尾上屋台 2017/07/06 04:56

「アリスと蔵六」

・アニメ公式


よくあるパターンとして、 主人公が敵対する誰かと戦う時、妙に説教臭くなったりするじゃないですか。
主人公なんで、テーマというか、そういったものを、その敵対する相手に向かって、言葉で説明しちゃうというか。
剣とかぶつけ合いながら、お前はこういった理由で間違えている、みたいなことを叫ぶ、アレですよ。
相手を、拳で打ち負かした上に、口でも言い負かすみたいな(笑)。

まあ口が達者な主人公だったらそういう感じにもなるかなーって思わない時もないんですけど、え、こいつがこんなこと言っちゃうの?みたいな時は、んー、そこで一生懸命説明しちゃわないで、それまでの行動で伝えればいいんじゃないのって思う時も、ないわけではないです。
つっても相手に言い聞かせるってよりかは、テーマを読者なり視聴者なりに伝えるってことでそういうパターンになるんでしょうけど、作品によっては、ちょっと無理矢理感みたいなものを、感じる時もあるわけで。

その点、この「アリスと蔵六」は、蔵六っていうジジイがそれをやってるって点で、ああ、これありそうでなかったかもって。
おまけに、この蔵六って爺さんは、説教臭いのが似合うんですよね(笑)。
少年みたいな主人公がいきなりジジ臭い説教かますんだったら、実際ジジイにやらせりゃいいじゃんみたいな(笑)。
またこの蔵六がね、すごく正しいことを言うんですよ。
で、間違えたかもって時にはそれを反省する、素直さもある。
で、主人公の紗名と、いいコンビになってるってわけです。

話としても、ただ派手なアクションでごまかすっていうんじゃなく、人間ってものを、かなり丁寧に描いてると思います。
逆言うと、設定的にもっと殺伐としてもいいところをあえて抑えて、きちんと人と人とのやり取りを描こうっていう。
どっちかに偏りすぎず、それぞれのシーンをきっちり描いてる。
これ、実際には結構難しい構成だと思うんですよね。
そこのとこ、すごく絶妙な塩梅で描いてて、ああ、こういったきちんと物語を描いてる作品って、これもあるようであんまりないなあと。
なんていうのかな、物語の完成度みたいのが、すごく高いんですよ。
結構いい物語見せてもらったなあって。

自分的ヒロインは、ミニーCこと、ミリアム・C・タチバナですね。
能登麻美子の芝居も、すこぶるいいんですわ。
ちょっと陰のある大人の女性やらせたら、今五本の指に入るくらい上手いんじゃないかしらって。
能登麻美子の代表作って言える作品はたくさんあると思うんですけど、僕的には今までの彼女の演技で、一番胸に響きました。
ミニーCの抱えるどうしようもないやるせなさってのを、ホントしっかり演じてくれたなって。

アニメとしては、さあ続編って終わり方じゃなかったかもですが、この話の続きも、ぜひアニメ化してほしいところですよねえ。
あー、1クールの放送って、もったいないなって思いましたもん。
これこそ深夜アニメって枠じゃなく、早い時間帯できっちり何クールもかけて放送してほしかったなって。

今期は大作感のある作品が多くて、多少埋もれた感はあったかもですが、物語としての完成度ってのは一、二を争うほどによくできていた、とても良い作品でした。

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