ooo 2024/06/26 23:00

毒ガスの虜臭! ~囚われ少年のクサくてイケナイ日々~

※本作は同人サークル「スカンクス」様の『進撃の巨大娘』シリーズの二次創作です。

基本設定は本家様のゲームをご参照ください。
https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ190792.html








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ぷすっ、ぷしゅぅぅ……


「んっ…む……?」
「にひひ……♪」

 ブゥッ!!
 ブゥオオ~~~~~~~~~~ッッ!!!

「んぐぅううう!!?? げっほごほッッ!! ぐ、くさぁッ!! うぇ゛えええッッ!!!!」
「あっははははははははは!!!」



 酷い目覚めだった。

 頭をぐわんぐわんと揺さぶられるような凄まじい悪臭と、寝起きの耳にキンキンと突き刺さるような無邪気な笑い声が僕を叩き起こした。
 慌てて飛び起きようとした僕の顔面は、スベスベ、むにむにとしたまっ黄色の物体に押しつぶされる。

「むぎゅううううっっ!!?」
「ハルにぃ~~! お~き~て~! おなかす~い~た~~!!」
「むぎゅぐっ!! ぶっ!! ごふッ!!? お、起ぎっ――げっほごほッ!!」

 特注の寝具にズブズブと僕の体を埋もれさせながら僕の顔に乗っかっているその黄色い物体からは、寝具に負けないくらいに心地良い感触が伝わってくるけど……それが息もできないくらいの密着度で、むしろ息をしたくないくらいの残り香を帯びているものだから、僕はまさしく死に物狂いで暴れ続けるしかなかった。

「ね~~~え~~~……あっ、起きた?」
「ぶはッ!!? ぜぇッ、はぁッ、はぁッ……うぅぅ……」

 ふっ、と顔に掛かっていた重さが無くなって、僕の視界が少しだけクリアになった。
 僕の顔の少し上に留まっている巨大な黄色いプニプニ――形の良いお尻の持ち主である少女が振り返った顔が半分だけ見える。
 すぐに起き上がらなくちゃいけないんだろうけど、僕は呼吸困難と眩暈でそれどころじゃなかった。

「……ありゃ? まだ眠いの~? もぉ~しょうがないなぁ……バッチシ目が覚めるヤツ出してあげ――」
「おぉおおお起きた起きたッ!!! 起きたからッ!! 大丈夫だからッ!!」
「……むぅ~! つまんなーい! じゃあ早くごはん~!!」
「わ、分かった! 分かったからッ!! すぐ作るから大人しくしててッ!!」
「はぁ~~い」

 慌ててベッドから転がり落ちるようにして巨大なお尻の下から抜け出すと、
 いかにも渋々、といった感じで僕の背後から声が上げられた。

「うぇっ……げほっ……うぅぅ……」
「え~、今のそんなにクサかった? にひひっ♪ 今日は調子イイかもっ!」

 いくら新鮮な空気を吸い、ぶんぶんと顔を振るっても、まださっきの生暖かいガスの感触とニオイが顔に纏わりついてるみたいだ。

 ガンガンと響くような頭痛を堪えてちらりと後ろを見れば、黄色いボディスーツを肌にぴったりと貼り付けた少女が無邪気に喜んでいる。
 絵に描いたような可愛らしい見た目にもかかわらず、描き手が最後に縮尺を取り違えたような規格外の大きさを持つ彼女らは――地球では”巨大娘”と呼ばれている異星人だ。
 この子だって顔や体つきなら僕より年下に見えるけど……縦横の比率をそのままに3メートルくらいの身長に拡大したような見た目をしている。

 それどころか、地球に攻め込む時には数十メートルの大きさにまで巨大化するというのだから、僕が通っていた学校のシェルターが一瞬でぶち壊されてしまったのも無理はないと思う。


「ハルにぃ! 今日はね~……チャーシュー麺がいいっ! チャーシュー多めのコッテリでっ! あとは~、ギョーザと~、あっ、ひさびさにニラご飯も食べたいかもっ♪ あとあと~……」
「……朝から元気だね」

 逃げるようにキッチンに転がり込んでいた僕の背に、巨大娘から今日のオーダーが入る。
 さっきから"ハルにぃ”なんて呼ばれている僕――"ハルト”の主な仕事の一つは、この子にご飯を作ってあげる事だった。
 ちっぽけな僕がこの子の遊び相手になる、なんて絶対にできるはずもないけど、ただのご飯にしたって一回の量が凄まじいものだった。

 本当は上司……みたいな人から「栄養バランスや量を考えて健康的な食事にするように」なんて仰せつかっているけれど、この子はお構いなしに脂っこい物ばっかりを大量に要求してきて、ちっぽけな僕がそれを諫める事なんてできるはずがなかった。

「ごっはんごはん~~♪ ハルにぃのご~は~ん~~♪」
「…………」

 言うまでもなく"人類の敵”である巨大娘のために、なんで僕が甲斐甲斐しく朝ごはんなんかを作っているかというと……まずは単純に、僕はその巨大娘たちに拉致されて囚われて、そこからなぜか僕がこの子のお世話係(?)に割り当てられてしまったからである。
 最初は逃げようと考えたし、何度か実行にも移したのだけど、そのたびにあっけなく捕まって――思い出したくもない”お仕置き”を受けて――それでもなぜか僕は解任されたり処分されたりする事もなく、今では逃げる気力も失ってしまったのだ。


「……はい、できたよ。 めしあがれ」
「うわ~~っ! 今日もおいしそ~~っ!! いっただっきまーーーすっ♪」

 なんて事を考えている間に、異星人のよく分からないテクノロジーによって信じられない速度で出来上がった料理の数々が、これまた信じられない速度で巨大娘のお腹の中に収まっていく。
 その体の巨大さを加味しても、やっぱりそのほっそりしたお腹の中に入りきらないであろう料理が瞬く間に消えていく光景はいつ見ても冗談にしか思えなかった。

「んぅ~~~っ♪ おいひぃ~~~~っ♪♪」
「……そうかい、よかったよ」

 "よかった”というのは本当の事で、さっきのオナラで鼻がバカになっていたものだから、味見がほとんどできなかったのだ。
 せっかくの朝ごはんを不味い味付けにしてしまったとしたら、どんなお仕置きを受けるか分からない……。

 とはいえ、迷った時はとりあえず濃い目の味付けにしておけばこの子は喜んで平らげてくれるので、他の巨大娘の担当――居るのかは分からないけど――よりかはまだマシなのかもしれない。

 そうそう、巨大娘というのはこの子だけじゃなくて――――

 ブピッ!!
 ブッスゥ~~~~~~~~!!!
「むぐッ!!???」

「おっとっと……うんっ♪ やっぱりぜっこーちょーーっ♪」
「うぐぐぐっ!!! げほッ!! うぇえッ!!!」

 前言撤回!
 やっぱりこの子の担当になったのは最悪だ!!

 この子の名前――つまり地球での通称は"毒ガス”の巨大娘。
 事あるごとに無遠慮にひり出すオナラの臭いが死ぬほど強烈で……まさしく毒ガスのような威力を持っているのであった。

「ぐっ……くさぁっ!! くさいくさいくさいぃっ!!」
「あっははははははは!!」

 言うまでもなく食事中のオナラは毎度の事なので、こうして僕はキッチンから出ていないわけだけど、それでも一瞬にして部屋の中に充満したオナラの臭いが鼻の奥をガツンガツンと殴りつける。
 おまけにこの子のオナラは普通と違ってやけにネットリとしていて、鼻の奥に生暖かい感触とニオイが張り付いているような気持ち悪い感覚がずぅっと長く続くのだ。

 初めてこれを経験した時、僕は愚かにも一緒に食事を摂っていたので、色々な意味で地獄を見たのであった。
 今では経験を生かして自分の食事は後にするようにしているので、鼻を押さえて悶絶するくらいの被害で済んでいる。
 
 悲鳴を上げる僕を指さしてケラケラと笑い転げる巨大娘に怒りを覚えなくはないけど……文句を言ったら更に楽しそうにオナラを連発するものだから全く始末に負えない。

「あははははは……はは……はふぅ~~~、ごちそーさまーっ♪ 今日もおいしかった! ハルにぃありがとー♪」
「けほっ、はぁ、はぁ……ど、どういたしまして……」
「にひひっ♪ それじゃ今日も隊員さんいじめてくるねー!」
「ぜぇ、はぁ……うん、いってらっしゃい…………気を付けてね」
「……うんっ♪ ハ~ルにぃっ!」
「わっ、ちょっ! あ、危ないから……!」
「えへへぇ~~~♥♥」

 さっきまで僕をオナラで苦しめて笑っていた巨大娘が立ち上がったと思えば、ピョンとこちらに飛びついて抱きつき、嬉しそうに頬ずりをしてきた。
 プニプニした頬っぺが擦り付けられ、すべすべの薄いボディスーツ越しにちょっと高めの彼女の体温が伝わって……僕は顔を赤くしてドキドキしてしまった。
 オナラは死ぬほど臭いくせに、この子の体から放たれているのはふんわりと甘酸っぱい、紛れもなく"女の子の匂い”なのだ。

 この子は頻繁にこういうことをしてくるから油断がならない。
 向こうは”お兄ちゃん”みたいな扱いをしているのかもしれないけど、実際に血は繋がっていないのだから、僕はこの見た目だけならとんでもなく可愛らしい女の子の過剰なスキンシップにいつまでたっても慣れないのであった。
 
「ん~~~っ♪ よっし! 準備ばんたーん! それじゃーねーっ!!」
「ぶはっ! はぁ……う、うん、いってらっしゃ――」
「いってきますのプゥ~~っ♪」

 ぷっしゅぅぅぅううう……

「ふぎゃッ!!?? げほごほッッ!!! うぐぅぅうううッッ!!!」
「あっははははははは…………」

 至近距離から放たれたオナラ――よりによってスカシッ屁だ――の強烈な臭いを閉じ込めるように扉が閉まり、無邪気な笑い声が遠ざかっていく。
 情けない音のスカシっ屁は強烈なゆでタマゴ臭をベースにして、そこにどういう仕組みなのかさっき食べたばかりの料理をグチャグチャに混ぜ合わせて腐敗させたような……一嗅ぎで鼻の奥を掻きむしりたくなるような猛烈な悪臭だった。

 あんな良い匂いの後にこんなクサい臭いを平気で嗅がせてくる……あの子は本当に、本当に油断がならない女の子なのだ!

「げほっ、ごほっ、うぇえ……はぁ、はぁ……うっ……うぅぅっ……」

 こんな生活がずっと続いて、僕の方もおかしくなってしまったのだろうか。
 いや、そうだとしても悪いのは絶対に巨大娘の方で、僕は悪くないんだけど……。
 絶対に悪くないんだけど……僕の股間はなぜか、女の子の裸を見た時みたいに……固く大きく、熱くなってしまっていた。

「けほっ、こほっ……くそぉ……くそぉぉ……」

 搾り出すような悪態をつきながら、”僕専用”に用意された小さなトイレに転がり込んで扉を閉める。
 こんな恥ずかしいのがあの子にバレたら、次は一体どんな責めを受けるか分からない。


 一体どんな……責めを……


「あっ、うぅぅっ……ち、ちがう……僕は、僕は……!」

 あの子が帰ってくるまでにしっかり”処理”を済ませておかないと……。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「たっだいまーー♪ ハルにぃーっ! みてみてーーーっ!!」
「おかえり。 今日は勝てたみたい――うわっ!」

 夜になり、そろそろかなと思ったところで電子扉が開かれると、ドタドタとやかましい勢いで巨大娘が走り込んできた。
 朝は3メートルくらいだった身長が、今はたぶん10メートルを優に超えている。
 この部屋はとんでもなく天井が高いので、巨大娘が多少大きなまま帰ってきても問題が無いようになっているのだ。

 そしてその手には今日の対戦相手であろう、哀れなWDF隊員――巨大娘に対抗するために設立されたWorld Defence Forceという軍事組織の戦闘員だ――の女の人がぐったりとした様子で握られていた。

 この子はたまにこうやって人間を持ち帰ってくる。
 もちろん、"上司”からは禁止されている。

「ふふーーんっ♪ 私のオナラでイチコロだったよっ! なんか虫さんみたいにブンブン飛んでてねっ! だから、えいやーッて叩こうとしてもぜんぜん当たらなくてっ! 後ろからチクチク攻撃してきてっ、それがイヤで、ムムム~~~!ってなってたんだけどねっ! それでねっ!」

 夢中になって身を乗り出して話し続ける巨大娘は幼い子供みたいで……いや、虫を捕まえて得意げに持ってくる犬や猫みたいだった。
 その見た目だけならとても可愛いのだけど、手の上で気絶しているお姉さんから漂ってくる吐き気を催すニオイと、そのお姉さんがこの後に受ける責めを思うと……口元を押さえた僕の表情も自然と引き攣ってしまう。

「ま、また勝手に持ち帰ってきて……レイナさんに怒られちゃうよ!」
「えーっ! 明日には返してくるからっ! 内緒にしててっ! お願いっ!」
「まったくもう……ほどほどにね」
「わーーいっ♪ さっすがハルにぃっ! えへへっ、ハルにぃは優しいから好きーっ♪」
「…………」

 この子は喜んでいるけど、僕が許したのは止めようとしてもこの子の力に敵わないからだし、密告したって僕も一緒に怒られる事になるからだ。
 決してこの子が可愛いから許したわけじゃないし……その他の理由は何も無いのだ。 無いったら無い。

「……はっ? こ、ここは……ひっ!?」
「あっ、起きた? にひひっ♪ 私の家にようこそ~♪」
「いっ、いやぁああああッ!! 離してッ! 離してぇえええッッ!!」
「うわわっ!? ちょっ……こらっ! 暴れないのっ!」

 目を覚ました隊員のお姉さんが、一瞬の驚愕の後、狂ったように暴れ始めた。
 既に気絶するくらい責められた後だろうから、この状況に恐怖するのも無理はない。
 スーツにくっついたブースターをバシュンバシュンと噴かせているけど、そんな事で巨大娘の手から脱出はできない。
 だけどそれはこれから遊ぼうと思っていた巨大娘にとっては煩わしい事で……あぁ、巨大娘の後ろで地鳴りみたいに低く籠った音が響いた。
 溺れた人みたいに必死に暴れているお姉さんは、巨大娘のもう片方の手がいつのまにか後ろに回されていて、それが頭上から迫っている事にも気づいていないだろう……。

 そしてその”何かを握り込んだ”もう片方の手が一瞬だけ開き、お姉さんを頭から包み込んでしまう。

「……メッ、だよっ! 静かにしなさーいっ!」
「む゛ぐッッ!!??? ん゛ん゛んんんんん~~~~~ッッ!!!!」
「うわぁ……う゛っ!? げほッ、ごほッ!!」

 お姉さんを握り込んだ手の上から被せられたもう片方の手によってお姉さんの上半身が見えなくなると……次の瞬間、手の平の中からくぐもったような凄まじい悲鳴が響き渡った。
 思わず顔を背けてしまった僕の方に流れて来たのは、朝に嗅いだ物に勝るとも劣らない凄まじい悪臭だった。

 言うまでも無く、巨大娘の手の中にさっきまで包まれていた握りっ屁のニオイだ。
 その手の平に頭から上半身を丸々包み込まれてるお姉さんはまさしく地獄を味わっているだろう。

「ん゛んんんんッ!! ん゛ッッ!! ん゛んッ…………」
「にひひっ♪ まずはご飯だから、静かにしててね~♪」
「…………」

 「くさい」とか「たすけて」とか、たぶんそういう言葉を大声で喚いていたんだと思うけど、巨大娘の分厚い手の平を通して聞こえてくるのはモゴモゴとした響きだけだった。
 やがて巨大娘の手から突き出していた足がビクン、ビクンと数回跳ねた後、完全に弛緩した様子でブランと揺れた。
 さっき僕が味わった物の何倍もの密度のニオイを密閉した状態で嗅がされて……隊員のお姉さんは気絶してしまったのだ。

 僕はそれを食い入るように見つめながら、ごくりと唾を飲んでいた。

「ん~~……? あっ、ほらっ! 静かになった! あんまりうるさいとバレちゃうからね~♪」
「う、うん、そうだね…………それじゃご飯、すぐ仕上げるから」
「はぁ~~~いっ♪」
「…………うぅぅ」

 巨大娘が笑顔でこっちを見たので、僕は慌ててキッチンに向き直る。
 巨大娘から見えない位置で、僕の股間はまた……朝よりも更に固く大きくなってしまっていた。
 いつからだろう……巨大娘の強烈なオナラを浴びせられて悶絶する女性隊員を見ると、股間が……ちんちんが熱く疼くようになってしまっていた。

 きっとこれは巨大娘の放つ"毒ガス”に、何かそういう成分が入っているからに違いない。
 きっと、絶対、そうに違いないんだ……。
 なんて事を最初の頃は考えていた。

 だけどやっぱり僕は、興奮してしまっていたんだと思う。
 あんなにかわいくて良い匂いのする巨大娘が、臭すぎて気絶するくらいのオナラをバンバンと出してくるギャップと……そのオナラでかわいかったり美人だったりする隊員さんの顔がぐじゃぐじゃの泣き顔になってしまう……何か見てはいけない物を見ているような、そんな不思議な感覚に。

 しかも、その凄まじいニオイを構成している一部が、僕が作った料理なんだって考えると……また僕はゾクゾクとしてしまうのであった。


「……できたよ。 召し上がれ」
「わぁーーーい♪ いっただっきまーーーーす♪♪」

 卓につくために4メートルくらいまで縮んだ巨大娘が、朝よりも凄い勢いでご飯を次々にお腹の中に収めていく。
 その手には既にお姉さんの姿は無い。

「ん~~~~っ♪ やっぱ勝った後のご飯はさいっこーーにおいしーよねっ♪♪」

 ブビィッ!!
「ムグッ!!??」

「あっ! このハンバーグ、チーズ入ってるっ!? んん~~~~っ♪♪」

 ボフゥ~~~~~~~~~~ッッ!!!!
「ふぎゅううううッッ!!!???」

「スープおかわりっ! タマゴも入れてねっ!!」

 ぷっすぅぅ……
 ぶしゅしゅぅぅぅぅぅぅ……
「い゛ゃあああああああああああああああッッ!!!!」

「う、うん……げほっ、ちょ、ちょっと待ってね……」
「はーやくっ♪ はーやくーっ♪」


 テーブルがビリビリと振動するようなオナラの音が響くのに合わせて、断末魔みたいな叫び声が聞こえてくる。
 隊員のお姉さんの姿は見えないけど……まぁ、どこに居るかは簡単に想像できる。
 ていうか結構大きな声だけど、レイナさんにバレたりしないよね……?

 WDFの隊員さん達は"フォトン”っていう不思議なエネルギーを扱えるらしくて、力が強くなって、体も凄く丈夫になるらしい。
 だからあれだけオナラを嗅がされても叫ぶ余裕があるのかもしれないけど……やっぱりすぐに気絶できない分、苦しみは増してるのかもしれない。
 もしも一般人の僕なんかがあれだけたくさんのオナラを嗅がされたら……うぇぇ、想像したくもないや。

 ……い、いや、ちょっとこっちまで匂ってきたかも! く、臭すぎるっ!!
 
「ごちそーさまーっ! おならチャージかんりょーっ! にひひっ♪ 寝るまでいーーっぱい嗅がせてあげるからねー♥♥」
「えぐっ、ぐすっ……も゛っ、もうやめで……ゆるじでぇ……」
「や~だよ~~っ♪ にひひひっ♪」
「…………」

 お尻の下(たぶん)から引っ張り出されたお姉さんの顔は汗だくで、涙でぐちゃぐちゃになっていた。
 そんな哀れな顔を見て満面の笑みを浮かべてる巨大娘は、やっぱりどれだけ似てても地球人の普通の女の子とは全く違う生き物なんだろう。
 
 そしてお姉さんと同じ地球人であるはずの僕は……僕は、テーブルの下で痛いくらいに勃起したちんちんがバレないかひやひやしていた。
 こんなのがバレたら……僕は二度と地球に帰れなくなっちゃうよ。

「んふふ~~♪ それじゃー次はお風呂だよっ♪ お姉さんも一緒にはいろーね~~♪」
「…………っ」
「あっ、ハルにぃも一緒に入る~?」
「なっ!? なななっ、何言ってるのっ!? そんなのダメだよっ!!」
「あっははは!! 赤くなってるぅ~♪ うっそだよ~~♪ にひひひっ♪」
「……も、もう……!!」

 思わずガタンと立ち上がりかけて、だけど今立ち上がったらまずい事に気が付いた僕は必死でうつむいて真っ赤になった顔を隠す事にした。
 そのうちにドシンドシンと足音が遠ざかっていって、バスルームの扉が閉められる音が聞こえると、僕は大きなため息をついた。

「まったく……まったくもう……くっそぉ……」

 今にも爆発しそうな心臓と股間に気を配りながら、僕はそろりそろりと専用トイレの中に入って扉を閉めたのであった。

「うぅぅ……はぁっ、はぁっ……くそっ……こんなの……うぅぅ……」

 あの子がお風呂から上がってくる前に、このムラムラと燻ってる気持ちをなんとか鎮めなければならない。
 だけど、よく音の響くバスルームからは海底火山みたいな爆発音と、それに混じった悲痛な叫び声と……遅れてケラケラと無邪気に笑う声が絶えず響いてくるので、僕のオナ……”気持ちの処理”はあっという間に済んでしまった。
 それこそ、二回目ができるくらいに……。

「はぁっ、はぁっ……うぅぅ……」

 僕は本当にどうしてしまったんだろうか。
 自分と同じ地球人が巨大娘に責められるのを見て興奮するなんて……まるで人類の敵みたいじゃないか……。
 それもこれも全部、僕を拉致した巨大娘の……僕に変な性癖を植え付けた毒ガスの巨大娘のせいなんだ。
 
 そうなんだ、僕はあの子には本当に困ってるんだ。
 今回みたいにWDF隊員さんを上に無断で拉致してしてきたのは一度や二度じゃない――――





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ハルにぃハルにぃーーっ! 見て見てーっ!!」
「おかえり……うわっ!?」

「どう? すごい?? ほーら、いっちにっ、いっちにっ♪」
「むぐぅ……!」
「んぅぅう……!」
「うっ、ぐぅぅ……!!」

 ある時、巨大娘がいっぺんに3人も隊員さんを持ち帰ってきた事があった。
 しかもどうやったのか――また異星人の謎技術だろう――3人の隊員さん達はみんな口元に太くて長いチューブが取り付けられていて、そのチューブの先は巨大娘のお尻に繋がっていた。
 巨大娘がお尻をふりふりしながら歩くたびに、3人の隊員さん達――みんな僕と同じくらいの歳の女の子だ――は地面を引きずられながら必死にもがいていた。

 大昔にあった”市中引き回しの刑”みたいで凄く残酷だ……なんて思っていた僕の考えはずいぶん甘かったみたいだ。


「にひひっ♪ いくよーっ、見ててね? せーのっ……んんっ♪♪」

 バズゥッ!!
 ボブォ~~~~~~~~~ッッ!!!!
「ふぐッ!!?!」
「み゛ゃあッ!!??」
「ん゛ぐぐぐぐッッ!!!」

「うっ、うわっ……」

 うすうす気づいてはいたけど……その状態で巨大娘がオナラを放つと、3つに分かれたチューブを伝って大量のガスが隊員さんの口元に流れ込んだ。
 そしてそのガスの量と勢いを表すように、隊員さん達の口元に張り付いたマスクがボコボコッと左右に大きく膨らんだ。

「ほら見て見てっ! ハムスターみたいでしょっ♪ かわいぃ~~っ♪♪」
「…………!!」

 確かに、遠くから見たシルエットだけならハムスターとか、カエルみたいに見えたかもしれない。
 だけど、当の隊員さん達がみんな涙を流しながら悲鳴を上げて、喉元を押さえてのたうち回っている様子を見て、「かわいい」なんて感想はとてもじゃないけど出てこなかった。

「うりうり~~~♪ あはははははっ♪」

 ブビビッ!

「むぐぅぅうッ!!」
「ぐざぁあッ!?」

 ブゥ~~~~~~~!!!
 ぶしゅっ……ぷしゅぅぅ……


「ん゛んッ!! ん゛んん~~~~ッ!!!」

「あっははははははは!! ほ~ら~、早く吸ってくれないとぉ……バーーーンって破裂しちゃうかもよ~♪」
 
 巨大娘がオナラをチューブに注ぎ込むたびに、隊員さん達の"頬袋”がどんどん大きくなっていく。
 こっちまでほとんどニオイが流れてこないところを考えると、巨大娘のお尻が出たガスのほぼ全てが隊員さん達の口元に流れ込んでいるんだろう。
 
 彼女達がいくら頑張って息を止めても、そのガスが空気に溶け込んで消える事は無い。
 それどころか際限なく膨らんでいくガス袋は、このままでは彼女達の顔と一緒に爆発してしまいそうなくらいだった。

 巨大なお尻の動きに体を引きずられながら、泣き叫びながらも必死に臭すぎるガスで呼吸している同年代の女の子達を見ていると……やっぱり僕は堪らなく興奮してしまうのであった。

 そしてどうやら、この"オナラで風船が膨らむ”という感じがとても気に入ったらしく、巨大娘はこれ以後もちょくちょく似たような責めを行なうようになった。





「見て見てっ! ほ~~~らっ♪ パンパンだよっ! 凄くない?? ねぇねぇ!」
「う、うん……凄いね……」


 別の日に帰宅した巨大娘は、朝とはちょっと違うボディスーツを着こんでいた。
 いつもの薄いスパッツのような生地とは違ってしっかり目の……というか、通気性がほぼゼロなくらいのスーツだ。 色はいつものとほぼ同じ。
 そしてこれまた異星人の技術なのか、巨大娘がオナラをすると、スーツのお尻の部分がまるで水風船みたいにプク~ッと膨らんでいた。
 そんなにパンパンになってたらお尻にガスが逆流したりするんじゃないかと思うけど、そこはやっぱり毒ガスの巨大娘であるこの子のオナラ力(?)が勝っているという事なのかな。

「にひひっ♪ ほ~らほら♪ ハルにぃも触ってみて~っ!」
「い、いや、僕は……う、わっ……!?」

 グイグイと押し付けられた巨大娘のお尻の生地はやっぱりパンパンに張り詰めていて、それでも押し付けられた部分が僅かに沈み込むくらいの弾力を持っているみたいだった。
 巨大娘の方はどういうつもりかは分からないけど……はっきり言って今の僕にその弾力や見た目の面白さを楽しむ余裕なんてこれっぽっちも無かった。

 まず単純にこれが破裂してしまったら、至近距離で超大量の熟成ガスを全身に浴びる事になり……隊員ならぬ貧弱な僕が臭いで悶絶するだけで済むかは正直分からない。

 しかも、ドンドンという音と振動を感じるのは巨大娘が尻を揺らしているのかと思ったが、よく見ると薄く引き伸ばされた生地の向こうには悶え苦しんで転げまわっているシルエットが見える。
 ガス室もかくやといった有様で、一般人の僕なんかがあの中に閉じ込められたらどうなってしまうのか……無意識に体が震えてしまう。

『げっほげほッ!! ごほッ!! ぐざいぃぃッ!!! くさいくさいくさいぃぃいいッッ!!!』
「あっははははは!! ほらすっごい動いてるでしょ! 面白くない? ふふっ! あははははは!!」
「う、うん……! あはっ、ははは……」
『い゛やぁあああああッ!!! 出じでぇええええええええッッ!!!!!』

 巨大娘がお尻を振ると、スーツの中の人影もボヨンボヨンと跳ねまわる。
 ここで沈黙したり否定すると、不機嫌になった巨大娘にどんな事をされるか分からないので、僕は必死で「ぎこちなくないように見えてくれ」と願いながら笑みを浮かべるしかなかった。
 
 聞こえてくる悲鳴は、やっぱり女の子の声。

 
 どくん、と僕のちんちんに血が通う。


 WDF隊員の人たちはみんな可愛くて、フォトンと科学技術のおかげなのか肌も髪もすごく綺麗で……
 そんなコたちが、ケラケラと笑い転げる巨大娘のオナラ風船の中で蒸し上げられて、まるで燻製みたいにされている。
 
 燻製したお肉はいくら時間が経っても、水で洗ったりしても煙臭いままだ。
 それなら、普通のオナラより何十倍も臭い巨大娘の”毒ガス”にって燻製にされてしまった女の子は、どうなってしまうのか……

 そんな事に思い当たると、また僕の頭の中がいけない考えで満たされてしまうのであった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 個人的にこの子の一番恐ろしいところは、その巨大さやオナラの強烈さではなくて、その力を制御しているのがこの見た目通りの幼い精伸だというところだと思う。
 例えば大人が他人に対して悪意を向ける時って、そもそも向こうから悪意や被害を受けた時とか、何か打算や企みがあって事がほとんどだと思う。


 だけど子供は――毒ガスの巨大娘は――そういうのとは関係無しに突然、無邪気で無慈悲な力を振りかざしてくる事がある。



「えへへー♪ 次はこれっ! よいしょっと……」
「い゛ッ、痛ッ!? ぐっ……離せッ!! エミールと二人で出撃してたら……お前のような奴に……!!」
「いい感じっ♪ あとはね~……」

 ぶっすぅぅ……
「むぎぃっ!? こ、このっ! げほっ!! くっさぃいっ!! いきなりオナラするんじゃな――――いっだだだだだッ!!?」

 床の上にペタンと女の子座りした巨大娘が、いくつも並べたミニチュアサイズ――あくまで相対的な話――の洋服を隊員さんに着せ替えて遊んでいる。
 WDFとの戦闘に備えてか、いつも動きやすさ重視のボディスーツを着ている彼女だけど、やっぱりこういうオシャレをしてみたいという願望もあるんだろうか。

 何にせよ、毎回まるで女児向けの人形みたいにぐいぐいと手足を引っ張られ、痛みに悲鳴を上げている隊員さん達には気の毒なことだった。


「んふふー、でーきたっ♪ じゃあここに立ってポーズしてっ! 可愛いやつねっ!」
「はぁ、はぁっ……じょ、冗談じゃないわ……! 誰がそんな……うぎッ!?」
「むぅ~! なんで言う事きかないの~っ!!」
「ぎッ……がッ……が、はッ……!!??」

 怒った巨大娘が隊員さんを掴み上げ、強く握りしめる。
 それだけで隊員さんの顔は真っ赤に充血し、苦し気な吐息を漏らす事しかできなくなった。

 "フォトン”っていう力は隊員さんの身体を強化し、巨大娘達に踏みつけられてもほとんど無傷でいられるって話だったけど……巨大娘と一戦交えて、しかも負けて散々辱められた後に拉致された隊員さんに十分なフォトンが残っているとは到底思えなかった。
 現に隊員のお姉さんは、喋るどころか息もできないくらいの圧迫で死にそうになっている。

「お姉さんは負けたんだから、私の言う事聞かないとダメなんだよっ! わかった!?」
「あがッ……が……ヒュッ……」
「むぅ~~!! 返事しないとダメなのっ!! お仕置きしちゃうよっ!?」
「がッ……ふッ……ッッ…………!!?」
「わわっ、待って待って! ストップ!! 落ち着いてっ!!」
「……ハルにぃ…………なに?」

 遥かな高みから苛立った目がジロリと見つめてきて、僕は思わず背筋が震えて後ずさってしまう。
 だけど、巨大娘がデコピンみたいな形に振り絞った片手を隊員さんの顔に近づけ始めたので、僕は彼女を必死で宥めなければならなかった。

「ほ、ほら見てっ! その人、すっごく苦しそうにしてるっ! たぶん喋れなくて返事ができないんだよっ!! 握りしめるのをやめてあげて!!」
「ん~~~……?」
「はッ……うッ……はひゅッ…………」

 ジロリとした巨大娘の視線が隊員のお姉さんの方に移る。
 隊員さんは涙を流し、口の端から泡を溢しながら、充血を超えて青ざめた顔でカクカクと頷いていた。
 話す事のできない隊員さんの必死のアピールだった。
 
「あっ! ほんとだーっ! また壊しちゃうとこだった! ハルにぃありがとー!」
「がひゅッ!! ぜぇッ、ぜぇッ、はぁッ、はぁッ……!!」
「よーしよしよし♪ これでごめんなさいできるかな~?」
「……げほっ! ご、ごめッ……ごほッ!! はぁッ、はぁッ……!」

 幼い子供が振るう暴力には、躊躇いとか、駆け引きとか、そういうのがほとんど感じられない。
 今のちょっとの受け答えのミスで、もしかしたら隊員の女の子は鼻がぺっちゃんこに潰れて、前歯なんて全部吹っ飛んでたかもしれない。

 思うに、フォトンが十分にある状態で、臭いとか……エ、エッチな攻撃とかだけを受けて闘ってきた隊員さんには危機感が足りてないんじゃないかな。
 でも、それは仕方ないと思う。
 だって、彼女達もたまたまフォトンが発現したからって入隊させられて、ちょっと訓練を受けただけの普通の女の子なんだろうから。

 だから、みんな最初は負けて連れて来られてからも気が強かったりするんだけど……

「ごべんなざいッ! ごめんなざいぃッ!! い、言う事聞くから……ひぐっ、ぐすっ……痛い事しないでぇぇ……!!」
「あーん、泣いちゃったぁ♪ ごめんね~~、よ~しよ~し♪」
「ううぅ……ぐずッ、ひぅッ……うぇ、うぇぇええ……!!」


 さっきまでの威勢が嘘のように、僕よりも年上に見えるお姉さんは大粒の涙をぼろぼろと流して泣き出してしまった。
 しかも、体の方はさっきの巨大娘の命令の通りの位置に移動して、ガタガタと震えながらも必死でポーズを取ろうとしている。
 たぶん、今日の事はトラウマになっちゃうんじゃないかな。
 恐怖が心に刻まれてしまったこのお姉さんは、たとえ地球に帰れたとしてもまだWDF隊員を続けられるんだろうか……

 なんて事を考えながら、僕のちんちんはやっぱり痛いほど固くなってしまっていた。
 また後でバレないように処理しておかなくちゃ。

 なんで僕がこんなにこそこそしてるかっていうと、もちろん単純に男として恥ずかしいからっていうのもあるけど……前に一回、これがバレた時にとんでもなく酷い目に遭った事があるからだ。

 その思い出は、思い出したいような、思い出したくないような……心情的には複雑な感じだけど、ふとした拍子に蘇ってくるくらいには鮮烈に僕の記憶に残っていた。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 その日、巨大娘は隊員さんを連れ帰って来なかった。

 いや、もちろん禁止されてるんだから本来これが当たり前なんだけど……。
 とにかく、初めの頃の巨大娘は隊員さんを全く拉致したりせず、その代わりに僕ばっかりが"いたずら”をされていた。

「たっだいまーーーっ!! ハルにぃ! ご飯できたらテレビのとこ来てーーっ!!」
「おかえ……えっ? う、うん、わかったよ……?」

 ドタドタと騒音を鳴らしながら帰ってきた巨大娘は、いつものようにキッチンに突撃してくるのではなく、モニタールームの方へと走り込んでいった。
 そして、そんなあの子に付き従うようにして、空中を丸っこい変な機械がフワフワと通り過ぎていったのだった。

(なんだろ、あれ……うぅ、今日もまたオナラ嗅がされちゃうのかな……嫌だな……)

 毒ガスの巨大娘はオナラ研究でもしているつもりなのか、ときどきこうして変な機械や道具を持ってきては、それを使ったオナラ責めを僕で実験するのだ。

 人間サイズの風船に閉じ込められて、それが破裂するまでオナラを送り込まれたり……
 シュノーケルみたいなのをつけて水に沈められて、酸素の代わりにオナラでしばらく呼吸させられたり……
 とにかく、どれも二度と味わいたくないものばかりだ。

 今日は勝ったのか負けたのか知らないけど、何にせよ僕があの謎の機械を使ってオナラ責めをされるのだろう。
 朝一番のオナラ責めはもちろん嫌だけど、夕飯時のオナラ責めはもっと嫌だ。
 先にご飯を食べていると吐き気を堪えるのが大変だし、オナラ責めの後は鼻の中にあのネットリしたニオイがこびり付いたみたいになっちゃって、何を食べてもオナラ風味になってしまうのだ。

 あの子は確かに見た目が可愛いし、人懐っこいところもあるんだけど、はっきりいってその全部を帳消しにして大マイナスなくらいにオナラ責めが苦痛だった。
 この頃の僕は正直、もう限界が近かったんだと思う。

(はぁ……待たせると怒られるから、とりあえずあの子の分の料理だけ持っていこう)

 (こんな生活嫌だ……誰か、誰か助けて……僕を地球に連れ帰ってください……)


 この頃の僕はまだ、そんな事を考えていたのであった。



「ハルにぃっ! 準備できてるよーっ! はやくはやくーーっ!!」
「はいはい……お待たせ」
「わーっ! 今日もおいしそ~~っ♪ あっ、ハルにぃもここ座っててねっ!」
「う、うん…………あ、あのっ、お願いだから、あんまり酷いことは――わっ!?」
「んー? なんか言った?」
「い、いや……」
 
 料理を並べると、僕はなぜか巨大娘の隣に座らされた。
 そして、いそいそと立ち上がった巨大娘は部屋の明かりを消し、モニターの光だけに照らされたテーブルにそろそろと戻ってきたのであった。

 一体何を始めるつもりなんだろう……
 そう思っていると、巨大娘は空中に呼び出したスクリーンの前でウンウンうなりながら、何かの操作をしているようだった。
 巨大娘が時おり首を傾げながら、画面を進めたり戻したり叩いたりを繰り返していると、ようやく部屋のモニター画面が起動したようだった。

 すると、巨大娘サイズの大画面いっぱいに"黄色”が映った。


『あれ~~? こうだっけ……? 撮れてる? 撮れてるよね~? (ガガッ、ピピッ)』

 ノイズと共に画面が数回揺れると、画面を覆っていた黄色が遠ざかると共にその全容が明らかになる。
 画面をバシバシと叩いていたのはやっぱり毒ガスの巨大娘で、後ろに見える廃ビル群はやっぱり、地球の風景なんだろう。
 突然の巨大娘達の襲撃で地上部は壊され尽くした……それでも愛すべき僕の母星だ。
 ああ……僕はいつになったら帰れるんだろう。

 僕がうっかり涙を流してしまわないように堪えていると、画面奥を向いてモゾモゾとしていた毒ガスの巨大娘がくるりと振り向いた。
 そしてその手には……WDF隊員の女の子が握られていたのであった。

『じゃーんっ♪ みっえまっすかーっ! 今日はカメラのビットを持ってきたのでぇ~~、私が隊員さんをイジめちゃうシーンをぉ~……皆さんにお届けしまーーーすっ!』
『ぐっ……離し、なさいよ…………!!』
『うわわっ!? あっぶなっ! いたたたっ!!?』

 巨大娘の手に掴まれている女の子は、ブースターを噴かすだけじゃなく手に持ったブレードをブンブンと振り回していた。
 僕は素人だからよく分からないけど、ブレードが手に当たった巨大娘は痛がっているし、女の子の闘志も万端でまだまだ闘えそうな気がする。
 もしかして、この子に逃げられたから僕を腹いせにいじめるつもりなんだろうか……?

「ほんとに、この子すっごい暴れてて大変だったんだよ~!」
「そ、そうみたいだね……じゃあ――」
「あっほら見て見てっ! ここが面白いからっ!!」

 巨大娘に言われてまた画面を見る。
 手の中の女の子とわちゃわちゃと格闘していた巨大娘は、怒ったように鼻息を荒げていた。

『んもぉ~~~っ!! 負けたくせに生意気っ!! あとでインタビューするから手加減してたのに……えいっ!』
『むぐッ!!?』

「わっ……!?」

 怒った様子の巨大娘は、暴れていた女の子を強く握り込んだ手を尻に当てたかと思うと、そのまま女の子の上にドスンと勢い良く座り込んでしまった。
 かなりの高さから超重量の巨大娘のお尻と地面に挟まれていたので、僕は一瞬、女の子が潰れてしまったのかと思った。

 僕自身にフォトンはほぼ無いし、ちゃんとフォトンを纏ってるWDF隊員さんが丈夫だっていうのも全然実感が無かったのだ。

『うっ、ぐぅぅ……! こんのぉっ……!!』
『いたたたっ!? もぉっ!!』

 だけど、どうやらその女の子は無事なようだった。
 装備も無事だし、体も無傷で元気に暴れていた。
 そんな場面がまるで目の前で見ているかのように分かるのは、たぶんあの宙に浮いてた機械がカメラマンみたいに女の子を追いかけているからだろう。

「にひひっ♪ よく撮れてるでしょ~! ここからがすごいんだからっ!」


 そして僕はそこで、衝撃的な物を見ることになった。
 

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