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搾精の記事 (5)

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[前編] ロリ巨乳サキュバスに超低速の寸止め騎乗位で搾り取られちゃう囚われ勇者の話

『異世界に勇者として転移したが、強過ぎるサキュバスとか魔女とかに屈服してイカされ続けた』の番外編です。
本編へのリンクはこちらになります↓
pixiv ノクターンノベルズ

 この番外編の舞台はサキュバスの魔王エリィが統率する城で、そこで暮らすサキュバス達と、囚われた人間の奴○たちの話です。
ちなみに、本編主人公のケンジが異世界転移してくる前の出来事です。


 荒れた土地に空高くそびえ立つ岩山。
その頂上にあるのは、サキュバスの魔王の城だ。
石造りの大きな城である。
 昼下がり、城の薄暗い廊下を歩いているのは、黒いミニワンピに身を包んだ小柄なサキュバス。
【ノア】という名のサキュバスだ。
彼女は、この城の雑兵である。
規格外に強く美しい魔王がサキュバス達を束ねる城の中で、あまり目立たない存在。
とは言え、その美しさは男たちを魅了するのに充分である。

 黒いロングストレートの艶のある髪の毛。
153センチの低い背に、細いカラダ。
そんなロリ感がありながらも胸は大きく、Fカップはある。
お尻は小さく引き締まっている。
大きな黒い瞳に控え目な高さの鼻。
唇はやや薄めだ。
その幼さが残る顔と小柄さが相まって、やはりロリ感がある。
美白とも色白とも言える肌であり、快活さは感じられない。
どことなく儚さを感じるロリ巨乳のサキュバスである。

 ノアは黒いミニワンピに身を包み、黒いヒールを履いた足で優雅に廊下を歩く。
城内は白い壁に豪華な内装であるが、薄暗く冷たい印象を受ける。
壁際には高級な置物や絵画がたくさん飾ってある。
しかし、絵画の内容についてはエロとグロの描写が目立っていた。
しかも女性が男を蹂躙する内容であり、城内の冷たい印象を引き立たせている。

 サキュバスに特有の黒い尻尾と黒い翼を揺らしながら真っ直ぐに目的地へ歩くノア。
彼女が向かっているのは奴○がいる部屋だ。
城の中から一度中庭に出て、扉を開けて再び建物の中に入った。
その部屋の中には、人間の男が6人いた。
6人で過ごすには小さな部屋であり、そんなところで全員が全裸にさせられている。
そのうちの5人は椅子に座りながらカードゲームをしており、残りの1人は部屋の隅で床に座り込んでいた。
彼は、この城に勇者として乗り込んだ【クレイズ】という名前の男だ。
短髪黒髪の好青年である。

(今日も来たか……)

 部屋の外に気配を感じていたクレイズ。
ノックもなしに開いたドアから入ってきたのは、もちろんノアだ。

「はい、食事の時間よ」

 ノアの可愛い声が、小さな部屋に静かに響いた。
現れたロリ巨乳サキュバスの姿を見て、カードゲームをしていた男たちは興奮気味である。
さらに、ノアに続いて2体のサキュバスが入って来た。
彼女達もまた、ノア以上に圧倒的な美貌をもつサキュバスである。
ノアよりも肉付きがよく、大人っぽい顔付きで、グラマラスなサキュバス達だ。

「お腹が空いたの」
「さぁ、カードゲームばっかりしてないで、精液をちょうだい♡」

 グラマラスな2体のサキュバスがノアより先に部屋の奥に入って行く。
ノアとは違い、本能が前面に出ている。

(サキュバス……! 男の精液を食糧とする生物……)

 彼女達をニラみつけるとともに、嫌悪感を示すクレイズ。
肉付きが良く、爆発的な胸と尻を強調する2体のサキュバスが、食糧を得るために全裸の男達に近づく。

「はい! 喜んで!」
「もう、いくらでも差し出します!」
「ぜひ私を選んでください……!」

 カードゲームを切り上げ、率先してサキュバスに駆け寄る5人の男達。
彼らはクレイズよりも年上で、そのなかには中年に差し掛かっている者もいる。
男達は尻尾を振りながら近づく犬のように、サキュバス達に近づいていく。
すでに激しく勃起しており、中には我慢汁が滴り落ちている者もいた。
グラマラスな2体のサキュバスは、好みの男を1人ずつ選んで連れて行く。

「また今夜、会いに行くわ。残りのオスは、その時に♡」
「大人しく待ってなさいよ?」

 残された男に手を振る2体のサキュバス。
選ばれた2人の男は腰を振るのを抑えられないほど興奮しており、発情の様子を周囲に晒しながらサキュバスの後について行く。

「はい、今夜ですね……!」
「ぜ、是非よろしくお願いします」
「そんなぁ……」

 部屋に残された男達は激しく勃起しながら、残念そうな表情を浮かべて返事をした。
そんな中、唯一屈辱の表情を浮かべているのは勇者のクレイズだ。

(くっ! みんな……サキュバスのせいで変わってしまった!)

 この6人は元々同じパーティの仲間であり、この城を統率する魔王を退治しにやって来た。 
城に侵入すると、すぐに下位のサキュバス数体と遭遇してしまった。
そして、彼女達に負けて捕まってしまったのだ。
 彼らは捕まってからというもの、搾精される日々を送っていた。
そして、何もできないまま1週間が経過した。
今やサキュバス討伐に息巻いていた彼らの姿は消えてしまった。
かろうじて闘志が残っているのはクレイズだけである。
とは言え、サキュバスの魅力に抗うのは不可能だ。
クレイズの性器もまた、その屈辱の表情とは対照的に、激しく勃起していた。
そんな彼の股間に目を向けるサキュバスのノア。

「あなたは今日も私よ」

 ノアの視線が彼の股間から顔に移る。
彼女の大きな黒い瞳がクレイズを射抜いた。

「……」

「さあ、早く来なさい」

 長い黒髪と尻尾を揺らし、優雅に部屋を出て行くノア。
クレイズは躊躇いながらも彼女について行く。
まだ闘志が残っているとは言え、敵の本拠地で武器を取られ、全裸にされては従わざるを得ない。
部屋に残されたのは3人の男達。
遠ざかるノアの小柄で可愛い後ろ姿を見ながら次々と口を開く。

「またノア様はクレイズを選んだのか」
「そうだな。チッ……今日は選ばれなかったぜ……」
「あんなロリ巨乳のサキュバス様と2人きりで、どんなふうに搾精されているんだろうな?」

 この1週間、サキュバス達に味見をされ続けてきた6人。
ノアは明らかにクレイズを気に入っていた。

「クレイズはいいよな……。ノア様が絶対に1番いい。ロリっぽいのに巨乳ってのがいいよな」
「ああ、みんな美しくてエロいんだけど、ノア様は可愛いさがあるよな。可愛い静かな声も心地いいぜ。そんなノア様に選ばれ続けているのに、クレイズのやつ……」
「まだサキュバスの討伐を諦めていないんだよな、あいつ。反抗心が顔に出てしまっている。勃起はしてるのによ」

 そんな話をしながら、残された男達は気持ちを切り替え、カードゲームをして時間を潰し始めた。

--

 ノアの部屋に連れて行かれた勇者クレイズ。
個室にもかかわらず、天井にはシャンデリアが取り付けられている。
彼女の部屋は明るく、花も飾ってあるため、城内の中では異なる雰囲気を醸し出している。

(丸腰では抵抗できない。また今日も精子をヌキとられるのか……)

「さて、準備はいいかしら? いくわよ?」

 少し高めで可愛い声で、静かに喋るノア。
ゆっくりと、その魅力的な姿を見せつけるように近づいていく。
可愛らしい顔と、大きな胸で膨らむ黒いミニワンピ、服から伸びる白い腕、裾から伸びる細い脚。
クレイズの視界が彼女の姿で埋まる。

(こ、この美しさを前にすると……見惚れてしまう!!)

 彼女はクレイズの体を両手で押し、ベッドの上に突き倒した。
彼の身長は173センチで、もちろん鍛えており決して体は細くはない。
ノアよりも一回り大きいが、仰向けに倒されてしまったクレイズ。
美貌に満ちたノアが、黒いヒールをゆっくりと脱ぎ、ベッドに上がってくる。

「う、うぅっ!?」

 彼女が少し動く度に、その外見の魅力に圧倒されるクレイズ。
ノアは下位のサキュバスであり、決して特別な存在ではない。
この城にいるサキュバスの中で、戦闘力は中の下である。
勇者として認められた力をもつクレイズであれば、対抗できる可能性はある。
しかし、彼女と互角に戦えたとしても、魅了されてしまえば全く抗えなくなる。
何度戦おうとも、彼女に見惚れた時点で確実に負けが訪れる。

「ふふっ」

 先ほどから、ずっと勃起しているクレイズに笑いを堪えられなくなるノア。
笑いながら、全裸で仰向けになっているクレイズの上に覆い被さる。
 幼さが残る彼女の見た目は、じつは彼のタイプではない。
タイプではないにもかかわらず、やはりサキュバスがもたらす快楽には抗えなかった。
上から密着するノアの柔らかい小さなカラダ。
柔らかい肌と甘い香りが、そして体型に似合わないFカップ相当の胸の感触がクレイズを欲情させ、理性を奪っていく。

(こんなに近くに顔が! お、お、おっぱいも当たっている……!!)

 先述のとおり、クレイズはロリ系の可愛らしさに欲情するタイプの男ではない。
しかし、彼女の外見は非現実的に美しく、勃起していたペニスがさらに熱くなっていく。

「さてと……」

 ノアは自分の上体を起こし、クレイズの胴体に馬乗りになる。
そのままゆっくりと後退するノア。
彼の股間の位置に座り込む。
自分のペニスの上に女の子座りをする小さな彼女を見て、可愛いらしいと思うクレイズ。
造られた人形のような、あまりにも美しい人外。
生身の人間とは違う。
ロリ巨乳として完璧なスタイル・髪質・キメ細かい白い肌。

「これが人間で言うところの、騎乗位ってヤツかな? こうやってさ……」

 ノアがミニワンピの裾をめくり上げながら、腰を浮かす。

(あ、赤いパンツだ……)

 黒いミニワンピに隠れていた真紅のパンツ。
それを見て、さらに欲情するクレイズ。
ノアは真紅のパンツを左手で少し横にズラし、自分の陰部を晒す。
そして、ガニ股の状態でゆっくりと腰を下ろす。
その行き先はもちろん、激しくそそり立つクレイズのペニスだ。
可愛い女の子が、ガニ股になりM字に開脚しているというアンバランスな状態が刺激的である。
クレイズは彼女の所作から目を離すことができない。

「あ♡ すごい硬くなってるね」

 ゆっくりと、そそり立つペニスを膣内に挿入するノア。

「うっ……!?」

 クレイズに襲いかかる挿入の快楽、そしてノアの魅力。
雄である以上、この状況に抗えるはずがなかった。

「ううううううっ!? あ、ああぁっ……!!」

 クレイズの喘ぎ声が部屋に響く。
脚をM字に開いたまま、ゆっくりと腰を下ろし続けるノア。
ようやくペニスの半分まで到達した。

(や、やはり……狭いっ!!)

 あまりにも狭い彼女の膣内。
クレイズの肉棒が圧迫される。

(カラダが小さければアソコも狭いのか!?)

 この1週間、挿入させられてきたクレイズ。
 ノアのあまりにも狭い膣内に慣れることができないでいた。

「ふふっ。動かしちゃお♡」

 いったん腰を下ろすのをやめ、両手をクレイズの胸に置くノア。
ペニスの真ん中の位置で挿入を止めて、腰を前後左右に細かく動かし始めた。
彼女の膣にかき乱される肉棒。

「う、う、うわあああぁっーー!?」

 狭く、圧迫してくる膣に、さらに動きが加えられたのだ。
そこから生じる快楽に耐えられず、大きな声で喘ぐクレイズ。
肉体的な快楽だけではない。
前を見れば映る、彼女の人形のような非現実的な美しさ。
そんな彼女が腰を動かしている所作を見ると、快楽が倍増する。

「あぁっ! あ、あああぁっ……!? ……はぁっ……はぁ……」

 喘ぎ苦しみ、もがくクレイズの無様な姿を見て、怪しく笑うノア。

(可愛い……可愛い……!! ただただ可愛いぃっ!!)

 クレイズが、ノアの魅力に取り憑かれていく。

「ふふっ♪」

(こ、こんな外見が幼い子……タイプじゃないはずなのに……)

「勇者だったんだっけ? 無様ね♡」

(なっ……!! くっ! このままではマズい!)

 勇者としてのプライドが顔を出し、クレイズは体に力を込めて抵抗を試みる。
その動きを察し、彼の両腕を自らの手で抑えてくるノア。

「抵抗しても無駄よ?」

 ノアはクレイズの両腕を抑えるため、前に倒れ込んだ。
その小さな体からは考えられない、強い力。
彼の胸には、黒いミニワンピ越しに豊満な胸が押し付けられる。
さらに彼女は、前に倒れ込むと同時に腰を下ろして、ペニスの根元まで挿入を許した。
ペニス全体が挿入されたことにより、クレイズの理性が飛びそうになる。

「あはあぁっ!? あ……あぁ……ひいぃっ……き、気持ちひいぃっ……」

 抵抗することを忘れるクレイズ。
それを確認してノアが上体を元に戻し、ゆっくりと腰を浮かしていく。
そのまま、後ろに仰け反りながら、両手をベッドの上に置く。
後ろに傾いた姿勢で、大きくM字開脚し、上下運動を繰り返すノア。
大胆な姿勢で上下する所作の一つ一つが美しい。
締め付ける膣の快楽と彼女の大胆な様子に、クレイズの頭はおかしくなり始めていた。

「ああ、面白いわね。あなたの表情は……」

 快楽に浸りながらも射精できずに苦しむ彼の表情を見て、楽しむノア。
今度はペニスを奥まで挿入した状態で、女の子座りの状態になった。
そのまま腰を前後に振り出す。
そのスピードは速くない。
ゆっくりと腰を前後に動かす。
あまりにも気持ち良いが、クレイズは射精には至らない。
そんな速度で騎乗位を続けるノア。

「うわあぁ……ああぁっ……わああぁっ」

 射精に至らない状態が続き、クレイズがもがく。
その口からはヨダレが垂れ始めていた。
ノアは気にせずに次の行動に出る。
今度は腰を浮かし始めた。
再びM字に開脚した大胆な姿が目に映る。

「途中で細かく動かしちゃおうかしら?」

 再びペニスの真ん中の辺りまで挿入した状態にして、そこから小刻みに上下し始めたノア。
その刺激範囲は狭く、速度はゆっくりである。
やはり射精には至れないクレイズ。
ノアは涼しい顔をして小刻みに上下し続けている。
人間には高度なテクニックも、サキュバスの身体能力があれば容易である。

「あっ!? ヒィっ!! あ、あはああああぁっーー!?」

 ノアの視線を浴びながら、クレイズは卑猥に腰を細かく上下する姿を見つめる。
彼女の立ち振る舞いから目が離せない。

(エ、エロい!! こ、こんな……こんなにも幼い顔なのに……)

 一回り小さなカラダ、幼さの残る顔。
そんな彼女に犯される勇者。

「そうだ……この位置はどう?」

 今度は亀頭の真ん中の辺りまで挿入した状態で止め、再び小刻みに上下運動を開始するノア。
その速度は、相変わらずスローである。

「ああああっ!? 無理無理!! ムリィッ!!」

 亀頭の中心部を攻められて、おかしくならない訳がない。
ヨダレを垂らしたクレイズの顔が、さらに狂っていく。

「も、もう……イクッ! で、出るぅッ!! 出ちゃうぅっ!!」

 亀頭攻めにより、射精感が一気に高まった。

「本当にイキそうね? これはストップ」

「え……!? うううぅっ!? あはぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 挿入したまま、ノアが腰の動きを止めた。
動揺を隠せないクレイズ。

「でも、まだ終わらないわよ?」

 いわゆるM字騎乗位を続行するノア。
再び腰を少しだけ沈ませる。
しかし、その位置は亀頭の根元、つまりカリの部分までだ。
ノアは亀頭の先端からカリの部分まで、ゆっくりと腰を上下させ始めた。
先ほどよりも少しだけ広い範囲で繰り返される超低速のピストン運動。
亀頭の先端ギリギリの位置から、カリを包み込む位置までを刺激し続ける。
亀頭全体を刺激しているとは言え、あまりにも低速であるため、射精までには時間が掛かる。
クレイズの我慢汁は常に出続けている状態でイケそうでイケない状態が続く。
およそ5分の間、クレイズは射精に至らず苦しむ様子を観察された。
そして、ようやく射精感がMAXになった。

「い、い……イぐゥッ! ほ、本当に出ちゃうっっ!!」

 クレイズの体にかつてないほどの力が込められる。
ノアは瞬時にベッドの上に立ち上がり、膣内からペニスの先端を抜く。
イく寸前の男を見下ろしながら、次の行動に出るノア。

「はい、搾精♡」

 ノアの黒い尻尾が、我慢汁と彼女の愛液で包まれた射精寸前の肉棒を咥えた。

「うはあああぁっ!? ひ、ひいぃっ!? き、気持ちひいいぃっ……!!」

 ノアの膣内とは異なり、尻尾の内部には無数のヒダが敷き詰められている。
そのヒダの働きにより、圧倒的な快感がクレイズを襲う。
ついに搾精の開始である。

「うあああああぁっ!? で、出てる! 出てるぅぅっーー!!」

 激しく体を痙攣させながら、叫ぶクレイズ。
ノアはベッドの上で彼の様子を凝視しながら、尻尾の内部にたっぷりと放出された精液を吸引する。

「ふふっ♡ 精液、出たね♡」 

 体内に取り込んだクレイズの精液を味わうノア。
満足そうな表情を浮かべている。

「……やっぱり、あなたはそこら辺の奴○よりも美味しいかも。私の【専属奴○】にしてあげる。味変も大事だし。魔王様に申請しなきゃ」

 この城の奴○は、特定のサキュバスにのみ従う【専属奴○】にされることがある。
ノアはクレイズを専属奴○に選んだのだ。

「今日はもう1回しようかな? ねっ♡」

 ノアが笑顔を投げかける。

「う……!? くっ……くぅ……」

 射精後、クレイズは冷静さを取り戻しつつあった。
美貌と快楽に惚けつつも、勇者として、こんな状況はあり得ないと認識する。
クレイズが表情を歪めた。

「う〜ん……なんか態度が気に入らないな」

 クレイズの対応を見て、ノアの表情が険しくなる。

「まだ……諦めてないんだね?」

 勇者として、まだ戦意が残っていることを見抜かれたクレイズ。

「私はカラダが小さくて、腕力が弱いほうだけど、頭は決して悪くないからね? あなたの考えていることぐらい、分かるわよ?」

「う……! お、俺は……勇者だ……!」

 クレイズの態度に納得がいかないノア。

「じゃあ、いいよ。あなたは【フリーの奴○】ね」

「な、なあっ!? そ、それだけは……!」

 【フリーの奴○】になると、その奴○はこの城の全てのサキュバスに従わなくてはならない。
フリーの奴○は非常に雑な扱いを受けているのが現状である。

「もう決定よ。あなたはまだ若くて美味しいから、きっと喜ぶ仲間達がいるわ。入れ食い状態になるかもね。よかったね」

(そ、そんな……)

 フリーの奴○の存在は、話には聞いていたクレイズ。
自分の行く末を想像すると恐怖が襲ってくる。

「あら? もしかして泣きそう? ふふっ♡」

 恐怖に耐えられず、涙を浮かべるクレイズを見て、ノアが笑っている。

「う〜ん……そういうことなら、まぁ、チャンスをあげてもいいけど」

「チャ、チャンス……だと?」

「うん、また今度ね」

 不気味に笑うノア。
それ以上は何も語らず、クレイズに退室を促した。


 やがて日が暮れ、夜が訪れた。
勇者クレイズが率いていた6人組のパーティは、再び小さな部屋に集まっていた。
クレイズ以外の5人は、今夜もカードゲームをして時間を潰している。

「なぁ、脱走……しないか?」

 部屋の端で、床に座るクレイズが5人に話しかけた。

「なに? だ、脱走……?」
「いやぁ、クレイズ。お前、何を言っているんだ」
「考えようによっちゃあ、ここは素敵な場所だぜ?」

 すでに打倒サキュバスを諦め、新しい生活を受け入れている男たち。
サキュバスから得られる快楽に溺れてしまっているのだ。

「み、みんな……! もう抵抗する意志はないのか!?」

 熱を帯びるクレイズに対して、仲間達は冷めた視線を送る。

「……ないな」
「遊んで暮らして、美しくてエロいサキュバス様が気持ちよくヌいてくれるわけだろ?」
「そうそう。このまま彼女達の専属奴○になってさ……」

 彼らはまだ、専属奴○でもフリーの奴○でもない、お試し期間なのである。
楽観的になっている仲間たちを見て、クレイズが主張を強める。

「よく考えるんだ! 俺はフリーの奴○にされてしまうかもしれない!! この城は危険なんだ!!」

 自分の身に危険が生じたことを打ち明け、熱弁するクレイズ。

「えっ!? クレイズが!?」
「ノア様のお気に入りだったのに……」
「そうだよ、お気に入りじゃないか。何かの間違いだろ?」

 話が進む中、部屋の外で物音がした。
男達は会話をピタリと止める。
扉が開き、部屋の中に入って来たのはノアだ。
これまでとは少し異なり、明らかに冷たい雰囲気を放っている。
その視線はクレイズに向けられた。

「クレイズ……あなたに用があるわ」

 みんながクレイズに視線を向ける。

「今夜は人間犬のレースに招待するわ。あなたは今夜の新しい犬よ、クレイズ」

「い、犬……?」

 ノアの手には、首輪が握られていた。

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112-113.異世界に勇者として転移したが、強過ぎるサキュバスとか魔女とかに屈服してイカされ続けた

『異世界に勇者として転移したが、強過ぎるサキュバスとか魔女とかに屈服してイカされ続けた』の続編です。
 これ以前の話は以下のリンクから読めます↓
pixiv ノクターンノベルズ

112.エリィの過去(前編)

 春先の谷にてケンジがマリエーヌに決意表明をした日、魔王エリィは自分の城にいた。
7階にある、かつてケンジとエリィが初めて出会った部屋の中である。
彼女の城は石造りで、その壁は石灰で塗装されているため白色だ。
大きくて縦長の部屋で、赤い絨毯が敷かれている。

 現在、昼下がり。
今日もエリィの魅力は顕在だ。
薄暗い部屋の中、玉座に座りながら絨毯の上に2人の魔人を並べている。
その2人とは、トロルイ兄と弟である。
かつて彼らはエリィを暗殺しようとして返り討ちにあった魔人であり、今は彼女の奴○として生活している。
エリィは全裸の彼らを正座させて、食事を楽しむつもりだ。
サキュバスにとって食事とは、もちろん雄の精液を搾り出して体内に取り入れることである。
 トロルイ兄弟は全裸なので、その鍛え上げられた筋骨隆々の肉体があらわになっている。
そんな実力者でさえもエリィの美貌には敵わず、その視線は彼女の姿に釘付けだ。
 その一方で、エリィは腕を組んだ状態で立ちながら奴○達を見下ろしている。
長いストレートの艶やかな黒髪に、綺麗な白い肌。
細い体にもかかわらず、大きな胸。
丈の長い黒いドレスにキラキラと光るヒールを合わせている。
胸元が見えるドレスなので、その膨よかなおっぱいの上半分が見えていて興奮を誘う。
もし彼女が仰向けに寝ていたとしても、その膨らみは充分過ぎるほど大きなものだ。
彼女の端麗な立ち姿を見ただけで、奴○の魔人達は勃起してしまっている。

「さて……今日もお前らの精液をいただくぞ」

 大きな瞳をさらに見開き、エリィが宣言する。
兄のほうは先の戦いでミルフィーヌに魅了されていたが、搾精され続けて再びエリィにも魅了されてしまっている状態だ。
 エリィが冷徹な視線を2人に向け、舌を出して自身の厚みのある唇を舐める。
尻尾の先端がハート型から女性の性器のように変形し、兄の肉棒に食らいついた。
彼の全身が震える。

「あはぁっ!? ああぁっ!! あひぃぃぃぃ!?」

 尻尾は肉棒の根元まで吸い付いて離さない。
日常的に搾り取られているものの慣れることはなく、快感に酔いしれる魔人。

(きょ、今日もなんという快感……!! 暖かい! 締まりは昨日よりも強い!! き、気持ち良い……)

 彼は正座の状態のままヨダレを垂らし、白目を剥きながら叫んでいる。
 
「さぁ、いくぞ? 私を満足させてみろっ!」 

 エリィが強めに言葉を放つ。
冷徹な視線のまま、兄を見下ろしながら。

(エリィ様に見下ろされる快感!! 下から見るエリィ様の美しさ!!」

 下から見ると、黒いドレスに包まれた胸の膨らみが目立ち、興奮を誘う。
エリィは腕を組んでいるが、それでも胸のシルエットは充分に確認できる。

「毎日毎日、エリィ様の美しい姿を見られるなんて!! こ、この状況……す、すぐに出てしまう! すぐに出てしまうぅっ……!!)

 肉棒の根元に位置していた尻尾の先端が、亀頭まで上がっていく。
一瞬動きを止めた後で再び根元に戻り、その往復動作を繰り返す。
襲いかかる肉体的な快感と、冷酷な表情のエリィに見下ろされるという精神的な快楽に兄の射精感が強まる。

「ああああぁっ!! で、出るぅ……! 出ますうぅっ……!! あ、ああああぁっー!!」

 ペニスの根元から先までを3往復したところで、彼は射精した。

「出したか。どれ、今日の味はどうだ?」

 エリィの尻尾が肉棒をバキュームし、精液が彼女の体内に吸い込まれる。

「う、うわあぅっ……!! あ! あはぁ……あああぁぁっ……! はぁっ……はあぁっ……」

 魔人は喜びの表情を浮かべながら息を切らしている。
正座のまま体を痙攣させ、下からエリィを見つめていた。

「まあまあだな。……さぁ、次だ」

 エリィはバキュームするのを終了し、すぐさま弟の魔人の股間に尻尾を向かわせる。

「う、嬉しいです!! ありがとうございます! ありがとうございます……!!」

 隣で兄が搾精されているのを見て、弟はオナニーしたい衝動を必死で抑えていた。
ついに自分の番が来た……と、歓喜の声を上げる。
彼のペニスがエリィの尻尾でゆっくりと覆われていく。

(や、やっぱりすごいぜ……! これまで何度も何度も搾精されているのに、初めてかのような快感だ!! き、気持ち良い……。し、幸せだぁ……)

 エリィは相変わらず腕を組みながら立ち、尻尾だけを動かしている状態だ。
そんな最小限の動きで搾取されながらも幸せを感じる弟の魔人。
ゆっくりと動いていた尻尾の動きが止まり、根元まで咥え終えたことに気づいた。
男根が全て覆われたことに嬉しくなり、弟は満面の笑みを浮かべた。
エリィは彼の笑顔に目もくれず、冷めた表情で口を開く。

「いつもより尻尾の中を細かく速く動かしてやろう」

 エリィの尻尾の中には無数のヒダが存在している。
ヒダの1つ1つを思い通りに動かすことができるため、その動きのバリエーションが無数にある。
これが何度搾精されようとも快楽に浸れる理由の一つだ。

「ああぁっ!? あひぃっ! き、きもちいいぃぃっ……!! で、で、でちゃううぅ……」

 尻尾の中は暖かく、高級なローションでも塗られているかのような滑りの良さである。
さらに無数のヒダを細かく速く思い通りに動かされては、射精まで時間は掛からない。
情けない大声が部屋中に響く。

「あああぁっ!! イキます! イキますぅっ!! こんなに早くうううぅっ……!!」

 弟の全身が痙攣する。
そして、正座の状態を続けられなくなって前に倒れる。
エリィの妙技が瞬時に絶頂をもたらした。

「もう出したか。兄は3往復耐えたが、弟のほうは一瞬だったな」

「あ……あはぁんっ! あはあんっ……!! エ、エ、エリィさまぁ……!!」

 倒れた弟は、体を痙攣させながらエリィの名前を呼んでいる。

「尻尾の内部を動かしてしまうと一瞬で射精してしまうな。精液の味も劣ってきたか……?」

 彼女はバキュームしながら精液の味を確かめたが、少し不満そうだ。
すぐに気持ちを切り替え、尻尾をペニスから外す。

「……そう言えば、今日は魔界から客が来る。それまではひたすら頂くぞ」

 エリィは腕を組んで兄弟を見下ろしながら、その後も兄、弟、兄……と、交互にひたすら精液を搾り取っていく。
ときに腕を組み替え、脚の位置を変える。
そして、射精が近くと少し口元を緩ませながら舌で自分の唇を舐める。
そんな細やかな動きをする度にエリィの胸が揺れ、その揺れに合わせて艶のある高級な黒いドレスもわずかに動く。
ただそれを見ているだけでも、彼らの心は奪われていく。

「エ、エリィさま! エリィさまぁっ~!!」
「ありがとうございます! ありがとうございますぅ……!!」

 兄弟ともにお礼を繰り返す。
そんな感謝の言葉など聞きもせずに、エリィは沈黙して何かを考えている。

(ふぅ……こいつらの味は悪くはないが、満たされない。やはりチキュウ人の精液が欲しい。……早く戻って来い。私は我慢しているぞ……!)

 エリィは日常の食事に満足していない。
最も美味である精液をもつケンジのことを思い出している。
毎日味わえないことを強く認識し、弱気な表情になっていた。

「エ、エリィ……さま?」
「大丈夫でしょうか……?」

 彼女の表情を見て、魔人達が心配している。

(くっ……! 奴○達の前で弱さを見せてしまったか! 最近、私はおかしい。あのチキュウ人には弱いところばかり見せている気がする。この城の王である私としたことが、なぜか弱気な発言をしてしまうのだ!! この生活を守るために、もっとしっかりしなくては……)

 最高級の精液を思い通りに味わえないこと、そしてケンジが用いた濃縮液の影響により、エリィは精神的に不安定な状態にあった。
弱気な表情を隠すことに努めていると、誰かが7階に上がってくる気配がした。

(む……誰だ? まだ客は来ないはずだが……)

 エリィが入り口のほうに目をやると、懐かしいサキュバスの姿が見えた。

「……食事中に失礼するわ。久しぶりね、エリィ」

 部屋に姿を現したのは、エリィに勝るとも劣らない美女。
赤毛のボブカットで赤い瞳、真紅のロングドレスを身に纏っている。
エリィほどではないが、美形・美白で細い体、そして豊満な胸の持ち主だ。
目尻が上がっており、強気な目つきである。
もちろん他のサキュバスと同様に黒い翼と尻尾が生えている。
玉座に向かって足早に歩き出すと、徐々にその姿がハッキリと見えてきた。
薄暗い部屋の中、その目から放たれる鋭い視線がエリィの大きな瞳をとらえる。

「……む? お前か、【シャーロット】。予定の時刻より早かったな」

 会う約束をしていたのは、このシャーロットと呼ばれたサキュバスだ。
赤い絨毯の上を優雅に歩いている彼女に対して、エリィは身構えている。
シャーロットは正座する奴○達の前に立ち止まって口角を上げ、再び口を開く。

「あら? 私……ずいぶんと警戒されているのかしら? あなたとは親友だと思っていたけど」

 自分に対して身構えたエリィを見て、疑問を口にした。

「親友……だと? 笑わせるな。そんな綺麗な関係ではないだろう」

「そうかしら? 私たち、命を助け合った仲よね? 腕っぷしはあなたより弱いけど、私のほうが戦略とか政治とかに使う頭は良いわよ。お互いの長所を活かして頼って頼られる戦友……そんな関係が適しているかしら?」

 彼女の言葉を受けて、エリィが眉間にシワを寄せる。

(私は頭が悪い……と言いたいのか? 相変わらず嫌なことを平気で言う奴だ)

 嫌な感じがしたが、彼女の言っていることは概ね正しい。
そこには触れずに会話を続けることにした。

「お前のことを頼りにしている面はある。……が、この世界を生き抜くために、政治的な意味で頼りにしているだけだ。親友や戦友といった、『友』という言葉を使うのは違うな」

「あら、冷たいのね」

 首を傾げるシャーロット。

「……」

 沈黙するエリィを見て、シャーロットが話題を変える。

「そう言えば、相変わらず美術品や高価なインテリアを集めているのね。ここに来る途中にも色々と飾ってあったわ」

 部屋を見渡しながら、エリィが集めた品物について言及した。
エリィの城には、至るところに絵画や壺、置物などが飾ってある。
他にもシャンデリアや絨毯なども、自分で選んだものだ。
そんな拘りの強いところが彼女にはある。

(急になんだ? 会話の目的は一体……?)

 エリィが様子を伺っていると、シャーロットが口を開く。

「この赤い絨毯は、いつだか魔界に来て私のところに取りに来たものよね? エリィ……私と最後に会ったのは、その時だったかしら?」

 彼女が言う『その時』とは、以前エリィがマステラ王国に国王と暗殺者を返しに行ったときのことだ。
その際、シャーロットの国にも顔を出していた。
じつはシャーロットは、魔界にあるサキュバスの国の一つを統治している王なのである。

「ああ、そうだな。……そんなことよりシャーロット、お前の用件は何だ?」

「あら? 用がないと来ちゃダメなの?」

 口元に笑みを浮かべて返答するシャーロット。

「……」

 またしても沈黙するエリィ。

(シャーロットとは命を助け合った仲だ。確かに頼りになる。しかし、何か腹の中で別のことを考えている気がするのだ。ただのカンなのかもしれないが、信じ切っていいものか……)

 頭の中で考えをまとめていると、シャーロットが真剣な表情になった。

「じつは私……あなたの城が半壊したっていう噂を聞いてね。それで来たのよ」

 マリエーヌ達がケンジを奪回しに来た際、エリィの城が一部壊れたことが魔界で噂になっていた。

「半壊……? 確かに侵入者が盛大に暴れたが、そこまで壊れはしなかったぞ……」

「……確かにね。でも、下のほうの階はまだボロボロだったわよ。こっぴどくやられたようね」

(こ、このっ……! いちいち嫌なことを言う! こういうところが、この女を信頼し切れない理由なのかもしれない)

 決してカンだけでの判断ではないと、エリィが気づく。
そんなエリィを他所に、シャーロットは続けて喋り出す。

「最後に会ったときは、絨毯を取りに来るだけなのに、わざわざ自分で魔界まで来たわよね? 本当は何か私にお願い事があったんじゃないの?」

「いや……とくにない。マステラ王国に用事があったから、ついでに寄っただけだ。絨毯は自分で選びたかったしな」

 本当はシャーロットに助けを求めようという下心もあったが、それは言わなかった。
エリィは、この城の警備の脆弱さに不安を抱えていたのだ。

「そうなのね。……でも、地上も大変でしょう? ブルー……だったかしら? あの子達は相変わらずでしょうし……」

「……!」

 シャーロットに助けを求めようと思っていたことを見透かされているような発言だ。
今もエリィは、この城の警備に不安を持っている。

「……地上ではうまくやっている」

 エリィは動揺を悟られないように、表情を変えずに言葉を返す。

「そうかしら? 城が半壊したのに……」

「半壊はしていないと言っているだろう……! 地上には魔女がいるのだ! 戦闘力が高い者もいる……!!」

「あら? そんなに大きな声を出して……。ふふっ。何か動揺している? それにしても……魔女、魔女ねぇ……。魔女の存在は私も知っているわ。やっぱり地上も大変じゃない」

(くっ! こいつ、何が言いたいんだ……!? こちらから情報を引き出すような、真意を確かめるような……嫌な感じだ)

 エリィが不快感を表情に出す。
お構いなしに、続けて口を開くシャーロット。

「本当に私の助けは必要ないのね? あのとき、私が言ったこと……覚えているでしょ?」

「あのとき……だと?」

 『あのとき』と言われ、エリィの意識が過去に向かう。
そして、シャーロットとの過去を思い出し始めた。


 エリィは地上に来る前、魔界にいた。
今から100年以上も昔の話である。
100年と言っても、サキュバスの寿命は1000年以上と言われているため、人間からしたら10年ほどの時間感覚だ。
 当時エリィは、いくつかあるサキュバスの大国の一つを統治していた。
彼女はサキュバスの中で最強の力をもつと言われており、歯向かう国は徹底的に力でねじ伏せる、最凶の国王として恐れられていたのだ。
エリィは【親衛四天王】と呼ばれる幹部、そして兵士のサキュバス達を500人以上も従えていた。

「エリィ様……最近、北地方の魔人達が勢力を伸ばしています。あの国に対して、何らかの対策を検討しましょうか?」

 エリィが魔界の森の中に建てた巨大な城。
その玉座に座る彼女に話しかけたのは、親衛四天王の1人である【メリフィールド】だ。
紫色でセミロングの髪の毛に、健康的な肌と程良い肉づき。
目尻が下がった優しい目をしている。
髪の色と合わせたパープルカラーのミニドレスの上から黒いマントを羽織っている。
戦力・知力ともに四天王の中では断トツでトップのサキュバスだ。
エリィと付き合いが長く、もっとも彼女が信頼している部下である。

「ふむ……あの地方の魔人達は、それほど強くないはずだ。ひとまず様子を見る。この国に攻めて来たとしても私1人で殲滅できるしな。妙な動きがあったら私が出向き、ねじ伏せる」

 笑みを浮かべて拳を握りしめるエリィ。
自分の力を信じて疑わない笑みである。

「りょ、了解しました……」

 メリフィールドは一歩後ろに下がりそうになる。
エリィが拳を握りしめただけで、城の壁にヒビが入りそうだ。
そんな気迫に圧倒されたのだ。
2人の会話が途切れたところで、エリィは真上から気配を感じた。

「……む?」

 彼女が見上げると、そこにいたのは細い体の魔人の男。
突然、魔人が襲ってきたのだ。

(暗殺者か……!? まさか天井にへばりついていたのか?)

 エリィが立ち上がり、その場で尻尾を上方向に伸ばして攻撃する。
瞬時に繰り出された尻尾による強烈な攻撃。
その一瞬のうちに、数発分の打撃が魔人の体にヒットした。

「くぅっ……!! バレた……だと!?」

 エリィに反応された上に攻撃を受けて、魔人の男は攻撃することを諦めた。
床に着地し、彼女の隣で構えている。
黒い腰巻きを身に付け、その手にはナイフを握っていた。
上半身は裸であり、エリィの攻撃に耐えるほどの強靭な肉体であった。

(なに……!? 細い体ではあるが、なかなか打たれ強いな。もう少し本気で行くか)

 エリィは敵のタフさに少し躊躇したが、すぐに気持ちを切り替えて構えの体勢をとる。

「くらえっ!!」

 先に仕掛けたのは魔人の男だ。
彼は前進し、手にしていたナイフでエリィを攻撃する。

「……遅い」

 エリィはナイフによる突きをギリギリで避けるとともに、右手で掌底を放つ。
完璧なタイミングで魔人の顔面にカウンターがヒットした。
彼はフラつきながら後退したが、両足に力を入れて立ち止まる。
エリィとメリフィールドに挟まれて不利な状況になった。

「貴様……暗殺者か? いい動きだ。攻撃に移るまで、この部屋にいることに気づかなかったしな。それにしても、この城にどうやって侵入した? この城にいる多くの兵の目を掻い潜って……」

「へっ! そいつは言えねぇな。奇襲が失敗したとは言え、攻撃するまで俺の存在に気づかないとは意外と甘いねぇ? しかも、俺を攻撃するチャンスが2度あったのに殺せないとはな! それでもこの国を統治するサキュバスの王かよ……エリィ!!」

 大声で捲し立てる魔人の男。
その様を見て、エリィはため息をつく。

(やれやれ、調子に乗っているな。魔法を使うか……)

 彼女は魔法で攻撃を仕掛けようとしたが、魔人の姿を見てあることに気づいた。

「ん……? 待て、貴様……その紋章、北地方の魔人か? ここまで力をつけていたのか」

 魔人の首には黒色の紋章が刻まれていた。
メリフィールドが気にしていた北地方の魔人であることの証明である。

「……だったらどうした? エリィ王、お前を殺す気はないぜ。生け捕りだ」

「こちらこそ生け捕りにする気だから手加減をしている。メリフィールド……皆に伝えろ。こいつの仲間が侵入しているかもしれん」

 戦いに入れず、見ているだけだったメリフィールドにエリィが訪ねる。

「……」

 しかし、彼女は無表情で沈黙しており動かない。

「どうした? 早く動け」

 エリィが圧力をかけるが、メリフィールドは反応しない。
すると、部屋の入り口から3人のサキュバスが現れた。
親衛四天王の残りの3人であり、全員美貌を備えている。
そのうちの1人が一歩前に出て喋り始める。

「……私達が雇ったんです。北地方の魔人の暗殺者ですよ。エリィ様……この国では、あなたに反感を持つ者は多い。我々を筆頭にね」

 突然の告白。
3人の美しいサキュバスの目には、エリィへの明らかな敵意が宿っている。

「なっ……!! 貴様らっ!! 私を裏切ったということか!?」

 動揺するエリィに、四天王の3人は呆れた表情を向ける。

「我々の考えに全く気づいていなかったとは……」
「北の魔人を格下だと思っていましたか? 慢心ですよ、エリィ様」
「私たちのことも見下していたんじゃないんですか? そういうところですよ」

 自分に従っていたはずの幹部達。
エリィは突然の謀反に驚きを隠せない。

「『そういうところ』……? どういうところだ……? 私に……原因があるのか?」

 顔色が悪くなっていくエリィ。
四天王の3人は口撃を緩めない。

「あなたは王に相応しくないのですよ。我々の意見は一致しています。隣国のシャーロット王と怪しいつながりがある……そんな噂も流れているようですしね?」
「シャーロット王との噂もそうですが、そもそもあなたは人格的に国のトップに相応しくないんですよ」
「まだまだ北地方の魔人を連れて来ていますよ? 戦闘向きの手練れがね」

 彼女たちの後ろから現れたのは10人の魔人。

「……!!」

 全員体が大きく、大きな魔力を放っているのが分かる。
エリィは相手の力を推し量り思考する。

(……どうする? 暗殺者の魔人1人に、さらに屈強な魔人10人。そして親衛四天王が3人。この数……勝てるか? ……確実に勝てるとは言い切れんな)

 突然の裏切りに判断ができずにいるエリィ。

「そうか。私は……追い込まれているのか。メリフィールド……一緒に戦ってくれるか?」

 傍観していたメリフィールドに助けを求めるエリィ。

「いえ……私もこちら側です」

 彼女は暗殺者の魔人とともに部屋の入り口に向かって歩き、四天王達と合流する。

「なっ!? メ、メリフィールド……? お前も!? う、裏切るのかっ!?」

「はい……」

 無表情のまま返事をするメリフィールド。

「むしろ彼女が発案者です」
「メリフィールドさんに付いて行きますよ、私たちは!」
「長年、信頼していた部下に裏切られる気分はどうですか?」

 残りの四天王の発言により、彼女達の考えが次々と明らかになる。
エリィはたまらず一歩下がり、思考を巡らせる。

(なんということだ……! 私は彼女にも嫌われていたのか。皆、私の命令を聞き続けてきたから、嫌われているなんて考えたこともなかった。……ショックだ)

 自分の顔に冷や汗が伝うのを感じた。
両の拳を握りしめ、必死で言葉を捻り出す。

「くっ! 私は……信じていたぞ。信頼関係はあると思っていた……!」

 その言葉に、メリフィールドが目を細める。

「……何を言っているんですか? 私はあなたに、怒りしかありませんよ……! あなたは力に任せて言い聞かせているだけです! 誰もあなたに逆らえない! 従うしかない!!」

「き、貴様……!! 私が教えたと思っていたが……。戦い方も、魔界での生き方も……!!」

 エリィはたまらず感情的になる。
しかしメリフィールドの恨みは強く、声を荒げて発言する。

「勝てないと悟り、情に訴えかけているんですか!? あなたでも、これだけの数の力には敵いませんね!!」

(くっ! 私の言葉が伝わっていない! 私のことなど……)

 メリフィールドの反応にエリィが絶望する。 
思考を続けると、胸の辺りが苦しくなってくる。
束になった部下達の力。
彼女達から向けられる冷徹な視線。
エリィは辛い気持ちになっていた。

(体の力が入らん……。その目で見るのをやめてくれ)

 落ち込むエリィ。
自分が嫌われていることなど、考えたこともなかった。
心にダメージを受けてしまったのだ。
そんなエリィのことなどお構いなしに、メリフィールドが会話を続ける。

「せめて命は取らないでおきましょう。他国に力を示すため、あなたの名は必要です。表向きはあなたが国王ということにしておいてもいいですね。まぁ、ひとまず牢屋に閉じ込めておきましょう。あなただけが知っている他国とのやり取りを吐かせます。機密事項は全て吐いてもらいますからね」

 メリフィールドが方針を示した。
その優しかった目には憎しみがこもっている。
エリィは四天王達に取り囲まれ、連れて行かれてしまった。


113.エリィの過去(中編)

 親衛四天王に連れて行かれたエリィ。
意気消沈したまま牢屋に閉じ込められてしまった。
牢屋の中は暗く、目の前には鉄格子。
周囲には脱走を防ぐための金属でできた壁。
冷たく硬く分厚く、破壊は容易ではない。
そもそもエリィの体は拘束されていて、破壊を試みることもできない。
壁に取り付けられた鎖がエリィの手首と足首、そして尻尾を固定し、女の子座りの状態で動きを封じている。
さらに、その鎖には魔力を封じる効果があり、彼女は徹底的に無力化されてしまっているのだ。
周囲の状況を確認し、彼女の気持ちはさらに沈んでいく。

(牢屋……か。こんなことになるなんて、考えてもいなかったな)

 後ろを見上げると、背後の壁に備え付けられた小さな窓から外が見える。
わずかな月明かりに目を向けながらエリィは考え込んでいた。

(サキュバスの歴史において、謀反の例はいくつもあるが……こんなにつらい気持ちになるんだな)

 暗い気持ちが晴れない。
しばらく考え込んでいると、牢屋に誰かが入ってきた。

「どうも。○問係のブルーで~す」

 入って来たのは黒いキャミソールとミニスカート姿のブルーだ。
エリィがしっかりと拘束されていることを確認した後で陽気に挨拶をした。
しかし、その笑顔にはどこか猟奇的な危うさが混じっている。

「ブルー……だと?」

「そうですよー。○問部隊の一員です」

「そうか。……そういえば見たことのある顔だ」

 当時、エリィとブルーは面識がほとんどなかった。

「まぁ、私は末端の兵士ですからねー。で、今からエリィ様を○問しまーす♪ 何か秘密にしていることはありませんか? 他国のこととかでナイショにしている事がありますよね? お隣のシャーロット王との関係も怪しいと言われていますよー? 悪巧みしているんじゃないですか? 四天王さま達が抱いている疑惑について『ぜんぶ吐かせろ』と命令されています。……というわけで、正直に教えてください。そうすれば、○問しなくて済むかもしれませんよー」

 ブルーはエリィのところまで近づき、早口で説明する。
その説明を聞いてエリィの表情が変わる。

「私を○問する……だと?」

 エリィの鋭い眼光が、ブルーに突き刺さる。
初めて会話する末端の部下から『○問』という言葉が出た。
本能的に自分の身を守るスイッチが入り、眼光で威圧する。

「○問する気なんだな? 答えろ」

「そ、そう命令されているんですよー! エリィ様は動きも魔力も封じられていますよね? なので○問は可能かと……」

(○問か。メリフィールド……容赦ない命令をするんだな。それにしても、こんな遥か格下にナメた態度を取られるとはな)

 権力も戦闘力も著しく劣っているブルーからの発言に少し腹が立った。

「可能だが、お前では力不足だな。……魔力、尻尾、そして四肢を封じられたとしても、お前が私に触れた瞬間、お前に重大な危害を加えることができるぞ」

 鋭い眼光のまま、言葉でブルーを威嚇する。

「……!!」

 ただならぬ空気を察知し、エリィに近づいていたブルーが部屋の入り口まで急いで戻る。

(……こ、怖すぎィ! エリィ様に近づいたのは初めてだけど、こんなに恐ろしいなんて……)

 恐怖を感じるとともに、彼女には同時に思うことがあった。

(し、縛られているエリィさま……エ……エロすぎィ! 間近で見るとエロさがヤバっ!! ぜ、是非とも○問してみたい……!!)

 女の子座りの状態で拘束されているエリィの様子を見て興奮している。
ブルーの嗜虐心は、かつてないほど駆り立てられていた。

(ロ、ロングドレスが捲れて見えているフトモモ……! あ、あの白くて細いフトモモがセクシーです……!! そしてあの溢れんばかりのおっぱい!! 綺麗な顔! 大きな瞳!! あの透き通るような白い肌!! 同じサキュバスの私ですら、頭がクラクラしてくるー!! あのドレスの中の股間に私のナイフをグリグリして、エリィ様の威圧的な表情を恐怖の顔に変えたい!!)

 怯えていたはずのブルーが、欲望に満ちた眼差しでジッとエリィを見つめ出した。

「……な、なんだ貴様!? どういう目で私を見ている!?」

 ブルーの口からはヨダレのようなものが見えた。
その表情は恍惚としている。

「へっ!? い、いや……なんでもないです……。え、ええと、確かに……圧倒的な強さをもつエリィ様からしたら、私を虫ケラのように感じるでしょうね。○問されても反撃できる……と??」

「そうだ。頭は自由に動かせる。噛みつくことができるかもしれないぞ? 指も動かせるな。指1本、お前の体に触れることができれば、お前を殺すことは確実にできそうだ」

 エリィは不吉に笑いながら、その場で指を動かして見せる。
ブルーがゾッとし、その表情がひきつる。
縛られて魔力を封じられていたとしても圧倒的に実力が違う。
指1本で体の肉をほじくり回され、デコピン1発で頭を吹っ飛ばされることは間違いない。

「こ、怖いですねぇ。……でも、私だって触れずに○問することはできますよ? エリィ様の頭と指に注意しながら、このナイフを使って……」

 ブルーが自分の足に取り付けているホルダーからナイフを取り出す。
ブルーの案など、ささやかな反論に過ぎない……と言わんばかりにエリィがほくそ笑む。

「ふっ。良い度胸だ。ナイフが私の体に触れた瞬間、そのナイフはお前の体に突き刺さっているだろう」

「……」

 ブルーは想像する。
エリィの体をナイフで切るイメージ。
どこを切ったとても、ナイフがエリィの筋肉によって押し戻されて自分の体にナイフが刺さっているイメージになる。
また、ナイフを投げつけたとしても、彼女の体は、その筋肉は……体の中に侵入してきたナイフを跳ね返してしまうかもしれない。
まさかとは思うが、普通に考えたらあり得ないことだが、エリィの実力ならあり得る。
自分が攻撃されてしまうイメージを払拭できない。
ブルーとエリィとの実力差は明白である。
体を痛めつけて○問することは不可能だ。

「う……! で、ですよねー。エリィ様を○問するなんて……私、けっこう四天王さま達から無茶振りされてますよね……」

「お前が私を○問することが難しいことぐらい、少なくともメリフィールドはわかっているはずだ。なぜそんな指示を……」

「まぁ、私は使い捨てってことなんでしょうねー」

「なんだと? 使い捨て?」

「私の○問に対してエリィ様がどういう対処をするのか……その結果を見た上で、ちゃんと○問できる方法を考えるんじゃないですか? 私の身に何があったとしても、お構いなしです」

「そうなのか? お前は使い捨てなのか?」

 ブルーの話を聞いて、エリィが口を開けて驚く。

「○問部隊の中で私が1番嫌われていますから……。まぁ、なんか……異端児と言いますか。使い捨てにされる可能性は充分にあると思います」

「む……そうだったのか。お前のどこが異端なんだ?」

「え? ちょ、ちょっと……残忍すぎるというか、性癖が歪んでいるというか……」

「そ、そうなのか……? お前が異端扱いされているという報告は受けていないな。知らなかった」

「まぁ、王であるエリィ様が知るはずもないですよね……。私は末端ですから。わざわざ報告するわけありませんし」

「……」

 周囲から締め出されているのは、今の自分と同じ……と思うエリィ。
彼女は真顔になって考えを巡らせる。

「貴様……いつから嫌われているんだ?」

「え……もう20年以上前だと思います……。あまり覚えていませんけど」

 返答しながら、ブルーが不思議そうな表情でエリィを見る。

(エリィ様……な、なんの質問だったんだろう?)

 不思議に思うブルー。
エリィはまだ思考中だ。
立て続けに疑問が湧いてくる。

(20年以上……決して短い期間ではない。なぜ平気なんだ? 気にしないのか?)

 エリィは再び質問を投げかける。

「お前……そんな状況でもメリフィールド達の味方をし、私に無謀な○問を試みるのは何故だ?」

 ブルーの肩から力が抜け、ため息をつく。

「エリィ様……強過ぎて分からないんですね……。群れなきゃ、この魔界ではやっていけませんよー。私はサキュバスの中で弱いほうなので。まぁ、最底辺ではないですけど。……って、そんなことはどうでもいいんですよ! やっぱり○問することは難しいですから、まずはエリィ様のお世話係のサキュバスに聞いてみようと思います。秘密の会議の内容とか、秘密裏に招いているお客さんとか、いろいろ知っているんじゃないかと。1人ずつ○問すれば……」

「……なに?」

 エリィの顔が曇る。
ブルーは牢屋の外に出て、世話係のサキュバス達を引き連れて再び入ってきた。

「この子たちが世話係……ですよね?」 

 連れて来られたのは、手錠を掛けられた5人のサキュバス。
彼女達は普段、エリィの着る物や部屋の掃除、客人のアポなど、身の回りの世話や雑務を任されている。
エリィの秘密を知っている可能性は高い。

「なっ!? やめろ! 貴様……この者達に○問をしたら許さんぞ!!」

「へへへー♪ その反応……やっぱり世話係の子たちがエリィ様の秘密を知っているんですね? ここで結果を出せば、私も少しは生きやすくなるかもしれません」

「このぉっ! 殺すぞっ!!」

 エリィが鎖を引きちぎろうと、座った状態のまま全身に力を込める。

「ヒィッ!! エ、エリィ様!?」

 ブルーの怯える声とともに、何かが破壊される大きな音がした。
……が、エリィを拘束する強固な鎖は破壊されていなかった。
壊れたのは壁に取り付けられた小さな窓だった。
窓から放り込まれたのは淡く光る水晶玉。
その光はすぐに消失し、水晶玉から美しいサキュバスが姿を現した。

「エリィ、こんなところに捕われてしまったのね。探すのに苦労したわ」

 登場したのは隣国の王であるシャーロット。
真紅のドレスを身に纏い、堂々と立っている。
突然の大物の登場にブルーが驚く。

「え……シャ、シャーロット王!? そ、その水晶玉は……!?」

 床に落ちている水晶玉を拾いながら、シャーロットが喋り始める。

「ふふっ。私の実力を持ってすれば、エリィの居場所を突き止めるなんて簡単よ。魔力を感知する能力の高い仲間がいるからね。侵入も計画通りだわ。この水晶玉は時空魔法の職人が作った貴重な代物よ。空間移動に使えて便利なの。見た目も綺麗だし、エリィも欲しいんじゃない? あげないけどね」

 シャーロットが笑いながらエリィに視線を向ける。
予期せぬ事態に、エリィは動揺している。

「い、いらん! それよりシャーロット……これはどういうことだ!?」

「あなたの幹部達が怪しい動きをしていることが分かったから、私自ら来たのよ。……助けてあげようかしら?」

「私を助けに来たのか? どうやってこの事態を知った!?」

「私の情報網を甘く見ないでくれる? 部下に団結されて謀反されるだなんて情けないわ。あなたは私の国より大きな国に発展させることに成功したわ。だけど、じつは上手く指揮が取れていなかったのね」

 シャーロットが自信満々の笑みを浮かべながらエリィを批判した。

(なっ……!? い、嫌な言い方をする……! しかし、その通りだ。何も言い返せない!)

 再び気持ちが沈み始めるエリィ。

「こ、国王自ら乗り込んで来るなんてー! し、信じられません!! やっぱりシャーロット王とつながっていたんですね……!」

 状況を理解し、驚きの声を上げるブルー。

「ふふっ。さあ、エリィ。逃げるわよ。私がもっと弱かったころ、あなたに命を助けてもらったことがあったからね」

「……そんなこともあったな」

 そう答えながら、考えを巡らすエリィ。
助けが来たにもかかわらず、エリィの表情は暗くなっている。
部下の謀反に続き、シャーロットの批判が追い討ちになった。
しかし、この状況を打開するには彼女に頼るしかない。

「シャーロット……お前を信じていいのか?」

 シャーロットを信用し切れないエリィ。

「もちろんよ。悪いようにはしないわ。早くここから逃げないと。……あれが拘束を解く鍵かしら?」

 シャーロットが歩き出す。
ブルーを横目に牢屋の入り口付近にある鍵を手にする。
そしてエリィの拘束を解くシャーロット。

「背に腹は代えられん。お前と一緒に逃げよう」

「あら? 信用ないのね」

 不敵に笑うシャーロット。
自由になったエリィは半信半疑のまま逃げ出す準備をする。

「……そこにいるサキュバス達は助ける」

 エリィが世話係のサキュバス達に目をやる。

「え? そんな下位のサキュバス達を連れて行くの? 甘いわね。……そんなことをしていたら、逃げ切れなくなるわよ? ここの幹部は決して弱くはないでしょ」

「……」

 エリィは返事をせずに、世話係のサキュバス達を自分のところに誘導し始めた。

「あらあら、忠告したのに。仕方がないわね。……じゃあ、説明するわ。この水晶玉は対になっていて、外の仲間が持っている水晶玉のところに空間移動ができて……」

「問題ない。さっさと行くぞ」

 シャーロットの言葉を遮り、エリィが壁に向かって掌底を放つ。

「少し本気を出した」

 厚い金属の壁とは言え、自由になったエリィの前では意味をなさなかった。
この城を囲む森が見えるほどに壁は崩れ落ちた。

「相変わらず、とんでもないわね。この分厚い金属の壁を一撃で……」

 エリィの力技に呆気に取られるシャーロット。

「げげっ!? これは……ちょっともう私じゃ手に負えません!! ……って、エリィ様! 世話係の子達を連れて行くなんて、やっぱりその子達は何か秘密を握ってるってことですね!!」

 ブルーが叫ぶ。
牢屋に誰か近づいてくる足音がした。

「なんだなんだ!? 騒がしいな……!」
「大きな音がしたぞ! 非常事態か!?」
「○問部隊! 返事をしろ! どうした……!?」

 親衛四天王達の声と足音が牢屋に近づいてくる。

「早く! 逃げましょう……!!」

 シャーロットが先導し、エリィが破壊した箇所から外に逃げ出した。


 エリィとシャーロットは暗い森の中を走っていた。
そして彼女達の後ろを、5人の世話係のサキュバスがくっついていく。

「ちょっとエリィ! 本気でこんなに多くの部下を連れて行くの?」

 逃げながら世話係のサキュバス達の手錠を壊し始めたエリィ。

「……彼女達は弱い。知能も低いのだ。あのまま放っておいたら、私のことを聞き出すために、なす術もなく○問されてしまっていただろう」

 下位のサキュバスは精液を食らう動物的な一面が強い傾向にある。
戦闘力も低い場合、世話係や雑用係に任命される。
そんな存在ではあるが、エリィは自分の世話をしてくれるサキュバスを大切にしていた。

「まぁ、いいけど。すぐ近くに私の仲間がいるから、合流するわよ。……それにしてもエリィ、実際のところ、何故こんなことになったの? 親衛四天王の動きについては情報が入ってきたけど、動機は知らないの」

「……私には分からん。途方に暮れている。この感情のやり場も分からん。私が圧倒的に1番強いのに……! まさか親衛四天王があんなことを! 何が悪かったのだろうか……」

 メリフィールドの憎しみに満ちた表情を思い出す。

「くっ! メリフィールドまで裏切るとは……!! いつから反旗を翻すつもりでいたのだろうか!?」

「う~ん、四面楚歌になるなんて、やっぱりあなたに原因があるんじゃない?」

 そう言いながら、シャーロットが鼻で笑う。

「なっ……! お前……! 分かったようなことを……!!」

「……!? エリィ! ちょっと待って! 」

 先頭を走っていたシャーロットが急停止する。
逃げながら話していると、目の前に青い光が広がっていることに気づいたのだ。

「なんだ!? 結界か!?」

 続いてエリィ達も立ち止まる。
結界だと気づいた時にはすでに手遅れで、青い光は周囲に広がっていた。
そして、後ろから親衛四天王たちが接近してきた。
逃げたエリィ達を、すぐに追いかけていたのだ。
メリフィールド達は青い光の向こう側で立ち止まる。

「焦っていましたか? 簡単な結界に引っ掛かりましね」
「まさかシャーロット王が乗り込んで来るとは!」
「やはりあなた達2人は何かを企んでいたのでしょうか?」

 四天王だけではなく、そこには北地方の魔人達の姿が10人ほどあった。
先ほど四天王とともにエリィを追い詰めた屈強な魔人達である。
そして、ブルーも同行させられていた。

「○問部隊のお前……逃げられるとはな」
「責任は○問部隊にあるな」
「とくにお前……この罰は重いぞ?」

 ブルーは四天王達に冷たい視線を向けてられている。

(げげっ!? シャーロット王が乗り込んで来たから、絶対に無理でしたよ!? 四天王達……また無茶苦茶なことを言ってる! なんで○問部隊の責任になるのよー。また私が嫌われる! というか、城から追い出される!!)

 納得がいかないブルー。
エリィは相手側の様子を見て、まずい事態に気づく。

「待て……世話係のサキュバスが1人つかまっている」

 メリフィールドが下位のサキュバスの手首を掴んでいる。
そして彼女は、勝ち誇ったように喋り始めた。
 
「やはりエリィ様の○問は難しいでしょう。代わりにこの下位のサキュバスの○問を行ないます。あなたがわざわざ一緒に逃げ出そうとするなんて、重大な秘密を知っているのかもしれません」

 それを聞いたブルーが眉間にシワを寄せる。

(世話係のサキュバスを○問するのは、私の案なんですけど……!)

 ブルーのイライラが溜まっていく。
そんな中、動いたのはエリィだ。

「貴様! その者をこちらに返せ!!」

 前に出るエリィ。
……が、結界が邪魔をして前に進めない。
その様子を見て、メリフィールドが笑いながら喋り出す。

「そんなに必死になって……。やはり何か秘密を知っているんですね?」

 彼女の質問に対して、エリィが真剣な表情で焦りながら説明を始める。

「そいつらは何も知らない! 何もできない! 弱く、知能も低く、兵士にもなれない! それでも、私は世話になっているんだ! 必死に私の予定を管理してくれている! 私の大切な美術品も丁寧に手入れしてくれているんだ!」

 エリィの言葉に、ブルーが目を丸くする。

(え……エリィ様!? それが……理由なんですか? じ、自分の部下を助けようとするんですね! こんな……私よりもさらに弱いサキュバス達を! 冷酷で残虐と言われているエリィ様が……もしかして本当は優しい?)

 予想もしていなかった理由に、ブルーが驚いている。

「そいつは返してもらう! こんなチンケな結界で、私を封じられると思うなよ……!!」

 怒りの表情をあらわにしたエリィが魔力を解放する。
彼女の右の手の平が結界に触れると、その部分から徐々に破壊されていった。
その様子を見たメリフィールドの顔が引きつる。

「なっ!? あ、あなたは……本当に規格外ですね!!」

 焦るメリフィールドに向かって踏み込むエリィ。
繰り出された掌底が顔面を襲う。

「くっ……!!」

 顔を横にそらし、メリフィールドは紙一重で攻撃を避けた。
少し遅れてやってくる風圧に後退りしながら、ゆっくりと口を開く。

「手を……出しましたね!?」

「こいつを取り返しただけだ」

 エリィは掌底を放つとともに、尻尾を使って世話係のサキュバスを救出していた。
ブルーは部下を助け出したエリィを見て興奮する。

(エ、エリィ様……! シビれます!!)

 エリィの行動に衝撃を受けたようだ。
 
「くっ……! 全員で仕掛けましょう!!」

 メリフィールドが指示を出した。
残りの四天王と魔人達が構える。
すかさず前に出てきたのはシャーロットだ。

「ちょっと……私がいることも忘れないでね?」

 彼女が真剣な表情になる。
それを見て、メリフィールドも顔色を変える。

「シャーロット王……あなたも戦う気ですか? 国際問題ですよ? まぁ、私達の城に侵入した時点で国際問題ですが」

「国際問題? エリィとは古い仲なのよ。友人が理不尽に捕まったら、助けるのが普通じゃない? 私も戦うから、さすがに引いたほうがいいんじゃない? というか、私が1人で来ているわけないでしょ?」

 シャーロットが喋り終わるのと同時にサキュバスが2人、メリフィールド達の両隣から現れた。
彼女達はシャーロットの右腕と左腕と言われている幹部のサキュバスだ。
1人はその手に水晶玉を手にしており、シャーロットの城内への侵入に協力していたことが分かる。

「くっ……!!」

 駆けつけてきた2人のサキュバスの戦闘力は高く、メリフィールドが怖気付いている。
それを見て、シャーロットが言葉で畳み掛ける。

「戦争をするのであれば、あなた達の国は戦力ダウンね。エリィがいなくなったんだもの。あ……周囲に住んでいる魔族達から狙われるんじゃない? 北地方の魔人は味方につけているみたいだけど、どこまで耐えられるかしら? 私の国との国際問題より、そっちの心配をしたほうがいいと思うけど」

 シャーロットの警告にメリフィールドの口元が歪む。

「くっ! 引きましょう! このままでは済みませんからね……!!」

 メリフィールド達は悔しい表情を晒しながら、その場を立ち去った。
事態を収めてくれたシャーロットにエリィが話しかける。

「シャーロット……すまない」


 暗い森の中、その場に残っているのはエリィとエリィの世話係5人、シャーロットとシャーロットの幹部2人、そして……ブルーである。
ブルーにしては珍しく、真剣な表情をしている。

「エリィ様……私も連れて行ってください!」

 ブルーがエリィに近づいてアピールをした。

「ん? 確か……ブルーという名だったな。なぜだ? お前はあちら側だったはずだ」

「いやぁ、私はちょっと仲間外れでしたからね……」

「さっき牢屋で言っていたな。残虐性……だったか? まぁ、残虐なところがあるのは私も同じだが」

「あ、少しはわかってくれますか? 残虐性、出ちゃいまよねー。もう性癖なんで仕方がないんですよ」

「性癖? 私は性癖というほどではないが……」

「そんな個性も認めてくださいって感じです」

 ブルーが鼻を鳴らす。
エリィは彼女の性癖については気にしていない。
その他に疑問に思っていることを切り出す。

「私が不思議に思うのは、お前が20年間疎外されているにもかかわらず何も行動を起こさなかったことだ。悲しく、つらくなかったのか?」

 エリィは自分が築いてきた王国の幹部達に裏切られ、つらい気持ちになっている。
そのため、このような質問をブルーにした。

「え? いやぁ、私は自由に生きたいので。本当は群れるのは好きじゃないんですよ。魔界は群れないとキツいですから一緒にいただけです」

「……なるほど。それもさっき言っていたな。……そうか」

 自分と同じものを感じたが、今の話を聞いて違うと思うエリィ。

「私がエリィ様について行こうと思ったのは、エリィ様……意外と部下を大切にするようなので安心できると思ったからです」

「そうか……。まぁ、部下にもよるが……」

「……」

 ブルーは黙って何かを考えている。
なるべくエリィの言うことを聞こうと思ったようだ。

「わかった。ともに行こう」

「やった♪」

 ブルーは自分と似ている状況だと思ったが、性格や考え方は全く異なる存在だ。
エリィは、そんなブルーに興味を持った。
 2人のやり取りを見ていたシャーロットが一歩前に出て口を開く。

「ねぇ、話し込んでいないでさ。……どこか行くアテはあるの? ないなら私のところに来ない? 私の国の戦力を強化したいわ。エリィ、私とあなたが一緒にいれば無敵じゃないかしら? 魔界を揺るがす大ニュースよ」

「シャーロット……お前は古くからの知り合いだ。しかし、信じていいものか……」

 シャーロットが目を丸くして驚く。

「え……今、助けたじゃない。しかもすごい格好良くさ。まぁ……私も昔、助けられたことがあるから、貸し借りナシって感じだけど」

「助けてもらった……が、お前を信用し切ることができない。それは……お前が強いからだと思う」

「え? どういうことよ? あなたほど強くないわよ」

「単純な強さだけではない。部下を指揮する力が高く、頭の回転が早い。先ほどメリフィールドを退けたときも口が達者だと感じた。広い情報網も持っているようだな。的確な手段で私の城への侵入することに成功したし……さまざまな種類の強さを持っている。……強いものは、私を裏切る」

「え……強いからって、裏切るとは限らないと思うけど……」

「……」

「ちょっと……エリィ?」

 裏切られたことを思い出し、考え込むエリィ。
元気のない彼女に代わってブルーが話に入る。

「あ、エリィ様……部下に裏切られて疑心暗鬼になってる感じですねー。そうですよねー。ヒドいことがあったばかりですもんね。シャーロット王の誘いは、また落ち着いてから考えればいいんじゃないですか?」

「……そうだな」

 エリィが暗い表情で頷いた。

「……そう。残念だわ。でも、正直に言ってくれてありがとね」

 溜め息をつきながら答えたシャーロットをエリィが見つめる。

「……」

「何よ?」

 何も喋らないエリィを見て、シャーロットが不思議に思う。

「意外なものだ」

 色々と考えた末に口を開くエリィ。

「え、なにが?」

「お前とは古くからの長い付き合いだ。昔も今も、私のほうが強いがな。それでも国を上手に統率できているお前を羨む」

「エリィ……なんか本当に素直ね。確かにあなたの方が戦闘は強い。まぁ、向き不向きはあるわよ」

 向き不向きという言葉を聞いて、エリィは目線を逸らす。

(私は統率に不向き……か)

 エリィは少し考えた後で会話を再開する。

「……さっきお前が言ったような、2人で協力する未来もあるかもしれん。ただ、もう少し、お前の力を頼らずにがんばってみようと思う。私は……魔法陣を作成して地上に行くことにする。魔界で国を統治することに疲れた」

「あら、そうなのね。地上へ? そう……うん、まぁ……ね。メンタルが弱っているのね。まぁ、一生の中で、そういう時間が少しあっても良いかもね。あ、メリフィールドたちに復讐したくなったら協力するから」

「おそらく……それはない。先ほどお前が言ったとおり、ここまで四面楚歌だと、私に何か原因があったのだろう」

「そうかもしれないわね。あ、魔界のものが欲しかったら私に連絡してね。インテリアとか芸術品とか、協力するわよ」

「……助かる」

「魔界に戻って来たかったら、いつでも私に声をかけて。助けになれると思うわ。いくら地上とは言え強敵もいるでしょう。その子達とじゃ不安になってくると思うわ」

「わかった。また……会おう」

「ええ」

 こうしてエリィは、世話係のサキュバス5人、そしてブルーを従えて地上に向かった。

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1.パーティを離脱した勇者は、美女魔王に「射精するとゲームオーバーになる呪い」をかけられた_番外編

『パーティを離脱した勇者は、美女魔王に「射精するとゲームオーバーになる呪い」をかけられた』の番外編です。
本編へのリンクはこちらになります↓
pixiv ノクターンノベルズ

 ボルハルトがまだ20代のころ、魔王ジュエリの討伐を目指して仲間とともに旅をしていたときの物語です。
魔王&四天王に挑んだ勇者パーティの男達。
彼らは皆、圧倒的な美貌と戦闘力をもつ彼女達の餌食になってしまうのか……? というお話で、もちろんM男さん向けです。
ハードな内容もありますので、ご注意ください!(念のため)

上位サキュバスの圧倒的魅了(前編)

<登場人物>
ボルハルト
種族: 人間
職業: 勇者(♂)
年齢: 28歳
身長: 175cm
見た目・印象: 紳士的な人
服装: 緑色のローブ
得意な魔法: 聖属性の攻撃魔法。他にも様々な魔法を使える。

デヴィルンヌ……魔法四天王の1人。
種族: 悪魔(サキュバス)
地位: 魔法四天王
年齢: 不明(見た目年齢20代後半)
身長: 167cm
声: よく通る高い声
身体的特徴・見た目: 銀色の長いストレートの髪の毛、大きな銀色の瞳、厚みのある唇。
褐色の肌で細い身体、豊満な胸とお尻、弾力のあるおっぱい、Hカップ。
黒い尻尾と翼を持つ。
服装: 赤いドレス、赤いヒール。
得意な魔法: 不明。尻尾で攻撃&搾精、妖艶な外見で男を魅了する。


 勇者ボルハルトは、仲間とともに魔界にたどり着いた。
魔界は光が差し込まないので辺りは暗く、風も吹いていない。
そんな場所に魔王ジュエリの城は建っている。
彼女を倒すため、ボルハルト達は魔王城の前まで到達した。

「……ついに魔王城までたどり着きましたね。皆さん、参りましょう」

 勇者ボルハルトとともに旅をするのは、戦士と魔法使い、そして僧侶である。
彼の仲間は3人とも男だ。
ボルハルトが城の扉を開け、薄暗い城内を警戒しながらゆっくりと前進する。

「……待て、トラップだ!」

 全員、城内に入ったところで魔法使いの男が異変に気づく。
床に描かれていたのは魔法陣。
薄暗い城内では、発見するのが遅れてしまった。

「トラップ!? まずいですね! この魔法陣から離れますよ!!」

 ボルハルトの言葉も虚しく、魔法陣が怪しく光りだした。
魔法が発動し、彼らの目の前が光に包まれる……!

(こ、この光は……!? 何の魔法だろうか!?)

 何らかの魔法が発動し、ボルハルトを不安な気持ちが襲う。
やがて光が消えていき、徐々に目の前の様子が明らかになる。

「あら、こんにちは♡ あなたの情報は頭の中に入っているわよ。その緑色のローブ……勇者ボルハルトね♡」

「なっ!? サ、サキュバス……!?」

 正面に現れたサキュバスを目の当たりにし、ボルハルトが驚く。

「そうよ、私はサキュバス。私が魔法四天王の1人、デヴィルンヌよ♡」

(ま、魔法四天王……!!)

 突然、幹部クラスのサキュバスが出現した。
戸惑うボルハルトは、必死で思考を巡らせる。

(そういえば、私の仲間はどこに……!? 私の周りには誰もいない!! 先ほどの魔法陣は転移魔法か! まさか城内に入った途端、バラバラにされてしまうとは……!)

 ボルハルトが状況を把握する。
彼がたどり着いた先は、窓のない広い部屋であった。
部屋の中は明るく、ベッドや棚が見える。

(この部屋は、このサキュバスの個室だろうか……?)

 そんなことを考えながら、目の前の敵との戦いにそなえる。

「……あら、ボルハルトくん。そんなに真剣な表情で私を見ちゃって。あなた、結構いい男なのね♡」

 そう言いながら【デヴィルンヌ】と名乗ったサキュバスは、頭を軽く振って銀色の長い髪の毛を揺らす。
そして、大きな銀色の瞳でボルハルトと視線を合わせる。
その厚みのある唇から囁かれる甘い言葉に、彼の鼓動は高まる。

(魔法四天王の話は聞いていたが、まさかサキュバスが混じっているとは……)

 赤いドレスを身に付け、赤いヒールを履いた彼女が一歩近づく。
黒い尻尾と翼を少し動かしている。

(細い体にもかかわらず、豊満な胸とお尻だ……。褐色の肌からも色気を感じる……。い、いけない! 魅了されてしまったら負けてしまう!!)

 彼女が動くたびに、その柔らかそうな、理想的な肉体に心を奪われてしまう。
そんな自分に気づき、ボルハルトが焦り始める。

「ぷっ♡ どうしたのかしら? 焦っているみたいね」

 うすら笑いを浮かべながら、デヴィルンヌがさらに一歩近づく。
2人の距離は、わずか2メートルほどだ。

(くっ! な、なんて魅惑的な姿なんだ!! ううっ……!! かなり上位のサキュバスなのだろう……! こんな……見るだけで心を奪われてしまう女性は見たことない! これ以上、近づくのは危険だろうか……!?)

 ボルハルトは後退し、距離をとりながら詠唱を開始した。
彼の得意魔法を放つために。

「天使の魔力……球体に変換。ホーリーボール……!!」

 勇者だけが放てる聖属性の魔法である。
魔力の込められた球体が放出された。
青白く輝きながら、高速でデヴィルンヌを襲う。

「ふふっ」

 彼女は笑いながら上体を動かし、なんなく彼の攻撃魔法を交わす。
球体は壁に衝突した。

「報告通り、魔法使いタイプの勇者なのね。珍しいわ」

 攻撃魔法を使う様子を見て、デヴィルンヌが感想を述べた。
この世界の勇者は、アキストのように武器を使って戦うタイプが多い。

「……」

 ボルハルトは彼女の言葉を聞かないようにしている。
色気に溢れるその声は、彼の集中力を阻害してしまうのだ。

「あら、魔法で部屋の壁が壊れてしまったわ。もう! 私の部屋なのに……。修理しなきゃいけないじゃない」

(ここはやはり、彼女の部屋なのか……!)

 デヴィルンヌの言葉を聞いて、ボルハルトが動揺する。

(うう……! 彼女が生活している様子が頭に浮かんでしまう……!)

 頭の中に生じた妄想を必死に取り払う。
そんな彼の気持ちを見破ったのか、デヴィルンヌはうすら笑いを浮かべながら口を開く。

「……あなたの魔法、簡単に避けたけど、威力はなかなかね。でも、当たらなければ意味はないわ。私のスピードを舐めないでくれるかしら?」

「……」

「あら? 口を閉ざしてしまったわね。……じゃあ、これはどうかしら?」

 デヴィルンヌが右手で髪をかき上げ、腰を落とし、その肉体をアピールする。

(うっ! 誘惑する作戦か……!? あの銀色の瞳が! 豊満なおっぱいとお尻が! 私を魅了する!!)

「うふっ♡ 私から目を逸らすわけにはいかないでしょ? 私はあなたの敵なのだから」

 彼女の言うとおり、戦闘中に目を背けるわけにはいかない。
しかし、デヴィルンヌを見続けたら、誘惑される。
そうなってしまえば敗北まで一直線だ。
彼は上位サキュバスの魅力とともに、戦闘中でも魅了されてしまう恐ろしさを感じていた。

「ほら、どう? 私のカラダ……見るだけじゃなくて、触りたいんじゃないかしら?」

 そう言いながら、彼女が近づいてくる。
ボルハルトは慌てて詠唱を始める。

「うっ! 誘惑に負けてられるか! 天使の魔力! 球体に変換……ホーリーショット!!」

 先ほど放ったのと同様の青白く光る球体が、十数個発射された。
高速でデヴィルンヌに向かって襲いかかる。

「あら……散弾型の魔法も使えるのね?」

 デヴィルンヌが驚く。
一撃でも受けたら形成はボルハルトに傾く。
サキュバスにとって、聖属性の魔法はそれ程までに絶大な効果をもつ。

「数が多いわ……。まあまあ、やるじゃないの」

 デヴィルンヌは華麗なフットワークで、ダンスを踊るように魔法をかわした。

「……ふぅ、少し焦ったわ。けど、かわせたわね」

「なにっ!? 散弾型も避けられた……だと?」

 彼が放った攻撃魔法は全て回避され、部屋の壁が破壊されていく。

「そんな魔法を使うなんて、驚いちゃうわ。相手が私じゃなければ勝てていたかもしれないのにね……」

「くっ……!」

 散弾型の魔法も避けられて、ボルハルトが再び焦る。

「素早さには自信があるの。私の魅了に影響されずに倒すため、先手必勝のスタイルで戦うのは正しい選択だと思うわ。けど、私に当てるには攻撃魔法のスピードが足りなかったわね」

「だ、黙れ……! 魔法がダメなら……接近戦だ!」

 ボルハルトは、ローブの中に隠していたナイフを取り出した。
すぐに彼女のもとに襲いかかる。

「あら、ナイフを使うの? けど、足が遅いわね。ぷぷっ♡ あなたは魔法のほうが得意なんでしょ?」

 ボルハルトは敵の挑発には乗らずに、走りながら詠唱を始める。

「……天使の魔力、球体に変換! ホーリーショット!!」

 魔法を放つと同時に、デヴィルンヌのもとに深く踏み込んだ。
再び十数個の球体が彼女に襲いかかる……!

「あら、そういう作戦? すごいわね」

 デヴィルンヌが腰を落として構える。
彼の気迫がこもった魔法とナイフの同時攻撃に、本気で対応するようだ。
必死な表情で、放たれた攻撃魔法をかわしていく。

「覚悟しろ、サキュバス! ……くらえ!」

 最後の球体をかわした先に、ボルハルトがナイフを構えていた!

「甘いわよ」

 デヴィルンヌが半回転し、渾身の一撃が虚しく空を切った。
 そしてデヴィルンヌは、勢い余ってバランスを崩したボルハルトの右腕を掴んだ。

「うっ……!」

 右腕に力を込められて、ボルハルトはナイフを床に落とした。
それを確認し、デヴィルンヌが彼を横から抱きしめる。

「同時攻撃とは、なかなかやるわね。でも、足も魔法も遅いから、私は簡単に避けられるわ」

 耳元でそう囁きながら、彼を腕の中で回転させて正面から抱きしめる。

「うっ……!?」

 服を通して、彼女の胸の感触が伝わった。

「さぁ……私の目を見て♡ 私の体の感触を味わって♡」

(まずい! こんなに密着した状態では、頭がおかしくなってしまう!! み、魅了されてしまう!)

 自分の股間が熱くなっているのを感じた。
ボルハルトの中のドス黒い欲望が湧き出てくる……!!

「うわああああっ!!」

 彼は全身を動かし、必死で彼女を振り払う。

「あら、まだそんな気力が残っていたの? 私に抱きつかれて、まともでいられるなんて……やるじゃないの」

 床に落としてしまったナイフを右手で拾い、自分の左腕を傷つける。

「ちょっと、ボルハルトくん……? あなた、自分で自分を傷つけるなんて……」

「はぁっ……はぁっ……」

 痛みで魅了を振り切ろうとするボルハルト。
魅了されてしまうのは時間の問題。
短期決戦を決意し、すぐに詠唱を始めた。

「氷河の魔力! 棒状に変換……アイスセイバー!!」

 アキスト戦でも披露した氷の剣を発現させた。
敵を氷漬けにする魔法の剣である。
右手にナイフ、左手にアイスセイバーの二刀流である。
すぐに敵との距離を詰め、攻撃に移る。
ナイフと氷の剣の2連撃である。

「ちょっと厄介だわ……」

 攻撃を受け、後退りするデヴィルンヌ。

「氷の剣……そんな魔法も使えるのね」

 彼の氷の剣は、デヴィルンヌの右手の甲を傷つけた。
徐々に右手が凍りついていく。

「凍りつく速度は遅いけど……厄介な攻撃ね」

 デヴィルンヌが少し苛立つ。
それを見て、ボルハルトの表情が少し明るくなる。

(よし! こちらが優勢になった! ここからだ! 魔力はまだまだ残っている!)

「くらえっ!」

 大声を上げ、彼は左手に持っていた氷の剣をデヴィルンヌに向かって投げた。

「えっ? その氷の剣を投げるの……?」

 最大の攻撃方法と思われた氷の剣が飛び道具として使われ、デヴィルンヌが戸惑う。

「天使の魔力! 球体に変換! ホーリーショット!!」

 三度目のホーリショットを放った。
そして、ナイフを構えながら敵に接近する。

「さっき仕掛けてきた攻撃のパターンと大して変わらないじゃない? ヤケクソになっているのかしら?」

 デヴィルンヌは投げられた氷の剣を難なく避け、向かってくる散弾型の攻撃魔法も回避する。
右手が氷り始めているとは言え、彼女のスピードがあれば避けるのは容易である。

「最後はボルハルトくんが、そのナイフで攻撃するのよね? じゃあ、また抱きしめてあげるわ♡ 今度は離さないから。これであなたは終わりよ……」

 ホーリーショットを回避しながら、視線の先にいるボルハルトに語りかける。

「まだだ……! 氷河の魔力、棒状に変換……アイスセイバー!!」

 ボルハルトは怯まない。
再び敵にとって脅威となる氷の剣を発動させた。
再びナイフと氷の剣の二刀流になった彼がデヴィルンヌに迫る。

「また氷の剣を発動させたの? 魔法の発動が速いわね」

「この2連撃! その凍り始めている右手で対処できるのか! くらえっ!!」

 2連撃の一撃目、ナイフがデヴィルンヌを襲う。

「ふふっ♡ じゃあ、これならどう?」

 ボルハルトが氷の剣を持つ左手に渾身の力を込めた瞬間、その動きが止められた。
力強い何かがボルハルトの左腕に巻きついている。

「うっ! なんだ? ……尻尾!?」

 彼女の黒い尻尾がボルハルトの左腕に巻きついている。
正面にはデヴィルンヌ。
笑みを浮かべる彼女を見て、危機感を覚える。

「だったら……! こっちだ!」

 右手に持つナイフを前に突き出し、デヴィルンヌの首を狙った。

「ふう……危ないわね」

 彼女の反応は速い。
ボルハルトの右手首が彼女の左手によって掴まれてしまった。

(なんということだ! 防がれてしまった……!)

 尻尾と左手で、両腕を抑えられてしまった。
正面に立つデヴィルンヌが勝利を確信する。

「右手が凍り始めていても、ボルハルトくんの攻撃を対処できたわ。あなたの実力はこんなものなのね」

「ううっ! 離せ……!」

 必死に振りほどこうとするが、デヴィルンヌは力を緩めない。

「あなた……魔法の発動は速いけど、体の動きはどんどん鈍っているわ」

 彼女はボルハルトの目を見ながら、尻尾と左手にさらに力を込めた。

「ぐあぁっ! ああああああっ!」

 その力に耐えられず、氷の剣とナイフを床に落としてしまう。

「いくら戦略を練ろうとも、体の動きが鈍くなってきているから無駄だわ。あなた……何で動きが鈍っているのかわかる?」

「……!?」

 苦痛に表情を歪めたボルハルトが困惑している。

「勃起しているからよ♡」

「なっ!?」

 勃起という言葉を聞いて、ボルハルトは動揺する。
そして、確かに自身が勃起していることに気づいた。

(戦闘中に……勃起……。そ、そうだ……俺は……もう……このサキュバスに性的に興奮してしまっているのだ……。こんなに勃起していては、勝てるはずがない……)

「ふふっ♡ 当たっていた? 勇者とは言え、所詮はオスよね」

「くっ……!」

 ローブを着ており、勃起しているのかどうか確認はできない。
とは言え、彼女の予想は当たっていた。
デヴィルンヌは右膝を上げて、赤面しているボルハルトの股間をローブの上から優しくなぞる。

「う、うわあああっ……! な、なにをしている!?」

「はい、硬い♡ 素直になってきたね」

「ああっ!? あ……あぁ……あ……」

 ボルハルトの体から、徐々に力が抜けていく。

(ま、まずい……! これはまずいぞ……!!)

 危機を感じながらも、彼は股間の高鳴りを抑えられずにいた……。


上位サキュバスの圧倒的魅了(後編)

 デヴィルンヌは右手と尻尾を使ってボルハルトの両腕を封じ、その動きを止めた。
彼女は右膝を使って、彼のローブの上からペニスを優しくなぞっている。

「すりすり、すりすり……これ、気持ち良いよね?」

 勃起した肉棒が優しく刺激される。

「う……うぅ……うううっ……!?」

「ここはどうかしら?」

 デヴィルンヌは掴んでいた彼の右腕を離し、そのままボルハルトのローブの中に手を入れた。
中に着ている彼の服にも手を入れてまさぐると、彼の乳首に到達した。

「あ、ここが乳首ね♡」

 左手の親指と人差し指で優しく乳首をつまみ、いじくりまわす。

「そ、そ、そこは! あぁっ!?」

 ボルハルトの体が反応する。

「き、気持ち……良い……」

「ふふっ♡ そんなにビクンビクンしながら気持ち良さそうな顔をしちゃって♡ もう精液が漏れているんじゃない?」

 右膝で股間をさすり続けながら、左手で乳首をつまむデヴィルンヌ。

「はぁっ……はぁっ……うぅっ……」

「ほら、そろそろ私の右手の氷を溶かしなさい。もう手首まで凍りついてきているわ。こんな状態じゃ、もう片方の乳首をイジれないわよ?」

「うぅっ……。いや……わ、私は……勇者として……」

「あら、まだ抵抗しようとしているの? じゃあ、下の服を脱がしちゃおうかしら♡」

「えっ!? あぁっ……」

 今度は手をボルハルトの下半身に移動させ、力を込めて下半分の服とパンツを引き裂いた。

「そ、そ、そんな! やめて……!!」

 彼のそそり立つ立派な肉棒が露わになる。

「出てきた出てきた♡ 大きくて硬いのが♡ はいっ♡ もう全部脱がしちゃおうかしら?」

 デヴィルンヌは、彼のローブと残りの服を全て引き裂いた。
ボルハルトは全裸にされてしまった……。

「あああぁっ……!! 見ないでぇ……!!」

「こんなに勃起させて、まだ抵抗するつもり? この氷を早く溶かして欲しいわ。そうしたら、私は両手であなたの乳首をつまむことができるわよ?」

「う、ううぅ……自分から……そ、そんなことは……でいない。勇者として……」

「まだ抵抗する意志があるのね。じゃあ、こんなのはどうかしら?」

 デヴィルンヌが口を開けて、唾液を垂らす。
彼女の唾液はまっすぐに垂れ、ボルハルトの硬くなった肉棒に付着する。

「うぅっ!?」

「ほら♡ さすがにもう理性が保てないでしょ?」

 左手で手コキを始めるデヴィルンヌ。
唾液の効果により、クチュクチュと卑猥な音が響く。

「う、ううぅっ!? うひゃあああっ!!」

「すごいエッチな音よね♡ ほら、気持ち良いでしょ?」

「あ、あはあぁっ……!!」

「あら? 快楽に耐え切れずに自分で動いちゃってるわね♡ ほら、わかる? 腰をヘコヘコ動かしちゃってるじゃない♡」

「う、ううぅ……」

「さぁ、この氷を溶かして。できないのかしら?」

「うううう……デヴィルンヌ……さまぁ……」

「あら? 氷が消滅したわ。戦闘の意志が完全に消えたってことかしら? 完全に私に堕ちたわね」

「デヴィルンヌさまぁ……!!」

「良い子ね♡ 戦う意志を失ったのなら、最高に良いことをしてあげるわ♡ まずは両手で乳首を摘まんであげる」

「ひ、ひぃっ……!? あはああんっ!!」

「ぷっ♡ 私の右手はまだ冷たいかしら? びっくりしちゃって、さっきよりも全身がビクンビクンしちゃってるわ」

 ボルハルトの理性が徐々に失われていく。
彼の口からはヨダレが垂れ、目がトロンとしている。

「あ……あぁ……また……また触れてください。私の……」

「わかっているわ、性器を触って欲しいのよね? あら、もう勝手に自分にシコシコしてるじゃない?」

 ボルハルトは、自由になった右手でセンズリをしていた。

「自分でするんじゃなくって、私がしてあげるわ♡ やっぱりここをイジられるのがいいわよね」

 ウィンクをしながら甘い言葉を放ち、彼の左腕に巻きつけていた尻尾を外した。
そして、両腕で彼の体を抱きしめるデヴィルンヌ。

「う、うぐぅ……!! 柔らかい……! うぅっ……」

「ね♡ 柔らかいでしょ? 私のカラダ」

(や、柔らかい……! 信じられないぐらい良い気持ちだ!! ああ、またおっぱいが密着している……! それに……甘くて良い香り……)

「あら? また腰をヘコヘコと振り出したわね?」

 デヴィルンヌの魅力に耐え切れず、ボルハルトは彼女のカラダに性器を当てている。

(勝手に……! 腰が! 腰が動いてしまう!!)

「ボッキしたチンコが、ドレス越しに私のフトモモに当たっているわ。素敵♡」

「ううう……あああああっ!? デヴィルンヌさまぁ……!!」

 大声を上げながら、腰を振り続けるボルハルト。

「ふふっ♡ ドレスの生地が気持ち良いのかしら? それとも、私のフトモモの感触が好きなのかしら?」

「どちらも!! どちらもです……デヴィルンヌさまぁっ!!」

「情けないわね、ボルハルトくん♡ 素直になって、ちょっと可愛いけど。このままフトモモに挟んでイカせてあげるわ♡」

 ドレスの裾をまくるデヴィルンヌ。
その可憐で柔らかいフトモモで、ボルハルトの肉棒を挟む。

「スベスベのフトモモ……!! すごい! すごいぃぃっ!!」

「あら、すごい気持ち良さそうね♡ ちょっと挟んだだけなのに♡ ほら、ちゃんと腰を振りなさい」

「うわあああっ!! デヴィルンヌさまぁっ! デヴィルンヌさまあ……!!」

 彼女に強く抱きしめられながら、必死で腰を振るボルハルト。

「すごい勢いで腰を振っているわね♡ さっきの戦いよりも動きが速いんじゃない?」

 皮肉を放つデヴィルンヌ。
しかし、ボルハルトは快楽に浸っていて反応しない。
ただただ、自分の体を抱きしめているデヴィルンヌの瞳を見つめ、一生懸命に腰を振っている。

「ぷっ♡ 私に夢中で会話どころじゃないのね♡ もう発射しちゃうのかしら?」

「ぐうううっ! で、出るうっ……! 出ますうぅっ……!!」

「あら、本当に? まだ絶対にイカせないわ♡」

 デヴィルンヌはガニ股になり、彼の肉棒を圧迫するのをやめる。
ボルハルトが射精するのを防いだのだ。

「な、なぁっ!? デヴィルンヌさまぁっ!?」

「落ち着いて♡ もっと良いことをしてあげるわ♡」

 デヴィルンヌは彼を抱きしめるのをやめ、一歩だけ後ろに下がった。
そして、尻尾を彼の胴体に巻きつけた。
両腕も尻尾に巻き込まれ、ボルハルトは身動きができない。

「準備OK。いくわよ♡」

 彼女が尻尾に力を込めると、ボルハルトの両足が床を離れた。

「ひぃっ!? な、なにを……」

 全裸で宙に浮かされるボルハルト。

「チュパチュパしてあげるわ♡」

 彼女は尻尾にさらに力を込めて、空中で彼を逆さまにひっくり返した。

「ああっ!! あああぁっ……!?」

 ボルハルトの目の前には彼女のフトモモが、そしてデヴィルンヌの目の前には勃起した肉棒がある。

「このまま性器をチュパチュパしてあげるわ♡」

 彼女はボルハルトの大きくなっている竿を、そっと口の中に含む。

「な、なにを……! まさか……フェ、フェラ……!? あ、あんんんっ……!!」

 デヴィルンヌが吸引を始め、その舌先で亀頭を攻め始める。
喜びに震えるボルハルトは、あまりの嬉しさに笑みがこぼれている。
彼女の舌の感触を性器で堪能していると、顔に大きな力がかかった。
デヴィルンヌが、柔らかいフトモモの中に逆さまになった彼の顔を挟んだのだ。

「う、うううぅっ!? し、し、幸せですぅっ……!! うわああああぁっ!!?」

 空中で逆さまにされたにもかかわらず、射精感がこみ上げてきた。
彼は、顔をフトモモに挟まれながらフェラチオをされるという快感に耐えられず、今にも射精しそうになっている。

「あああぁっ!! イクうううううぅっ……!!」

 そんな彼の叫びを聞きながら、吸引をやめて舌の動きも止めるデヴィルンヌ。

「もちろんイカせないわ」

「ええぇっ!? はぁっ……はぁっ! はあぁっ……」

「……私はサキュバスよ? あなたの精液を尻尾で取り込むに決まっているでしょ?」

 彼女はそう言い放ち、そのまま尻尾の力を抜いた。
床に放り出されたボルハルト。
デヴィルンヌはすかさず移動し、彼の性器の前に立つ。

「うううう……イカ……せて……くださ……い」

 仰向けの状態で、前に立つデヴィルンヌを見つめながら懇願する。
その右手を彼女のほうに伸ばす。

「いいわよ。私のために働くならね」

「は、働く……! 働きます!! な、何でもしますから……!!」

「本当に? 約束よ♡」

「約束します……! すべてを! 私のすべてを捧げますから……!」

「すごい良いわね♡ その子犬みたいな瞳」

 デヴィルンヌの黒い尻尾がボルハルトの股間に襲いかかる。
その先端は、肉棒に吸い付くために穴が開いている。

「うわああああっ……!?」

 彼女の尻尾の先がボルハルトの勃起した肉棒に食いついた。
尻尾はゆっくりとした動きで彼の竿を根元まで咥えていく。

「あぁっ……! ああぁっ!! ひいぃぃっ!?」

 ボルハルトは、かつてない快楽に包まれていた。

「いいでしょ? 少し暖かくて、きつく締まっていて……こんなの人間の女の子じゃ味わえないわよ?」

 そう言いながら彼女は腕を組み、喘ぐボルハルトを見つめている。

「尻尾の中は私の精液でトロトロよ♡」

 彼女の尻尾の中には、微細なヒダが無数に敷き詰められている。
そのヒダが、ボルハルトの竿全体を刺激し続けている。

「うううぅっ……!! あはぁっ! あはぁんっ……!!」

 ボルハルトは彼女を見上げながら、その快楽を貪る。
そして、尻尾がゆっくりと動き始めた。

「ほら、いくわよ♡」

 尻尾が彼の肉棒を完全に咥えた状態からスライドし始めた。
尻尾の先はカリ付近まで移動し、亀頭の端から端までゆっくりと行ったり来たりしている。

「あんっ! ああんっ! き、きもちいいですぅっ……!!」

「亀頭を集中的に攻められる気分はどう? 私の尻尾の中、すごいでしょ?」

「ひいぃっ! ああああぁっ! しゅ、しゅ、しゅごい~!! しゅごいですぅっ……!!」

 情けない声を出し、全身をバタつかせるボルハルト。

「ああ、もう最高よ♡ その情けない顔と叫び声。たっぷりとご主人様を味わってね♡」

 彼女は腕を組みながら、叫ぶボルハルトを見物する。

「ほら、盛大に出しなさい。私の奴○♡ 出して♡ 出しなさいよ、私の奴○♡」

「うわああああっ!! で、でます! でますぅっ……!!」

「あ、出てきたわ♡」

「あんんっ!! あはぁっ! あはぁんっ……!!」

 ボルハルトは全身を痙攣させながら、射精の快楽を味わっている。

「うん、最高ね。美味しい精液♡」

 デヴィルンヌは恍惚とした表情をしながら精液の味を堪能している。

「ふぅっ……♡ 美味しかったわ♡」

 性器から尻尾を外し、戦いで着崩れた赤いドレスを直す。
髪型も手で整え、落ち着いた彼女はボルハルトを見下ろしながら口を開く。

「強い勇者って聞いていたけど。まぁ、結局はオスよね。私レベルのサキュバスを相手にするなら、とりあえず強い女の子を連れてこなくちゃダメよ?」

 あまりの気持ちよさに、ボルハルトは気を失っていた……。

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