ぶるがり屋 2021/12/12 21:52

青天を衝け 39話 の感想

青天を衝け 39話
「栄一と戦争」の感想です。

青天を衝け | NHKオンデマンド
大森美香
2021/2/14〜
(C)NHK

青天を衝け

 おお、おお。
「国の為に」
燃え上がる情熱。
その情熱とともに流れる時代を、その激動に死んで行った者と残された者を
ずっと描いてきたこのドラマ。
 幕末の情熱、維新の情熱、日清戦争からの情熱。
流され、動かし、向かう先となった栄一。
そして慶喜はそんな情熱を受け止めきた側、篤二は情熱を遺された側なんだ。
 戦うこと、死ぬこと、逃げること、生きること。
絶望と愛に溢れ、残奥で優しくて、美しいドラマ。

 冒頭。
惇忠兄ぃが報われて、本当に良かった…
勝手ながら、これがドラマGA終わるまでに一番の懸念SIてました(笑
 自分が先導者でありながら、あまりに多くのものを失って、生き残ってきましたからね…
彼らの生も死も人の心に残っているのだと、忘れられず尊きものと認められたのだと。
兄ぃは苦しみを背負ったままでなく、救われて死を迎えたのだと。

 大義、罪、多くの死の果てに。
逃げて、これしかなかった、でも本当に…?
苦しんできた慶喜の口を開いたのは、栄一の強い願い、その願いを破りたくないという情。
そして、自分のように翻弄され逃げようとし、それも出来ずに、その罪に潰されそうな青年の叫び。
生の心が人を動かした。

 自分が戦争のタネにならないように逃げ隠れ、それでも北海道まで戦争は終わらず、日清、日露と戦争は止まらず、時代は熱狂をさらに燃え上がらせ。
徳川慶喜が重い口を開いた理由は、自分の言葉が新たな火種になら泣きなったこと、栄一のため、やっぱりこの2つが主だと思います。
 ただもう一つ、逃げる苦しみと逃げたことの苦しみ、それを篤二にも知って、少しでも安んじて欲しかったから、そんな風に思えました。
 篤二の優しさと聡さが、哀れに愛おしく思えたように。

 尽未来際
人は、誰が何を言おうと戦争をしたくなれば必ずするのだ。
欲望は、道徳や倫理よりずっと強い。
ひとたび敵と思えば、幾らでも憎み、残酷にもなれる。
人には枠割りがある

 このドラマとして、徳川慶喜の言葉として、現代に流れる言葉として、どれもが重く苦く、味わい深い言葉でした。

 そんな各名言もさることながら、青年期の輝き、将軍時の輝きと憂いを帯びた姿、配送後の壮年と老年期の、まさに輝きを消した姿。
そして、今回の篤二の言葉を受ける枯れた一老人、されど涼しげな風貌の奥に苦難が見える重厚さ。
草彅剛さん、本当に、本当に良い役者さんになった。
素晴らしい。

 重々しい時代の積み重ねが語られる中、猪飼様の変わらぬ可愛さもまた素敵!
正直、毎回見たい。


 生き残って、生き延びて、生き抜いてきた栄一。
「死なないでくれ」「生きていてくれたら私(=推し)の本作って良いよ」
生涯の推しにこんなこと言われたら、生き返るしかないよね!
と思っちゃうオタクな私です(笑

 富国強兵、日清日露、戦争で得られたもの、失ったもの。
描写は短いながら、だからこそ濃厚で重いですよ…。
かつて藩や幕府に焼き討ちをしかけた熱意と暴力を、受ける側になった栄一。
正しさも過ちも、強さも醜さも、よくよく分かっていて、身に沁みていて。
 道理に、道義に正しい国とは。
次回、『栄一、海を越えて』
栄一の本当の生きる道が、ここから見られるのかな。

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