ふたさこ 2023/02/11 19:26

ほぼ理屈に基づくと思われる目の塗り方

ふたさこのサクフウです。
前回で絵の練習シリーズは一区切りとしましたがよくわからなかった目の塗りが突然分かったので急遽特番です。
実際やってみたところこうなりました。


というわけで今回は美少女イラストの中でもひときわ特徴的である目の塗りについて攻略記事となります。

なんとなく目を塗るのはもう脱却したいという方におすすめです。
もちろんそうではない人もイラストを描いたことがない人もこの記事を読んで神絵師と化し、たくさんふたなりを供給していただければと思います。

とはいえ私もこれが完全に正しいとは思っていません。
どこか間違えてるところや勘違いしてるところがあるかもしれませんがご了承ください。

では、まず目の塗りについて押さえるべき重要なポイントは2つ。

・虹彩の立体構造を把握すること。
・そして美少女イラストにおける目と身体の違いを知ること。

以上2点で劇的に改善されます。
少なくとも私は改善されました。

ではまずは虹彩の立体構造について解説していきます。

虹彩の立体構造

虹彩とはいわゆる黒目の部分です。
真ん中に穴が空いており(いわゆる瞳孔)虹彩が収縮することで目に入る光量を調節する働きがあります。

ではこの虹彩がどのような立体かというと以下の感じになっています。

さて、前回の記事で私は目の下側が光って見えるのは反射による映り込みではないかと考えていましたがこれが間違いでした。

実際は虹彩の陰影によるもので意外にも虹彩は光が当たると結構眩しく見えます。

では次に美少女イラストにおける目と身体の違いについて触れたいと思います。

美少女イラストにおける目と身体の違い

これはシンプルです。
違いはデフォルメ具合です。

目のほうが実際の我々人類とかけ離れています。
つまりかなりデフォルメされて描かれています。

ここで気をつけなければならないことは2つ。
まず虹彩は思った以上に形を変えることです。

ドーナツ状だった虹彩がアンテナのようにすり鉢状に変わっています。
デフォルメで形を変えるにしてもこうなるか?という疑問は拭えてません。
しかし観察すればするほど美少女イラストの虹彩はこういう形になっているとしか考えられないので受け入れました。

次に気をつけることは陰影もかなりデフォルメされるということです。

というわけでこれらデフォルメは私にとって相当罠でした。生かしてはおけぬ。
それでは実際にどのように目の塗りをやっていくか見ていきましょう。

目の塗りの実演

まずはこれから塗っていく目の下地を用意します。


では次に虹彩の陰影をつけていきましょう。

虹彩の陰影

環境の設定

陰影は光がものに当たらなければできません。
なのでまずは光源の位置などの環境設定をします。

今回は解説を考慮しシンプルな環境設定にしました。以下のとおり。

・屋外。快晴。昼。
・周囲にものはない。目と空と地面だけの空間。
・光源は2つ。やや上にある太陽と目の正面あたりに弱い補助光。

これだけ設定すれば充分です。
なお光源が2つあるのは2つの理由があります。

まず目のハイライトが増やせて見栄えがいいです。
そしてもう一つが実戦を想定してです。

今回の太陽の設定だけだと美少女の顔に影ができてしまうはずなのでそれを消すために補助光も用意しました。

それでは虹彩に陰影を塗っていきます。
まずは虹彩に最も光が当たる部分を特定します。

一番光のあたるとこ

光源から出ている光線。
それにぶつかる角度が直角に近いほどものは明るく見えます。

それを踏まえると今回の環境における虹彩の明るさ分布はだいたいこんな感じになります。

陰影特定の仕方はまず以下のような図を描きます。


左が虹彩を上から見た図。右が真横から見た図です。
それぞれ虹彩は4つの辺に簡略化しています。

さて上の図では虹彩のどの辺が一番明るくなるでしょうか?
光が直角にぶつかるほどその面は明るくなります。なので設定された光の方向からして以下のように考えられます。

同様の理屈で他の辺も特定してしまいましょう。

ここから2つのことがわかります。

上面図からは光は虹彩の左あたりに当たってること。
側面図からは光は虹彩の下のほうに当たってること。

つまりだいたい虹彩の左下が一番明るいということになります。
それを踏まえると先ほど出したこのような陰影になると私は考えました。

なお今回は光源が2つありますが圧倒的に太陽光が強いので補助光はほぼ気持ちだけ塗っていきます。

さてこのままの通り塗っても良いですが美少女の目はかなりデフォルメされています。
陰影もその対象です。

なので繊細なグラデーションで陰影に細やかな階調をつけるよりもデフォルメして

・1番明るいところ
・1番暗いところ
・中間

の3つで塗っていきます。
ポイントはコントラストは高めで。
つまり明るいところは思ったより明るく、暗いところは思ったより暗くすると良い感じです。
なぜかはわかりません。
しかしこれも陰影のデフォルメの一種と言えるのでしっくりくるのではないかと私は考えています。
また今回はメイン光源が太陽なのでコントラストがハッキリしたほうが違和感がないのかなと思います。

それでは塗りましょう。
まずは明るいところを塗ります。ハッキリつけます。


次に暗いところ。ハッキリつけます。

最後に中間。エアブラシでさっと塗ります。

これで虹彩の陰影はできました。
最後にまつ毛が落とす影と虹彩のシワにできるハイライトを入れて完成です。

言い忘れていましたが虹彩には放射状に広がる細かいシワがありここからさらに描き込むなら1番暗い色か明るい色で線を入れると良いでしょう。
どれだけ入れるかは好みだと思います。

ただ、やるなら実際の虹彩の資料を用意してどうなってるか確認しながらやったほうが良いと思います。
めんどくさがって用意しないと前回の私のような見当違いな失敗を招きます。

ちなみにこれ今回は青色の目ですが別の色のときはどうすればいいのでしょうか?
私が考えるに虹彩のメラニン色素の含有量やレイリー散乱を考慮すれば導き出せるはずです。

ただ明らかに負担がやばいので頭で考えるより目の色ごとに実際の資料を用意して観察したほうが良いと思います。
しかし理屈に基づいた新しい目の表現を模索しているなら考慮する価値はあります。たぶん。

ともかくこれで虹彩はできました。
ちなみに光源の位置を変えるとこんな感じ。

ついでに反射とハイライトも入れてみました。

とにかくあまりにも見慣れないライティングすぎて違和感がすごいです。
せっかく立体構造を把握したので陰影を変えることで一味違う表現も狙えるかと思いましたがやらないほうがいいでしょう。
美少女イラストの目は陰影も含めて記号化されているものと扱っていいのかもしれません。

次は白目の陰影もつけていきましょう。

白目の陰影

ほぼ球体なのでシンプルです。
しかし白目の陰影も当然ながらデフォルメ対象です。
調べたところ美少女イラストにおいては白目はほぼ真っ白。
つまり陰影はほぼありません。
せいぜいまつ毛が落とす影があるぐらいなのでそのとおりで良いと思います。
逆にごちゃごちゃ陰影をつけると主役である虹彩の邪魔になるのでシンプルにやります。


さて最後に肌から反射する光を考慮して影に上から肌色をエアブラシで気持ち塗りました。

さぁこれで目の陰影は終わりました。
次にハイライトを入れましょう。

ハイライト

まずここでのハイライトは光源の反射でできるものを指しています。
そして注意点として目のハイライトは虹彩ではなく角膜にできます。

それでは解説に入ります。
正直適当でいいと思います。だいたい右上か左上に置いておきましょう。

そんな解説ではモヤモヤするという人のみ以下のハイライトの位置特定に進んでください。
特に気にならないという人は飛ばしていただいても大丈夫です。

ハイライトの位置特定

それではハイライトの位置を特定しましょう。
これは中学物理で習う鏡の反射と全く同じ手順で割り出せます。
以下は今回の状況の側面図です。


だいたいの位置がわかればよいので今回美少女の目は鏡のように平面としています。
まずは解説がしやすい補助光のハイライトから特定したいと思います。

まずは光源の鏡像位置を割り出します。これは鏡を軸にした線対称の位置に現れます。


その鏡像位置から視点に向かってまっすぐ線を引きます。
この線と鏡の交差点がハイライトのできる位置になります。

次に太陽のハイライトを割り出します。ちょっと複雑です。
まず前提として太陽光の入射角は鏡のどの位置に対しても同じです。

理由は太陽がでかいからです。
なので太陽光の入射角は鏡のどの位置に対しても同じです。

そしてその入射光は入ってきたときと同じ角度で反射します。

その反射光線を観測者に重なるときの反射光、もしくは入射光と鏡の交点が太陽でできるハイライトの位置になります。

なお本当にハイライトをちゃんとするなら光源の大きさをちゃんと決めたあとに同様の手順で縦の両端と横の両端の反射位置を特定するとハイライトの正確な大きさも作図できます。
太陽の場合は調べても分からなかったので知りません。

ただどっちにしろ平面に反射してるならともかく目はドーム状で作図はかなりめんどくさいのでおすすめしません。
フォトリアルな絵を描くならまだしも美少女イラストには過剰戦力です。
資料を参考にだいたいの大きさで描くのが現実的でしょう。

これでハイライトの位置特定は終わりです。
ハイライトを描いていきましょう。

ハイライトの濃さ

ハイライトを入れていきます。
ハイライトの濃さは光の強さによります。
太陽光は最強無敵なのでハッキリと白色を置いても違和感はないでしょう。
逆に補助光のほうは弱めなのでぼんやり薄く塗ります。
ただハイライトもデフォルメ対象なので全部ハッキリと描くのが一般的かなと思います。

さぁこの時点でもうだいぶ目としては様になっているように見えます。
目の描き込みが求められていないならここで切り上げてしまっても全然良いと思います。
なのでここからは興味がある人だけ読み進めていただければと思います。

次は目に映り込む反射を描いていきます。

反射

反射を正確に描くのは高度なスキルと知識が求められます。
また正確に描いたからといって美少女イラストのクォリティに貢献するかというと別の問題です。

なのでここでは美少女イラストに適合した私なりの方法を紹介に留めることにします。

ちゃんとしたことを知りたい方はスコット・ロバートソンのHOW TO RENDERという本で勉強するのをおすすめします。(リンクはAmazonに飛びます)

イラストの教本にはこれまで6万以上は費やしていますがこのHOW TO RENDERとその兄弟本であるHOW TO DRAWのセットだけ買っておけば良いと私は思います。
かなりおすすめです。この本に助けられたことしかありません。

それでは反射の描き方を見ていきます。

どこまで描き込むか決める

まずは反射でなにを描いてなにを描かないか取捨選択しましょう。
現実のとおり全部描くと目の見栄えを邪魔します。

また、美少女イラストの目はかなりデフォルメされています。
反射もその対象です。

それを踏まえると周囲の環境になにがあろうと描くのは空(もしくは天井)と地面ぐらいで良いと私は思います。
そして幸いにも今回の環境は空と地面しかありません。

では実際にどう描くか見ていきます。

反射を描く

まず注意点として反射は虹彩ではなく角膜に映り込みます。
ハイライトと同じです。

そして角膜はドーム状なので映り込んだものはスプーンの裏側に反射しているもののように歪みます。

それらを作図して描くこともできますが資料を用意したほうがスマートです。
フォトリアルな絵を描くならまだしも美少女イラストには過剰戦力です。
なので今回は私も資料を用意して臨みました。

クロム球を資料にするのがおすすめです。
これは球体の鏡で目の反射を考えるのに大いに参考になります。

と、思っていたのですがよく考えるとさっきたまたま例えで出しスプーンを使うほうが良い気がします。
これからはそうします。

ともかく資料で注目するのは描く対象である空と地面の歪み方。
それを踏まえるとだいたいこんな感じにしました。

といったものの今見るとだいぶ適当です。
スプーンを使ってよりちゃんとしたものを描いてみました。

取り急ぎ作ったので環境はシンプルな室内に変えました。
本来ならハイライトの位置なども変えるべきですが今回は省略。

さあここまでくればあとは簡単です。
目は鏡よりかは反射しないのでまず薄くします。


そして目の中央あたりのみさらに反射を薄くします。

これはフレネル効果によるもので目の形状上中央あたりは反射が弱くなります。

余談ですが物質の反射のしやすさは表面のなめらかさに依存します。
表面がツルツルだと反射光はまっすぐ反射して目に届きます。
しかし表面がでこぼこしていると反射光が拡散して目に届かないというわけです。

なのでなめらかさを表現するため誇張して反射を強く描く手法があります。
よく手法として見られるおっぱいにハイライトを置くのもそういう理由だと私は思います。

ともかく反射はこれで完成しました。
あとはこれを調整していきます。

目的はひとつ。見栄えを良く。
見栄えに貢献するならなにをやっても自由です。

今回は目の色に合うように反射の色を変えてみました。

どうでしょうか?
変えない方が良かったかもしれませんか?
しかし反射は気分で色を変えるぐらいの扱いでいいということを伝えたかったのです。

私の個人の意見としては反射は真面目に描いた割りにはそんなにクォリティに貢献しないかなと感じています。
なので目の反射は現実に基づいて描くものというよりはファンタジー全振りで見栄えに特化した装飾として扱うほうが良い気がします。
だから色だって変えてしまっても良いと考えています。

ぶっちゃけ理屈でやるよりいい感じに描いてる人の反射を真似してしまったほうが良いのではないかと思います。

さぁそれではいよいよ最後に目を装飾しましょう。

飾り付け

やるかやらないか好みだと思います。
特にルールはありません。
違和感なく見栄えが良くなればなにをしても良いです。
例えば以下のようにスノードームよろしく雪みたいなのを散らすのも良いでしょう。


これまでを通してちゃんと目を描いてるので適当でもなんかそれっぽくなります。
ハイライトを足してもいいでしょう。

さて飾り付けは自分が知ってる綺麗なもの、見栄えの良いものの引き出しの多さが試されます。
もしそういうアイデアがなければ実際の目を観察してヒントを得るのが良い取っ掛かりになります。

画像検索で綺麗な目を観察していたところ金粉を散らしたように見える目があったのでやってみました。

なお成人向けのイラストを描くときはこの飾り付けをするかは慎重に検討したほうがいいでしょう。
性的要素で目を引くのが強みなのにその邪魔になる可能性があります。
絶対大丈夫なのは目にハートぐらいでしょうか。
なので開拓の余地は大いにあります。
興味がある人は色々試して成人向けの適した新しい表現を見つけてみてください。
そしてよろしければ私にも教えてください。

目の塗り方は以上になります。

最後に

まずはここまでご精読ありがとうございました。
なるべくなぜそうするのか根拠と理由も添えて解説したので長くなりました。
クオリティアップの一助になれば幸いです。

とはいえ所詮は個人の独自研究なので鵜呑みにせず実際のものをよく観察するのが一番良いと思います。

なんかうまくいかなかったら実際のものをよく観察する。

これが私にとって今回一番の学びとなりました。
めんどくさがって資料を見ないとかえって遠回りになります。
実際前回でそうなりました。

さてともかくこれで私に憑いていた怨霊も成仏するでしょう。

それは遡ること14年前。
講座を見るも肝心なところの解説がなく世界への憎しみを抱きながら滅びていった者がいます。

かつての私です。
その私が死後怨霊となって今まで私に取り憑いていたのです。

しかし今回あのとき知りたかった情報は知っている限り載せたのでとうとう安らかに眠るときがきました。南無。

とはいえ髪の塗りがよくわからずに滅んでいった私の怨霊もまだ後ろに控えているのでそのうち成仏させたいと思います。

よろしくお願いします。

最後に今回塗った目のPSDを置いておきます。

目の塗り_001.psd (797.65kB)

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