尾上屋台 2017/04/16 21:37

それは、いつまでも宝物

ガラにもなく、ひどく落ち込んでいる。
おかげで、昨日からずっと胃が痛いのだ。
が、こんな時に、いつも見るメールがある。
ツイッターでも何度か触れた事があるし、ここでも、今年の始めにそれについて触れた。
しかしながら、「いつかこれについては書こう」と言い続けて書いてこなかったので、この機会に、 きちんとここに書いておこうと思う。

一昨年になるのか、2015年末に、一通のメールをもらった。
まったく見ず知らずの人だったのだが、タイトルには、「プリンセスブライトを拝読しました」とある。
開けてみるとはたしてそれは、プリンセスブライトシリーズの、感想なのだった。

まさか、と一瞬我が目を疑った。
本当に嬉しい事にはあまり慣れてなく、すぐには気持ちがついていかなかった。
そうなのだ。
これは待ちに待った、作品に関する感想なのだった。

いや、ピクシブやツイッター等では、ちょっとした感想は、いくつかもらっていた。
それらについては、いつも感謝している。
ただ、中には、いわゆる社交辞令的なものも含まれるので、それが嫌だということはもちろんないわけだが、なにか無理に付き合わせてしまったかのようで、時折、申し訳ない気分になる。
ありがとうと返しつつも、「いやー、こんなもんに時間や金をかけさせてしまって、本当に申し訳ない」なんて気持ちも、微妙に混じってくるのだ。
感謝と申し訳なさが、同居してしまう。
無論、感謝の方が大きいし、そういうものがないと何かを作り続けるというのは本当にしんどいことなので、それすらない時は、本当に落ち込んでしまう。
こんな気持ちになるのは自分だけなのか、と思っていると、漫画家で、ぽんぽん単行本出しているような人でも同様の気持ちになるらしい。
たった一言でも、とすがりたい気持ちになるのは、よほど売れている作家でもない限り、皆ある程度同じなのかもしれない。
もうひとつ感情を付け足すとすると、「ホッとする」。
たった一言でも感想をもらえると、本当にホッとするんだな。
その意味では、コメントくれる人には、助けられているよ。
あらためて、ありがとうと言いたい。
いや、これについては場をあらためた方がいいかな。

作り手ではない人には中々想像できないことだと思うが、作品に関する感想文というのは、基本的にまずもらえるものではない。
以前、大学時代の友人たちと飲んでいる時にも、「そういう仕事してると、ファンレターとかもらえたりするの?」なんて聞かれたりした。
とんでもない(笑)。
かつてはエゴサーチなんかもしたことがあるが(名前の出ない仕事のみなので、作品で検索する)、基本的にこの商売、名が売れてない限り、叩かれることしかない。
無視、触れられないか、叩かれるかしかないんだよね。
それでも仕事できたりしてるのが不思議なのだが(笑)(笑えない)、 いつの頃からか、そんなことはどうでもよくなった。
よほど名が売れ、しっかりとファンでもつくような所に行き着かない限り、所詮は裏の仕事なのである。
いくらその仕事に全身全霊をかけようと、浮かばれる者の数は、ごくごくほんの一部なのだ。

以前ピクシブで知り合った人に、作品の感想を送った事があったのだが、その時は大層驚かれたし、感謝されたりもした。
その時期は自分も仕事がまったくなく(それ以前にはクライアントを挟んでほぼ個人的な依頼をこなす日々だった) 、なのでそういった風に感謝されるのもピンと来なかったのだが、その後に、自分も仕事や同人をやるようになって、その気持ちがわかるようになった。
なるほど、いくら絵を描こうとも、たとえばピクシブのちょっとしたコメント以上のものは、まったくないのだ。
感想を送った人は、アンソロジーコミックやCG集でもかなり売れてる人たちだったので、こんな感想送ったとこで読まれるかもわからないけど、一応良かったって気持ちは伝えておこう、くらいの気持ちだったんだな。
どうせ感想とかそれこそファンレターのようなものは唸るほどもらっているはずだと思っていたので、逆に送るこちらとしても、そんなに大きなものだとは思ってなかったんだな(笑)。
一人目に感激された時は、たまたまというか、そういうこともあるのかくらいだったのだが、二人、三人目と「こんな感想もらったのは初めて。とても嬉しい」的な返事が返ってくると、「ああ、そういう世界なのか」ということに気づかされた。

その意味でも、自分の場合、ピクシブとかでもコメントもらえると、とてもありがたいと思うんだな。
絵に関してはパッと見でみたいのがあるわけだけど、小説なんかだと、これは本当に嬉しい。
それはきちんと最後まで読んでもらえたってことだからね。

と、話が脇道に逸れすぎる前に、戻そう。
そう、一昨年の暮れ、ついに、自分も作品の感想文ってヤツをもらうことができたのだ。

いや、実に内容をよく吟味してくれた感想だった。
シリーズ通してのテーマや、小説の方にも通じるもの、ともかく各作品、実に読み込んでくれているのがわかった。
さすがに、驚かないわけにはいかなかったよ。
そうか、こんなにちゃんと作品と向き合ってくれてる人がいるんだなって。

特に自分の場合、CG集の方はややコメディタッチ、小説の方は無駄な装飾を一切省いて行間で表現することにこだわってるんで、いずれも、「こういうことを描いてます」みたいのは、表に出にくい、もっと言えば説明していない作品なんだよね。
これは、あまり説明してしまうと受け手に自分の価値観を押し付けてしまうことになるので、自由に解釈して下さいってことなんだけど。
そういうとこ、怖いくらいよくわかってる人で、かつ、書いた自分でも意識してなかったとこまでしっかり見てくれていて、あー、こんなに理解してくれてる人がいるんだなって。

あ、一応言っとくと、作品は好きに解釈してくれて構わないんだぞ。
どう受け取ったか、どのキャラクターにどういうイメージを持ったか、みたいのにこちらとしては興味があるので。
変な話、いい意味で勘違いしてほしいというか、そういう方向にミスリードしてるものってのも多々あるんで、仕掛けもあるけど、ホント、好きなように解釈してほしいんだ。
それが聞きたいってのもあるし、もしイメージの沸くキャラがいたら、どうぞお持ち帰り下さいって感じだからね。

ただこの人の場合、ものすごく作品に対する理解が深かった。
ああ、こんなすごい人に感想もらえたんだって、それはすごく励みになったし、数少ない、俺の誇りでもあるよ。

落ち込んだ時、気が塞いだ時、 自分はこのメールを見る事にしている。
内容そのものがうれしいというのはもちろんあるのだが、こんなにちゃんと見ていてくれてる人がいる以上、絶対にいい加減なものは作れないという気持ちにさせてくれるのだ。
そういう意味では、支えだな。
これはいつまでも、自分の中の宝物であり続けると思う。

絵でも小説でも、はたして俺は、誰かの宝物になりうるようなものを作れてこれたかな。
今はそうでなくても、いつか、今これを読んでいる君にとって、そういうものを作りたいと思っているよ。
それが、俺にとっての夢だな。

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