レモネードオアシス 2021/07/24 07:15

大決壊!~TS俺が百合落ちするまで~2

いつもあたたかいご支援ありがとうございます!
昨日は金曜日でしたが体調が悪く更新できなかったので、今日の更新です。

TS俺が百合堕ちするまで……生徒会長との出会うお話しとなっています。
楽しんでもらえたら嬉しいです!


目次

TS俺が百合堕ちするまで

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1章目 初めてのショーツとブラジャー


 ――どうやら、女の子になったらしい。

 それがこの1週間、病院をたらい回しにされて得られた結論だった。
 いろいろな精密検査を受けた結果、健康上の問題はなし。
 むしろ健康そのもの。

 ……男から女へと、性別が変わってしまった以外は。

「俺、どうなっちまうんだ……」

 千尋は学園寮の角にある自室で、ベッドで仰向けになって、ぼんやりと呟いていた。
 この1週間、病院を日替わりで回ってきてクタクタに疲れてしまった。
 幸いなことに一人部屋なので、誰にも独り言を聞かれる心配はない。
 だけどそんな些細なことよりも、もっと困ったことになっているのは事実だった。

「話には聞いていたが……まさか俺自身に起きるとは……」

 千尋はしみじみと呟く。
 まさか、性転換現象が自分の身に起きるなんて、想像さえもしていなかった。

 ――世界的に見れば、性転換現象は0%ではないらしい。

 きっかけは、ロシアのツンドラ地帯のほうに落ちた、隕石だと言われている。
 ある日、その隕石が落ちた。
 千尋もネットのニュースで写真を見かけて、「ああ、木がたくさん倒れているな」程度には思っていた。
 ……そこまでは日常にあるニュースの1つだけど、問題はそこから起きた。
 と、いうのも隕石が落ちた陽を境にして、千尋たちの年頃の少年たちが、突如として女体化するという事件が散発するようになったのだ。

 はっきりとした原因はわかってはいない。
 隕石に付着していた未知のウイルスや、未知のエネルギー波や、はたまた宇宙人による人体実験説など、様々な仮説があるもどれも実証はされていない。

 ただ、確実に言えること。
 それはある日、突然降りかかってくるということ。
 いまの、千尋のように、だ。

「信じられんことだが……」

 千尋はベッドから降りると、寮の個室に備え付けてある洗面台の前に立つ。
 鏡に映るのは、自分であって自分ではない。
 男のころの面影は、まったくと言っていいほど消滅していた。

「ホントーに女になってやがる……」

 以前よりも高い声。
 女の子になって息が苦しいと思っていたのは気のせいではなく、喉が華奢に、細くなった影響らしい。
 髪の毛はうっすらとした桃色に変わり、サラサラのロングヘアになっている。
 いぶかしげに覗き込んできている瞳は、どこかいたずらを考えている小悪魔ようにも見えて、自分のことながらドキリとしてしまう。
 それに隠しようもないのが大きく張った胸だった。
 病院で検査を受けたところFカップの認定をされてしまい、危うくブラジャーを充てられそうになったけど固辞させてもらった。
 だけどさすがにノーブラでいるわけにもいかないということで、看護師のお姉さんにサラシをプレゼントして巻き方も教わってきた。

「母乳、出てきちゃってるし」

 突然女の子になって、体内のホルモンバランスの影響か、ちょっとでもドキドキすることがあると母乳が滲みだしてくるようになっていた。
 サラシを外すと、

 むわぁ……。

 甘くミルキーな香りが、狭い洗面室に漂う。
 胸の谷間には、汗や母乳が流れ込んでしまうから、シャワーで流してサッパリしたかった。

「胸はいいとして……、いや、よくはないが」

 ズボンとトランクスを下ろす。
 男としてもっと重要な部分は、綺麗さっぱり消滅していた。
 しかもつるんとした赤ん坊のような状態になって。
 シュッと刻まれた縦筋に、ピンクの桜の花びらのような肉ヒダがちょこっと顔を覗かせている。

 ちなみに。

 千尋が着ていたのは、学校指定の男子用の制服だ。
 さっきまで病院を回ってきたから学ランにワイシャツ。
 女の子になったからと言って、いきなり女物の制服を着る勇気が千尋にはなかった。
 それにましてや女物の下着やスカートだなんて。
 これからも着る気も、穿く気もなんてさらさらない。

 そう思っていたのに――。

        ☆

 それから更に1週間の時が経つ。
 しかし男として生活しようとすると、いきなり困ったことに直面することになった。

 まずはお風呂。
 千尋の通っている学園は、全寮制なのだ。
 しかも男子寮と女子寮に分かれている。
 さらに言えば、個室に内湯なんてものは無く、大浴場だ。
 だから他の男子たちと一緒に入るわけにはいかないから、深夜になって特別に寮母さんにお願いして入れてもらうことになった。

 次に困ったのはトイレだ。
 男は小用だけを済ませるのならば立ったままですることができるけど、女はそうはいかない。
 個室に入らなくてはいけないのだ。
 男が個室に入るとしたら大をしたいときのみ。
 千尋のような年頃の男子には抵抗があることだった。
 寮でならともかく、学校にいるときに個室というのは使いづらいものだった。

 それに体育の時間も。
 千尋が通っている学校では男子と女子にわかれて体育の授業がおこなわれるけど、千尋は以前と変わらずに男子として授業を受けていた。
 だがそうなると困ってくることがある。
 男子は1つの教室でまとまって体操服に着替えるのだが――。

「俺は男なんだ。気にするなって」

 千尋はそう思っていたし、クラスの男子たちに宣言もしていた。
 だから着替えるときは一緒の教室でしていた。
 大丈夫。
 胸にはサラシが巻いてあるし、下着だってトランクスなのだ。
 欲情する要素なんて1つもない。

 ……だけど。
 そう思っていたのは、千尋だけのようだ。

 一週間が経ったころ、男子たちの連名による申請書が教師に提出されることになる。
 要約すると、

『せめて千尋を、他の教室で着替えさせてほしい』

『さらに言えば千尋を、可能であれば女子寮に入寮させてほしい』

 このことを教師から聞かされたとき、お前らどんだけ性に飢えてるんだよとか思ったけど、たしかにこのままではいけないと思っている自分もいる。

(だけど、さすがに女子寮というのは……!)

 せめて自宅から通うことができれば問題ないのだが、我が学園は全寮制で、規律ある生徒たちの育成というのを売りにしているらしいから、それは校則違反になってしまう。
 そもそも、千尋の家は学園がある関東地方から遠く離れた北海道にあるのだ。

 だけど体育の着替えはともかく、女子寮というのは抵抗がある。
 身体はともかく、心は男のままなのだ。
 それにドキドキすると、

 じゅわわぁ……。

(あっ、また母乳が出てきちゃってる……)

 ホルモンバランスのせいか、すぐに母乳が出てきてサラシの内側に染みこんでいく感触。
 早く拭いてやらないと痒くなってくるのが悩みどころだ。

「はぁ……。女子寮、か……」

 ときは下校時間。
 男物の制服を着た千尋は、昇降口で靴を履きかえて、人知れずにため息をついていた。
 昇降口を出れば、そこは前庭だ。
 前庭の真ん中には立派な噴水が設えてあって、いつもサラサラと涼しげな水音を奏でている。

 学園から男子寮まで、前庭を右に曲がって、歩いて10分弱。
 女子寮は前庭を左に曲がって同じ距離にある。
 学校の敷地内に寮があるから、生徒たちは休日や課外活動以外は学園で過ごすことになる。

(まぁ、今日のところは男子寮に帰ることにするけど)

 そして部屋から出なければいいし。
 お風呂も深夜に入れば、なにも問題は無い。
 だから女子寮に無理やり入寮させられることなんて、ない……はずだ。
 前庭を横切って男子寮へと帰ろうとしていた、そのときだった。

(誰か、いる?)

 いや、周囲には他に下校中の生徒たちがいるのだから、この表現は間違っている。
 視線を吸い寄せられたのは、前庭の真ん中にある噴水。

 その縁に座っているのは、この学園にいて知らぬ者はいないほどの有名人だった。
 モデルのようにすらりとした長身をブレザーに包み、スカートはかなり短め。
 だけど黒タイツを穿いているから、むしろ気品が漂っているようにも見える。
 真っ直ぐな黒髪ロングは噴水から生み出されるそよ風にサラサラと流れていた。

「生徒会長……」

 本名は黒(くろ)河(かわ)遥(はる)香(か)。
 しかし生徒や教師からは、畏敬の念をもって『生徒会長』と呼ばれている。
 生徒会長という多忙な日々を送りながらも学年のテストでは常に1位を独占し、部活動では何回もヘルプに呼ばれるほどの運動神経。
 さらには弾くことができる楽器は両手では足りないほどという超人ぶりだ。

(綺麗だなー)

 女になったいまでさえもそう思う。
 いや、女になったからこそ、遥香の綺麗さを思い知らされる。
 いやいや、まだ心は男だからなのか。
 それは千尋にはわからないことだった。
(ま、俺には関係のないことだけど)

 それに年上の遥香をジロジロと見つめるのはあまり礼儀が正しいことではないことのように思えて。
 相手は高嶺の花だ。
 千尋は噴水の前を……遥香の前を横切ろうとした、そのときだった。
 スッと遥香が立ち上がると、こちらを真っ直ぐに見据えて、

「きみのことを待っていたのだ」

 えっ?
 一瞬、なにを言われているのか理解できずにキョトンとしてしまう。
 そうだ。
 きっと自分のすぐ後ろにいる人に話しかけているのだ。待ち合わせかなんかをしていて。
 そう思って遥香をスルーしようとすると、

「待ちたまえ。無視とはずいぶんだな」

 今度こそ手を取られて呼び止められる。
 どうやら遥香の待ち人は千尋のようだ。
 だけどそうなると、余計に千尋は混乱してしまう。
 周りにはたくさんの生徒がいる。

 ファンクラブだってあるほどの生徒会長に手を取られるだなんて。
 それに、遥香の手は、熱くてとても柔らかかった。

「えっ? ええ? 俺を待ってたって……!?」
「そうだぞ。きみのことを……桃瀬千尋、きみのことを待っていたのだ」
「な、なんで……? 生徒会長が、俺を?」

 頭に『?』マークを浮かべて首をかしげていると、遥香はかすかに顔をしかめてみせるのだった。
 その表情さえも綺麗で見とれそうになってしまい、頬が熱くなるのを感じる。

「俺、というと、まるで男子のようだな、本当に」
「だ、だって……俺、男子だし……」
「ふむ。なるほど。そういうことか」
「な、なん……です?」
「いや、私の耳にも入ってきてな。世界的に散発的に見られる性転換現象が、我が校の生徒にも起きたと」
「そうですけど……。まさか、学校から言われて、俺を女子寮へと移そうっていうんですか!?」
「有無。その質問には半分がイエスで、半分がノーだ。私はきみを女子寮に連れて行きたいと思っているが、学校から言われたとか、そういうのではないよ」
「それじゃあ、なんで……?」
「単純な、個人的な興味だ」
「個人的な、興味……?」
「そう。きみに興味があるのだ」
「俺に、興味……って」

 学園では超人的な扱いを受けている生徒会長に直々に声をかけられて、しかも興味があるだなんて。
 まさかそんなことを言われると思ってもいなかったので、言葉に詰まってしまう。
 だけど遥香は大真面目のようだった。

「女の子になって日が浅いのだ。まだまだ精神的に不安定なのはわかる。だから……」

 遥香に両手をとられる。
 周りにいる下校中の生徒たちは男女問わずに千尋と遥香に注目していて。
 ただでさえ人前にでることがあまり得意ではない千尋は緊張してしまう。
 それでも遥香は、なんの躊躇いもなく宣言するのだった。

「私が、きみのことを女にしてやろう」
「えっ、ええ……!?」

 トクンッ。

 とんでもないことを言われているはずなのに、なぜか胸の高鳴りを覚えてしまう。
 それが生徒会長……遥香との出会いだった。


いつもあたたかいご支援ありがとうございます。
今年の夏はかなり慌ただしいことになりそうですので、8月の更新が途絶えるかもしれません。

TS俺が百合堕ちするまで3につづく!


今回イラストを担当してくれているめんぼーさんの大決壊シリーズも配信中です。
かなりジョバジョバやったので楽しんでもらえたら嬉しいです!

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