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鎌倉殿の13人の記事 (48)

ぶるがり屋 2022/12/18 23:18

鎌倉殿の13人 48話 の感想

鎌倉殿の13人 48話
「報いの時」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 どうする家康!?
我々歴史ファンが勝手に来年の大河ドラマと繋げていましたが、まさか公式で思いっきり繋げられるとは(笑
"この国の成り立ちを根こそぎ変える"というのは朝廷から武家政権と、神官と一部の貴族が民から離れ、武力と経済力を持ち民と地続きの武士へと変わって行く時代の変遷であり、その流れと意志を汲み、武家政権を確固たるものとし、その先へ繋げたのが徳川家康と江戸幕府である、という見せ方なのだと思います。

 天下を握る生まれでなく、多くの犠牲と罪と傷の上に、新しい時代を作理、次代へ繋げたことも。

後鳥羽上皇の報い

 彼もまた、古来から続く天皇家と朝廷を引き継ぎ、後白河法皇の呪いと願いを引き継いだのだと、悲しいほどに分かる最後でした。
武家政権は脆く、朝廷はまだ上位であり、でも権力と武力に欠け、己は神器を欠いた天皇。
強さも弱さも、傲慢さも臆病さも、後白河法皇に縛られて。
 彼は果たして、楽しく生き抜けたのだろうか。

 文覚はまぁ、後鳥羽院個人の因縁でしたね(笑
あれを超える見苦しい因縁はなかなか無いですよー ヒドい!

重臣の報い

 大江広元殿、身も心も元気になってるー!
推し・北条政子一世一代の晴れ舞台、最高だったんだろうなぁ……
いや分かるけれども!(笑
 悪事に傷ついてる義時政子と違って、陰謀すら元気ハツラツでもうズルいですよ(笑

 三善康信の献策。
それしかないと分かっていても踏ん切りがつかない危険な策。
最後に背中を押したのは、ずっと柔和で忠義を尽くした、宿老の知恵と覚悟。
 彼もまた傷つけ傷つき、多くを失って来たけれど、鎌倉への愛と忠義は誰も疑うものでなく。

 頼朝から義時まで。
鎌倉幕府の苦難の歴史をずっと支え続けて来た2人の宿老の、鮮やかな報いでした。

期待していた三浦義村の"報い"

 「報い」
前回から北条義時の報いと同時に、三浦義村の報いとは何なのか、どうなるのか楽しみにしていましたが…
こう来たかー(笑

 かっこつけ、プライド。
それが一番の義村にとって、あそこまで真実をさらけ出して無様を演じて、それでも信じられるというのは、間違いない敗北だったのでしょう。

 …でもやっぱりやったことに対して軽い気がするな!(笑
義時や政子と違って、生き残ったのちっとも苦じゃないでしょ!

北条義時の報い

 おお、おお。
そうですよね、源頼朝の始めた物語を、彼が堕ちて引き継いだのが北条政子と義時で。
義時の物語を終わらせるとしたら、政子でないといけないんだ。

 前回、そして今回も義時は負け続けました。
政子の演説が彼の覚悟も諦念も超えていき、のえの憎しみと義村の嫉妬で体を焼き、あと義村の嘘で人生最大に驚き(笑、
政子の愛で死ぬ。
最後まで人の心が分からず、人の心に傷つき、最期まで人の心で、死んだ。

 鎌倉殿の13人は、鎌倉の権力者の数でなく、死なせてしまった生贄の数。
そして、言ってはいけなかった大罪。
罪と老いの証。

 焦がれ、負けて負けて傷つき続けて真っ黒になって。
老いて憎まれてボロボロになって。
最期は白い衣で、最愛の姉に泣かれながら、堕ちるんだ。
誰も憎まずに、苦しみの中、笑顔で。

 優しさも、願いも、因縁も、苦しみも、罪も、愛も、ああ、全てが報われた。
何もかもが返って来た、帰ってきた。
ありがとう、おめでとう、そこまでしなくても、それでもきっと、ああ。
素晴らしい、悪の北条義時、優しい小四郎の物語。

北条政子の報い

 最後の最後で、政子にも"報い”が訪れようとは。
この時代、あの立場で、権力を振るえるのに振るわないのもまた罪だということなのか。
器が足りなければ傷付き、器にたりる行動をしなければ、失っていくのか。
 人をそのままに愛して、愛した人を救おうともがいた彼女が。
まだ、殺し殺されることでしか、終わらせられないのですか。

 もう終わったこととは言えない時、最愛の弟に安らいで欲しいと願うなら、自らの手を汚すしかなかった。
泣き声が、止まらない。
きっとこの物語の先も。

 ああそうか。
頼朝に始めさせてしまったのも、北条家で引き継いでしまったのも。
政子が始めた物語なのですね。
終わらせるのは、見届けるのは、北条政子なんだ。

遺された報い

 ただそれでも。
御成敗式目が生まれ、泰時が生きている間でも御家人の粛清なく、鶴丸が呪いではなく祝福になっていく。
その様は、やっぱり救いなのだと、義時はじめ多くの血が流された、大きな大きな報いなのだと、そう思えるのです。
私たちが愛した数多のものの罪と苦しみは、報われたのだと。

 泰時の無垢な優しさ、不器用な正しさは、かつて義時そのものだったもので。
義時が失ってきたもので。
愛する、愛すべきものが、次代に育まれ、多くのものを救うのだと。

他、ちょこちょこ。

 義時がきのこ以外を女性にプレゼントしていたら歴史が変わっていたのか、ちょっと考えています(笑
いやー真実を知った義時の、物語最高の驚き顔よ(笑
 ただあの愚かな愛が八重さんに通じたのも確かなので、難しいところですね(笑
きのこだけではのえさんは救えないしなぁ……

 成長著しい朝時(笑
あの無遠慮さが若さ=次代そのものであり、三浦義村=前時代の坂東武士を超えていく象徴になるとは思いませんでした。
まー真面目な義時泰時は義村を扱えませんよね(笑

 りくさん美しー!
ボケたかと怯えましたが、大丈夫そうですね。
 泰時の久しぶりの不器用真面目っぷりが炸裂しましたが(笑
そうですよね、時政パパのこと忘れられませんよね。

 年老いて、枯れて、実衣が良〜い人間になったなぁ。
「どうかしてた」としか、やっぱり言いようがないですよね。
 それでもなお、権力への狂気も、今回の祈願も、全成殿の愛に満ちていて。
本当に良い夫婦だったと思うのです。
 うん、強い絵面の祈願、覚えちゃうよね(笑

 運慶のいびつな仏像。
とても滑稽で、いびつで、おかしくて。
これは確かに義時を救うものではないけれど。
運慶が義時を嘲笑ったのは、無視も死罪にも出来ない心の硬直を笑ったように思います。
一人で見ていると、ぷっと笑ってしまうような、そんな想いの形だったのだと。
愚かさで醜くく、だから愛らしい人の姿だと。

物語

 権力と業を描き切った、素晴らしい歴史ドラマでした。
誰もが大事なものために、時に傷つけ、時に誤り、欲に溺れ、大義に圧し潰され。
残酷な時代を生き抜いた姉弟の物語を、私は一生忘れないでしょう。

 一年間、この辛く楽しい物語を見せてくれて、
ありがとうございました!

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ぶるがり屋 2022/12/11 21:56

鎌倉殿の13人 47話 の感想

鎌倉殿の13人 47話
「ある朝敵、ある演説」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 最終回前回、ついに、承久の乱。
その前夜。

義時追討の院宣、北条政子の演説。
朝廷の時代から武家の時代となる、この国の大きな転換期。
心惹かれる名シーンでした……

北条義時を討て

 後鳥羽上皇からすれば、積もり積もった鬱憤がついに弾けた瞬間だったのか。
致し方なく政治を任せているのに、将軍位の戦いで内裏を焼かせた。
そして平清盛以降、弱体化した武家政権を倒せる好機。
三種の神器がかけた自分が、天皇の誰も果たせなかった果たせる悲願。

 ただこの物語をずっと見ていると、権謀術数の朝庭と、「じゃあ殺すわ」の坂東では、最終的には収められない気がしますけど(笑

鎌倉のために死ぬ

 もしかしたら、とうの昔に小四郎は燃え尽きていて。
友を殺し、父を放逐し、主君頼朝の子ら・自らの親族を殺めて殺めて、心はぽっかりと穴が空いていて。
家も家族も仕事にも安らぎもなく。
 今回後鳥羽上皇の策に後手後手だったのは、疲れ切っていたからなように思えます。

 でももう、姉と太郎が立ってくれた、任せられる。
自分は降りられる。
そう思って、少し願って、いたのでは。

鎌倉のために生きる

 でも、すっと手を取り合って、時に争ってきた姉・政子は違った。
何度も死のうと思って死に切れず、求められて生きながらえて。
ついに、一番大事なものを守るために、尼将軍となって。

 だから、今回だって立つのですよね。
一番大事な家族を死なせない為に。
その中の一人、可愛い弟、小四郎を守る為に。

 誰かの言葉ではなく、頼朝への恩を最上段に振りかざすのではなく。
義時の不足と苦しみを語り、鎌倉の悲願を願い、ともに坂東の誇りのために戦おう。
大義ではない、自分たちの誇りと一番大事なものの為に戦おう。
失って傷ついて、傷つけて奪って傷だらけになって、ここで終わりだと諦められた時、
夢見て願って、守って築いて、いつかと願ってきたものが、ここにあると見せてくれた。

 姉の顔、息子の背中。
北条政子の報い。
北条義時の報い。

お見事でした。

 小池栄子さん、素晴らしい役者になったなぁ……。

推しが天下の演説言ってくれたら死ぬ

 義時がやっと報われましたが、今回一番幸せだったのは間違いなく大江広元さんですね。
せっかく書いた演説文が捨てられたのも、アレはアレで最高に幸せで。
「押しが私なんかより高みにある〜〜!」

 無私とはいえ、あれだけ邪悪なことやりまくって、推しの晴れ謡を横で支える、
一番幸せポジション〜!
ニクいよ!

次回最終回、「報いの時」

 華々しい、「鎌倉を守って」の死。
義時にとって、願っても無い最高の死。

でもそれよりも、姉は息子は自分を守って戦うと決めた。
多くの御家人たちが、戦うと賛同してくれた。
それが何よりの報いなのだと思います。
頼朝を失って数十年、やっと義時が報われた時。

 だからこそ、最終回の「報い」が恐ろしい……
仏像はどんな姿になるのかな。

 一番怖くて期待しちゃうのはもちろん「主人公・義時がどう報われるか」ですが、気軽な意味で一番気になるのは─
裏切りまくり振り回しまくりの三浦義村がどう報われるのか、ですね(笑
弟殺してもそんなに気にしなさそーだしなぁ。

 小四郎の、一番古い友で最後の友な腐れ縁。
2人の"報い"が、とても怖くて楽しみです。

他、ちょこちょこ。

 最後が気になるのは、トウとのえさんですね。
死ぬと決めた義時の背中を見て涙を流したのは、夫の覚悟と、一族の不運と、それを理解出来なかった、最後まで突き放された、悲しみだったのかな。

 トキューサの愛嬌とふてぶてしさが本当に小憎らしいし、可愛らしい。
可愛いから余計に、ちょっとムカつきます(笑
自分の愛嬌理解してるんじゃないよ!

 初と泰時、もっとずっとイチャイチャして〜!
すっと見てたいです。
ほぼ唯一の、最初から最後まで癒しでいてくれて、ありがとうございました。

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ぶるがり屋 2022/12/04 22:37

鎌倉殿の13人 46話 の感想

鎌倉殿の13人 46話
「将軍になった女」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 源頼朝、頼家、実朝はすでに亡く。
京から関東、朝廷から武士の時代へ移り変わる最中、承久の乱は目の前。
最愛の夫の遺した鎌倉を守り、民の為に、家族を守るために、
尼将軍・北条政子誕生。

三浦義村、また裏切る

 実衣ちゃん、阿野時元くん、
それはダメだよムリだよ諦めてー!
史実を知ってなお、当人たちもやる気満々でも、そう思える完璧な死亡フラグでやるせないですよ。

 実衣ちゃんが愚かなのは確かですが、戦場から遠く、また北条家の真の闇と義時と政所の酷薄を見せなかった結果、なのでしょう。
伊豆の小差な豪族の娘のままで。
だから失敗し、だから政子の救いでもあった。

 三浦義村の裏切りっぷりと義時とのグチャグチャな絆を知らなかったのはまー仕方ないですし(笑
いやホントひどいやつだよ三浦義村!

後鳥羽上皇との駆け引き

 権力の駆け引き。
今回の地頭問題ならなんとか損するのは北条義時だけで済みますし、ここで手を打つべきだ、と理解はできたのに、突っぱねた。
 「頼朝様ならこうした」「頼朝様の野望に基づくならこうすべき」
と決めてるから、一度決めたことは覆せないのでしょう。
問題が自分の損得でも、ルールは自分の中に無いから。
こうなると、やっぱり最高権力者としては、不足も不足ですね。
王となる意欲なく、人を率いる理由なく、夢を見せる力も無い。
ただ誤ったものを、誤る可能性を、排除するだけの空虚な大穴。

 それでも「規範は大事だけど結果のみが最優先」な大江広元、兄上最優先だけど人の話をよく聞く(同時に流されやすい)時房が側近で良かったですよ。
ちゃんと前提条件と他の選択肢の合理性も教えてくれる。
「裏切らない」人だけを残してきても、イエスマン以外がちゃんと生き残ってくれて。
泰時は現状邪魔ですし。

 トキューサが色々な意味で後鳥羽上皇特効なのも豪運ですね(笑

次代の希望、北条泰時

 闇の沼に染まり切った今の義時からすると、ホント邪魔ですね(笑
暇になった泰時に駆けつけたのは、愛妻・初。
真面目で朴訥な泰時、ツンデレな初、イチャイチャがすぅ〜っと効いてきます。

 そして北条政子の福祉策のお手伝い。
鎌倉幕府の罪と闇から離れ、評判を上げる状況ですね。
もう、この作品の癒しは死んで死んで、君たちしか居ないんだ。
もっとイチャイチャ幸せで居てくれー!!!!

三浦義村、また裏切る(予定

 最大の権力を手に入れた北条、義時の血筋。
その後継の座を狙って後見に選ばれたのは、三浦義村でした。
Σいやダメだよそれぇ!
 のえさんは人脈乏しくても仕方ないけど、13人の数少ない生き残り、二階堂行政も人を見る目が無かったか……
いや北条義時に意見言えて泰時の敵となれる人となると正しい筈なのですが、そいつ信用して裏切られなかった人居ないのですよ今日もう何人か死亡済みなんですよ!

伊豆小さな豪族の行き遅れ

 ただ愛する者たちの為に生き、失って失って失って、「何もしてこなかった」と罪を知り。
頼朝が始めた物語を、引き継いだ政子と義時の物語を、自らの手で決着を付ける為。
義時を悪逆と罪から止める為。
民の為、最後の家族の為に。
政子は、ついに死と隣り合わせの舞台に立った。

 全てを捨てる覚悟で守った妹は。
半年以上幽閉され枯れるように疲れ切った妹は、その覚悟が分からず距離は遠くて、
やっと一緒に交わせたのは、オンベレブンビンバのまじない。
不恰好で間違いだらけの、家族の暖かな記憶いっぱいの、愛の祈りの言葉。
ああ、伊豆から遠く、遠く、何度も遠くまで来たと思ったのに、またまた遠く。
きっと生きている限り、遠くまで行くしか、無いのでしょう。

 それでも。
市井の民は政子に憧れ、その生き様を愛した。
伊豆の、小さな豪族の、行き遅れの行き遅れの希望だと。
この戦乱で何もかも多くの人が失ってばかりの時代で、励まされ、励ました。

 主人公・義時が闇を纏った最大の理由であり、同じ夢と罪を背負う、はずだった政子だからこそ。
多くのものを失ってきた政子だからこそ。
伊豆から遠くまで来た今、政子の道が美しく、尊いのでしょう。

 頼朝と出会ってから数十年。
北条一家が何を失い、何を得たのか。

少しだけ、救いが見えたように思います。

 大江広元さん、推しがどんどん尊くなって嬉しそう(笑

トキューサ

 ここまで義時の罪を一緒に被りながら、無邪気な時房がちょっと怖いですよ(笑
でもこれぐらい無邪気で大人気なくないと、後鳥羽上皇に「オモシレー男」扱いされないしなぁ。

 地味に政子に姉弟扱いされてないのが悲しいですが、義時のはいかや公人扱いなのか、年が離れ過ぎてて甥っ子感覚なのか、どれだろう。

義時の物語の終焉

 鎌倉時代、武家の時代が確固となる時が。
次回「ある朝敵、ある演説」。
承久の乱、ついに開幕。
遠く遠く、ここまできた義時の人生という物語も、もう少し。

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ぶるがり屋 2022/11/27 23:48

鎌倉殿の13人 45話 の感想

鎌倉殿の13人 45話
「八幡宮の階段」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 建保七年一月二十七日 雪降る鶴岡八幡宮の階段で
呪いが墜ちる、皆の頭上に

源仲章、天下を取る男

 大きく時代が移り変わり、その中で見事立ち回り、最高権力を握る!
政敵を追い落とし頂を登る寸前、笑いが堪えきれない仲章がまー可愛いやら滑稽やら(笑
でも運命のいたずらと人違いで斬られ、無様に逃げ転んで、寒いと叫んで死ぬ。
あまりに見事な雑魚悪役の死にっぷりで、人間臭さの塊で、ちょっと好きでしたよ。

審判の日、下された天命とは

 実朝は、太郎のわがままを聞いた。
生きたい理由は山ほどある。
それでも、自分のものでない罪で、自分の死を以ってでも贖いたい、受け入れたいと願う。
それは善性だ、だけれども。
鎌倉の呪いそのものになってしまった公暁には届かず、救われないんだ。
誰も、救われないんだ…

 審判を受け入れ、自分の天命を選びとってしまった実朝の優しさが、救われなさが、辛いですよ。

 紀行で映される実朝を祀る寺の姿に、「武衛」の文字が。
あれは誰が書いた、誰の為のものなのだろう。
鎌倉の罪が詰まった、あの言葉を。

その名は公暁、今も歴史の教科書に名が残る者の名

 愚かでなかったとは言えない。
罪が無いとは言えない。
それでも、ずっと押し込められてきた青年の、やっと言葉に出せた本当の誇りと苦しみに胸が突かれ、涙が出そうでした。

 武家の名、源頼朝の血、頼家の無念。
ああ、なんてこと。
全て北条義時たちが鎌倉を守る為、御旗に立て、奪ってきたものじゃないですか。
それらが積もり積もって、最悪の形で鎌倉に報われた。

 あまりに遣る瀬無い結果、だけど、確かに名は残ったよ、公暁。
これが罪なのか呪いなのか、分からないけど。

闇の沼のほとりで

 惨劇を知りながら、麓で眺める三浦義村と北条義時。
全てが終わって、本当の気持ちを糾す幼馴染、親戚、旧友、盟友、だった2人。
奪う気だったのか、殺す気だったのか、何処まで、何処まで。

 三浦義村が衿を直す。
「あっ!」と声を漏らしてしまいました。
義村もずっと願い叶わず苦しんでいた野望をついに諦めた瞬間でもあり、義時がそれでも縋りたかった友はもう居ないと知った瞬間でもあったのですね。

 人生を全て捧げて、掛けて、
権力を握り、ほしいままとなって、そこに喜びは無いと理解して。
残った2人は幼馴染でももうなんでもなく、
闇の魔王と、古幹部。
本当に、本当に、救いが無い……

北条姉弟、頼朝を継ぐ2人

 頼朝の願いを、最後の望みを聞いたのは北条政子と義時。
その意志を継いで鎌倉を守ると決めて、はや20年。
どれだけ犠牲にして、どれだけ失い、傷つけてきたのか。

 血と闇の沼の上に立つ鎌倉幕府。
鎌倉の罪を一身に抱いた実朝と、鎌倉の呪いを一身にまとった公暁の、結末。
頼朝の血を引き継いだ最後の2人の最期。

 政子が守りたかったものは何だ。
義時が守りたいものは、本当に残っているのか。

頼朝が掲げた髑髏は、虚ろな呪いだったのに。
頼朝はもう、何処にも残って居ないのに。

僕らの泰時

 今回も大事な主君を救えませんでしたが……
それでも真っ正直に抗い、不足を少しづつ知っていく姿が眩しいですよ。

 泰時は救いで願いですが、頼朝の願いと呪いから解き放たれた所に居るから、だと思うのです。
義時が全てを犠牲にしてまで成ろうとしているもの、求めているものの、先に有る希望だと。

トウの役割

 子が孫が、自分たちの選択の結果、みんな死んだ、居なくなった。
逃げようとして自分の罪を知らされた。
死のうとした政子を止められるのは、誰か。

 実衣の役割だったかもしれませんが、次回を考えると無理なのですよね。
そこで、権力から武家社会から遠い女性が、ほんの些細な、普通の言葉を告げた。
祖母が孫を守るのに理由は要らないように。
人が自殺を止めるのに、理由は要らない。

 殺されて殺して殺して、殺せないトウ。
政子の悲痛な鳴き声の下、千鶴丸から始まった呪いの連鎖は、止められるのかもしれない。
この地獄のような鎌倉の中で、たった一つの救い。
そう思わせてくれる情景でした。

三善康信はまだ辞められない

 大事な主君であり愛弟子の実朝に、己の加担した罪を告白し、そのまま亡くなられて。
心破れる中でも役割を全うし、次の時代も繋ぐ老人。
ああ、この老人は、優しいだけじゃ無く、この時代を生き抜き鎌倉を産んだ、鬼でも有るんだなぁ。
義時と同じ、鬼になんてなりたくなくて、それでも大事な人々のために鬼となれる人なんだなぁ。

 救われて、報われて欲しい。
でも義時と同じ罪を犯してきた彼は、救われてはいけないのかもしれない。
うう、辛い……。

義時の願い、運慶の答え

 殺して殺して殺して、一人止められた惨劇を止めず、殺した、殺した。
友はとうに無く、一心同体との姉とも断罪の言葉を吐いて、妻を嘲り遠ざけ、愛息子は願いどおり牙を剥く。
時房も朝廷関係は反論する(笑

 頼朝が最期近くまで天に縋ったように、義時ももう天に仏に縋るしか、無いのでしょう。
そこで運慶を金で動かすのがまた救いが無いよ義時!

 迷いがない、ひどい顔になったもんだ。
いつか運慶が良い仏を彫って、義時を救って欲しいと願ったのはいつだったか。
こんな経緯になってしまうとは。

 ただ運慶の底を見たつもりの義時ですが、やっぱり金で動いたとは思いません。
まー世界最低レベルのひどい顔も彫りたいかもしれませんが(笑
 運慶の彫る義時は、神か仏か、悪鬼か仁王か。
闇の沼で真っ黒に汚れた義時の、誉にはならないでしょう。
それでもやっぱり、救いになって、欲しいなぁ。

地獄が終わると思った?

 ずっと息を飲む45分でした。
でもこれから実衣の子・阿野時元の乱から承久の乱が有るのですよね……
義時が心休まる時は、来るのか。
本当に今年でこの物語が収まるのか(笑
怖い。
怖いけど、楽しみです。

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ぶるがり屋 2022/11/20 22:19

鎌倉殿の13人 44話 の感想

鎌倉殿の13人 44話
「審判の日」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 実朝くん死ななかった、死ななかったけど
死ななかっただけやんけー!
これ、来週に続くの?
この気持ちのまま一週間過ごすの?

実朝暗殺事件の黒幕

 北条義時黒幕説、三浦義村黒幕説、公暁単独犯説。
どれでもあり、どれでもなくて。
予測も心も次々振り回されて、気が気でない45分でした。

 多くの者の正義と野望が、愛と憎悪が入り混じり、運命が誰の手からも離れてしまった。
そして誰も望まない、幸せにならない未来に繋がってしまった。

 多くの者の思惑行動が入り混じって最悪の結末へ。
今までもあった展開ですが、だからこそ、今までの全てが寄り集まって、ここに至ってしまったのだと分らされます。
あんな罪を犯して、あんなに犯してきて、歪みが、憎しみが残らないはずはなく。
いつかしっぺ返しが来るに決まっていました。
そう、決まっていたのでしょう。

44話、審判の日

 生き延びる為に戦い殺し、復讐の為に騙し殺し追いやり、主君の遺した夢の為に殺して殺して騙して殺して追放して。
盟友も戦友も幼馴染も甥っ子も甥っ子の妻も子も殺して。
その度に心傷つけて、苦しんで。
その我らが主人公、北条義時が、流されるでなく、致し方なくでなく、自分の憎悪で人を殺すと決めた時。

 40年40話分のぐちゃぐちゃドロドロが、今まで仕舞っていた罪が、悪意が、
罪の報いが、ついに落ちる日。
義時に、北条家に、13人(の生き残り)に、源仲章に、鎌倉に。そして、
実朝と公暁に、一挙にのしかかってしまった。
あんな若者に、あんまりだ。

 ふと思うと、全て源頼朝の行動の結果、そのぶり返し、しっぺ返しなのですよね。
この時代と、その憎しみを作った張本人、頼朝の。
因果応報、ただ、罪を犯した当人にでなく、血を引く最後の2人の若者に降りかかってしまった……

 公暁くんも愚かは愚かなのですが、苦労していた母と孤独だった自分の心が最後の境界線だったのでしょう。
それを実朝は踏んだしまった。
感受性が強く、寄り添いたいが為の言葉が、公暁を、そして実朝を追い詰めてしまった。
今までの憎しみと不信が、歪ませてしまった……

 審判。
義時は自分で望んで動いた結果ですが、政子が進めたのは頼家の廃位ぐらいですし、おまけにこれ子が4人目、しかも目の前で死んでしまうのでは…

 三善康信も、鎌倉時代を作る犠牲を生み、頼家を廃する側であったのも、事実なのですよね。
だから泰時を育てる時、皆であんなに優しく根気よく頑張った訳で。
 その罪が、最後の最後で、最初から最後まで実朝に優しかった三善殿が、罪を伝える役になったことが、辛いです。
自らの罪を自覚し、最愛の弟子に告白し、恐らくはなじられ、その末に死んでしまう未来に。
三善殿は、どうなってしまうのか。
 死体よりも心無いあの顔が、いつも満ちていた優しさが剥がれ落ちたあの顔が、忘れられません。

明日から源仲章の天下!

 今まで本っっっ当に憎らしくて嫌なキャラでしたが、やっと内心を見せてくれました。
目的は割と分かり易い男の野望で、さらに有能で、おまけに煽りが最高にムカついて、ちょっと好きになって来ました(笑

 義時の衝撃と仲章の顔。
見返してもムカつくを超えて笑ってしまいます。
 今回主人公の義時の方がまー悪逆非道ですから、その邪魔をする仲章の方が分があると言うか、「敵の謀略を利用して天下取ったった!」ならあの煽り顔も当然ですし(笑

 事件の結果がこうなってしまったのも、義時が仲章を見誤った、思いの外有能だったから。
来週楽しみなのは、「公暁が何故仲章を殺したのか」が分かるぐらいですね。
ある意味癒しです(笑
まぁ暗いですし、仲章もこの状況なら身を呈してでも実朝守るかなぁ。

鎌倉殿の女たち

 北条政子と実衣の仲が良くて、ほっとします。
実衣の無神経さと、やっぱりお姉ちゃん大好きなのが本当に癒しですよ。
実衣が政治に強かったら政子と敵対、殺し合う可能性も高かった訳で。
 ただ今回一緒に鶴岡八幡宮に行ったことが、より大きな不幸に近づく予感がして、ただでさえ怖い来週が怖いです。

 千世さん、心が通じて良かったねぇ、良かったんだけど、ああ。
何度も書いてますが、この作品で夫婦仲だけはほぼ皆良くて、救われます。
だからこそ、来週以降の千世を見るのが、一番辛い……

 その唯一仲良く無い、心通じてない夫婦。
のえさんは決して良い妻ではないけれど、仲章にちょっとだけ漏らしちゃったけど、それでも最後まで頑張った訳で。
分かっていましたが、義時が本当に心通わせていなくて、悲しくなりました。
のえの悲しみも痛みも理解せず。
浮気だけど、全くのえさんが悪いと思えないですよ。
今回、本当に、義時を良いと思える事実が無い……!(笑

次世代の北条家

 あ、北条時房くんも救いでした。
ある意味、夢も野望もある義時ですね。
尊敬する兄に着いていく、一緒に地獄を進むと決めた。
その罪を誰より理解していても。
トキューサ、今までで一番格好良かったぜ…!

 泰時もどんどん有能になってきて、これも義時の薫陶のおかげなのですが、それでも届かない事実が、辛い。
あんなに手を替え品を替え手を伸ばして頑張ったのに。

 運命を継ぐ鶴丸くんも有能で実直で抜け目なくて、これなら泰時くんを任せるのも納得です。
対して北条朝時が抜けてて昔の時房みたいに可愛けど心配になります(笑
もっと成長しろ!泰時を支えて!

不可思議者、三浦義村

 前回からの事件の企み、完全に三浦家と自分の野望の為だった、で正解かな(笑
武家および三浦怪我権力を伸ばすのに、最大最後の時だと賭けた。
そして失敗の可能性も考え、公暁を切れる保険はかけた、と(笑

 一応武家の権力、鎌倉殿を守る為にもなりますが、義時を殺すのもほぼ間違いない訳で、もう心底信用ならないな三浦義村ァ!(笑

北条義時の暗黒

 今の義時を運慶はどう見るか、気になっていましたが、
やはり言えないほど"悪い顔"でしたか。
そうなのですよね、ここに至って、悩まず悩まず、自分が正しいと決めてしまった。
自分の憎滲みで、殺すと決めた。
でも、修羅になると決めたその瞬間に、運命は彼の手から離れてしまった。

 実朝を殺すのは、止めるのは、もはや義時では無い。
殺すと決めた、死んだ、その罪だけが彼に残る。
この苦しみが義時に何を与えるのか。
怖い、でも、見続けたい。
そう思います。

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