食べに来てますし」
近所の方々は寄付をもらう形をとってます。
「マスターのカレー出るんでしょ」
「他の人にも聞かれたんですけども」
「カスターニャってさ、俺が子供の頃にあった喫茶店で、純喫茶にあたるんだろうけどもさ、あそこでプリンアラモードとか食べたわけ、お店は俺が大人になる前に閉店しちゃったからさ」
そこのマスターはまだ存命で、純喫茶を閉店した後は不動産というか、地主でした。
「そこのカレーでしょ、たぶんファンは来ちゃうね」
「あ~もう絶対に行くとか、なんかブログやっている人とか目をつけているみたいですよ」
「だってネタになるし、テレビとかも来るんじゃない?」
「まさか」
と思ったら、取材の申し込み来ました。
「え?えっ?えっ?」
「ちょっと待ってください、KCJの人呼んできます」
浜薔薇の駐車場のキャンピングカーに傑が急いで訪ね、その中にいたKCJの人たちが浜薔薇にやってきた。
「謝礼とか出なくてもいいから、受けちゃってください」
小声で指示した。
チン!
「ああ、びっくりした」
「それはそうでしょ」
「謝礼ってでないんですか?」
「でない方が決まるんで、まあ、これも良し悪しはありますけどもね」
傑はあんまり納得してない顔。
「わかります、わかります、ただ代わりに」
そこで戦略の話に入っていく。
「チャリティーだからそこまで謝礼は」
「それもわかりますけどもね、蘆根さん。きちんとこちらの意図を曲げずに伝えてくれるってことが大事なんですよ、しかし、名物マスターのカレーだと、炊き出しというより往年のファンが集まる可能性が」
「カレー足りなくなるとか?」
「隣の二部屋がトイレとして解放されるから、許可とって部屋の前の庭先も借りれるように手配かな」
許可を取ったら大家が承諾した。
(今、二部屋を借りている企業、団体が抜けたら大家苦しいから許可したのかな)
「なんか大家さんから、良かったらと、お米あるけど?って言われたんですけども、後で取りに行きます」
カート持って大家さんのところにいった職員が手ぶらで帰ってきた。
「なんかご自宅にいったら、倉庫に案内されたんで、車出します」
「それなら何人かで行こうか」
倉庫にあった米袋をパンパンにつけて帰ってきた。
「これだと炊き出しルーが足りなくなりそう」
「全部使わねえよ、そういう問題かよ」
言いたいことはわかったけども。
「あっ、これ精米しないとダメですよ」
「セイマイ?」
職員は精米をしたことなかった。
「ちょっと待ってくださいね」
傑はどこかに連絡する。
「30キロは持てますか?」
「頑張れば」
それを見ていたタモツは。
「久しぶりに精米かな」
KCJの職員たちも話をして、カレーの炊き出しは作るぶんは増やすこと、それ以外のお米は、精米をした後に、配布しやすいようにつめ直すことにした。
「なんか俺らの仕事やってもらって申し訳ない」
浜薔薇と近所の人たちによって、機械によって精米された後、小さい米用の袋につめなおされて、それがKCJの支部に持ち込まれ、米は支援物資としてあっという間に無くなってしまった。
「精米作業ってあんなに大変だとは」
精米しなければならない状態のものを30キロづつ機械にいれるが、持ち上げなければいけない。
「蘆根さんはまだしも、タモツさんや傑さんもひょいって持ち上げるんですもん」
車から担いで、そのまま機械のそばに、そこで袋の口を開けて、ザーザー投入していく。
「先生は、奥さんが農家のご出身なので」
「ああ、実家があったときは、田植えとか、収穫は手伝ってたからよ」
その話を蘆根は知っていたから、今日のおやつは「おはぎ」を出した。
(蘆根、お前、前に話した、ここのおはぎは甘さがうちのと近いからを覚えてやがったな)
こういうところが蘆根が人から好かれる理由の一つでもある。

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