ぶるがり屋 2021/01/18 00:26

麒麟がくる 41話の感想

麒麟がくる 41話「月にのぼる者」の感想です。


NHK大河ドラマ「麒麟がくる」オリジナル・サウンドトラック Vol.2
ジョン・グラム
2020/9/2

麒麟がくる

 自分らしく生きるとは、平かな世とは。
友情も情熱も理想もまだ残っているのに、明智十兵衛光秀と織田信長の絆が軋み広がり、隔絶した回でした。
胸が、痛い……

 ここで平蜘蛛と嘘を明かして、諫言するのがいかにも私たちがずっと見てきた十兵衛光秀で嬉しい。
この真面目堅物バカめー!
大好き!!!!
 と同時に、光秀が一番期待しない、予想外で驚き苦しむ応えで返す信長よ…
こちらから前も今回も何度も好意を表してるのに、嘘ついたのに、信頼を裏切ったのに、結局今も嫌な言い方をする。
そんな風に感じて、売り言葉に買い言葉で、信長は光秀が嫌がる応えをしたのかなぁ。

 例えば今回、今も戦をしない方策を求め問い続け流ように、光秀が理想と大義を掲げ誠実な生き方を貫くように。
信長もずっと、大好きな人たちに、褒めて認めて欲しい。
それだけなのかな。
 そう言う意味では決して光秀も他人を慮らないタチなので、それで青年時代に仲良くなったように、諫言しされ合う状態では、決して歩み寄れない。
やっぱり、最初からこの2人の友情と隔絶は約束されていたのでしょう。

 いや、それは分かってたけど!
ずっと丹念に幾重にも描かれてきたし分かっていたけれども!
信長は光秀が大好きで、でもそんな個人感情を大事に出来ない引きようなのが光秀で。
そんな2人の魅力を知っているから、…辛い!

 秀吉を暗躍をしっかり見抜いて釘をさす光秀、強くなったなぁ。
摂津晴門相手にはその後の算段もなく問い詰めてましたが、今回はほぼ完全に手玉に取ってましたね。
秀吉自身が言う通り悪いことじゃないですけど、やっぱりムカつきましたし(笑
 光秀も弟を「叱る」が「殺す」になるかもと予想はしてたでしょうけど、秀吉はやっぱり迷いなく殺しましたか。
弟の死んだ場所を、昔の自分のような子供たちを、そのどれでもない何かを睨む秀吉の輝く瞳が怖い。
秀吉が一番憎いのは、決して許さないのは、「貧乏で弱い自分」なように思います。
そんな自分に戻らないためには、何でも犠牲にするような……

 玉の父や母、家族への考え方と、細川忠興への輿入れ。
父光秀の危うさ、煕子さんの献身的な愛は子供心にも強く刻まれたのかな。
でも史実を知っていると、この結婚はせめてもの幸せに繋がる道だったと思います。
色々、本当に色々ありますけど、それでも多分一番幸せな未来への。

 そして多分、菊丸も退場。
これは秀吉の言う「平かな世」は決して光秀が望むものにはならないと言う示唆でもあったように思います。
力で邪魔者を消し、戦を終わらすでなく敵を消し去る世界。
戦国の世を息抜き、それでも人並みの静かな幸せを求める者を殺す世界。

 十兵衛光秀を一番近くで見続け、その理想の根元を知る菊丸は退場し。
最後の一人、駒ちゃんはどう生き、この物語の終わりに寄り添うのかな…

 ついに天皇との密会。
直接話せないほどの身分違いの場合、「通りすがりに」とか「庭に向かって言う」とはよく聞く話ですね。
形式として目通りでも会話でもない、と言う代物。

 「月に上って手に入れる」ものは何か。
日ノ本の支配か、天皇を超える権力か、古来からの身分文化しきたりか。
 古きを尊ぶ光秀が絶対に正しいとは思いませんが、他人を顧みず自分の感情を満たすためだけの信長に任せるのだけは、そんな治世・平かでない世を認められないと言う形なのだと考えます。
 今の信長の世を作り終わらす責任と力は、光秀にある。
そう、雲上の存在に示されてしまった光秀の選択は。

 物語の終わりが、この物語が終わってしまうことが。
辛く楽しくまた期待してしまい、とても悲しいです。
 理想を追い求め走ってきた青年・光秀は、
自分だけを物差しに壊し作ってきた麒麟児・信長は、
傷だらけで生き抜いてきた彼らは、
ああせめて、笑顔で終わってくれるのか。

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