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スカトロの記事 (24)

おかず味噌 2020/09/27 16:00

ちょっと悪いこと… 第二十話「彼の視点 ~追憶と願望~(2)」

(第十九話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/371294


「四つん這いになって」

 僕は結衣にそう「指示」した。「脱がせる」だけなら「そのまま」でも充分であるはず――。にも関わらず、僕はあえて彼女に「体勢を変える」ことを「要求」したのである。
 言われた通り、結衣はベッドから身を起こし、それから「焼いた肉を裏返す」みたいに百八十度「反転」し、「手」と「膝」を突き「腰」を浮かせた。ちょうど結衣の「尻」が突き出された「格好」である。
 結衣は僕の「提案」に、何の「疑い」も「不審」も抱いてはいないようだった。その時まだ彼女は――、この後にどのような「羞恥」が(あるいは「お漏らし」さえも凌ぐような)待ち受けていようかなど、知る由もなかった。

 結衣の腰に手を回し、「肌」と「布」との境界に手を掛ける。そして、そこから「ゆっくり」と、だが一気に「ずり下ろす」――。

 締め付けられた「黒タイツ」と「パンティ」の「反動」で、「ぷりん」と「小気味」良く、結衣の「尻」が現れる。僕の「眼前」に、僕の「鼻先」に――。
 結衣の「尻」はとても魅力的だった。やや「褐色」で小振りの「尻」。程よく引き締まり、けれど「柔らかさ」は失わず、触れた手にちょうど「しっくり」と収まるような彼女の「お尻」。微かに付いた「下着の跡」とそれに沿うように「くっきり」と分かれた肌の色の「境界線」。さらにその中央に「ぱっくり」と刻まれた「尻の割れ目」。手で「こじ開ける」ように開くとそこには「きっちり」とすぼめられた「肛門」が待ち構えていた。

 それこそが僕の「待ち望んだ」ものだったのだ。「剥き出し」になった結衣の「下半身」。当然そこにはやはり露わになり、今や「涎」を垂らし盛大に潤っているであろう彼女の「性器」もあった。だが僕の興味は「そちら」には向かわず、あくまで「こちら」にのみ「収束」した。

 まずはじっくりと「観察」してみる――。
 肉の「双丘」に阻まれ隠されていたためか、「谷間」のその「一帯」は「陽の光」が当たらず、やや「薄い色」をしている。まさに「不毛の地」ともいえる地域には、文字通り「尻毛」が生えることもなく「まっさら」だった。
 そして、結衣の「アナル」。あるいは「クレーター」を思わせるその「穴」はけれど、「窪む」のではなくむしろやや「盛り上がり」、そこには「山脈」のような「皺」が無数に刻まれている。彼女の「力の入れ方」のほんの些細な「違い」によって、彼女の「肛門」はまるで「呼吸」をするみたいに、若干「閉じたり」「開いたり」を繰り返す――。

――なんて「綺麗」なんだろう…。

 ある種の「生命の神秘」を感じさせるその部分に、僕はただただ「感嘆」するしかなかった。
 本来の「用途」について考えたとき、紛れもなく「不浄の穴」に過ぎないそこはけれど、むしろ「性器」よりも「清純」で「清廉」であるように思えた。彼女はきっと、「こちらの穴」においてはまだ一度の「侵入」も許していないのだろう。確かにそう思わせるほど、彼女の「尻穴」はきつく「引き結ばれ」、「堅牢」な「構え」を見せるのだった。
 だからこそ――。「守り」が「強固」であるからこそ。その「歴史」を「不敗神話」に彩られているからこそ。それを「侵し」、「犯したい」と思うのがやはり「男」というものである。その時すでに僕の「心」は決まり、「照準」は定められていたのだ――。

 だがそこで僕は「寄り道」をした。とはいえそれは、あくまで「視線」においてのものだったのだが――。
 結衣の「尻」から伸びた「脚」。膝をついたその「太腿」には、僕がずり下ろし、「途中」で「そのまま」になった「黒タイツ」と「パンティ」がある。
 僕はふと、この期に及んで「それ」が気になった。これまで彼女の尻を包み、覆い隠していたその「布」に、今さらながら強い興味を惹かれたのだった。

 僕は結衣の尻から手を離し、足元に「留まった」ままのそれに手を伸ばした――。
 脚に掛かった「脱ぎ掛け」のパンティの「内側」を広げ、こっそりと「裏地」を確かめてみる。「おしっこ」と「愛液」の「染み」についてはもはや言うまでもなく、そこには――、

「ばっちり」と「ウンスジ」が描かれていた。

 結衣のパンティは「黒」で――。「黒」とはそもそも、全てを「塗り潰す」色だ。にも関わらず、彼女の穿いていたその「黒」に「茶色いもの」が「こびりついている」のが、「はっきり」と見て取れた。その「正体」が何であるかはもはや言うまでもない。それは結衣の「うんち」であるに違いなかった。

 まさかとは思っていたが、その「まさか」が「的中」した。結衣はあろうことか、自らの「下着」に。「液体」のみならず――「固形物」とまではいかないまでも――微かではあるが「固体」の「カス」を付着させていたのだ。
 その「汚れ」を認めて、僕はすっかり「萎えてしまった」――のではなかった。というよりむしろ、その「事実」は僕をより「高める」ものだった。

 僕は「嗅いで」みた。結衣の「尻穴」を、その「周囲」を。何だか「いやらしく」、「素敵な香り」がすることを期待して――。だが「予想に反して」というか「予想通り」というか、結衣のそこは――、

 とても「うんちクサかった」。

「鈍器」で殴られ、「脳天」を穿つような「衝撃」があった。紛れもない「うんち臭」が僕の鼻腔を満たしたのだった。
 結衣は「大」をした後、「拭いていないんじゃないか」と思えるほどに。「拭く女子」ではなく「拭かない女子」かと思わせるほどに。あるいは、元々「アナル」が「緩い」のだろうか。
 いや、そんなはずはない。顔をより「近づけた」ことで、今や僕のすぐ「眼前」にある彼女のそこは相変わらず、「外部」からの「侵入」のみならず「内部」からの「脱出」を決して許さぬよう、「丁寧」に「引き結ばれた」ままだった。
 そこから「出ずるモノ」の「予感」も「気配」すらもなく、まるでそうした「穢れ」からは無縁であるみたいに、結衣の「肛門」は「キレイ」だった。だが。やはり僕の「認識」は誤っていたのだろう。「『女性』=『キレイ』」という、ある種「信仰」じみた僕の考えは。「だから」「であるべき」で結ばれる「等式」はけれど、「反証」によって「覆された」のである。そして、やがて次の「一撃」によって――、「覚醒」へと至ったのである。

 僕はいよいよ、結衣の「アナル」を「舐め」に掛かった。自分の「消化器官」の「始点」が、彼女のそれの「終点」に触れることに少なからず「抵抗」と「忌避」を感じつつも、すでに「麻痺」し掛けていた僕の「脳」はもはやすんなりとそれを「受け入れた」のだった。

「シャワー」を浴びていないのだから、ある程度は仕方ないのかもしれない。だがそれだけでは「説明」がつかないほどに、結衣の「肛門付近」には「ヌルヌル」とした「舌触り」があった。かといって「形」があるわけではない。あくまで「視認」できない「正体不明」の「何か」であった。
「腸液」なのか、あるいは「うんちのカス」なのか、どちらにせよ本来「味わうべきでないもの」を、舌で「舐め取り」、「こそぎ落として」ゆく――。「唾液」で「洗い落とす」ことで「キレイ」にしてゆき、それと共に彼女の「そこ」は少しずつ「開いて」いった――。

 結衣が何かを「堪えて」いるのは分かった。僕の舌が「触れる」度に、彼女の「尻」があるいは「全身」が微かに「震える」様子が見て取れた。
 僕は彼女がまた、「おしっこ」が「漏れそう」になっているのかと思った。与えられた「刺激」によって、再び「我慢」が「出来なく」なりそうなのかと――。
 だが、それは違った。彼女が「出そうなモノ」は「おしっこ」ではなかった。それは「液体」ではなく「気体」だったのだ。

「ちょっと、止めてください!恥ずかしいですよ…」

 結衣は今さらながら、「アナル舐め」に「拒絶」を示した。その「行為」を「中断」し「中止」させようと、僕の「頭」を手で「押しのけよう」としてきた。彼女は自分の「肛門」が「汚れている」ことを、そこを「汚してしまっている」ことに「心当たり」があるのかもしれない。「気づいていない」のかと思っていたが、実は「気づいている」のだろうか。そう感じさせるほどに、彼女の「抵抗」は――あくまで「建前」としての「演技」ではなく――まさに「真に迫った」ものだった。
「『うんち』の付いた『アナル』」を「舐められる」のが恥ずかしいのだろうか。当たり前だ。それこそ僕は「お構いなし」だったが、普通は「舐める側」も拒否して然るべきである。
 彼女の「羞恥」と「拒絶」の理由は――、けれど違っていた。それは新たにもたらせられる、さらなる「放出」に対するものだった。

「本当に嫌なんです!!」

 結衣はもう一度だけ、今度ばかりはより「強い言葉」で、はっきりと「意思」を表明した。だが、それでも僕がそれを「止める」ことはなかった。僕の「唾液」によって、すっかり「洗い清め」られた「そこ」を舐めるのを「継続」した。そして、ついに――。

――ブボッ!!

 と。盛大な「破裂音」と同時に、僕の顔に「ガス」が吹きかけられた。
 僕は当初、ついに結衣は「やってしまった」のだと、「おしっこ」のみならず「うんち」を「漏らして」しまったのかと思った。だがそうではなかった。それは「実体」を持たない、やはり目に見えぬ「気体」であった――。

 結衣が「おなら」をしてしまったのだと、僕がそれを知るのに「数秒」を要した。それほどまでに「唐突」に、「突然」に、それは行われたのである。
 とはいえ。たとえ予期せぬ「放屁」であったとしても――、「避ける」ことは不可能でもすぐに「逃げる」ことくらいは出来たはずだった。けれど僕はそうしなかった。むしろ、少しも「躱す」ことなく、口を開けたまま「真正面」から結衣の「放屁」を浴びたのだった。

「暴発」であり「爆発」――。
 一瞬にして、僕の「口内」が結衣の「体内」の「空気」によって満たされる。「アニメ」なんかでよくある「爆発シーン」の描写のように、「鼻」からも「耳」からも「噴き出し」そうになりながらも、僕はその「全て」を吸い込み飲み下した。
 結衣の「腸内」で「醸成」された「塊」。当然のことながら、それは「醜悪」な「臭気」を含んでいた。「強烈」に「凶悪」に、ある種「暴力的」ですらあるその「芳香」。彼女によって発せられた、彼女の「中」の「臭い」――僕は「温泉」を思い浮かべた――に一瞬「意識」が遠ざかりそうになりつつも、僕はそれを一心に受け止めた。

 突然の「放屁」を終えて――。気まずい「空気」が流れる。「ガス」のように決して「軽い」ものでなく、「重い」「沈黙」が――。
 何か「言わなければ」。声を「発さなければ」。そう思い、僕の脳は「フル回転」した。誤魔化すべく、沈黙を埋めるべく、やがて僕の発した「一声」は――。

「結衣の『おなら』食べちゃった」

 という、あまりに「馬鹿げた」ものだった。今にして思えば――、後から思い出せば――、何と「羞恥に満ちた」ものだっただろう。思い返しただけでも「のたうち回り」、「転がり回りたくなる」――、まさしく「黒歴史」の「誕生」である。
 自分でも、なぜそんなことを言ってしまったのか分からない。「冗談」じみた、あくまで「茶化した」物言いでありながらも、僕ははっきりと自分の「変態性」を「暴露」してしまったのだった。

「ガス」とはいえ「放出」である。「おなら」とはいえ、広義で見ればそれは「お漏らし」の一種である。「不可抗力」とはいえ、それを「許してしまった」という「既成事実」に変わりはなく。「被疑者」であり「過失者」たる、その「元凶」である結衣の「アナル」はすでに「開いて」いた――。
 かつてはあれほどまでに「引き結ばれていた」にも関わらず。今やその部分は、すっかり「だらしなく」口を開けていた。もちろん、多少はすぐに「収縮」を始めたのが、やはり完全には「閉じ切らず」、むしろ僕を「誘う」ように――。

「もう挿入れていい?」

 僕は堪らず、そう訊いた。結衣は頷いた。だが、まさか「そちらに」とは思っていないのかもしれない。彼女はきっと「普通に」、「性器」に挿入されることを望んでいたのだろう。まだそこついては、あまり「ほぐされて」いないにも関わらず――。

「電気を消してください」

 と、結衣は言った。「明るい」ままだと「恥ずかしい」のだという。実に「女の子」らしい「反応」だったが。もはや「今さら」という感じである。彼女はすでに――、それ以上の「羞恥」を幾つも「経験済み」なのだ。それでも僕は彼女の言うとおりにした。

「暗がり」の中、結衣は僕の「ペニス」に手を伸ばしてきた。今度は「自分の番」というわけである。
 結衣はトランクスの上から僕の「ペニス」を強く握った。少しの「痛み」から僕が腰を引くと、彼女は詫びた。それで一度は手を「離した」ものの、かといって決して「遠慮」することはなく、彼女は僕のトランクスを脱がし、すでに「はちきれん」ばかりに「勃起」した僕のそれを見た。まるで「初めて」男の「モノ」を見たように、しばらく「放心」しているようだった。(あくまで「推定」であるが、僕のはきっとそれほど「大きく」はないはずなのだが…)
 やがて結衣の口が僕のペニスを頬張る。「短小」ではなく、とはいえ決して「極太」とはいえない僕のそれでも、やはり口に「含む」には多少の「無理」が生じるようだった。

 結衣の口が「前後運動」を開始する。彼女の「口内」と「舌」によって、僕のペニスに「刺激」と「快感」がもたらせられる。
「気持ちいいですか?」
 彼女は訊いてきた。あくまで「自信なさげ」に、僕の「快感」について問うように。
 確かに彼女の「フェラチオ」は「及第点」には程遠かった。恐る恐る触れる「唇」はくすぐったく、唾液を「すする」たびに時折当たる「歯」は痛かった。
 あるいは彼女にとってその「行為」は「初めて」なのかもしれないと思った。普通に「あり得る」ことだ。かつての「彼氏」や「相手」がそれほど性に「貪欲」でなければ――、それを経ずにあくまで「手淫」と「挿入」のみに終始していたとしてもおかしくはない。だとすれば、僕はまた一つ彼女の「初めて」を奪ったということになる。それはむしろ「光栄」なことに思えた。

「めっちゃ気持ちいいよ」
 僕は答える。多少の「配慮」も「ヨイショ」もやむを得なかった。あくまで結衣を「その気」にさせ、「乗せ」続けるために。この場において僕は「皮肉屋」に、エラそうな「批評家」になるつもりはなかった。それに。彼女の「ぎこちなさ」もそれはそれで、あるいは「初めて」によるものなのだとしたら――、いささか「新鮮」であるようにも思えた。

「もう、大丈夫だよ」
 僕は言った。「固辞」するためのものでなく、次なる「ステップ」に移るための「糸口」として――。
 いくら「単調じみた」ものとはいえ、さすがに「危ない」ところだった。結衣の「口」と僕の「ペニス」が触れ合う音。彼女の「唾液」と僕の「カウパー」が混ざり合う音。もはやそれだけで、僕は「達して」しまいそうだった。
 だが、そうするわけにはいかない。まだここで「無駄打ち」してしまうわけにはいかない。今夜こそ「最後」まで――、それに至るために僕は何とか「暴発」を必死で堪えたのだった。

 僕は再び、彼女をベッドに押し倒す――。

「結衣」
 僕は彼女の「名前」を呼ぶ。確かめるように、最後の「同意」を求めるように。書面への「捺印」を、あるいは「署名」を、それによる「契約」を交わすために――。
 彼女は何も言わなかった。それを「同意」と受け取ることにする。やや「強引」ではあるが、むしろその方が都合が良かった。もしここで「性器への挿入」を言葉にされたならば――、「契約不履行」となってしまうことは否めなかった。
 あくまで必要だったのは「挿入」それ自体の「確認」であり、「どこに」とは言っていない。まさに「詐欺まがい」の論法である。

 僕は結衣を強く抱き締めた――。
 彼女の体は「折れてしまいそう」なほど「華奢」で、「小柄」で。僕の「欲望」を受け止めるには、少しの「頼りなさ」を思わせた。
 彼女の「肌」から、あるいは「髪」から発せられる、「石鹸」もしくは「シャンプー」の香り。あるいは「ボディクリーム」か「化粧品」の匂いだろうか。「香水」のような「強い香り」ではない。あくまで「優しく」「仄かな香り」――紛れもない「女の子の匂い」だった。
「首元」に顔を近づけて、「周囲」に漂うその「匂い」を嗅ぐ。思いきり吸い込む。僕の鼻腔が「結衣の体温」で満たされる。少しも「不快」ではない。むしろ、どこか「落ち着く」ような、けれど同時に「焦燥」を駆り立てられるような――。

 だからこそ、僕は「混乱」した。「不思議」でならなかった。そんな「素敵な香り」を漂わせる彼女が――、まさに「女性らしさ」を思わせる彼女が――、日々「排泄」を繰り返しているという「現実」が。「拭き残し」によって「肛門」を汚し、さらにはその「穢れ」をパンティにまで付着させているという「事実」が。今目の前にいる彼女と、ついさっき見知り「嗅ぎ知った」彼女とを結びつけるのに、「齟齬」が生じるのだった。

 結衣のパンティに刻み込まれた「ウンスジ」。紛れもない排泄の「痕跡」。
 結衣のアナル。そこから発せられる「うんち臭」。
 僕はそれを知ってしまった。彼女の「秘密」に気づいてしまった。彼女の「羞恥」なる「真実」を――。

 あるいは「普段」から、結衣はそうなのかもしれない。職場で僕と話すとき、今日のデートの最中もずっと。彼女はその黒タイツの「内側」に、パンティの「裏側」に、「うんち」を付けたままだったのだ。
 おどけた表情を見せながらも「うんち」。快活な仕草をしながらも「うんち」。恥じらいを窺わせながらも「うんち」。パンティに「うんち」。
 一体いつから、結衣はそれを「携えて」いたのか。一体いつ、「うんち」をしたのだろうか。あるいは今日はまだしていないのかもしれない。だとしたら、不意に「チビ」ってしまったのかもしれない。例えば「おしっこ」を「お漏らし」した時に、思わぬ「力み」によって「そっち」も出てしまったのだろうか。

 結衣の「排便姿」を思い浮かべた。便器に跨り、下着を下ろして、尻を突き出し、腹に力を込める様子を――。
 やがて彼女の「肛門」が盛り上がり、そこから徐々に「うんち」が顔を出し始める。
 結衣は「快便」だったろうか。それとも「便秘」気味なのだろうか。
 それは彼女の「体つき」に似合った「細い便」なのか。あるいは顔に似合わず「極太」をひり出したのだろうか。
「排便」を終えて、結衣はちゃんと「拭いた」のだろうか。いや「甘かった」に違いない。でなければ、あれほどまでに「残る」はずがない。

 結衣の「股間」からではなく、「肛門」から出る、もう一方の「排泄」。「液体」ではなく「固体」の、よりはっきりとした「実体」を持つそれに、その「行為」に。今や、僕はすっかり興味を奪われていた――。

 僕は結衣に「キス」をした――。
 最初は軽く唇を重ね、けれどすぐに「貪る」ように舌を入れた。彼女の「口」は、反対側の「口」に比べると、ずいぶん「素直」なものだった。
 彼女の「意思」によってそこは開かれ、すぐに僕を迎え入れてくれた。もちろん、不快な香りは全くない。「腸液」の代わりに「唾液」が次々と溢れ出し、僕の舌に絡みついた。「ウンカス」の代わりとなるものには――思い当たらなかった。

 僕はこれから結衣を抱くのだ。「抱く」という曖昧じみた、ぼかした言い方には幾つもの意味が含まれるだろうが。そこにはきっと、これから僕のしようとしている「行為」は該当しないだろう。それでも僕は今から彼女を「抱く」――。
 そう考えただけで、「期待」と「焦燥」から、僕の「愚息」は「ムクムク」と反応し、そこからさらに痛いくらいに「勃起」した。

 そして、いよいよ。僕は「挿入」の「準備」を開始する――。
 またしても結衣を「四つん這い」にさせる。最初からの「後背位」に、彼女は少しの「戸惑い」を覚えたようだった。だが、あくまで僕に従う。

 再び、結衣の「尻」が眼前に来る。僕の願い、求めた「アナル」もそこにある――。
 僕がそこに「指」を差し入れたのは、まさしく「必然」だった。そうすることが当然の「流れ」のように思えた。

「ひっ!!」

 と。結衣は「ヘンな声」を上げた。「驚き」からか「意外性」からか。「痛み」か、それとも「違和感」からだろうか。だが、それに構わず僕は彼女の「中」に入り、そこを指で「かき回した」――。

「ねっとり」と指に絡みついてくるような「感触」がある。それは彼女の「腸壁」と「腸液」によってもたらせられるものでありながら、「膣壁」と「愛液」のような「錯覚」を与えるのに十分なものであった。
「執拗」な「一混ぜ」の後。「一息」に引き抜く。僕の指は結衣の「腸液」で「コーティング」されていた。だが不思議なことに、「肛門周り」には、「入口」にはあれほど「付着」していたはずの「うんち」が僕の指に付くことはなかった。
 次に「二本」、やがて「三本」と、入れる指の「本数」を徐々に増やし、少しずつ「拡張」していく――。
 そうして「仕上がった」結衣の「アナル」は、すっかり「性器」と見紛うほどになっていた。


続く――。

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おかず味噌 2020/09/21 16:00

ちょっと悪いこと… 第十九話「彼の視点 ~追憶と願望~(1)」

(第十八話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/344433


 休日の午後。駅前で「結衣」と待ち合わせる――。

「フリーター」である僕にとって「休日」とは必ずしも「土日」を表わすものではなく、「サービス業」においてはむしろ「週末」こそがまさに「稼ぎ時」であり、逆にいわゆる「サラリーマン」などにとっての「平日」が「休日」となることが多い。

 だが、今日は「土曜日」だ。

 一週間の内、最も「忙しい」日である「週末」に、どうして本来「融通が利く」はずのこの僕が「休み」なのかといえば――、それは普通に「休み希望」を出したからである。毎月末に掲出される「シフト希望表」に、今月唯一「×」を付けたのが「今日」だった。
「平日」は「授業」があるためまとまった時間が取れず、だからこそ「週末はロングで入れてほしい」と希望している「学生バイト」の「彼女」もまた、同じく「今日」は「×」を書いていた。
 何もそれは「偶然の一致」などではない。僕たちはお互い示し合わせて、わざわざ「休み」を取ったのだ。「空白」だったカレンダーに、僕と彼女は「予定」を書き加えたのである――。

 と。ここまで聞いていると、僕と彼女がさも「付き合っている」と「誤解」を持たれるかもしれない。だが結論からいえば、僕たちは決して「恋人同士」などではない。
 ここで言う「彼女」とは、あくまで「三人称」としてのそれであり、そこには「俗語」としての「特別な意味」は含まれていないのである。
 この「関係性」について「結衣」がどう思っているのかは分からない。だが僕としては少なくとも、どちらかが「告白」しもう一方がそれを「了承」したわけでもなく、互いの「気持ち」について「確認」し合ったわけでもなく、だとすればそこはやはり「友人」として取り扱うべきだろうと思っている。

 だが、もちろん「ただの友人」ではない。「男女」の「友情」について、果たしてそれが「成立」するかはさておき。そこにおいてしばしば「言及」される、「恋愛感情」や「肉体関係」の有無について。僕たちは、すでに「一線」を越えてしまっているのだ。
 本来の「友人関係」においてはあり得ない、「肉体関係」を許した「男女関係」。「好意」については問わず、あくまで「行為」を「目的」とした「共生関係」。
 いわゆる「セフレ」というやつだ。
 最初はほんの「出来心」だった。「下心」と言い換えても良いだろう。「たまたま」バイトを「上がる時間」が一緒になり、僕たちは「帰り道」を共にすることになった――。


「家に来ない?」

 そう誘ったのは僕の方だった。「誘う」のは大体決まって「男性側」なのだ。そういうものだろう。「もうちょっと話したい」と僕は言った。幸い、「話題」はそれなりに盛り上がっていた。だが別にこれといって「話したい」ことがあったわけではなかった。「理由」は何だって良かったのだ。

 普段「バイト」で会う時、結衣が僕に「好意」を抱いている風には見えなかった。会えばそれなりに話をするが、かといって彼女が「積極的」に僕と話したがっているかといえば、そんなことは決してなかった。だが少なくとも「嫌われている」感じはしなかった。あくまで「バイトの先輩」として、ささやかな「興味」と「無関心」の間にいるのだと、僕は「推察」していた。
 僕としてもそれは「同様」で、彼女と「付き合いたい」などと考えたことは一度もなかった。あくまで彼女は「バイトの後輩」であり、それ以上でも以下でもなかった。
 だがそこは「男の性分」である。何も「感情」としての「結びつき」については望まないまでも、やはり「体の結びつき」についてはやぶさかではない。
 彼女は決して「美人」と呼ばれる部類ではなかったけれど。「身なり」は綺麗で小ざっぱりとしていて、細くて「スタイル」が良く、さらにそこに「女子大生」という「属性」が付与されることによって、何かしら男性の「劣情」を駆り立てるものが備わっていた。決して「派手」ではなく、むしろどちらかといえば「地味」な方で。だがそれがかえって、彼女の隠された「魅力」のようなものを「探求」させる「興味」を僕に抱かせた。

 結衣は「逡巡」しているらしかった。僕の「誘い」を受けるべきか否か、それについて考えているようだった。だが結局、彼女はそれに応じた。僕の家に来ることを「了承」したのだった。

 そこで結衣は「粗相」をした――。

 彼女の「ズボン」から迸る「水滴」を――、彼女の「股間」と「床」とを繋ぐ「水流」を――。僕は今でも「ありあり」と思い浮かべることができる。
 小学校「低学年」以来の「お漏らし」。人生においてそうそう見ることのない「女性」の「失敗」。「女子大生」の「失禁姿」。それは僕の「網膜」に強烈に焼き付けられ、胸に刻みつけられたのだった。

 普段の彼女はどちらかといえば「クール」な方で。「仕事」についても覚えが良く、何でも卒なくこなしている「イメージ」だった。その彼女が今「あるまじき失態」を晒しているのだ。
 結衣は「俯いて」いた。「苦痛」を堪えるように唇を噛み締め、ただ「時」が過ぎ去るのを待っているようだった。いつもの「明るい」彼女とは正反対の「暗い」表情は、「羞恥」と「後悔」が入り混じっているような、そんな「複雑」な「心境」を表わしていた。

 僕の「性癖」が「発露」したのは、まさにその「瞬間」だった――。

 僕は思わず「射精」してしまっていた。思いがけず、トランクスの中に「精液」が「飛び出して」いた。僕はいまだかつて、それほどまでに激しい「興奮」を覚えたことはなかった。僕の手は一度も自分の「股間」に触れることなく――。「触れずに射精」した経験も、それが「初めて」のことだった。

 それでもやはり、僕は少なからず「混乱」していたのだろう。想定外の「射精」によって「賢者タイム」が訪れていたせいもあるかもしれない。
 結衣が「後始末」をする間、僕はただじっと部屋で待っていただけだった。帰り際、「手土産」とばかりに「お漏らしパンティ」を入れるための「ビニール袋」を渡し、結局その日は「何もせず」僕は結衣を帰してしまったのだ。
 束の間の「非日常」から「日常」へと立ち戻り。「一人」取り残された夜の中で、結衣の「おしっこ」の「残り香」だけが微かに浴室に立ち込めていた――。

「二度目」の機会は、すぐに訪れた。

 その日は「たまたま」休みが合ったのだ。「バイト以外」で、「外」で結衣と会うのはそれが「初めて」のことだった。誘ったのはやはり「僕の方」だった。
 あの「一件」以来、「バイト先」でお互い顔を合わせるのが当然のように「気まずかった」。彼女は僕を「軽蔑」したかもしれない。トイレに行かせなかった僕を、あるいは「恨んで」いるのかもしれない。
 だがよくよく考えてみると――。「原因」はどうであれ、あくまで「失態」を犯したのは彼女なのだ。だとすると、むしろ「軽蔑された」と思っているのは彼女の方なのかもしれない。

 僕は思い切って、結衣に話しかけてみた。「あの夜」のことはあえて口に出さず、何も「気にしていない」風を装って、彼女に「接触」を試みたのだった。
 結衣の「反応」は「普通」だった。彼女自身、その「事件」を「忘れた」というように、「今まで通り」の彼女だった。
 ちょうど「休日の過ごし方」が「話題」に上ったとき、僕は何気ない調子で結衣を「デート」に誘ってみた。

「デート」。果たしてその言葉が適切であるかは分からない。やはり僕たちの「関係性」から鑑みるに、あるいは「恋愛」を想起させるその「英単語」を用いるべきではないのだろう。だが昨今は「女子同士」であろうと――、たとえそれが「友人関係」であろうと――、平気でその「言葉」が使われたりもする。だから、お互い「プライベート」のその「予定」は、もはや「デート」と呼んで差し支えないだろう。

 だがそれでも。やはりそれは単なる「デート」ではなかった。少なくとも僕にそのつもりはなかった。ただ「会い」「語らい」「遊ぶ」のではなく、僕には明確な「目的」があったのだ。(あるいは「目的」自体は違えど、世間一般の「デート」においてもそれは同じなのかもしれない)
 僕の「目的」とは――、結衣にもう一度「お漏らし」をさせることだった。
 そして――。

 結衣は再び、「二度目」の「お漏らし」をしたのだ。

 その日の彼女は「黒タイツ」を穿いていた。事前に僕が「指定」した「格好」だ。
 かねてより、結衣のその「スタイル」を、恐らく「美脚」に違いないその「脚線」を。より「効果的」に、より「魅力的」に、あるいはより「エロく」見せる「服装」について考えを巡らせていた。「制服姿」の彼女を見るたびに、密かに「妄想」していたのだ。
 脳内での「議論」の結果、出された「最適解」が「それ」だった。それはいわば――、あえて「隠す」という「手法」である。
 前日、結衣との「メッセージ」のやり取りの中で僕はそれを「発表」した。彼女は例の如く、「え~」とか「なんでですか?」とか「どうしようかな~」など、多様な「困惑」と「疑問」の台詞を送ってきていたが、やはり「まんざら」でもないらしく。翌日、僕に言われた通り、結衣は「黒タイツ」を穿いてきた。

 やや「目の荒い」――確か「デニール」がどうとか言うのだったか?――「黒タイツ」に包まれた結衣の脚。程よく「引き締まり」、けれどあくまで「女性らしさ」は失わず、それは僕の想像した通り「いやらしかった」。
 会った瞬間、一目見た途端、出来ることなら今すぐに脚を「揉みしだき」、タイツを「引きちぎりたい」という衝動に襲われた。それでも僕がそうしなかったのは――もちろん「大衆の目があったから」という前提もあるが――結衣にそれを「穿いたまま」でいてもらいたかったからだ。

 別に僕は結衣の「おしっこ」それ自体に興味があるわけではなかった。仮に彼女が「着衣」でなく「尿意」を解放したならば――それはただの「放尿」に過ぎない。それでは駄目なのだ。(それはそれで、全く何も感じないかといえばそんなことはないのだが…)
 僕の興味の対象は――、あくまで「お漏らし」なのだ。自らの「意思」ではなく、「故意」によるものではないその「行為」に、僕は「好意」を抱き「恋」焦がれていたのだった。「理性」で律しても尚、「欲求」に抗えない姿。全てを「さらけ出し」、あるいは本能を「むき出し」にしてしまったが故の「終着」。その「羞恥」にこそ僕は「執着」し、最大限の興奮を覚えるのだった。

 結衣の脚が「おしっこ」で濡れて光っている。「幾筋」もの「線」が「放射状」に描かれている。白い「カンバス」にではなく黒いタイツに、「道」を指し示す「コンパス」の如く――。散々「着衣」を濡らして尚「吸収」し切れなかった「液体」が、足元に「水溜まり」を形成する。「あの夜」と同じ、紛れもない結衣の「お漏らし」によるものだ。

「結衣、めっちゃ可愛いよ」
 そう言って僕は彼女を抱き締めた。自らが「汚れる」ことも厭わずに、むしろそれさえも興奮の「材料」に変換するように――。
「ズボン越し」に結衣の腰に当たる僕の「ペニス」は、痛いくらいに激しく「勃起」していた。けれど今日はまだ何とか「射精」には至らずに済んだ。固くなった「モノ」を結衣の尻に押し当て擦り付けながら、「腰の浮く」ような「衝動」をかろうじて堪えていた。

 僕は結衣をベッドに押し倒した。「ついに」というか、まさに「これから」という感じである。廊下から部屋に移動する間、彼女はわずかの「抵抗」を見せつつも、最終的には僕に「されるがまま」だった。彼女は何も言わず、ただ僕に「従う」だけだった。
 押し倒す直前、結衣は若干の「拒絶」を示した。だがそれはあくまで「おしっこまみれ」の体で、ベッドを「汚してしまう」ことを忌避するだけのものだった。僕はシーツを洗濯することを覚悟の上で、構わず「選択」を続けた。

 僕は結衣に「キス」をした。彼女の「唇」は微かに震えていた。その「ぎこちなさ」から、あるいは「初めて?」という予感がよぎったが、まさかそんなはずはないだろう。これまで彼女と会話した中で、あくまで「間接的」にではあるが、「経験済み」であることがそれとなく「示唆」されていた。きっと「何度か」経験はあるのだろう。

 結衣の体を「まさぐり」ながら――、「夢にまで見た」とは言い過ぎであるが、少なくとも「日々高まらせていた」欲求を「解放」した。だが、「前戯」とさえ呼べない「児戯」を繰り返すだけのそれでは、欲望が「満たされる」ことは決してない。まるで「砂漠」に「水」が染み込んでいくように、いつまで経っても「渇き」が潤されることはなかった――。

 僕は結衣の脚を広げた。そこで再び彼女は少しの「抵抗」を見せた。それでもやがて「観念」したらしく、「閉じる力」を緩めるのだった。
 結衣のショーパンの「股」の部分には、はっきりと「小便染み」が出来ていた。やや色の褪せた「デニム生地」は、そこだけ色が「濃く」なっていた。
「発生源」が「解放」されたことで、より強い「臭い」に室内が満たされた。ツンと鼻を突くような「アンモニア臭」。反射的に、本能的に思わず鼻を摘み、顔をしかめたくなるような強烈な「芳香」――。
 だが僕がそれに「臆する」ことはなかった。むしろ「積極的」に鼻を鳴らし、大きく「呼吸」をして、結衣の「おしっこ臭」が多分に含まれた「空気」を吸い込んだ。

「おしっこクサいね」

 僕は分かりきった、当たり前の「感想」を言った。彼女の顔がみるみる内に「羞恥の色」に染まっていくのが分かった。

 僕は「ショーパン越し」に結衣の「股間」を舐めてみた。膝を抱え、「間」に顔を「うずめた」。舌を出し「ぺろり」と「縫い目」の部分をなぞった。その「味」は――、「しょっぱい」ような「苦い」ような、けれどどこか「甘い」ような不思議なものだった。
 それは結衣の「おしっこの味」だろうか、それとも蓄積された「汗の味」なのだろうか、あるいは「ジーンズ」本来の味なのかもしれない。
 僕の「暴挙」ともいえる予想外の行動に、彼女は驚いているみたいだった。「まさか舐めるなんて…」と思っているのだろう。だが「意外」というならば――、それは僕自身だって同じだった。
 まさか自分がここまで「お漏らし」というものに、もはや「理性」すらも失くして「のめり込んで」しまうなんて思ってもみなかった。ただそれを「させ」、「見る」だけでは飽き足らず、「嗅ぎ」「舐める」ところまでいくだなんて――。

 僕はきっと「変態」なのだろう。女性の「体」のみならずその「付属物」である「分泌物」に――むしろ「本体」よりも激しい興味を引かれるのだ。
 僕は「虜囚」だった。「非日常」という「牢」に囚われ、もはや「正常」という名の「法(LAW)」を犯した、「異常」へと成り下がっていた。
 結衣は僕のそんな「性癖」に気づいてしまっただろうか。もしそうだとしたら、彼女は「ドン引き」したかもしれない。もはやこの先の「展開」は望めないだろう。
 あくまで「羞恥を与えるため」の「意地悪」であるならまだしも――。(それもそれで「ギリギリ」というか、かなり「グレイ」に近い部分であるが)それどころか、まさかその「行為」自体を「プレイの一環」と捉えるなんて、とても「まとも」ではない。

「今夜きり」。僕は結衣との「逢瀬」をそう覚悟した。もう「会ってくれない」かもしれない。「職場」で顔を合わせても「避けられる」かもしれない。あるいは――彼女に限ってそんなことはしないと信じたいところだが――僕の「変態性」について「バイト仲間」に言いふらすかもしれない。
 そうなってしまえば、僕はもうバイトを「辞めなくては」いけなくなるだろう。年下の「学生」に手を出し、ましてやその「変態的行為」によって「拒絶」されてしまうなど。どこをどう切り取ったって「羞恥」に違いない。そこにおいては彼女の「失態」も、あくまで僕に「無理やり」そう「仕向けられた」ものとして「正当化」されることとなる。
 僕は結衣に「羞恥」を与え、人としての「尊厳」を奪ったつもりが――、むしろ僕の方が「追い詰められる」という「絶望」の淵へと立たされていた。だがそれも「自業自得」だ。あくまで「悪い」のは僕であり、「イケない」ことをしたこれは「代償」なのだ。

 けれど。次の結衣の「言葉」によって、僕は「救われる」ことになる。「異常」なのは決して「僕だけ」ではないのだと――。

「もしかして、○○さん『も』お漏らしが好きなんですか?」

 結衣は訊いてきた。それは「問いかけ」という形を取ったものだったが、そこに含まれていた「同類」を示す「副助詞」はむしろ、彼女自身の「主張」を表わしていた。
 彼女は何もその「一文字」を「強調」したわけではなかった。むしろ「流れる」ように「意図せず」、ごく「自然」に口から出た言葉みたいだった。だが、だからこそ「言外」にそれは語られていた――。
「~も」ということは、つまり「そういう事」である。

「えっ?結衣も好きなの?」

 僕は思わず、そう訊き返していた。同じ「副助詞」を用いて――、もはやそれは自らの「性癖」を「認めて」しまったことと「同義」だった。

 そこから――、僕たちの「暴露大会」は始まった。
 結衣は「告白」した。この前の「一件」以来、彼女自身もまた「お漏らし」という行為に「囚われている」ことを。意味もなく「我慢」を重ね、時には「ピンチ」に陥ったこともあることを。(ある時は――、「限界」が迫ったまま「帰宅」し、もしその日「弟」がたまたま家に居てくれなければ「決壊」を迎えていたという)
 そして、実は「今日」も「我慢」していたらしい。確かに「デート」の最中、僕が「禁止」するまでもなく、結衣は一度も「トイレに行きたい」とは言い出さなかった。つい先刻、「僕の家に来てから」を除いては――。
 その時、すでに結衣は「覚悟」を決めていたのだろう。再び「お漏らし」をすることを。僕の目の前で、あの日の「再現」をすることを――。

 僕も「告白」した。結衣の「お漏らし」を見て、「発芽」したことを。さすがにその場で「射精」してしまったことは黙っておいたが、それでも何度かその「光景」を思い浮かべて自らを「慰めた」ことを。「最初」は「そんなつもりはなかった」ことを言い訳しながらも、もはや今日は「そのつもり」だったことを。彼女に「お漏らし」を「させる」つもりだったことを。

「変態ですね」

 僕の「自白」を聞いて、結衣は「軽蔑」を口にした。だが半分「笑い」まじりの「冗談」じみたその言い方は、決して「断罪」を表わすものではなかった。それに、あるいはその言葉は「彼女自身」に向けられたものであるのかもしれなかった。
 そうして、僕たちは互いの「罪」を「白状」し合った。

 僕はいよいよ「ショーパン」に手を掛けた――。

 さきほどの「告白」は「性的同意」を示すものではなかったけれど。それでも僕の始めた「続き」を彼女が「拒否」することはなく、むしろ腰を浮かして「脱がせる」のに「協力」した。
「湿った」ままで「脱がしづらい」ショーパンをなんとか脚から引き抜くと――、「黒タイツ」に包まれた結衣の脚がより「露わ」になり、今まで「見えてなかった部分」さえも「明らか」になった。
 本日の結衣の「パンティ」は「黒」だった。それを見て、僕は少し「がっかり」した。「まるで分かっていない」と思った。この「色」では――、せっかくの「黒タイツ」と「被って」しまう。「コントラスト」はなく、「同色の布」の中にただ「埋没」してしまうだけなのだ。

「黒タイツ越し」に透ける「パンティ」――、その「色」は「白」と相場は決まっている。あるいは「ファッション性」についていえば、「正解」といえないのかもしれない。まるで「下腹部」及び「臀部」だけが「浮き出た」ような、ある種の「滑稽さ」を思わせるその「格好」は「ダサい」以外の何物でもない。
 だが、あくまでそれは「見せる」ことを前提とするからであり、むしろ「見せない」「見られない」ことが当たり前の「その部分」において、「外見にこだわる」というのは少々「的を外している」感が否めないのである。
 そして、「隠れている」からこそ――、そう「思い込んでいる」からこそ――「気を抜き」、あるいは「手抜き」とさえ呼べないほどの「油断」が意味を持つのである。

 いや。そもそもそこに「意味」も「理由」もないのかもしれない。打ち立てた「論理」はその全てが「詭弁」であり、「偏向」じみたものに過ぎないのであろう。あくまで僕の「個人的」な「好み」であり、「異論」については様々に認める「構え」である。
 だが、兎にも角にも。僕が結衣のその「パンティ」を見て、少なからず「残念」に思ったことは確かだった。とはいえ、それですぐに「萎えて」しまうほど、僕は「傲慢」な人間ではなかったし。それに逆に考えてみれば――、彼女が今「穿いている」下着に「別の意味」を見出すことも可能であった。

 結衣は今日「お漏らし」を「させられる」ことを「想定」していたらしい。「暴露大会」においても、さすがにそこまで語られることはなかったが、無意味な「我慢」をしていたということはつまり、きっとそういう事なのだろう。
「着衣」での「お漏らし」において、「パンティ」を濡らし「汚して」しまうこともはや必然である。だとすれば、彼女はそれを「分かった」上で、あくまでこの「黒い下着」を――、「お漏らしパンティ」に選んだということなのだろう。
 それは「黄ばみ」を懸念してのものか。あるいは単に、後に「処分する」ことを知りつつ「いらない下着」を「犠牲」にし、「生贄」に捧げたのだろうか。
 どちらにせよ「不憫」でならない。その「下着」は今日穿かれたその瞬間から、「汚される」ことが決まっていたのだ。

 下着というものはそもそも、ある程度は「汚れる」ことが「確定」された「運命」にある。むしろ自らがそれを「被る」ことで「衣服」を「守る」その「役目」にこそ、「存在意義」があるのだ。
 誰だって「下着」は汚れてしまうものだ。だからこそ毎日「穿き替える」のである。
 普段の結衣にしたってそれは「例外」ではなく、「お漏らし」には至らないまでもそれなりに、多少の「シミ」は免れないだろう。「チビり」による「小便染み」、「発情」による「愛液濡れ」、そして――。

「拭き残し」による「ウンスジ」だって付けているかもしれない。

「まじめ」で「勤勉」な彼女の性格から「まさか」とは思うが、「みじめ」な「糞便」をパンティに「付着」させたまま、日々を送っているのかもしれない。そして、それは「今」だって――。

 なぜだろう?その「想像」に及んだとき、僕の中でまた何か、新しい「別の扉」が「開かれる」ような「予感」があった。とはいえ、まだそれは「コツコツ」とドアを叩く――、「ノック」をするだけのものに過ぎなかったが。そこには僕のまだ知らない「入口」が確かに待ち構えているのだった――。

 その後の「行為」は、いわば「手順通り」に進められたが。僕にとってはその「全て」が、あるいは壮大な「焦らし」であるように思えてならなかった。
 あえて「陰部」に「直行」するのではなく、まずは「おしっこまみれ黒タイツ」の「脚」を「舐め始めた」ことはもちろんのこと。「お漏らしパンティ」越しに、結衣の「秘部」に顔を埋めたことも――。
「もう、入れて欲しいかもです…」
 と。舌での「愛撫」によって堪えきれなくなり、やがて彼女の方からやや「遠慮気味」に「挿入」を「懇願」してきたときも。僕の「興味」と「ペニス」はむしろ、彼女の「別の穴」へと向いていた。

 ついに、結衣の「下着」を脱がしに掛かる――。
 そこにおいて、僕は結衣に「協力」を求めたのだった。


続く――。

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おかず味噌 2020/08/30 20:42

クソクエ 女僧侶編「着衣脱糞 ~救済へと至る道~」

(前話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/358447
(女戦士編はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/311247


「今日はここまでにしましょう!!」

「勇者」の声で「歩み」を止める。「日暮れ」にはまだ少し早いが、すでに空は「茜色」に染まり始めている。
 今日の「冒険」は「ここまで」のようだ。「頃合い」だろう。「野宿」をするのにだって、それなりの「準備」がいる。完全に「昏く」なってしまってからでは遅いのだ――。

「野営」においてもやはり、それぞれの「役割」というものは自ずと決まっている。
 ヒルダは辺りの「森」から「薪」を調達し、アルテナは「糧」となるべく「料理」に取り掛かる。「指示」を出されるわけでもなく、「話し合う」までもなく、まるでよく「訓練」された「兵士」のように、各自黙々と与えられた「仕事」をこなす。
 彼は――、周囲の「見回り」をしている。傍から見れば、あるいは単に「サボっている」だけのように思われるかもしれないが。実にそれは重要な「任務」である。
 ここは「安全」な町の中ではなく、いつ「敵」に襲われてもおかしくはない「フィールド」のど真ん中。いくら「警戒」しようとも、し過ぎるということは決してない。まさに「危険」と隣り合わせの「現場」なのだ。

 アルテナは「食材」の下拵えをしている。今宵の「献立」は「肉と野菜のスープ」。簡素な「メニュー」であるが「栄養」の面からすれば申し分ない。「味」については――、まさしく彼女の「腕の見せ所」である。
 昼間にヒルダが運よく狩った「野兎」と、道中アルテナが根気よく採集した「野草」が、その「材料」となる。「杖」を「短刀」に持ち替えて、早速料理に取り掛かった彼女であったが、そこですぐに「障壁」に行き当たることになる――。
「肉」と「野菜」は十分に揃っていたが、それだけでは「料理」にならない。そして、「肉」はその「血」を洗い落とすのに、「野菜」についても「土」を洗い流すのに、さらには「食後」に「皿」を洗うにしたって、どうしたって「それ」は必要となってくる。まさに「生命」の源であり、「生活」においても「必要不可欠」というべきそれは――、

「水」だった。

 まずはそれを「調達」してからでなければ。とても料理に取り掛かれそうにない。
――近くに「川」でもあれば良いのですが…。
 アルテナは考える。一旦「短刀」を置き「食材」をそのままにして、「水」を探すべくその場から離れようとする。
――何か「汲むもの」を…。
 アルテナは近くを見回す。「鍋」があればそれで十分だったが、やはり「必需品」であるはずの「調理器具」はなぜか見当たらない。
――あら?さっきまであったはずでしたのに…。
 アルテナが怪訝に思っていると――、

――ドカッ!!

 目の前に「水の入った鍋」が置かれた。彼女の「祈り」が天に届いたのだろうか。突然現れたそれにやや困惑気味になりながら、置かれた鍋のその「向こう」をゆっくりと見上げる――。
 そこには。「か細い腕」と「華奢な体」、「あどけない表情」の愛しい人がいた。
「勇者様…?」
 アルテナは鼓動が早くなるのを感じながらも、なるべく冷静を装って彼の「名」を呼んだ。
「探索していたら『川』を見つけたんです!料理するのに必要ですよね?」
 彼は言った。まるで「子供」が気を利かせて「親」の手伝いをして、「褒められる」のを「期待」しているみたいに。その表情は「得意げ」だった。
「あ、ありがとうございます!とても助かりますわ」
 アルテナは謝意を述べた。これで無事料理に取り掛かることができる、とそれ以上に。自分の「思っていたこと」が彼に、口に出さずとも「伝わった」ことが嬉しかった。
 まるで「以心伝心」。「魔法」なんて使わずとも、二人の「距離」を繋ぐそれは「テレパシー」のようだった。(離れてたって「以心電信」)
 アルテナはふと。またしても、「将来」についての大いなる「展望」を「夢想」していた――。


 彼女は「家」で夕食の支度をいながら「夫」の帰りを待っている。やがてドアをノックする音が聴こえると、すかさず手を止めて。まさしく「犬」のように「しっぽ」を振って、小走りで玄関へと向かう。
「おかえりなさいませ、あなた」
「労う」ように言い、単なる「二人称」である、その「呼び名」に意味を込める。
「ただいま!」
 彼は応える。変わることない「無邪気」な表情で、そこにいくらかの「逞しさ」を携えて。自らの「帰るべき場所」に還ったのだと、「安堵」して見せる。
「相棒」である「剣」を、「パートナー」である自分が預かる。今日一日彼の命を守ってくれた「相棒」に感謝しつつも、けれど今や彼の「命に次に大切なモノ」は「自分」なのだと、その「感慨」と「優越」に浸る。そしてやや冗談まじりに訊ねる。
「すぐに『ご飯』にしますか?『お風呂』にしますか?それとも――」

――ワ・タ・シ?

 言うだけで赤面しそうになる、お決まりの「台詞」である。あまりに「ありがち」で、けれど現実には言わないであろうと「夢の言葉」に、けれどアルテナは「充足」と「幸福」を感じるのだった――。


「アルテナさん?どうしたんですか?」
 彼の言葉で我に返る。「妄想」はそこで打ち止めであった。にも関わらず、アルテナの眼前には、夢と同じ「現実」があった。
「え、えぇ…。大丈夫です。少しばかり疲れているだけで…」
 アルテナは未だ「夢と現」の間を彷徨いながらも、「動揺」を抑えてなんとか答える。旅の「消耗」はそれなりにあったが、彼女の「動悸」はそれが「動機」ではなかった。
「そうですか…。今日はなるべく早く休みましょう!」
 彼はあくまでアルテナを気遣い、そう言った。どこまでも「優しい」彼。
「あ、それと――」
 彼はそこで、アルテナにある「提案」をする。
「流れがそんなに「速く」なくて、「入れそうな」場所があったんです!」
 それがさも「大発見」であるかのように、彼は言う。彼の言わんとしていることがアルテナには分かった。
「『水浴び』でもしてきたらどうですか?」
 彼は言った。それはアルテナにとって「願ってもみない」ものでありながら、けれど彼女は「迷い」を感じた――。

 確かに今日一日の「冒険」といくつかの「戦闘」を経て、アルテナは相当程度の「汗」をかいていた。体中は「ベタついて」いるし、ローブの下はひどく「蒸れている」。
「身だしなみ」にはそれなりの気を配っているつもりだし、自分ではあまり感じていないけれどやはり、「臭い」だって少なからず発生しているだろう。
 特に「下穿き」については――。「汗」とは違うもので「濡れ」、「発酵」し掛けたより強い「刺激臭」を放っているに違いなかった。
 彼の「提案」を聞くまではさほど気にならなかったが。一度その「可能性」を示唆されたとなると――、今すぐにも汗にまみれた体を洗い流し、汚れた「下穿き」を履き替えたいという衝動を抑えられなかった。

 とはいえ。自分「だけ」が良いのだろうか?アルテナは思う。
――「集団生活」において、「個」を優先するべきではない。
「神の教え」を説くまでもなく、それは人として当たり前の「ルール」だ。
 今の自分には「パーティ」の「一員」として与えられた「仕事」がある。それを「放り出して」まで、自らの「娯楽」に走るなど――。
 アルテナは「鍋」を見た。まだ「火」の入っていない静かな「水面」を見つめがら、「葛藤」が「煮詰まる」様子を眺めた。そんな彼女を見て「勇者」は――。

「あとは僕がやっておくので。これでも『ソロ』の時はよく自分で作ってたんですよ」

 彼は「腕まくり」して見せる。「任せておいて!」と、自信満々に言ってのける。アルテナはしばし逡巡したが結局、せっかくの「厚意」に甘えることにした。
「では申し訳ありませんが…、よろしくお願いします」
 アルテナは「提案」に乗り、その場を彼に任せることにした。自らの「責務」を放り出すことに少しの抵抗を感じたが、それでもやはり乙女としての「矜持」を優先することにしたのだった。

 彼におおよその「方角」を聞いて、アルテナは「水浴び」に向かう。森の木々をかき分け少し進んだ先に、目的の場所はあった。
 見るからに清浄そうな「川」が流れていた。川幅が広く、けれど「折れ曲がる」ことでそこで一旦「流れ」が停滞しているため、「勢い」はそれほど強くはない。そして何より、周囲の木々が「目隠し」の役目を果たしてくれているため、容易に「人目」につかなそうであった。
 つくづく彼は、「女心」というものを理解してくれている。彼の深い「思いやり」に感激し、またしても「惚れ直しそう」にながらも、けれどアルテナはやや「不安」にもなった。もし、同じだけの「思いやり」が別の「女性」に向けられたなら――、きっとその「相手」も彼に自分と同じ「想い」を抱いてしまうかもしれない、という危惧だった。 
 だがそんなことを今考えても仕方がない。アルテナは今は「自分だけ」に向けられたものである「厚意」を素直に受け取ることにした。

 アルテナは早速、「木陰」で衣服を脱ぎ始めた。「杖」を置き、「前掛け」を外し、「法衣」を下ろす。くしくも「あの時」と同じ手順は、彼女の「体」に「錯覚」と「混乱」をもたらす。
――少々、「催して」きましたわ…。
「下腹部」と「股間」に感じる、じんわりとした「違和感」。そういえば今日、町を出てからはまだ「一度」もしていない。これまで気づかずにいたけれど、彼女の「膀胱」には確実に「おしっこ」が蓄積され、今やはっきりと「尿意」を自覚していた。
――先に済ませてから…。
 アルテナは「水浴び」をする前の「準備」について考えた。今一度、周囲を見回してみる。辺りは「静寂」に包まれていて「水音」以外せず、どこにも「人影」は見当たらなかった。そうした「状況」が、彼女に甘い「誘惑」をもたらす。
――「ついで」に、しちゃいましょうか…。
 確かな「決意」を新たにして、アルテナは残った「下穿き」を脱ぎ去り、そのまま「川の中」へと入っていく――。

 川の水は冷たく、一瞬心臓が止まりそうであったが、彼女の「火照った体」にはちょうど良かった。「足先」から順番に、「下半身」「上半身」と慣らしていき、馴染んできたところで一気に「頭」まで水に潜る。

――――――。

 周囲の「音」が消え、完全な「静寂」に飲み込まれる。しばし「外界」から閉ざされたことで、アルテナの「心」は「空っぽ」になる。
――バシャ!!
 呼吸の限界を感じて、アルテナは水中から顔を上げる。「周囲の光景は『一変』していた」なんてことはなく、そこには数秒前と同じ「静寂」があった。
「心地良さ」のまま少しばかり泳ぐ彼女の姿は、傍から見るとまるで水の「女神」かはたまた「精霊」のようであったが。けれど、その姿を「目撃」し「目に焼き付ける」者はいない。少なくとも彼女の「知る限り」では――。(一瞬、草影に何か「動くもの」があったが、アルテナがそれに「気づく」ことはなかった)

 しばらく泳いでいると、やはり「冷たさ」のせいもあって、いよいよ「予感」が「確信」めいたものになる。かろうじて足の立つ場所まで移動し、そこでアルテナは「直立」する。
 何をしようとしているのか、彼女だけがそれを知っている。水中にある彼女の「股間」に「指令」が出される。それが「届いた」瞬間、彼女はわずかに「身震い」した。そして――。

――シュイ~!!!

 アルテナの「股間」の周囲に、新たな「水流」が加えられる。わずかに違う「色」の「液体」はやや「温かく」、確かな「匂い」を持っている。けれどそれもすぐに周囲の「水」と同化し、立ち消え流され分からなくなる。

 アルテナは「水中」で「排尿」をしていた――。
 
 あるいは「人としての『禁忌』を犯している」という実感がある。不用意に「自然」を「汚す」というその行為に、アルテナは少しばかりの「罪悪感」を抱くのだった。だがそれもあくまで「建前」であり、決して人に知られてはならないがけれど決して人に知られることはないというその「安堵」と、何より行為自体のその「解放感」と「快感」の前では、いかなる「理性」すらも文字通り「押し流されて」しまうのだった。

――あぁワタクシ、このような静謐な場所で「お小水」を…。

 内心でアルテナは「自戒」する。「しゃがみ込んで」ではなく「立ったまま」でする行為に、「地面」や「便器」に打ち付けられることのない「放尿」に、まるで「お漏らし」のような感覚を抱く。だがアルテナのそれは、決して「下穿き」を濡らすこともなく、その場に留まることもない。「行為」と同時に、「汚れた」部分が「清浄」に洗い流されていく。むしろ「正規」の手順を踏んだ、「排尿行為」と呼べるのかもしれない。

 やがて「水流」が打ち止められる。アルテナは再び「身震い」をして、自らの「体温の一部」が川の中に溶けていったことを自覚した。「出したもの」はすでに遠くへと流れ去り、「出した部分」を拭う必要さえなかったが。それでもやはり「習慣」からか、あるいは「念のため」、今一度よく洗っておくことにした。
 アルテナの「指」が股間に触れる。残存する「臭い」を取り去るべく「割れ目」にあてがわれた指が「何か」に触れ「濡れる」。
「川の水」によるものではない。「おしっこ」とも違う。やや「粘り気」を帯びたその「液体」はまさしく、大いなる「生命の神秘」によるものだった。

 アルテナの「ヴァギナ」は「愛液」を溢れさせていた――。

 冷たい水中にありながらも、けれどその部分は確かな「熱」を持っていた。まるで「海底火山」のように、「温水」ならぬ「女水」を噴出していた。いや「粘度」でいえば、「マグマ」と呼んだ方が的確かもしれない。その「流体」は、それだけは――、「水中」においても「流される」ことはなく、「冷たさ」の中にあっても決して「冷やされる」ことはなかった。むしろアルテナの指がそこを「まさぐる」度、それは続々と溢れ出てきて、「ヌルヌル」とした感触をいつまでも保ち続けていた。
「愛液」が「潤滑油」となって。ますますアルテナの指は「加速」する。最初は付近に触れるだけで甘んじていたが、彼女の「探求心」はやがて「水中洞穴」の深部へと向かうことになる。
 そこは他者にとって「未知」の空間でありながらも、彼女にとっては「既知」の場所。どんな「構造」をしているのか、どこに「快楽」というべき「財宝」が眠っているのかを熟知している。「ダンジョン」と呼ぶにはあまりに「探索」の進んだ「マップ」に、けれど彼女は未だに「冒険者」としての「興味」を失うことはない。
 何度も「行き来」し、「出し入れ」し、「壁」を擦り、時に「強く」時に「優しく」、あくまで「ソロ」での「冒険」を続ける。
 それだけでは物足りずに、もう一歩の手は「洞穴」からやや離れた場所にある「双丘」へと伸びる。その「頂き」に建てられた「尖塔」を、まるで「巨人」が弄ぶが如く「コリコリ」とこねくり回す――。

 やがて「ダンジョン」に、ある「変化」が訪れた。全体が小刻みに「振動」する。アルテナは「予感」を悟った。
 本来ならば――、それが本当の意味での「探索」だとしたら。紛れもなく危険の「兆候」であり、まさしく「危険信号」に他ならない。いかなる深部にいようとも、目指すべきは「出口」であり。何をおいても真っ先に「脱出」を考えるべきである。
 だがアルテナはそうしなかった。彼女の「指」はあくまで「中」に留まったまま、来るべき「衝撃」に備えるべく――むしろここにきてより「激しく」、「探求」を続けるのだった。
「振動」はついに、アルテナの体「全体」に波及する。アルテナは「つま先」に力を込める。そうでもしないと、とても立っていられそうになかった。そうしていても尚、足を滑らせてしまいそうだった。
――ああ、ワタクシ「逝って」しまいます…!!
 まさに「昇天」すべく、アルテナの「心」と「体」は身構えた。思わず目を閉じたアルテナの「瞼の裏」にあったのは――、まさしく「天国」と呼べる光景だった。

――ビクン…!ビクン!!

 アルテナの体が大きく揺さぶられる。突き抜けた「快感」に耐えるべく、アルテナは今一度足に力を入れて、「足の裏」で川底の「石」を掴んだ。

 徐々に「波」が引いていく。少しばかりの「感傷」を残しながらも、まるで「海」のそのように。何事もなかったかの如く、穏やかに去ってゆく――。
 アルテナは静かに目を開いた。そこにはやはり、さっきまでと同じ景色が広がっていた。だが心なしか全ての「音」が、「色」が、「明瞭」に感じられた。
 穏やかな「川の流れ」が、彼女の「火照った体」を冷まし、その「汚れた魂」さえも洗い清めてゆく――。

 出来ることならいつまでもそうしていたかった。だけどそういうわけにはいかない。いい加減「上がらないと」、あまり体を冷やし過ぎてしまっては「風邪」をひいてしまうかもしれない。それに、いつまでも戻らないとなると、彼に余計な「心配」を掛けてしまうだろう。アルテナは名残惜しさを感じながらも、そろそろ「引き上げる」ことにした。

 川から上がって、持ってきていた「布」で体を拭く。吸水性はあまり良くはなく、体はやや「湿った」ままであったが、あとは「自然乾燥」に委ねることにした。
「全裸」を終えるべく、足元の「衣類」を探る。そこで彼女は「あること」に気づいた。

――あら?おかしいですね…?

 アルテナのそばには彼女が「脱いだ」衣服がある。もちろん「脱ぎ散らかす」こともなく、きちんと「折り畳まれて」いる。
「前掛け」に「法衣」に、それから――。「あるもの」が「消失」していた。
 一番「最後」に脱ぎ、一番「最初」に着るべきものが――。

 それは「下穿き」だった。

「衣服」の間に挟んでおいたはずのそれが無くなっている。
――確かに、ここに置いておいたはずなのですが…。
 怪訝に思いながら、一度全ての衣類を広げてみたがやはりない。彼女の「装備」のうち、最も人目に触れることなく、最も「隠したい」その布だけが消えていた。
 やや「困惑」を感じながらも、けれど彼女はさほど「途方に暮れる」ことはなかった。
 アルテナはもう一枚の「下穿き」を取り出した。体を拭いた布に挟んでいたものだ。無くなってしまった方と同じ「純白」のそれ。(アルテナは主に「白」の「下穿き」ばかりを好んでいた)
 まだ「穿いていない」方のそれ。「汚れ」も「染み」もなく、まさに「純白」である「下穿き」に穿き替える。元よりそうするつもりだった。いくら体を「きれい」にしたとはいえ――、きれいにしたからこそ、「同じ下穿き」を穿くことは躊躇われた。
 当然だろう。「汗」と「おしっこ」にまみれたものをわざわざ穿き直したくはなかった。出来ることならついでに「汚れた下穿き」を洗ってしまいたかったが、無くなってしまったものは仕方がない。
 おそらく「小動物」か何かの仕業だろう。アルテナは考える。ずいぶんと「いやらしい」獣がいたものだ。だがそれにしては、あまりに「手口」が「鮮やか」だった。他の衣服は荒らされることはなく、「下穿き」だけを見事に抜き取られている。まるで最初からそれだけが「目的」であったかのように――。
 けれどそれはむしろアルテナにとって、好都合だった。もし「それ以外」もやられていたとしたら――。彼女は「全裸」でパーティの元へと戻らなければならなかった。そういう意味では何とか「最悪の事態」だけは免れ、まさに「不幸中の幸い」であった。

 服を着終えたアルテナは、元来た道を引き返す。

――それにしても…。
 アルテナは盗まれた「下穿き」について考えを巡らせる。
 いくら「理解」を持たぬ「獣」の「所業」とはいえ、「汚れた下着」――「おしっこ」まみれの「下穿き」を見られてしまったことを思い浮かべると、少々気恥ずかしかった。
 

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おかず味噌 2020/06/17 20:59

クソクエ 女戦士編「野外排泄 ~彼女の長い一日~」

――ズバン!!!

 凄まじく、小気味の良い斬撃の音色が草原に響き渡り、正面の「獣人型モンスター」を「一刀」で切り伏せる。
「成人男性」と比較しても、かなり大柄な体躯をした怪物は、

――グォォオ!!!

 と。「断末魔」とさえ呼べない醜い声を上げて、「両断」された。
 まさに「圧巻の一撃」。だが、その余韻に浸っている暇はない。蛮族の血で汚れた剣を軽く振って、すぐさま「次の敵」に備える――。

「脱色」された癖のある「長い髪」。「意志の強さ」が込められたような、鋭く切れ長の「双眸」。まるで「彫刻」の如く、目鼻立ちのくっきりとした「相貌」。
「剣」を振るたびに「躍動」する、鍛え上げられた全身の「筋肉」。その「自前の鎧」に覆われながらも尚、「主張」する女性としての「特徴」。「たわわ」に実った「双丘」、「豊満」な「瓢箪島」。それらを誇示するように、自らを鼓舞するように。あるいは単に「機動性」に特化したが故の「出で立ち」。
「額」と「肩」――、「戦闘」において「弱点」となり得る箇所だけを最低限に守り、「胸部」と「下腹部」――、女性にとって時に「武器」となり得る箇所だけを、最小限に隠した「防具」。名称としては「ビキニアーマー」に分類される、「扇情的」でやたらと「露出度の高い」その装備は――、彼女の「攻撃的」な「戦闘スタイル」を表し、自らの「剣の腕」に対する「自負」を謳ったものであった。

「ヒルダさん、後ろ!!」

 その「名」で呼ばれた彼女は、とっさに振り返る。だが、やはり「撃破」のもたらした一瞬の「油断」のためか、あるいはその名を呼んだのが「彼」であったせいか、彼女の「反応」がほんのわずかだけ遅れる。その「ほんのわずか」が、戦闘においてはしばしば致命的な「空白」となる。
 ヒルダの「左肩」に、「重い一撃」が加えられる。剣と呼ぶにはあまりに無骨で醜悪な蛮族の武器は、「斬る」というより「叩く」といった用途の方が相応しいだろう。彼女の斬撃の「流麗さ」に比べるべくもなく。けれど力任せに振り下ろされたその「攻撃」は、あくまで「打撃」としては「一級品」だった。

「チッ…!マズったか」

 ヒルダは「舌打ち」した。常人であれば、あるいは「激痛」によって「意識」を遠のかせられたとしても、何ら不思議ではない。だが彼女にとっては、その「攻撃」自体よりも「攻撃を受けてしまった自分」の方が、精神的な「ダメージ」となった。たとえ「一撃」であろうとも「反撃」を許した未熟な自分を、彼女の「プライド」は許せなかった。

 すぐに「体勢」を立て直す。痛みに怯んでいる場合ではない。もうこれ以上、彼の前で「醜態」をさらしてなるものか、と。「挽回」と「返上」を込めて、踏み込みながら剣を横に薙いだ。
 完璧な「踏み込み」だった。だがしかし、一見して「知性」の欠片も感じさせない蛮族はここで、持ち前の「戦闘スキル」を発揮した。「生存本能」、「野性的勘」と呼ぶべきものかもしれない。蛮族は斬撃の刹那、一歩身を引いたのだった。
 もちろんそれだけで斬撃の全てを躱されるほど、彼女の剣は甘くも浅くもない。当然の如く、蛮族の硬い皮膚に「一閃」が走った。汚い血しぶきが上げられる。だが、あいにく「トドメ」には至らなかった。そのことがさらに彼女のプライドに傷を付け、その精神に火を点ける。
 ヒルダはさらに「一歩」。二歩、三歩、踏み込んだ。自らの失態、その「尻ぬぐい」をするように――。

 突然、蛮族の全身が「炎」に包まれる。
「火のない所に煙は立たぬ」ならぬ「煙のない所に『火の手』が上がる」。彼女の気迫が起こしたものではない。それは紛れもなく「魔法」によるものだった。
 ヒルダは振り返る。背後の敵ではなく「味方」のいるであろう方向を――。そこには、安堵したように笑う「勇者」の姿があった。


 そこからさらに、三体の同種族モンスターを倒し、今度こそ本当の「勝利」が訪れる。
 美しい草原の風景に散らばった醜いモンスターの死体から、「戦利品」ともいうべき「物資」と「魔石」を剥ぎ取る。これらを「加工」し、あるいは「換金」することで、彼らはそれを旅の「資金」へと替え、自らをさらに高めるための「装備」へと化す。

「――ったく、ロクなもん持ってねえな!」
「戦闘後」の「ルーチンワーク」をこなしながら、ヒルダは毒づく。今回の「戦利品」の内容は、あまり労力に見合ったものではなかったらしい。苛立ち混じりに、八つ当たりするように、モンスターの「亡骸」を足で蹴る。だが彼女が苛立っているのはその「徒労」にではなく、やはりこの程度の戦闘に徒労を感じてしまった自分自身に対してだった。

――この程度のモンスター、アタシ「一人」でだって…。

 彼女は思う。それは決して「傲慢さ」によるものなどではなく、かつての彼女であればいかに「謙虚」に見積ったとしても、確かな事実であった。

「ヒルダさん、大丈夫?」

 彼女の身を案じて、一人の「人物」が駆け寄ってくる。

「少年」のように小柄な体。男性であるにも関わらず、その「背丈」は女性である彼女に遠く及ばず、「頭」数個分も低い。正面から相対したとき、ちょうど彼の「顔」の位置が彼女の「腰」の高さに相当する。
 彼女と同じく「剣」を扱う「職業」でありながら、その手足はまるで「小枝」のように細く、あるいは「少女」を思わせる「華奢さ」を醸している。
 だが、その背に負った「しるし」はまさしく「選ばれし者」の「証」であり、彼の矮躯に不釣り合いな、およそ自身の「身の丈」とも等しいその「大剣」は、あるいは彼自らが「背負い込む」と誓った「使命」の大きさを比喩しているようだった。
 一見して「童子」のように思える、実際「年頃」としても「童」である彼こそが、この「パーティ」の「リーダー」であり、「魔王打倒」の「切り札」でもある、紛れもない「勇者」なのであった。

 彼は、本当ならば「戦闘後」すぐにでも彼女の元へ駆け寄りたかったのだが――。彼女のただならぬ「気配」と冷めやらぬ「殺気」を感じ取って、何となく近づき難さを抱いていた。それでもやはり「仲間」への「心配」を抑えることができず、今こうして遅ればせながら彼は駆け寄ってきたのだった。

「平気さ、これくらいのキズ!」

 彼女は答える。「何でもないさ」と気丈に振舞ってみせる。だが、それは「はったり」だった。いくら「重症」でないとはいえ、とても「軽傷」と呼べるものではない。気を張っていた「戦闘中」はそうでもなかったが、気の緩んだ「戦闘後」になって、徐々にその「傷」が痛みだしてきた。「ズキズキ」と鈍い痛みを、肩に感じ始めている。

「アルテナさ~ん、お願いします」

 彼は呼ぶ「忌むべき名」を。「もう一人」の「パーティ」である「仲間」の名を――。自分とは「正反対」の属性を持つ、「彼女」の名を――。

「はいはい、そんな大声で呼ばずともワタクシは『あなた様』のすぐ傍にいますよ」

 まさしく、彼のすぐ「傍ら」から姿を見せたのは――、「僧侶」のアルテナだった。

「染色」された、まっすぐな長い髪。温厚さを、あるいは「慈悲深さ」さえも思わせる、垂れ下がった「眉尻」。「気品」を感じさせる、穏やかな表情。
「武器」を振り回すには決して似合わない、細い腕。その手に握られているのは「殺し」の「道具」などではなく、「救い」の「祭具」。「剣」ではなく「杖」。
「身」も「心」も、まさしく「神」に捧げたものであるらしく、その「肌」を不必要に「人前」に晒したりはしない。その全身は「濃紺の布」で隠されている。
 それでも。なだらかな「法衣」の上からでも隠し切れない、女性的な「起伏」。全身を覆っている、だからこそ余計に「主張」される、その「布」の奥にあるもの。それこそが男性を「迷える子羊」にさせるとも知らずに、あくまで気づかないというフリをして。

 同じ「種族」。同じ「性別」。だが、どこか違う。彼女にあって、自分にはないもの。似通った「凹凸」を持ちながらも、その魅力はまさに「正反対だ。自分のそれが「強さ」だとすると、あるいは彼女のそれは「弱さ」。「庇護欲」を駆り立てる「か弱さ」。世の男性が異性に求める、身勝手な「印象」。「剣士」である自分が最も疎むべき、それこそが「女性らしさ」と呼べるものだった。
「自分」と「彼女」。そのどちらに多くの男性が「夢見る」かは知っている。「淑女」と「筋肉女」。果たしてそのどちらを自らの「傍ら」に侍らせ、生涯の「伴侶」として選ぶのか、その答えは分かりきっている。そして、あるいは「彼」としても――。

――はぁ~。

 彼に呼ばれたアルテナは、ヒルダの負ったその「傷」を見て、呆れ果てたというように長い「溜息」をついた。

「後先考えず獣のように突っ走るのは、いい加減お止めになってはいかがでしょうか?」

 優しげな声音。あくまで穏やかな口調。諭すように、まるで稚児に言い聞かせるように彼女は言った。

――チッ…!

 またしても、ヒルダは「舌打ち」をした。だが今度のそれは自分にではなく、まさしく相手に向けられたものであった。

「どっかの『足手まとい様』が、戦いもせずに『後ろ』でコソコソやっているからさ!」

 最大限の「皮肉」を込めて、ヒルダは言い返す。

「あら。ワタクシの『役割』は、あくまで『回復』と『サポート』ですよ?」

 悪びれる様子もなく、アルテナは答える。

「もちろんそれも、『神命』あってのものですが――」

 そう言ってアルテナは、ごく自然な仕草で「勇者」に擦り寄った。自らの腕を絡ませ、彼の腕に豊かな「膨らみ」を押し当てる。
 彼女にとっての「神」はどうやら、随分と「身近」にいるらしい。「従者」の心構えとしては、あるいは正しいのだろう。だが、彼女のあまりの「俗物ぶり」に嫌気が差した。

「アンタはせいぜいその有難い『神様』とやらの、言いなりにでもなっているがいいさ」

 吐き捨てるように、ヒルダは言う。それもまた「俗的」な発言に違いなかった。

「我らが『神』を冒涜なさるおつもりですか?」
「だとしたら、ワタクシとしても心穏やかではいられませんよ?」

 声を荒げるでもなく、あくまで平静な口調でアルテナは言う。

「『ボウトク』なんてしちゃいないさ!」
「ただ、アンタのその『シンジン』とやらが如何なもんかって言ってるだけさ!」

 別にヒルダとしても、「神」を貶めるつもりなどは毛頭なかった。熱心に「信心」こそしないものの、決して蔑ろにする気はなかった。ただ問うただけだ。売り言葉に買い言葉で、口をついてその文句が出てきただけだ。

「今度はワタクシの『信仰心』までも。一体アナタはどれだけ――」

 さすがのアルテナも、いよいよ「心穏やか」ではいられなくなってきたらしい。言葉に「感情」が込められる。ヒルダとしては望むところだった。彼女の「反論」を想定して、自らも「反撃」の「刃」を備える。だが――。

「もう~、二人とも!喧嘩はダメ!!」

 畏れ多く、何人も近寄りがたい「龍虎の戦い」に割って入ったのは、やはり「勇者」の名を冠する者だけだった。無謀にも、彼はその「争い」に身を投じるわけでもなく、ただ「諍い」の無為さを説く。「怒る」のではなく「叱る」ことで、その場を収めようとする。まるで「大人」であるかのように。自らが「子供」であるにも関わらず。
 少なからずの不満を抱えながらも、二人は留まるしかなかった。まさに「鶴の一声」。だがその声はどちらかといえば、「小鳥の囀り」にも似ていた。それでも両者は互いに、振りかざし掛けた「拳」と「言葉」を渋々ながらも静かに下ろすのだった。

「勇者」であるという彼の「身分」がそうさせたわけではない。「リーダー」の「命令」だから、というのとも違う。たとえそんな「地位」などなくとも、彼女たちはあくまで表向きは素直に従っただろう。それは彼女たちと彼との「関係性」が、彼女たちが彼に抱く「密かな想い」がそうさせるのだった。

 何となく「気まずさ」のようなものをヒルダは感じた。「子供」が叱られたときに抱く感情だった。そして「大人」であるからこそ余計に、その感情はより強く彼女の中で発露するのだった。彼女は立ち上がろうとする。

「どちらに行かれるのですか?」

 アルテナが声を掛ける。「不戦勝」の気配を感じ取ったような余裕の表情で。

「別に…。なんでもねえよ!」

 苛立ち混じりにヒルダは答える。だがそれは「答え」になっていなかった。
「敵前逃亡」。自らに課したその「禁忌」を、自ら破ることに躊躇いを覚える。だが、「戦い」を禁じられたとすれば致し方ない。あとは従う他ないが、彼女の「矜持」はそれを許さなかった。であれば、あとに残る道は「逃げ道」だけだった。
 だが、わずかに残されたその道さえも彼女は閉ざされる。やはり、他ならぬ彼によって――。

「ダメだよ。ちゃんと『回復』してもらわないと」

「勇者」はヒルダの腕を掴んだ。か細い腕。その気になればいくらでも振り払えそうな、非力な握力。だが、そこに彼の真剣な「眼差し」が加わることで、まさに「真剣」を向けられたかの如く、その場から身動きできなくなった。
 いや、それが真なる「剣」であれば、いかに強者や達人のものであったとしても、彼女は臆することなく「太刀向かう」ことができていただろう。けれど、たとえ虫を殺すことさえできない、殺気の籠らない「刃のない剣」であろうとも、相手が彼であるとしたら、もはや彼女に「太刀打ち」はできなかった。

 彼に「触れられた」腕が、「熱」を帯びる。頭の中が、胸の奥が「じん」と疼く。股間が、その部分にあてがわられた「下穿き」の中が「じゅん」と湿る。
「切ない」ような、どこか「懐かしさ」さえ覚える、その感触――。
 ヒルダが「戦士」として、初めて臨んだ「戦闘」。「敵」に対する「恐怖」から、意図せず「尿道を緩ませた」ことによる「失禁」。「下穿き」の中が「水流」に満たされ、やがて大地を穿つ。後に残された「羞恥」すべき「染み」。それとは違う。
 やがて「戦士」として、いくつもの「戦闘」を経たのち。「強敵」との邂逅によって、自らを昂らせたことによる「興奮」。それにも似ているが、やはりそれとも違う。
 もっと「熱く」、あるいは「優しい」感触に。彼女は思わず一瞬、戦士であるという、自らの存在理由すらも忘却していた。
 
「アンタがそこまで言うなら…」

 ヒルダは立つのを止めて、その場に留まった。「しょうがない」というように、彼の「指示」を聞き入れ、あくまで「お願い」として受け入れることにした。
 ヒルダは負傷した肩の「防具」を外し、「患部」を晒した。自らの「弱点」であるその部分を、「味方」である彼女に見せた。
 アルテナは、ようやく「自分の出番だ」というように――。やはり、彼女にとっての「存在理由」である「杖」を握り直し、その先端をヒルダに向けてかざした。

「汝、『救い』を求めなさい。たとえそれが『艱難辛苦』の茨の道であろうとも、その『歩み』を終えることなく、ただひたすらに『願い』続けなさい――」

 アルテナは「詠唱」を始める。やがて「杖」の先が「光」を帯び始める。「神秘的」で、ある種の「荘厳さ」を思わせる、紛れもない「魔法」の色。そして――。

――ヒーリング!!

 杖の先が、彼女の体が、淡く照らされる。周囲が、優しい色に包まれる。
 すると。まるで「奇跡」が「伝播」したように。まさしく「魔力」が「伝染」したかの如く。ヒルダの「傷」が少しずつ癒えてゆく。徐々に「傷口」が塞がり、やがて消えゆくことで、それと共に「痛み」さえも和らいでゆく。
「回復魔法」。選ばれた「職業」の者にしか扱えない、それはまさに「奇跡」とも呼べる代物だった。

 やがて。ヒルダの「肩」を覆った、「杖」からもたらせられたその「光」が、失われてゆく。それはアルテナが自らの「役目」を果たし、「使命」を終えたことを意味する。

「はい。終わりましたよ」

 アルテナはまるで「聖母」のように微笑んだ。決して認めたくはないが、今この瞬間に限っては、紛れもなく彼女は「ひれ伏すべき存在」であった。

「すまない…ね」

 ヒルダはあくまで「謝意」ではなく、「謝罪」をもって「礼」に代えた。それでも彼女なりの精一杯の「譲歩」だった。
 これにて「一件落着」。真の意味で、戦闘を終えたこととなる。
 だが。ヒルダにとってはもう一つ、済まさなければならない使命が残されていた――。

「魔法」とは、まるで「万能の能力」であるように思われるけれど。それが「人の手」によってもたらせられる以上、どうしたって「完全な奇跡」とはいかない。その「強大」な力を得るため、「鍛錬」と呼ぶべき「修行」が必要なことは言うまでもないが。それを「行使」する上で――、「術者」において「魔力の消費」はもちろんだが、それだけではなく。「行使された側」、つまり「奇跡を与えられた側」においてもやはりその「代償」は付きものであり、それを避けることはできないのだ。

 ヒルダは「下腹部」に、鈍い「違和感」を覚えていた。「回復」とは、魔法によって「のみ」与えられるものではなく、本来人体にも当たり前に備わっている「機能」だ。「魔法」を使わずとも、適切な処置(「消毒」や「固定」)をして、そのまま「安静」にしていれば、いつかは「回復」するものだ。
 つまり。「回復魔法」のもたらす「効果」というのは、いわばその本来人体に備わっている機能を「活性化」させ、「促進」し、それを「加速」させることに他ならない。
 換言するならば、「新陳代謝」の「活性化」。だからこそ、そこにはどうしたってある「副作用」が付きまとうことになる。
 とはいえ、やはりそこは「魔法」であり、全ての「代償」を「当人」が受けるわけではない。術者の「魔力」も当然「消費」する。いわば痛み分けに等しい。
 即座に「消化」が促されるわけではなく、「老い」を早めることにもならない。わずかに「髪」や「爪」が伸びるとも言われるらしいが、その「変化」は微々たるものだ。
 それでも。やはり「きっかけ」くらいにはなり得る。自らの「体」に現れる「兆候」に、気づくだけの「理由」にはなる――。

 ヒルダは再び、その場から立ち上がった。二人は怪訝そうな顔をする。だが、彼女が「役目」を果たしたように――、自分もまた暫定的な「義務」は終えたのだ。あとは好きにさせてもらうことにする。
 ヒルダはその場から立ち去ろうとした。颯爽と、彼女本来の「クールさ」を取り戻すようにして。自らの「目的」を告げることなく。「弱み」を見せることなく。だが――。

「どこ行くの?」

 無情にも声が掛けられる。彼女の背中に彼は呼び掛ける。ヒルダは立ちどまった。苛立ち混じりに、彼の察しない言動を咎めるように。彼女は振り返った。そして、意を決して口を開く。

「『便所』だよ!!」

 彼に報せたくなかった言葉を、知られたくなかった「生理現象」を告白する。それは、ある種の「開き直り」だった。

「『ついて来る』ってなら、別に構わないけどさ」

 そう言って、ヒルダは「挑発的」に口元を歪める。試すように彼の「羞恥」を煽ることで、自らの「羞恥」を覆い隠す。
 彼女のその「挑発」に、彼が応じることはなかった。「パクパク」と不器用にも口を「開閉」しただけだった。その「反応」は彼女にとって、少なからず「予想通り」のものだった。アルテナが露骨に、嫌そうな顔をする。

「まったく。何と、『下品』な…」

 嘆くように、軽蔑を込めて彼女は言う。だがその「蔑み」も、ヒルダにとってはむしろ心地良いものであった。これにて「意趣返し」は成った、とあくまで間接的にではあるが「卑怯な勝利」がもたらせられた。
 もはや、ヒルダを止める者はいなかった。彼女は悠々とその場から歩き去り、拓けた「草原」の隅の、拓けていない「草影」を探した。自らの「使命」を果たすために。「用」を足すために――。

「パーティ」から離れること、しばらく――。ようやく、丁度いい「場所」が見つかる。それなりに背の高い「茂み」。身を隠し「用」を済ませるには、うってつけだった。

――よしっ!ここなら…。

「仲間たち」の居る場所から充分に「距離」もある。故に「音」を聞かれる心配はなく、「臭い」だって届きはしないだろう。
「旅をする者」にとって「野外排泄」は付きものだ。それはどうしたって仕方のないことなのだ。だがそれでも、彼女にも「羞恥心」というものはある。さすがにその「行為」を「観察」されることはもちろん、たとえ「間接的」であってもその気配を「観測」されることは憚られた。
 だが、ここまで来ればその心配もない。存分に、「事」に臨むことができる――。

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おかず味噌 2020/04/02 08:47

短編「不動産レディの着衣脱糞」

ハンドルを握りながら、文乃の脳は「フル稼働」していた。
「もうすぐ着きますよ~」
 脳内の激しい「情報処理」とは裏腹に、軽やかな口調で文乃は言う。声を向けた先は、後部座席に座る「若いカップル」だった。
「へぇ~、この辺だと駅からも近そうだな」
 彼氏の方が言う。
「はい、今回紹介させて頂く物件は『駅から徒歩五分』となっています」
 文乃は答える。事前に見せた「物件情報」に載せられた、そのままの文句だ。
「徒歩五分だってさ!」
 まるで初めて知らされた情報であるように、男は大袈裟に驚いてみせる。
――だから、最初からそう言ってるじゃない…。
 そもそも「駅からなるべく近い方がいい」と条件を掲示してきたのは、そっちの方じゃないか。無意味なやり取りに辟易させられつつも、もちろん表情には微塵も出さない。「プロ」として当たり前のことだ。
 それにしても、一体何度同じようなやり取りをさせれば気が済むのだろう。男の理解力の無さに嫌気が差してくる。こんな男と付き合っていると、日常的にイライラさせられてばかりだろう。だがそれでも客として、「彼氏」の方はまだマシなほうだった。
 問題は「彼女」の方だ。

 文乃はルームミラー越しに、ちらりと「彼女」の様子を窺う。女は相変わらず、不機嫌そうに窓の外を眺めている。彼氏の感嘆には決して同調しようとしない。
 文乃は思わず、ため息をつきたくなる。
 楽観的でいちいちリアクションの大きい彼氏と、現実的で冷静な彼女。あるいは「お似合いのカップル」であり、普段の彼らはそれでうまくバランスが取れているのだろう。だがそんな事、文乃にとっては知ったこっちゃない。
――今日こそは、決めてもらわないと!!

 文乃がこのカップルと会うのは、今日で三回目だ。最初に彼らが店を訪れた時は「しめた!」と思った。若いカップルは春から「同棲」をするつもりらしく、そのための物件を探しているらしかった。
「当初」の条件としては最低でも「2DK」で、予算は特に決まってないらしく、けれどなるべく安い方が良いらしい。文乃は早速いくつかの物件情報をパソコンで呼び出し、それらを順番に説明していった。頭の中で「仲介手数料」を計算し、今月課せられた「ノルマ」と照らし合わせた。雲行きが怪しくなり始めたのは、その時からだ――。

 彼氏の方は、文乃の説明にいちいち「へぇ~」とか「なるほど」といった反応を示した。それに引き換え、彼女の方はじっと黙ったままで、良いのか悪いのか判然としない無表情を浮かべているだけだった。
 その時の文乃の「彼女」の印象は、「物静かで大人しい娘」というものだった。自分では何も決めれずに、ただ周囲が判断してくれるのを待つ。きっとこれまで彼女はそうやって生きてきたし、これからも生きてゆくのだろう。文乃には理解できない「生き方」だったが、自分の仕事としてはやりやすい。そう悟った文乃は、途中から主に彼氏の方に向けて説明をすることにした。そして、彼氏が最も好反応を示した物件へ「内見」に行くことになった。

 内見をしている時も彼氏の方は相変わらず好感触で、文乃が部屋のドアを開く度に、備えつけられた機能を紹介する度に、「おぉ~」と感嘆の声をあげていた。その間も終始無反応な彼女を、文乃は半ば無視していた。
 そして、ついに彼氏が「この物件にします!」と契約を宣言する時になって、そこで彼女が重い口を開いた。
「待ってよ。そんな簡単に決めていいの?」
 その厳しい口調は、これまでの物静かな彼女の印象を逆転させるものだった。そこから、彼女の怒涛の追撃が開始される。
「てか、ここ駅から遠すぎない?私、駅から近い方が良いんだけど」
「この広さで『七万』ってのもちょっと高すぎる気がするんだよね」
「それに、ここ『木造』ですよね?」
 彼女の「追及」はやがて文乃にも向けられる。
「はい…、でも『木造』といっても『耐震』はきちんとされていますよ」
 文乃はマニュアルに沿って答えた。けれど、彼女が気に掛かっているのはそこではないらしい。
「『木造』だと、音響きますよね?」
「はい…、まあ『鉄筋コンクリート』と比べると多少は、でも――」
「ほら、やっぱり!!私、隣の人の声が聞こえるのとか嫌だからね?」
 どんな昭和のアパートを想像しているのだろう。「○○荘」など、売れない漫画家が住む「重要文化財」とでも勘違いしているのではないだろうか。
「さすがに、よほど隣人の方が騒がれない限りそんなことは――」
 文乃の説明を遮って、彼女は言う。
「もっと、違う物件も見せてもらえます?」

 そうして、文乃と若いカップルの「長い付き合い」が始まった。彼女が溜め込んだ「意見」を述べる中、今度は彼氏の方が「借りてきた猫みたいに」大人しくなっていた。本当に良いバランスだ。文乃は皮肉まじりにそう思った。

 これで、内見に回る物件は「八件目」になる。
――さすがにもう決めないと。
 文乃は心の中で決意する。だが決意してみたところで、結局は「お客様次第」なのだ。彼女が首を縦に振らなければ、この「内見地獄」はいつまでも続くことになる。そして「いい加減、早く決めてくれ」なんて、文乃の立場ではそう強くも言えない。彼女の気分を害し、「じゃあ、他の不動産屋で探します!」という事態にもなりかねない。不動産屋は他にいくらでもあるのだ。
 文乃は改めて今月の「ノルマ」を思い浮かべる。もしそれを達成できなければ――、上長から「叱責」を浴びることはほぼ確定だし、文乃自身の「成績」と「評価」にも大きく影響する。
――今月中に、このカップルの契約さえ取れれば…。
 それでなんとか、今月の「ノルマ」には届きそうだ。文乃はようやく「胃痛」から解放され、健全な睡眠を迎えることができる。
 ハンドルを握る手に、力が込められる。「今日こそ、決めなければ」と文乃は決意を新たにする――。

 駐車場に「社用車」を停める。数度の切り返しだけで、見事に「駐車」してみせる。「女はバックが苦手だ」などという非論理的な意見に、文乃は真向から反論する。それは文乃のアイデンティティにも関わる問題であり、「男には負けたくない」という彼女のキャリアウーマンとしての「プライド」から来るものでもあった。
 店から持参した鍵をもって、玄関の鍵を開ける。文乃が自らの「異変」を感じたのは、まさにその時だった――。

――ギュルルル…!!
 突如、腹部が悲鳴をあげる。それが「空腹」から来る叫びでないことはすぐに解った。それよりもっと下、それは「大腸」から届く叫びだった。
――どうして…?
 文乃の脳裏にまず浮かんだのは、そんな「疑問」だった。どうして急に――、どうして今この時に――、という「不可解さ」だった。
 次に文乃は、今日の自分の行動を振り返ることにした。今は午後二時過ぎ。今朝はいつも通り七時に起きて、朝食は――「ヨーグルト」と「食パン」を食べ、「オレンジジュース」を飲んだ。定時より少し早めに出勤し、今日会う事になっている顧客の資料をまとめ、昼食はコンビニで「サンドイッチ」と「トマトサラダ」を買って食べた。
 文乃は考える。今日口にしたそれらの内、どれかが傷んでいたのではないかと。
「腹痛」にいくつかの種類があることを、文乃は経験上、実体験として知っていた。いわゆる「生理的欲求」から来るもの。女性特有の――それがあるから女は男に比べて、そのキャリアにおいて大きな「ハンデ」があると決めつけられている――もの。そして、今感じているそれは、紛れもない「下痢」から来るものだった。

 まず文乃が第一の「容疑者」として挙げたのは、「ヨーグルト」だった。その理由は「乳製品だから」という、食品からしてみればやや理不尽なものだったが、それもまた紛れもない事実である。
 文乃は今朝食べた「ヨーグルト」の味を可能な限り思い出してみた。それは文乃がいつも買うメーカーのものと同じもので、買う時にも食べる前にもちゃんと「賞味期限」は確認したはずだ。味もいつも通りで、酸っぱかったりすることもなかった。
 続いて文乃の捜査線上に浮かんだのは、いわゆる「生もの」だった。その理由もまた「傷みやすい」という、経験上あるいは伝聞情報による事実だった。
 だがそうなると、「容疑者」の範囲はかなり広がることになる。「魚介類」こそリストにはないものの、「サラダ」の中に含まれる「野菜」は全てがそうだし、「サンドイッチ」の具である「ハム」や「卵」なんかも栄養学上の分類では違うが、広義の意味では「生もの」である。
 そしてそれを言い出すなら、文乃は今日口にした食材全てを「容疑者」の範囲に含めなくはならなくなる。だが少なくとも、文乃の体感としてはどの食品も「無実」である気がした。(「動機」や「アリバイ」については、その限りではないが)

「外部」からの「異物」の「侵入」でないとするならば。その原因は文乃自身の「内部」にあることになる。そして、文乃には少なからずその「心当たり」があった。
 それは「ストレス」によるものだ。
「ストレス」と「腹痛」、あるいは「下痢」における因果関係が医学的に証明されているのかは分からないが、恐らく間違いなく関係はあるだろう。
 特にここ最近の文乃は、課せられた「ノルマ」を達成できないという焦燥から、度々「胃痛」を感じていた。(「下痢」になったことはないが)
 だとしたら、今の腹痛の原因は紛れもなく「ストレス」によるもので、その「ストレス」の原因は間違いなく、今後方にいて、呑気にも新居への期待に胸を膨らませる「カップル」にある。
 文乃は自分の体調さえも悪化させ、「生殺与奪」の権利さえ握るカップル(主に彼女の方)を恨めしく思いながらも、もちろんそんな感情を面に出すわけにはいかなかった。

 室内に一歩足を踏み入れると、例の如く彼氏の方から感嘆の声が上げられた。彼女の方は黙り込んでいる。それもまた、いつも通りだった。
「こちらが『リビング』兼『キッチン』になります」
 慣れた口調で、文乃は説明を始める。「ルーティーン」に入ったことで、文乃の腹痛は一時的に収まりつつあった。
――とりあえず、早く「内見」を済ませちゃおう。
 いつまた「波」が訪れるかは分からない。「トイレ」に行けるのはどんなに早く見積もっても、店に帰ってからだ。少なくとも、あと二、三十分は我慢しなくてはならない。
「キッチンは『IH』になっているので、掃除もお手軽になっています」
 文乃は続いて、キッチン設備の説明にうつる。そこで初めて――今回の内見のみならず、これまでの全ての内見において初めて、彼女の方が好反応を見せた。
「へぇ~、これなら私が料理しても大丈夫だね」
「IH」じゃなきゃ料理しないつもりかよ?というツッコミはさておき。これなら今回こそはいけるかもしれない、と文乃の中で期待が高まる。
「はい!よくお料理をされるなら、かなりオススメですよ!」
 文乃の説明にも力がこもる。「どうせ、滅多に料理なんてしないくせに。得意料理はパスタにレトルトの具をかけたものですか?(笑)」などとは言わない。
「良いかもね!どう?」
 彼女の方から初めて、彼氏に向けてポジティブな意見が発せられる。それに対して彼氏の方はもちろん、「良いじゃん!」と同調する。文乃はいよいよ契約成立の「足音」を感じ始めた。あとは「足早」に、なるべく「手短」に他の部屋の説明を済ませてしまおう。その時文乃は自分の「腹痛」のことなど、すっかり忘れかけていた。あくまでそれが「一時的」なものであるとも知らずに――。

「続いては、こちらの部屋です」
 文乃が自分のテンションに任せて、ドアを開いた瞬間――。
――ギュルルル…!!
 再び、「腸」が雄弁に語り始めた。さっきよりも激しい悲鳴。今すぐ「トイレ」を切望したくなるようなものだった。
 文乃は思わずお腹を押さえて、「前屈み」になってしまう。本当なら今すぐにでもうずくまってしまいところだが、文乃の「理性」とキャリアウーマンとしての「プライド」がそれを拒否し、「括約筋」をもって踏みとどまる。
「こちらは…『六畳』のお部屋になります」
 幸い、カップルたちには「異変」を悟られていないようだ。文乃はほっと胸を撫でおろす。まさか自分が「腹を下している」なんて、勘付かれるわけにはいかない。
「『二部屋』」の内、こちらは少し狭い方のお部屋になりますが、その分『収納』はかなり大きめの設計です」
 文乃は「長所」を強調する。その言葉は文乃の口から半自動的に流れた。
「私、服多いから助かるかも~」
 ここでも、彼女の方は好感触だった。どうやら、こっちの部屋が彼女の部屋になるらしい。彼女はクローゼットを開け、そこに自分の「衣装」が並ぶのを想像しているようだった。文乃としては気に入ってくれたのは嬉しいが、早く他の部屋の紹介にうつりたかった。

 ようやく彼女の部屋の検分が終わり、続いて必然的に彼氏の部屋になるであろう部屋へ向かう。その数歩の間にも、文乃の腹痛は決して治まることはなく、むしろ時間と共にその「波」は増すばかりだった。
 文乃は部屋のドアを開ける。その手以上に下半身、主に「尻」に力を入れながら。
――もうちょっとだから。まだ耐えて。
 文乃は自らの括約筋と「肛門」に懇願する。
「こちらのお部屋は『七畳』で、しかも『ロフト』が付いています」
 文乃の説明は、いよいよ「大詰め」を迎える。この部屋の紹介が終われば、あとは「風呂」と「トイレ」というごく当たり前な、必要最低限の設備の説明を残すのみで、それらは半ば惰性で済ませることができるだろう。この部屋の紹介、主に「ロフト」についての紹介こそが肝要なのだ。

「『ロフト』付きってすげぇ~!!」
 案の定、彼氏が分かりやすくリアクションを取る。ここは「君の部屋」になるんだから、無理もない。だが、そこで彼女が――。
「へぇ~、『ロフト』に私の荷物置けるじゃん!」
 と言った。「いや、一体どんだけお前の荷物あるんだよ?てか、二部屋ともお前が使う気か?彼氏の部屋は「廊下」ですか?(笑)」などという皮肉はもちろん胸の奥に閉まっておくことにする。文乃は段々と、このカップルの扱い方が今さらながら解ってきた気がした。
「そうですね。『ロフト』を収納に使われる方も多いですよ?」
 文乃はツッコミをスルーして、彼女に呼び掛ける。彼氏の意見などお構いなく、あくまで顧客を彼女の方に限定する。だから、そこで彼女の方からもたらせられた「ある不安」に対しても、文乃は自らの「体」を使って実証してみせる。
「でも『ロフト』って、上り下り危なそう」
 彼女は言う。女性の「身体能力」が男性に比べて著しく劣っている、とでも言いたいのだろうか。だからこそ、文乃は自ら実践することでそれを否定することにした。

「そんなことないですよ。『女性でも』簡単に上り下りできます」
 文乃はロフトの「梯子」に手を掛けた。「女性でも」という言葉は不本意なものであったが、それも「入居者」の不安を解消させるためには致し方ない。
 文乃は自ら「梯子」を上ってみせる。文乃は「パンツスーツ」を履いていて、下からの「視線」を気にする必要はない。一段目、二段目、三段目と梯子を上っていき、そして「四段目」に差し掛かったところで――。

――ブチッ!!

――えっ…!?
 文乃の「尻」から「破裂音」が発せられた。力んだことによる、紛れもない「それ」だが、文乃はその「音」の原因を転嫁する。
「ちょっと、梯子が傷んでるのかもしれませんね…」
 決してそんな「音」ではなかったのだが、文乃はありもしない物件の「瑕疵」を装うことで、何とか「緊急」の事態を回避する。
「入居までには、きちんと修理するよう言っておきますね」
 文乃は言う。ここまで来て「欠陥」が見つかったかのように振舞うのは、文乃にとっても大きな「賭け」であったが、それでも自らの「瑕疵」を露呈するよりはずっとマシだった。幸い、未来の「入居者たち」は、「音」の原因を設備による「欠陥」だと思い込んだらしく、「本当にここ大丈夫~?」と薄ら笑いを浮かべつつ、あまり「大事」とは感じていない様子だった。
 文乃はとりあえず安堵する。だが、文乃の「緊急事態」はそれだけには留まらなかった――。

文乃は、ショーツの中が温かくなるのを感じた。「異物感」というほどではないにせよ、そこには確かに「違和感」があった。
 文乃は「放屁」をしてしまったのだと思い込んでいた。だが、そこから出たのは「ガス」のみではなかった。「気体」より質量をもった「液体」にも似た「固体」が発射されたのだ。
 文乃はショーツの中に少しだけ「下痢便」をチビってしまったのだ。ほんの「少量」だけ、「お漏らし」と呼ぶほどのものではない。それでもショーツの中に甚大な「被害」が及んでいることは確実だった。
――どうしよう…。
 文乃の不安は継続していた。ショーツの中に「温かみ」を感じながら、文乃の当面の怪訝は、その被害が「パンツスーツ」にまでも及んでいないかというものだった。
 梯子を上り終えた文乃は、こっそり「尻」の部分に手をあてがう。「大丈夫、濡れてない」、文乃はスーツの「生地の厚さ」にこれほどまでに感謝したことはなかった。
「ほら、女性でも簡単でしょう?」
 文乃は自らを「被験体」として、証明してみせる。女性だって、それほど「非力」な存在ではないのだと、自らの身をもって体現してみせる。自分の下着の中が「女性」として、「大人」としてあるまじき「失態」を含んでいることを悟らせずに――。

「『ロフト』良いかも!」
 文乃の「体を張った」パフォーマンスの成果もあり、彼女が認めてくれる。「契約成立」もいよいよ目前だ。
 問題は、どうやってこの「梯子」を下りるか、だった。それ自体はそれほど難しいものではない。文乃は「高所恐怖症」ではなかったし、高い所はそれなりに平気だった。あるいはそれも、「女はすぐに怖がる」という大衆の意見に対抗したものなのかもしれない。
 だが今の文乃は、それとは別の「問題」を抱えていた。すなわち、上る時と同じような「失態」を繰り返してしまわないか、という不安だ。
――これ以上「漏らして」しまったら…。
 さすがにショーツの「許容量」を越えてしまうかもしれない。そうなってしまったら――、文乃の「おチビり」が白日の下に晒されてしまう。それだけは何としてでも避けなければ――。

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