尾上屋台 2019/04/04 08:35

「ケムリクサ」

・アニメ公式


僕はけものフレンズ見てないんですけど、まあ色々と話題になったじゃないですか(笑)。
で、たつき監督って名前も結構耳にしたんで、その新作をちょっくら見てみようかなと。
一応、リメイクってことではあるみたいですけど。

最初は、ある種の会話劇ともいえる作品で、こういった、荒廃した世界観では割合無難な線で攻めてきたなあって印象で。
一話目こそバトルもちくちくあったりしましたが、基本的には会話劇だなと。

で、この会話によって、過去にどんなことがあったのかはもちろん、登場しないキャラについても、なんかキャラが立ってくるんですよ。
後半、話にしか出てこなかったキャラが実際に登場した時に、あ、これが話に聞いてた誰々か、みたいのは、結構上手いなと思いました。
僕も結構創作の時に使うパターンだったりするので、これは勉強になるなあと。

空間の使い方も、実に上手かったですよね。

いつ敵に襲われるかわからない感じと、一歩一歩前に進んでいく踏破感もあって。
で、早く水を手に入れなくちゃいけないみたいな、焦燥感もあり。
こういった心情を映す背景として、近景はごちゃごちゃとした廃墟、遠景はどこまで続くかわからない、されど果てがありそうな感じもする星のない夜空、ってのが、実に上手い絵だなあって。
早く水を見つけたいっていう、空間を限定したい気持ちと、果てまで行って水がなかったらどうしようっていう、どこまでも続いてほしい気持ちと、矛盾する心情を、よく表現できてるなと。

で、果てがあることの怖さを、最後のあの解放感で一気に解き放つでしょう?
うわー、これは上手いなって。

カタルシスですよね。
やっぱ物語ってのは、どっかにカタルシスを持ってこなくちゃいけないと思うんですよ。
バッドエンドで終わるなら、それがラストより手前に来てもいいんですけど、物語の基本としては、やっぱ最後にカタルシスがあった方がいい。

話としては、そんなに凝ったものじゃないんですよ。
びっくりするようなオリジナリティに溢れた作品でもない。
でも空間の配置の絶妙さ、物語が始まる前に既にあった物語、考察に足る世界観等、良いところってのはすこぶる多くて、ああ、これは実に良く出来た作品だなと。

丁寧なんですよ。
ノリや雰囲気だけで押す作品じゃなくて、やっぱ丁寧に作り込まれた作品って、キャラの配置にしても行動にしても、全てに必然がある。
こうした物語にちょっとした偶然が加わることで、物語が動き出してくっていう基本中の基本を、もう間違いなくきちっと作ってる作品だなと。
見てて、首傾げるようなシーンは、全くと言っていい程なかったですもん。
とにかく、物語が丁寧。

けもフレ騒動があるまでは、たつき監督ってまったく知らなかったんですけど、映像作家として、極めて高いレベルにある人だなあと。
また新作が発表された折には、見てみたいですね。
そう思える、良作でした!

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