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鎌倉殿の13人の記事 (48)

ぶるがり屋 2022/09/11 19:54

鎌倉殿の13人 33話 の感想

鎌倉殿の13人 33話
「修善寺」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 源実朝にまた委ねられる、源義朝の髑髏。
髑髏と頼家の禿頭が被るのは、悲劇の象徴か、死の秒読みか。
いや〜笑いが全くない冒頭初めてじゃない?
これから45分が怖いですよ…

比企を滅ぼした北条

 "執権"別当、ついに我々が知る北条毛に、時政が就きましたか。
最高権力者になったという、大きな区切りですね。
「執権どのぉ?」「はい!」
が可愛い(笑
征夷大将軍となった源頼朝と北条政子を思い出します。

 が、喜んでいるのは時政りくの夫婦ばかり。
実際文句や問題点を言ってるのは三浦義村だけですが、トキューサくんのリアクションもあって目に浮かびます(笑
「りくさんが主導」なのも、広まっているんでしょうねぇ。

 ここら辺の遠慮の無い酒盛りは、父・三浦義澄と北条時政の関係も思い出しますね。
小四郎と平六と「刎頸の交わり」。
でも義澄の居ない時政は、自らの過ちに気づけない…

 気になるのは、関東武士の中ではりくさんが話題になり、京・朝廷の方では源氏だけが重視されて北条家丸ごと嫌われているのですよね。
牧家は京都だと軽視される身分なのかな?
 りくさんの権力への強過ぎる執着心、錦を飾るというより、復讐心さえ感じるのですよね。
「自分を軽んじた故郷に、支配者となって戻る」そんな憎しみが滲み出るような執着心。

京、関東、孤独な源頼家

 鎌倉政所と朝廷の駆け引き、狭間の源頼家。
なるほど、朝廷、後鳥羽上皇から見れば源氏は忠臣の一族、北条が田舎の簒奪者扱いなのか。
とくに武士に権力を奪われてから数代、一番苦労した後白河法皇の後継ですものね。

 もはや後ろ盾も権力もなく、声高に偉ぶるしか出来ない頼家の姿が痛々しい。
自分の弱さも愚かさも十分わかっているでしょうけど、何処まで本当に分かっているのかな…
平六に立てかける言葉はどれも若く愚かな青年のようでいて、その先で滅ぶつもり、なのか。

 平六もですが、北条政子とは会わず話さず、北条方の足立遠元、何より比企族滅の実行者となった畠山重忠に気を許してるのは何故なのか。

 少し考えました。
北条家だけ許せないのかな?
母・政子に甘えてる? 愛し信じ宝こそ許せない?
北条方を揺さぶる武蔵守の話を聞かせたかったから?

 最後まで見て、もう一度考えて。
ああ、比企の家族を、せつを、一幡を奪われて、受け入れるなんて出来なかったんだ。
頼朝の子として生まれ生き、奪われて踏みつけられたまま生き続けるなんて出来なかったんだ。
復讐を復権を、諦めるわけにはいかなかった、北条を憎み続けるしかなかったから。
だから、母と会ってしまうと、北条を許してしまいそうになるから。
源頼家は、北条と戦い、死ぬと決めた。
きっとそうだろう、そう思いました。

殺したく無い北条

 もう止まらない、止められない頼家の憎しみ。
北条もここまでしたい訳じゃなかった。
大事な甥で孫で、同じ夢を追った主君の子。
「まだ殺すと決まったわけではない」「まだ。」
それでも、殺したくなくても、殺さねばならない。

 すでに最終決定権は北条義時なのか。
致し方ないですけど、見てる私まで胸が痛いですよ……
頼家を殺すのは、義時。

将軍・源実朝と乳人・北条実衣

 三善康信さんが可哀想だよー!
政子の方が正しいと思うけど、実衣の願いも切実で、正しいのですよね。
真紅の衣、正しいまつりごと、全ては権力の為に。

 ただやっぱり、自分ではよく分かってないまま教えたり、実朝自身の優しさや感受性を考えてないところがダメですよね。
あと、源仲章を信用しちゃうところが……

愛息子・泰時、弟・時房

 朝廷と頼家の接触を前に、暗殺を決定する北条義時
ただ一人闇に堕ちていく、いや、降りて行く義時の横に侍る2人。

 問い、否定し、抗う泰時。
「太郎はかつての私なのだ」
そう、私たちは知っている。
悩んで、苦しんで、迷って、ここまで来てしまった義時の血塗られた道を。
正しい、眩しいほどに正しい息子。
本当の正しさを、遥か昔の自分のように信じ、突きつけてくる愛息子の存在は、義時にとって救いなのか、苦しみなのか。

 そして、ずっと横に居て必ず助けてくれる時房は。
「私は何なのでしょう」「考えたこともなかった」「太郎の真逆でありたい」
「聞いてないですね」

割と一世一代の告白してるのに聞かれてないよ
不憫だよトキューサ!(笑
 でも、気を許してるからこその対応なのだとは思います。
父や平六にも話せない悩みや密事漏らしてますし。
不憫なのはやっぱり変わりませんが(笑

運命、応報、因果

 ついに見つけてしまった、宗時の巾着。
「一幡」の文字、墓、後ろに立たれても気づけない。
善児が老いたのか、もう死んでも良いと思ったのか。
犯した罪は、今○す罪は、誰が何を以って問うのか、贖うのか。
命じられて、大義の為に、必要だから、殺した、殺せと命じた、殺してきた。
「私に、善児が責められようか」
 時房も、義時も、善児も、答えられない。

和田義盛邸の酒盛り

 迷い、傷つきながら、自ら地獄に降りていく。
すでに地獄の中で、もっともっと深く降りていく。
「由緒あったりしないか?」「手伝って!」
そんな中で、和田義盛と巴さんの仲睦まじさが癒しでした。
2人とも可愛いなぁ(笑

 そして運慶との再会。
重い仮面をほころばせ、少年のような言葉遣いで答える義時に語りかける優しい声音。
言葉全てが、義時の、この物語の福音のようでした。
悪い顔になったな
だがまだ救いがある
迷いがある、その迷いが救いなのさ
悪い顔だが、良い顔だ
いつかお前のために仏を彫ってやりたい

 峠で拾った小仏は、誰の縁なのか。
いつか彫られる仏は、義時の何を背負うのか。
救いだったら、良いなぁ。

源頼家の最期 善児の最期

 北条の子、幼馴染の泰時を受け入れ、言葉を信じる頼家。
暗殺を知りながら、音曲を味わい、刃を向けられれば堂々と切り結び。
ああ、死ぬのだ。
死ぬつもりなのだ。
覚悟しているのだ。
分かって、しまいました。

 これも老いたのか、たまたまなのか。
今までのように不意をつくのではなく、正体がバレ、正面から刃を交わす善児。
正面からでも一流の武芸を学んだ頼家相手に叩けるとは、とその強さに驚きましたが…
ああ、「一幡」を読んでしまうのか。
学なく、家も地位も思想もなく、死神の刃の権化でしかなかった、筈の善児が。
人を愛し、死に思い煩い、死神の鎌でなくなって死ぬのか。

 一幡を愛するから、頼家は死に。
一幡を愛するから、善児は死ぬのか。

 それでも逃げ、死に切れぬ善児を、止めを刺す刃。
ああ、ああ、そうだよね。
善児の罪は、弱さは、老いは、君だよね。
泣くように、呻くように、師匠を、仇を殺すトウ。
そして、頷く善児。

 雨は、止まない。

修善寺

 千鶴丸を殺した善児が千鶴丸の弟に。
修善寺で源範頼とともに両親を殺した善児が、修善寺で生かしたトウに。

 前回の引きで、善児は義時に消されるのではないかと心配しましたが、生きていてほっとしました。
なのにさらに過去の罪がバレてしまって、殺される理由が増えてしまって。

 愚かなのは事実でしたが、過ちながらも成長していく姿が眩しく、ただただ絶対的な不運に全てを奪われ、一人の青年に戻った頼家の姿が悲しくて。
頼家も、善児にも死んで欲しくない、そう思ってしまって。

 その思いは叶いませんでしたが、今までよりすっと、救われた気持ちの終わりでした。
甘え下手で何物にもなれなかったプライドの塊の金剛は、太郎を信じ、武勇を示して死んだのだ。
死神の鎌として生きた善児は、親として師匠として死んだのだ。
将軍として、小物として、邪魔者として、暗殺者として、道具としてしか生きられなかった2人が。
たった一人の源頼家として、たった一人の善児として、自ら選び取った、その結末なのだ。
絶望と呪いと虚無の中で、2人は人間として死んだのだ。

 これはきっと小さな小さな救いなのだ、そう思うのです。

生きる者たちは

 死を振りまいて生き続ける義時は。
死を前に生き残り続ける泰時は。

この終わらない苦しみに満ち満ちた地獄の中で、地獄の先に、何を作り築いていくのか。
いつか死ぬ義時と、その思いを受け継ぐからこそ次の時代を作る泰時が、うっすらと見えたように感じました。

 とりあえず鶴丸も死ななくて良かったです(笑
ドキドキ心配しながら見てましたよー。

他、ちょこちょこ。

 八田知家、なんでそんな挙動全部が荒々しいの!?
時政の眼前に面を叩きつけるとか、最高権力にやって良い動きじゃないよ!(笑
いやぁ、男惚れしちゃうわぁ。

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ぶるがり屋 2022/09/06 06:16

鎌倉殿の13人 32話 の感想

鎌倉殿の13人 32話
「災いの種」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 地獄には底は無いんだなぁ……
実衣と全成の夫婦の絆、政子と実衣の姉妹の絆、仁田殿の弾ける笑顔。
私の愛した安らぎは、どれも、どれも失われてしまったんだ…
そしてまだまだ、地獄を終わらず連鎖して行くんだ……。

誰が、何が正しいの?

 起き上がった源頼家に、誰も事実を言えない。
頼家の親族であり後ろ盾だった北条家と比企家が相争い、愛息子ごと比企家が滅ぼされたことを。
いやぁ、それでも責任者の時政か義時が言うしかないでしょ…
とりあえずトキューサに任せようとするな!(笑
内容が内容だからあんまり笑えないよ!

 「頼家様が、息を吹き返される前に戻す」
それは…「頼家が死んだ」時、と言う意味なのか。
それはあんまりだ、義時自身も思ってるだろうに。

 大江広元も義時に与した側の一人として、責任も罪も痛感して、表にあまり出さないけど、内心では苦心、苦労してるだろうなぁ…
それでも政子・義時と同じ道を歩んでくれるのは、同じ理想を抱いているからか。
新しい時代、鎌倉を守ると。

赤い衣の実衣

 仏様は全成を助けてくれなかった。
比企の血が流れている。

 うう、もう全く初期の可愛さが消え失せてしまって…
間違っては居ないのですけど、残虐の理由が明らかに憎しみなのですよ。
夫も子も殺されて、憎しみと正しい世界への渇望と、失ったものへの渇望に、こんな変化をしてしまうのは理解するしかないのですが。
でもその道は、愛する全成が望んだ実衣ではないのですよ。

 赤い服、全成の愛した、赤い。
全成が死に際に叫んだ、血の、赤い。

比奈の選択

 そう、北条が族滅した比企の血が流れている姫。
比企の地を引きながら、比企を滅ぼす手伝いをしてしまった比奈。
愛する夫と子の為に、一族が滅んだ、実衣と逆の。

 比奈は、義時は、何時から何処まで覚悟したのかな。
多分、義時は比奈を失うことを考えられなかった。
比奈は、ずっと前から覚悟して、少しだけ後回しにしていた。
そんな風に感じます。

 自ら離縁を伝えて、泣くつもりが無かったのに、濡れた赤い目で。
「離縁してください」
「折角だからという言い方も可笑しいですけれど」

富士の巻狩りと同じように後ろから抱き締め他のに、2人の想いも距離も、近くて遠くて。

 「行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」

夫婦なら、家族なら当たり前の、一緒にいる約束の言葉を最後に。
何処か遠くを見つめる眼差しが、悲しい。

政子、母として、尼御台として

 あなたは私の孫を殺した。
頼朝様の孫を殺した。
もうあなたを信じる事は出来ません。
 ああ、もう。
最後まで同じ夢を見た、源頼朝と同じ夢を見たはずの政子と義時の絆さえ…。
でも、誰かが言わなければいけなかった言葉。
義時の罪を罪と言わなければいけなかった言葉でもあったように思います。
こんな罪を、北条の為になった、鎌倉の為になった、なんて言われるだけでは義時の心は持たなかったようにも思うのです。

 そして、誰も伝えられない悲劇を、北条の大罪を、伝えるのは母・政子なのか…
「忘れるのです、断ち切るのです。」
政子も嘘が通じるとは思い切れなかったけど。
この嘘を信じさせるしかなかった。
この真実を通すしかない。
北条の為にも、鎌倉の為にも、頼家の為にも。

 でも、この捩じくれた地獄のような悲劇を受け止めることも、政子を信じきることも、自分のために騙されることも、出来ないよなぁ。
出来る訳ないよなぁ。
誰も頼家を、救えないんだ。

遠く離れた地で、遊ぶ後鳥羽上皇

 なんだその積み木(笑
「なにともにしようかのう〜」が可愛いやら可笑しいやら。
北条の名付け親は「なにときにしようかのう〜」かな(笑
 源実朝の「さね」は繋ぎ目のさねときましたか。
武士の棟梁、為政者ではなく、朝廷と武士の繋ぎ目。

一強・北条一族の綻び

 妻を子を殺され憎悪の地獄に落ちる頼家を横に、成長する少年に結婚する娘たち。
とは言え、その娘婿の平賀朝雅、
胡散臭!鼻持ちならねー!
りくにとっては欲しくて欲しくてたまらない公家の親戚でしょうけど、りくしか見てない、言葉を交わしもしない、明らかな問題ですよその男!

 最初からバラバラでも同じ方向を向いて戦う仲良しな家だったのに。
血と権力にまみれて、北条時政、りく、義時、泰時の仲違いが悲しいですよ。
孫を、主君の子を、幼馴染を、主君を殺すのか、生かすのか。
何の為に?

生きていた一幡、罪と罰は誰のもの

 一幡生きてたの?それをここで知らせるの?
救いなのか地獄なのか混乱しましたが、もっともっと深い深い地獄の入り口でした。

 殺すも殺さないも、全て自分に委ねられた北条泰時の「殺す」という決断。
死神の鎌のように、ただ「殺す」だけの存在だった善児の、「できねぇ」という逡巡。
……ここで?
こんな時まで来て、義時より先に地獄から零れ落ちるの!?
「千鶴丸と何が違う」
義時にとって、この地獄を開いたのはお前ではないか。
頼朝を、八重を、伊東を狂わしたのはお前の子殺しだったではないか。
だのに。

 惑う目、開いた口。
今までの心無い、張り付いた笑顔でない、振るうの老人の顔がそこに。

 一幡は生き残されたのか、それともトウが同じように、川に沈めたのか。
ああ、何処から何処までが地獄なのですか。

頼家の憎しみと愚かさの結果

 北条家がそれでも足踏みをしていても、頼家だって止まれないのですよね。
バカ… 場数を踏んでいる二人(笑
和田義盛と仁田忠常を呼ぶの、頼家も人選面白いなぁ、
と思っていたら……
仁田、仁田殿ーッ!!??
ああ、比企能員を殺した時も苦い顔をしていましたよね。
誰よりも頼朝に厚い忠義を見せていたよね。
北条家を愛して、鎌倉殿を守るという願いを一緒に進んでくれたよね。
優しき人よ、善き人よ、忠義の武士よ。
仁田忠常。
貴方のはにかんだような笑顔が、好きでした。

 もう憎しみの連鎖は止まらない。
多くの人を引き摺り込んで。
畠山重忠が二人とも庇う様が、せめてもの救いですよ。

頼家と義時

 また、暗い廊下を独り行く義時。
悪いのは北条、義時。
分かっていても、北条を罰しても、鎌倉は消えると知っているから。

 闇、源頼家、北条義時。
頼家と、同じ視界に入らない義時。
言葉も視線も、決して交わらず。

 「やだー!」
泣き叫ぶ頼家の、愚かさと幼さと、無力さ。
頼家は確に間違ったけど、間違ったのは頼家だけか、頼家の過ちはこれほどの罰に値するのかか。
 「父上、これで良いのですか。」
義時と同じく頼朝に問う頼家。
頼朝の野望を引き継いだ義時と、血を受け継いだ頼家。
答える頼朝は、もう居ない、居ないからこんなことになってしまったのだから。

会い、憎しみ、呪いはあざなわれて

 ああ、比企尼。
生き延びて、生き延びてしまったのか。
一粟の栄華と滅亡を、愛する者たちの苦しみと死を、全て見続けて。
頬をペチペチと、頼朝も、頼家も、一幡も、同じように愛して。
誰よりも暗い、暗い眼差しで。
ただ一人残った比企尼が、ただ一人生き残った善哉に、呪いをかけるのか……。

……辛いよ!

 今回は本当に、辛かったです。
今までも辛い話は多かったですが、今回は一番辛かった……。
誰もがここまでしたくはなかったのに、足りなくて、失敗して、間が悪くて。
傷つけて傷ついて、殺して殺されて。

 それでも友を守ろうとする畠山重忠や鶴丸、それでも間違っていると抗う北条泰時が救いです。
生きて、幸せになって欲しいなぁ。
一部、史実で無理なのは承知の上で、そう願わずに入られません。

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ぶるがり屋 2022/09/04 18:42

鎌倉殿の13人 31話 の感想

鎌倉殿の13人 31話
「諦めの悪い男」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 はじまりはいつも笑い
死んだ爺さん。佐々木爺さんの孫かー!
佐々木秀義の孫で、名医と謳われたという善住。
 前回の流れに今回と、流石にコメディ冒頭はないと思っていたのですが(笑

それでも変わらない、比企と北条の諍い

 自分たちの主であり、孫であり養い子である頼家の危篤。
源頼家の治療所ですら諍いの道具に。
いや、自分たちの権力の基盤だからこそ、争うのか……。

 頼家の体の弱さも北条のものか、比企のものか。
悪いところも争いの、主導権の取り合いのようで。
大事なもの全て自分たちのものだ、という執着心や独占欲なのかな…

 それでも痛みは痛み、愛は愛で。
そんな道に、政子は寄り添うんだなぁ。
政敵でも欲まみれでも、傷ついた心に。

吹き荒れる憎悪、消えたオアシス

 諍い程度では済まず、全成と実衣の子まで殺されて。
ああ、実衣の心も目も言葉も、憎しみに満たされてしまった…
最愛の夫までは自業自得もあったけど、今回は完全に権力争いのためだけ、無実の子供ですものね…
仕方ないとは分かるだけに、心のオアシスだった全成・実衣の夫婦のにこやかな家庭は、もう本当に失われてしまったのだと、打ちのめされます。
うう、あんなに一緒だったのに……

 そしてもう、小四郎も止めれない。止まらない。

北条義時の、決意

 また暗い廊下で、小四郎は覚悟する。
比企一族・族滅。
計略は多くの者に頼るのに、肚の中だけは誰にも明かさずに。
「頼朝様は正しかった、常に先に仕掛けた。これはあの方の教えです。」
「一幡の命は助けてあげて」「誓います。」
「頼朝様ならそうされていた。」

大事な大事な家族すら騙して、自分だけ罪を背負って、もう居ない頼朝の言葉に縋るように正しさを絞り出して。
うう、重い、暗い、辛い……。

 そして正しいと信じるから、他者にもその正しさを求めてしまうのか。
その重く痛みに満ちた正しさを、継がせようと言うのか。
主君の子を殺せと命じるのは、息子にも呪いをかけたことにはならないのか…
愛する妻・比奈にかせた願いは、あまりに重い枷で、それはもう呪いではないか……

 大義は、虐殺のその先は。
北条の世
その情熱は、宗時の野望が義時の肚の中でくすぶり続けて居たのか、それとも頼朝の血筋を殺さざるを得なくなり、すがった夢なのか。
少し考えました、両方なのかな。
頼朝の残した世を存続できるなら、それで良かった。
それが果たせないなら、これしかない。
そんな風に思うしか、無かったように。

比企比奈の覚悟

 そんな痛みに沈んだ、最愛の夫の痛みを知っているから。
比企の恐ろしさも、知っているから。
比奈も同じように、自分の心は秘めて、見せるのは決意で固めた、仮面の笑顔。
「急ぎかな、そうでもないかな」
「父上は、変わられましたか」「人は変わるもの、それで良いのではないですか?」

どれも嘘ではないでしょう。
でも本心というよりは、せめてもの願いだったように思えるのです。

 それでも、それでも。
比企を討たねば、夫も子らも死ぬのだ。
間違いなく。

 同じように悩み苦しむ、でもずっと純粋で優しい、そしてもしかしたら自分とは違う選択をするかもしれない泰時を送った笑顔は、一瞬だけど本物だったように思います。

比企能員と北条時政

 源頼朝、鎌倉幕府の草創の後ろ盾となった宿老2人。
仲違い激しく素直に話せず、決着が見えて初めて吐露した重い。
比企能員の長い長い煩悶と、北条時政の答え。

頼朝緒戦に加われていたか、否か。
守るものが多いか、否か。
思い切りが悪いか、策を選ばぬか。

 2人だけの鎌倉殿の広間で、やっと膝を交え、目を見合って、言葉を交わせたのだと思えます。

 心露わな会話で、能員は時政を人として愛し、時政は能員を殺すべき敵として覚悟した。
友になれなかった訳でなく、憎むから敵な訳でなく。
最初から最後まで、ずっとすれ違ってしまったんだ。

 ただ同時に2人とも、駆け上がることだけ考えて居て、新しい時代を作る、維持する考えがない、旧世代の人間であると描かれていて。
時をおかず時政も、この舞台から転げ落ちると示されたのだと思います。

謀将・比企能員

 今回の主人公は誰だったか。
"今回は"とすれば、やはり彼だったと思います。

 憎らしく可愛く、小悪党で諸悪の根源で憎らしく、切なくてやっぱり子憎たらしい。
小心者で欲深く情深く迷って悩んで苦しんで、死に物狂いで一族を守って、他者を軽々しく殺すのにその罪に気づかなくて、権力にしがみついて縋り付いて縛られて。
どこまでも人間らしく、愛らしく、憎たらしく。

 佐藤二朗さん、最高の演技、生き様と死に様でした。

比企、族滅

 うう、ああ。
族滅とは、言葉だけでも痛々しいものですが、ここまで痛いものなんだ……
女が覚悟し、死に、死に、子が何の覚悟もなく、死んでいく。

 道さんもずっと憎たらしかったけど、能員の最高の妻でしたよ。
せつさん… 幸せに、幸せになって欲しかったよ・
一幡、ああ、ああ。
比企尼はここまで生き残ってしまったけど、長生きした末に、こんなことになるなんて……

重なる地獄

 これで良かったのですか
これしか道はありませんでした。
本当に?

 小四郎も、政子も、比奈も、泰時も、殺す側についた仁田忠常、畠山重忠、和田義盛も、誰もが罪を背負って。

 そして、そして。
何もかも終わってしまった後に、頼家が目覚めてしまうのか。
妻と愛息、乳人一族を滅ぼしたと。
それが母と叔父、祖父たちの一族が行ったと。
剃髪など、笑い話にもならないじゃないですか。

 誰にとってもの、地獄。
誰も頼家の病状を確かめなかったから。
頼家が鎌倉殿としてあまりに軽く、鎌倉の不安定な権力は誰も治められなかったから。
因果応報だなんて、だから仕方ない結果だなんて、誰が言えるのか。

 地獄って、底が無いんだなぁ、いくらでも連鎖して重なるんだなぁ。
辛い… 辛いよ!

他、ちょこちょこ。

 三浦義村、まったイキイキしてんなぁ!
書状のコントはどちかというと義時とイチャツキたかったのでは(笑
「刎頸の交わり」というけど、「なんかあったらお互い躊躇なく殺すけど、お互いあいつなら仕方ないなぁと思ってる関係」な気がします(笑

 八田知家はなんでいつも格好良い&はだけてるのん?

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ぶるがり屋 2022/08/28 18:34

鎌倉殿の13人 30話 の感想

鎌倉殿の13人 30話
「全成の確率」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 翻弄され続け、愛し続けた男、全成の生き様。

物語初期からの微笑ましい笑顔の絶えない絆だった、政子と実衣の姉妹の仲、全成と実衣の夫婦の仲。
頼朝の死で、絆に傷が入ってしまって、ああ、また仲良く笑ってくれないかな。
そう、思っていました。
思い続けて、今回、叶いました。
でもそれは… もっともっと微笑ましい彼女たちを見たかったということで。
こんな結末を、涙と叫日に引き裂かれる結末を、見たかった訳じゃないんだ……

 私を幾度も癒してくれたオアシスは、枯れてしまいました。

堤判官師匠と師匠を超える弟子トキューサ

 平知康さん、キーキャラ過ぎるよ!
笑ってたら笑えない展開だよ!

また感情の方向が迷子になるオープニングでした(笑
後白河法王の横にいる頃から記憶に残る良いキャラでしたが、こんな面白い使われ方するとは(笑

 実は今回3番目の主人公?北条時連くん、いい子やなぁ…(子じゃない
トキューサ!
何回もセリフにしてテロップまで使うほどのネタなの!?(笑

 未熟で純真で、優しく甘い時連くんから、歴史に残る名前の北条時房となり、時代の大波に揉まれ、これから時代を背負う大人になっていくのだろうなぁ。
苦労して欲しくないけど、苦労しまくるんだろうなぁ……。

時代を作った宿老、北条時政

 三浦に連なる名前を軽く捨て、この適当さと無遠慮さは、もう三浦にはわかってもらえないということにも気づいてなさそうな。
今まで三浦義澄との幼馴染のきゃっきゃぶりに萌え、今も時政パパの可愛さはそのままなので、この欠落が何とも辛いですよ。
というか時房自身にも名前の経緯を伝えてないのはダメでしょ!(笑

 比企能員と同じく、頼朝の前世代の宿老。
とめどなく変化する時代の中で、2人とも新しい時代を見ない恐ろしさと悲しさが見えます。

三浦義村の時代が始まる?

 生き生きしてきたなぁ(笑
今までも楽しそうに暗躍してきましたが、ついに一族の棟梁となって初めての謀。
おまけに自分が描き導いてきた、梶原景時という重りを排除し、比企と北条の欲望丸出しの権力争いを進め、そしておそらくは「北条の味方の一族」でない三浦が権力を握る、その道筋。
誰かの後ろでも下でもない、自らの謀とその先の野望。
笑顔が今までよりまぶしく妖しく映ります。

 …いやぁ、謀に初めてとか何度目とか書くの初めてですよ(笑

ふたたび笑い合う北条姉妹

 仲良くて、ちょこちょこ喧嘩して罵り合って、ずっと「仲良い家族」だった北条家の象徴、政子と実衣。
尊敬しているから、自分もなりたいから、大事だから、誇りと痛みを進んできたから、そんな当たり前の想いと姉妹だからこその絆が、権力の大渦に飲まれて歪んでしまって。
その大渦に流されて流されて、失ったからこそもう一度、つまらない話からまた笑い合えて。
ああ、良かった。良かったよ。
せめて、せめて。

悪禅師全成の死

 謀を隠せない、証拠を残しまくる、不器用な人。
呪うのが苦手で、人を恨めず憎めない人。
自ら言い聞かせてもいましたが、前回・今回の呪いの下手っぷりを見て、「本質的に誰かを憎んだり傷つけたりするのが苦手なんだ」と思わずにいられませんでした。

 そんな憎めない全成の、鬼気迫る呪言。
源頼家への、比企能員への、北条時政・りくへの恨みではなく。
悪禅師全成、その愛と覚悟。
激しく、優しく。
鮮烈な退場でした。

 呪い力がある、それは頼家を呪ったのは自分で無かったと、実衣を傷つければ呪いが降りかかると、しましたのかな。

 その死を問う、実衣の眼差し。
一つ一つ、しっかりと、噛みしめて。
愛する夫の死を全て、抱き締めるような。
強く深い、本当に大事なものを愛する想い。

 実衣の衣の赤、ほとばしる血の赤。
その大事なものが奪われる、痛みが重く鮮烈に心に残りました。

北条義時の、覚悟

 「私も考えます。」
全ては頼朝の遺した鎌倉のために、その為には多少の損をしても、比企とも力合わせて。
そう信念にあった筈の義時が、変心するには。
鎌倉維持の生贄でもなく、北条家や全成の罪ゆえでなく。
ただ一族の権力の為に、愛する家族を奪われたなら。
いつも心癒してくれた、全成と実衣の夫婦の愛を壊したのなら。
私の心にも、同じようにふつふつとどす黒い憎悪が沸き立ちました。
 そして、義時の選択は。

 ああ、義時は家族のために怒るのだな。
それでも、最後の機会を与えるのだな。

比企能員の野望と苦悩

 旧来の権力者から土地を削り、新しく有能な若者たちに土地を割り当てる。
次世代の政治、鎌倉殿を唯一絶対の存在に引き上げようとする源頼家からすれば方向的には正しい策ですが、謀反が起きて殺されても当然のやり方。
能員が頼家排除に動くのも。
 一族郎等を背負い、家族大好きで一族で権力思考で、やっと手に入れたはずの天下も不安定で。
笑顔で憎悪と苦悩を迸しらせる怪演、引き込まれます。

 という諸々の上で、
憎い、憎たらしい。
決して自らは矢面に立たず責任を取らず、時に頼朝頼家を後ろ盾に権力を振るい、時に頼家に全ての罪を被せ、時に愛妻実衣の名前を出し、自分の都合のままに人を操る。
私が愛したオアシスを枯らす。
憎たらしい…!!!!

 頼家はどこまで気づいたかなぁ。
と思ったら倒れたー!?

他、ちょこちょこ。

 八田知家カッコイー!
男として武将として、その上異様な色気はなんだ!(笑

 扉開いたらフルアーマー仁田忠常!
カッコイイー!
いやこれは勝てる気がしませんよ(笑

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ぶるがり屋 2022/07/31 21:56

鎌倉殿の13人 29話 の感想

鎌倉殿の13人 29話
「ままならぬ玉」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 比企と北条、権力戦いの渦が暴れ始める
13人で最初に殺されたのは、梶原景時。
秩序の番人であった梶原殿の死が、ここまで如実に早く、形になってしまうとは。

梶原景時の遺したもの

 首桶スタート〜!!
梶原家の成仏に祈ってるだけ良い扱いな気がしますが、だからこそ生かして大事に出来なかったことが悲しいですよ。
そして、これ幸いと源頼家に圧力をかける比企能員が憎たらしい。

 梶原殿が試したのは、善児か北条義時か。
死に当たって天運を計らせるのはいかにも梶原殿らしいですが、義時なら約束通り見ないか、見ても個人の恨みつらみより、鎌倉政権に有用な道具かいなかだけで判断しそうな気がします。
天運の人、源頼朝を見て、梶原景時は天に仕え、北条義時は情熱に仕えた。
そんなように思います。

 あと善児がちゃんと殺した相手を認識していて覚えていたのはちょっと意外でした。
完全な殺人自動人形なイメージでだったので(笑
とはいえ主家の一族、主人の孫たちでしたね。
そりゃしっかり覚えてるか。

悲劇の前のギャグ?

 小四郎…
「女の子はキノコ好き」は最愛の八重さんに否定されたでしょ!
少しは成長して!(笑

 今回は、初期人物たちの人間臭さが愛おしい回でした。
小四郎、全成、実衣。
 だからこそ、りくさんの野望が恐ろしく、時政の生き汚なさが悲しい。
愛おしい人間臭さが、おぞましさに変わっていく。
時政はともかく、りくさんは疑われたら全成さん切るつもりでしょ…!

 比企は最初からあーなんで、まぁ(笑

 13人のうち、三浦義澄と安達盛長の退場もちょいコント(笑
義澄は最後まで優しく真面目なおじちゃんでした。
最愛の幼馴染の時政との別れはあんまりな死別になりましたが、あれは本当に愛していた、今の野望に取り憑かれたままでは心配だった、からなのかな。
 安達盛長はもうちょっと存命かな?

 井戸落ちもコントでした。
憑き物が落ちた頼家が、"たま"に固執せず人間らしく正しく生きよう、としたところからアレですよ(笑

頼家とせつ

 周りは権力を狙うもの、敵ばかり。
何もかもがまだ未熟な頼家を振り回し苦しめて。
それでもと、頼家を愛するせつと北条時連の言葉が熱く、届いたことが、とても嬉しい。
頑張れ、頑張れ〜!

 政子が見抜いたように、ずっと信じたかったのですね。
せつを、義時を、全成おじさんを、きっと梶原殿を。

全成と実衣

 悪意が足りなくて、頼りなくて、詰めが甘くて。
そんな人に惹かれて、手を取り合って結ばれて。
物語初期からずっと、仲良く癒しでいた2人が、心離れて、なんとかまた仲良くなってー! と思っていたら
仲直りして滅ぶのかよ!
仲直りしないまま死ぬよりはよっぽど良いけど!薄々予想はしていたけど!
絶対人形取りこぼしてると、最後のホラーカットがなくても確信していましたが…
つ・ら・い・よ!!!!

誰の手にもない"たま"

 ままならぬ"たま"は頼家であり、鞠であり、天運なのでしょう。
野望に取り憑かれ、溝が出来てしまっていた全成と実衣が優しさと愛を取り戻し。
源頼家が苦しみ悩み、反省して人間らしく成長して。
ああ、愛おしい。
ということは、滅びが近いのかもしれない…
愛するからこそ、信じたからこそ、憎しみと疑念は止まらない…
ああ〜 三谷脚本が怖い〜!

 もう、夫婦仲が良いことだけが救いですよ。
だから辛いんだけど……

他、ちょこちょこ。

 平知康さん出オチどころかフルタイムオチだった(笑
このままもうちょっと出演してて欲しい。

 三浦義村、今回は大人しめでした。
まだ北条泰時くんと初をくっつけてなかったんだ。
もっと押せ押せかと(笑
 ついに大きな傘であり盾だった父を喪い、一族の棟梁になった平六。
どう動くのか、ちょっと怖くて、とっても楽しみです。

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