ぶるがり屋 2016/04/11 15:08

結構前の へうげもの 感想 2016年 3月第5週

あらすじ

 倒れた徳川家康は、己の死期を悟り、争いのない時代の為、学、政治意識、数寄のない時代を目指す。
そんな中、俵屋宗達は、新しい美を産もうと命を賭ける。
数寄の時代が終わりゆく中、新しく咲く数寄の花か。


へうげもの(21) (モーニング KC) コミック

山田 芳裕
講談社
2015-12-22

感想

 ああ、徳川家康も老いたのだなぁ…
今まで顔や髪の毛は老いても筋骨隆々だったのに、今回は骨と筋ばかり浮き出て、痛々しいですよ。
医療も部下の話を聴くだけで自分流の薬草だけを採用と、心も硬くなってしまっているのですね。
 同じく老いて友がいないと閉じこもり周りを遠ざけた豊臣秀吉よりも、痛々しく危うい、権力者の結末に感じます。
そしてその焦りから進める愚民政策。
民主主義万歳の私からすると噴飯ものですが、家康の好んだ数寄って国造り、都市造りなのですよね。
まず出来る、やる人間が居ないので、楽しさを共有したり話したりも出来ない、孤高の数寄。
せめてこの場に後継の秀忠や家光を呼んでいればまだ分かるのですが…
もう、袋小路だなぁ。

 そんな、数寄の世が終わるかもしれない時代に、目覚める俵屋宗達。
その新しい美はー
はーい、私の予想外れました!(笑
金地に赤の一点、ではなく。
自ら操作した、究極の「滲み」。
中国の水墨画も随分と滲みがあると思うのですが、あれよりもっと意識的に、有効に使う、というところでしょうか。
そんなに新しい気はしないのですが、それよりも注目はその発想と心意気! ですね。
器をぐにゃりと自ら歪ませた創意工夫、そして師匠の評価を殴り飛ばしてでも「自分だけの美」を生み出そうとする気概。
一昔前の織部そのもののようですよ。
ここまで来たのだなぁ…
 反面、過去の水墨画もある程度意識的に滲ませていたり、千利休を殺さねばならないかもと覚悟した織部と比べたらスケールは小さいですが、これも織部が一時代築いたからこそ、後の者が「新しい、自分だけの美」を生むことの垣根がちょっとだけ下がったのかな、と感じます。

 徳川家康の、数寄の閉じゆく時代か、織部の、新しい数寄の花開く時代か。
俵屋宗達の美、必見です。

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