思叫堂~ロア~ 2018/08/05 18:37

次回作:新体操少女、台本その2

ラブラブものの予定なんですが、なんか不穏になってるパート2です……あれぇ?


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《きゅ……きゅっ、きゅっ》

コーチ
「早瀬、体の反りが甘い!もっと動き自体を滑らかに、次の動作にシコりを残すな!もう一回っ……!」

早瀬
「はぁはぁ……、すぅ……はぁ、はい……コーチ」

 時間を潰しながらも練習が終わる頃を見計らい体育館に姿を見せた貴方。
厳しいコーチの叱責の声や、彼女が演舞のために床を擦らせる足音が響くのが聞こえてくる。
今日も、手を抜く事もなく必死に練習をしているらしい様子が、音からでもはっきりと分かるようであった。
もう暫くは時間が掛かりそうだと思った貴方が、体育館の壁に背を預けそっと終わるのを待っていると……。

部員1
「コーチ、今日も早瀬さんに厳しいよねぇ……?」

部員2
「個人でなら、うちのエースだし期待してんじゃないの?
ま……チームじゃ、むしろ邪魔だけどさぁ」

部員1
「ちょっとー、止めてあげなって……そりゃ、家族にご不幸があったんだし。
暫く休んでればいいのにっとは思うけどさぁ……」

部員2
「ねー?何頑張っちゃってるんだろ……可愛そうな私、頑張ってますアピール?
普段から、私は貴方たちとは違うみたいな顔してる癖に……。
あざといっていうかさぁ、本当に悲しんでるのって感じがして気持ち悪いよねぇ」


 貴方の耳に、そんな囁きが……薄っすらと届いた。
彼女の……部活の部員達の言葉であろう、その声。
元々異性にも同性にも、あまり感情を見せる様子もなく距離を取っていた彼女。
見た目は幼馴染として、普段から見掛ける事の多い貴方から見ても整っているだけに……同性からの反発は大きいという噂は聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。

 彼女の、冷ややかな態度が原因で段々と距離を取っていってしまった貴方にとって……それは理解が出来てしまう言葉ではあった。
けれど……そう。
何故彼女が今頑張っているのか、あの日……それを知ってしまった貴方にとっては、それは歯痒く、もどかしい……意見であった。

早瀬
「……っ、ふぅ……はぁっ。
コーチ……今の捻り、もう一度いいですか?キャッチから、反らすまで……もう1ついけると思うんです」

コーチ
「そうだな……悪くは無かったが、お前なら今1ついけるだろう。
よし、もう1度最初から……!当たり前だが、見てる相手を釘付けにするつもりを忘れずにやってみろ!」

早瀬
「ふぅ、はい……分かりました」


 そんな愚痴とも悪意ともつかない言葉を吐き出されている事を知ってか知らずか、彼女……貴方の幼馴染たる少女、早瀬はただ黙々と練習をこなし続けていく。
その練習の音を聞きながら、彼女の悪評を振りまく部員達を止められぬ歯痒い思いを噛み締め、貴方だけはたった一人……彼女の練習が終わるのを待ち続けるのであった。

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