ぶるがり屋 2016/09/16 22:00

先週の へうげもの 感想 2016年 9月第1週

あらすじ

 塙直之との死闘の中で上田宗箇は己の数寄を見つめ、
徳川家康は、明智光秀が死の前に残したものに、己の理想を疑う。


へうげもの(22) (モーニング KC)

山田芳裕
講談社
2016-06-23

感想

 死に様は、生き様。
一瞬人生が交差した相手に男惚れし、その人生が揺らされた2人の男、上田宗箇と徳川家康。
だけど、その差はあまりにも悲しくて。

 上田さんはここにきてやっと自分の数寄が無骨だと気付きましたか(笑
岩の庭も悩んだそのままの心持ちで、これで良しと決めたものではなかったですものね。
師匠・古田織部が大き過ぎて自分を見極められなかった上田ですが、武を諦め数寄を極めると決めた師匠と違い、武と数寄、ともに貫いたが故の、上田らしい境地だと感じます。
その織部で言えば、床の花の下の板が不要と感じたあたりでしょうか。

 そして、今更ながら明智光秀の生前の姿を知る徳川家康。
 ここで、家康の挫折が来るとは。
上田が塙の死に様に斬られたように。
過去、千利休が光秀の句に斬られたように。
今、家康は光秀の遺品に、斬られたのですね。
 いやー、まさかあの醍醐の器が再登場するとは思いませんでした(笑
翻ってみれば、あの会食が古田織部と徳川家康、そしいぇ明智光秀の邂逅だったのですね。

 明智光秀は民を数寄を愛し、為政者が清く正しく生きることで民が学び、国を変えようとしましたが、
家康は愛を捨て、自分も民にも清く正しく生きること以外を禁じる国を作ろうと。
結局の話、家康は国造りに対して光秀と深く話すこともなく、その死に様に共感してきただけ、
勝手に神聖視してきてしまたのですね。
 もしかしたら、光秀の思想を一番受け継いでいるのは「白い安土城」を見た小堀遠州なのかも。
家康が白い安土城を見ていれば違ったのかな、とも思いますが。
そう思うと、やっぱり利休の業は深いな!(笑

 作品は変わりますが、NHK大河ドラマ『真田丸』で登場人物が父や恩ある死者に縛られる中、ただ一人徳川家康だけが何者にも縛られることのなく自分らしい天下取りを進めますが、

 そして、勝手ながらも裏切られたと迷う今の家康は。
利休を失った豊臣秀吉のように、自ら誰も信じない、信じられない孤独へ立ちすくんでしまった。
理想の為に、すがった「光秀の虚像」を守るために、息子秀忠も盟友天海も追いやり。
この孤独を溶かすのが、最後の織部の役目だと良いな。

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