かきこき太郎 2024/05/08 13:49

GW(ガールズウィーク)は女装っ子の姿に

*fanboxにて無料公開した作品です

「お兄ちゃ〜ん、早くしてー!もう行かないと混んじゃうんだからさ!」

リビングにて大きめの声量をあげながら兄である風間家京介を呼ぶ妹。まだ5月が数日経過しただけなのに強い日差しと気温のためか、中学生の妹の格好は涼しいデニム生地のショートパンツと七分袖程度の長さであるクリーム色のトップスを着用していた。

「まぁまぁ、慣れない事だしもう少し待ってやれって」

「はいはい…わかったよ。今日は男の子にとって特別な日だもんね。そういえばパパも小さい時はやったりしたの?」

「あぁ、やったよ。でも昔は今みたくおしゃれな服はないから七五三みたいに晴れ着を着ていたよ。あとは近くに住んでいた幼馴染の洋服を借りてきたっけ?なんだか恥ずかしいな」

昔を思い出してか40を超える男の頬が少し赤色になっていく。父親の昔話に興味を示すが、どうやら兄の準備が終わったようで階段からドタドタと騒がしい音が聞こえたのち、リビングへとつながるドアがバタンっと開いたのだ

「わぁ〜〜!!お兄ちゃん超可愛い!!ママ、めっちゃ気合い入れたんだね!」

「ふふっ、ありがとう。でも京介ったら毎年やっているのに恥ずかしがっちゃって大変だったわ。まったく…毎年着る物なんてさして変わらないのに」

妹は嬉々とした声をあげたのち、スマホを向けて記念撮影もといい兄の姿を何枚も撮影する。
フリルがあしらわれたピンクと黒色が混ざった半袖ブラウスに同じようなフリルとレースがたっぷりのハイウエストのサスペンダースカート。足元はニーソックスほどの長さである黒色のレースソックスを履いており、母親に手には外で履かせるエナメル質の10cmほどのヒールの高さがあるエナメル質でロリータチックなビジューパンプスを持っていた。
首から上に至っては、男子高校生とは思えないほどの可愛らしいメイクが施されている。腫れぼったい目元はぷっくらとした涙袋が特徴的でその上から明るめのピンク色をしたアイシャドウを塗っている。元々、薄かった眉毛は全部剃ってしまったようで黒のアイブロウで塗られた細い眉毛が前髪に触れつつも、顔を覗かせている。
ニキビなど一切なかった肌は相当、化粧のノリが良かったようで下地クリームやファンデ、そしてコンシーラーにより透き通った肌をしている。チークやリップグロスなどが塗られ服装とマッチしたメイク。髪型はきっとエクステかウィッグなどで増量したのだろう、普段なら耳に掛かるほどの毛量であるが、今の髪型は可愛らしい黒髪ツインテールといった状態でピンク色のリボン付き髪留めでまとめられている状態であった。

「ほ、ほんとっ…おかしいよっ、なんで男がこんなことをしなくちゃっ…」

「まぁまぁ、仕方ないじゃ〜ん。今日は国で定められた大切な『女装の日』なんだからさ〜」

妹のいつもより楽しそうな声色がより京介を腹立たせる。
彼女がいった『女装の日』とは一体なんなのだろうか…
そう、5月前半に訪れるGWに定められている祝日として全国の20代前半以下の男子は異性装…すなわち女装をする伝統として残っている通称、ガールズウィークというのが設定されていたのだ。
自分たちの親すら生まれていない昔の時代、男尊女卑が根強かった日本において新しく女性の気持ちを知ろうと考えた政府は女装の日なるものを設定したのである。
曰く、女性としてGW期間を過ごすというものであった。時が経過するにつれて風習というのは、寂れていくもののGW期間限定で女装をしている若い男性を対象にしたキャンペーンを実行してなんとか続いてある文化。店の商品が半額になったり、テーマパークなどといった場所も女装少年のみ半額なるのである。
そんな大盤振る舞いをしてもいいのか、そう思うかも知れないが大体の男子というのが、この女装姿に対して一定の羞恥心を感じてしまう為だからであり、店で売り込みをする店員らも女装少年の来店を呼びかけているほどであったのだ。

「でも、こんな可愛い格好をしていたら女装少年だって思われないかも。あ、生徒手帳持った?」

「も、持ったよ…こんなことで褒められても全然嬉しくない」

「まぁまぁ、そんなこと言わないでよ〜っていうか、優佳さんにお兄ちゃんの女装姿を撮った写真、送っちゃった!すごく見たがっていたからいいよね〜」

「ちょっ!?お前な〜〜〜!!俺の許可は、、、」

「別にいいでしょ〜?彼女さんの要望なわけだし、お兄ちゃん絶対に恥ずかしがって送らないと思っていたんだから感謝してよね?」

どうやら妹は自身の恥ずかしい姿をこっそりと盗撮していたらしく、京介の彼女…冴島優佳は彼氏の晴れ姿を待ち侘びていたようだった。背負っているピンク色のリュックの中からバイブ音が聞こえる。あまり見たくないが、通知を確認してみると宛名には『冴島優佳』の名前が書いており、届いたメッセージには可愛いなど似合おうなど…求めていない言葉が綴られていた。

「さて、そろそろ行かないと電車も混むだろうし向かうとするか」

「いいよな〜お兄ちゃんだけ半額でしかも電車も乗り放題なんて」

羨望を含んだ視線を送る妹に嫌そうな表情で応戦する京介。玄関に行き靴ベラを使用しながらパンプスを履いていくのだが、どうにも視線が普段よりも高いし、経験のない高いヒールがまったく慣れない。

「歩きにくい?そうだ、私が手を握ってあげる。転んで怪我なんてしたくないもんね〜」

自分よりも背の低い妹から差し伸べられた手を握ったのち、小さな歩幅にて目的地である有名なアトラクションテーマパークへと向かっていく。駅ではまるで若い男性が著しい現象をしたのかと思うほどに人影が少なく、揃いも揃って可愛らしい格好をした女の子が多数存在していた。

「あの子、着物着てるね。あれは七五三的な感じなのかな?部活動の人はみんな女子の制服を着ているんだね〜可愛い〜」

「あっ、でも可愛さでいえばお兄ちゃんが一番だよ?こんな地雷系のフリフリ衣装なんて着ている人、いないんだから」

足を内股にて椅子に座る京介の右腕に抱きつく妹。兄妹というよりか姉妹という状況にも見えるその姿に両親はただ暖かい笑みを浮かばせるだけであった。
GWはまだまだ続き、彼はその恥ずかしい姿というものを彼女やバイト先のスタッフに晒す事になり今よりも恥ずかしさを感じることになるのは、今はまだ知る由もないのであった

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

記事のタグから探す

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索