ぶるがり屋 2022/09/04 18:42

鎌倉殿の13人 31話 の感想

鎌倉殿の13人 31話
「諦めの悪い男」の感想です。


見逃し・同時配信 - 鎌倉殿の13人 - NHK

【作】三谷幸喜
【音楽】エバン・コール
【出演】小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行 ほか
(C)NHK

鎌倉殿の13人

 はじまりはいつも笑い
死んだ爺さん。佐々木爺さんの孫かー!
佐々木秀義の孫で、名医と謳われたという善住。
 前回の流れに今回と、流石にコメディ冒頭はないと思っていたのですが(笑

それでも変わらない、比企と北条の諍い

 自分たちの主であり、孫であり養い子である頼家の危篤。
源頼家の治療所ですら諍いの道具に。
いや、自分たちの権力の基盤だからこそ、争うのか……。

 頼家の体の弱さも北条のものか、比企のものか。
悪いところも争いの、主導権の取り合いのようで。
大事なもの全て自分たちのものだ、という執着心や独占欲なのかな…

 それでも痛みは痛み、愛は愛で。
そんな道に、政子は寄り添うんだなぁ。
政敵でも欲まみれでも、傷ついた心に。

吹き荒れる憎悪、消えたオアシス

 諍い程度では済まず、全成と実衣の子まで殺されて。
ああ、実衣の心も目も言葉も、憎しみに満たされてしまった…
最愛の夫までは自業自得もあったけど、今回は完全に権力争いのためだけ、無実の子供ですものね…
仕方ないとは分かるだけに、心のオアシスだった全成・実衣の夫婦のにこやかな家庭は、もう本当に失われてしまったのだと、打ちのめされます。
うう、あんなに一緒だったのに……

 そしてもう、小四郎も止めれない。止まらない。

北条義時の、決意

 また暗い廊下で、小四郎は覚悟する。
比企一族・族滅。
計略は多くの者に頼るのに、肚の中だけは誰にも明かさずに。
「頼朝様は正しかった、常に先に仕掛けた。これはあの方の教えです。」
「一幡の命は助けてあげて」「誓います。」
「頼朝様ならそうされていた。」

大事な大事な家族すら騙して、自分だけ罪を背負って、もう居ない頼朝の言葉に縋るように正しさを絞り出して。
うう、重い、暗い、辛い……。

 そして正しいと信じるから、他者にもその正しさを求めてしまうのか。
その重く痛みに満ちた正しさを、継がせようと言うのか。
主君の子を殺せと命じるのは、息子にも呪いをかけたことにはならないのか…
愛する妻・比奈にかせた願いは、あまりに重い枷で、それはもう呪いではないか……

 大義は、虐殺のその先は。
北条の世
その情熱は、宗時の野望が義時の肚の中でくすぶり続けて居たのか、それとも頼朝の血筋を殺さざるを得なくなり、すがった夢なのか。
少し考えました、両方なのかな。
頼朝の残した世を存続できるなら、それで良かった。
それが果たせないなら、これしかない。
そんな風に思うしか、無かったように。

比企比奈の覚悟

 そんな痛みに沈んだ、最愛の夫の痛みを知っているから。
比企の恐ろしさも、知っているから。
比奈も同じように、自分の心は秘めて、見せるのは決意で固めた、仮面の笑顔。
「急ぎかな、そうでもないかな」
「父上は、変わられましたか」「人は変わるもの、それで良いのではないですか?」

どれも嘘ではないでしょう。
でも本心というよりは、せめてもの願いだったように思えるのです。

 それでも、それでも。
比企を討たねば、夫も子らも死ぬのだ。
間違いなく。

 同じように悩み苦しむ、でもずっと純粋で優しい、そしてもしかしたら自分とは違う選択をするかもしれない泰時を送った笑顔は、一瞬だけど本物だったように思います。

比企能員と北条時政

 源頼朝、鎌倉幕府の草創の後ろ盾となった宿老2人。
仲違い激しく素直に話せず、決着が見えて初めて吐露した重い。
比企能員の長い長い煩悶と、北条時政の答え。

頼朝緒戦に加われていたか、否か。
守るものが多いか、否か。
思い切りが悪いか、策を選ばぬか。

 2人だけの鎌倉殿の広間で、やっと膝を交え、目を見合って、言葉を交わせたのだと思えます。

 心露わな会話で、能員は時政を人として愛し、時政は能員を殺すべき敵として覚悟した。
友になれなかった訳でなく、憎むから敵な訳でなく。
最初から最後まで、ずっとすれ違ってしまったんだ。

 ただ同時に2人とも、駆け上がることだけ考えて居て、新しい時代を作る、維持する考えがない、旧世代の人間であると描かれていて。
時をおかず時政も、この舞台から転げ落ちると示されたのだと思います。

謀将・比企能員

 今回の主人公は誰だったか。
"今回は"とすれば、やはり彼だったと思います。

 憎らしく可愛く、小悪党で諸悪の根源で憎らしく、切なくてやっぱり子憎たらしい。
小心者で欲深く情深く迷って悩んで苦しんで、死に物狂いで一族を守って、他者を軽々しく殺すのにその罪に気づかなくて、権力にしがみついて縋り付いて縛られて。
どこまでも人間らしく、愛らしく、憎たらしく。

 佐藤二朗さん、最高の演技、生き様と死に様でした。

比企、族滅

 うう、ああ。
族滅とは、言葉だけでも痛々しいものですが、ここまで痛いものなんだ……
女が覚悟し、死に、死に、子が何の覚悟もなく、死んでいく。

 道さんもずっと憎たらしかったけど、能員の最高の妻でしたよ。
せつさん… 幸せに、幸せになって欲しかったよ・
一幡、ああ、ああ。
比企尼はここまで生き残ってしまったけど、長生きした末に、こんなことになるなんて……

重なる地獄

 これで良かったのですか
これしか道はありませんでした。
本当に?

 小四郎も、政子も、比奈も、泰時も、殺す側についた仁田忠常、畠山重忠、和田義盛も、誰もが罪を背負って。

 そして、そして。
何もかも終わってしまった後に、頼家が目覚めてしまうのか。
妻と愛息、乳人一族を滅ぼしたと。
それが母と叔父、祖父たちの一族が行ったと。
剃髪など、笑い話にもならないじゃないですか。

 誰にとってもの、地獄。
誰も頼家の病状を確かめなかったから。
頼家が鎌倉殿としてあまりに軽く、鎌倉の不安定な権力は誰も治められなかったから。
因果応報だなんて、だから仕方ない結果だなんて、誰が言えるのか。

 地獄って、底が無いんだなぁ、いくらでも連鎖して重なるんだなぁ。
辛い… 辛いよ!

他、ちょこちょこ。

 三浦義村、まったイキイキしてんなぁ!
書状のコントはどちかというと義時とイチャツキたかったのでは(笑
「刎頸の交わり」というけど、「なんかあったらお互い躊躇なく殺すけど、お互いあいつなら仕方ないなぁと思ってる関係」な気がします(笑

 八田知家はなんでいつも格好良い&はだけてるのん?

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